港区 税理士法人 大沢会計
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2008年4月

2008/04/30

H20.4.30

法案成立後に交際費課税を4月1日に遡及適用しても問題ない!?

ガソリン暫定税率の存廃をめぐる与野党の攻防の余波を受け、平成20年度税制改正法がこの4月に入っても成立しないことから、26に及ぶ租税特別措置法が3月末で期限切れを迎えた。これにより、措置法の効力が及ばない空白期間が生じたわけだが、この間に支出した交際費等の取扱いはどうなるのか――実務家の間でこのような疑問が広がっている。

空白期間を奇貨として交際費を使っても、その全額を損金に算入できるのではないかと楽観視する者もあれば、政令で手当てされる経過措置により結局は従来どおり損金不算入となるのではと冷静に見る向きもある。財務省や国税当局の関係筋などにおいては後者の意見が主流のようだが、しかし「基本的には誰もわからない」(財務省関係者)。この空白期間をとらえて濫費に躍起となるような行為は禁物といえるであろう。

実務家の関心の的は、20年度税制改正法の成立後における租税特別措置法の適用関係である。仮に経過措置によって4月1日に遡って適用することになれば、いわゆる「不利益遡及」の問題も生じかねない。その最たるものが、納税者にとって不利益な交際費等の損金不算入(措法61の4)の取扱いだ。有利措置であればいざしらず、こうした不利益措置について4月に遡って適用するとなれば問題がないこともない。

この点について財務省の関係筋が指摘するのが「納税義務の成立はいつか」ということである。交際費課税は、交際費等を支出した時点で課税する「行為課税」ではなく、あくまでも法人の所得金額の計算上、損金に算入しないものとして取り扱われているにすぎない。納税義務の成立は交際費等を支出した時点ではなく、事業年度が終了し所得が確定する時というわけだ。このため法案の成立後、政令による経過措置によって今年4月1日以後に開始する事業年度から交際費課税を適用することになったとしても不利益遡及にはならないことを示唆している。

このような見解が絶対であるとはもちろんいえない。仮に納税者との間で争いが生じた場合には最終的には司法の判断を待つしかないであろう。ガソリン暫定税率をめぐる与野党間の攻防は身近な税務にも波紋を投げかけている。

H20.4.28

20年度税制改正の行方と法律の施行日

平成20年度の税制改正法案は、いまだにその成立をみないまま、4月も過ぎようとしています。
税制改正法案が4月を迎えたにもかかわらず、成立していないという事態は前代未聞のことであり、ガソリンの暫定税率の動向以上に、適用期限の切れた租税特別措置法、また20年度改正で予定されている項目等、企業活動へ影響がある規定の取扱いが心配され始めています。

衆議院では、2月29日に税制改正法案を可決し、同日、参議院へ送付していますので、4月29日までに参議院で可決されない場合には、憲法の60日条項により衆議院で再議決が可能となりますが、20年度の税制改正法案はこの再議決によって成立するとの見方が強まっています。
そこで問題となるのが、法律の施行日です。

20年度の税制改正法案は、その施行日を原則として4月1日に規定しており、その規定が生きていることから、法律が公布されると、4月1日に遡及してその適用が開始されることとなります。

ただし、憲法では国民に不利益となるものについては遡及できないとする、不利益不遡及の原則がありますので、不利益なものについては、公布日以後からの適用となることが予想されます。

この点については、3月31日に成立したいわゆる「つなぎ法」に政令で円滑な施行の手当てをすることが規定されています。よって、それぞれの規定の適用については、税制改正法案の成立後に明らかになる政令でその施行日を確認する必要があることになります。

H20.4.25

海外で退職した社員が受取る退職金

団塊世代の退職ラッシュが、様々な方面で波紋を呼んでいます。商社やメーカーなどでは、海外出向中に現地で退職を迎え、そのまま海外に在住するケースも珍しくないようです。このように、海外在留日本人社員が、海外で退職して、日本の会社から退職金を受取ると、日本側においては「非居住者」としての課税関係が生じます。

例えば、勤続30年で、日本勤務15年、海外勤務15年で、海外在留中に「日本の非居住者」として退職し2,000万円の退職金を受取ったとします。そうすると、日本においては国内勤務期間に対応する1,000万円(=2,000万円×(15年/30年))が、「非居住者の国内源泉所得」として、原則20%の源泉分離課税の対象となります。

ところで、この社員が、もし、日本に帰国して日本居住者として退職金を受取ると、2,000万円全額に対し、退職所得控除を適用して2分の1分離課税が行われます。そこで、所得税法では、こうしたケースにつき

①国内勤務部分への20%源泉分離課税(非居住者課税)をいったん適用したうえで、
②総額に対する居住者並み課税(退職所得控除&2分の1課税)による税額が、①を下回った場合、確定申告により差額を還付する選択特例を手当てしています(所得税法第171条)。

H20.4.24

少子化社会白書にみる企業の課題

先進国でも類を見ないほどのスピードで少子高齢化が進む日本の現状は、今後の労働力人口の減少などにつながり、国際的な競争力低下の懸念が強まっています。

官民問わず、その対策が求められているところですが、現時点においてはいまだ有効な施策が見つからず、少子高齢化の進展を食い止めることはできていない状況です。

政府はそのような状況下、2008年版「少子化社会白書」を決定。少子化の克服には、まず女性が出産・育児の際に就労を断念するという実態を改善する必要があると指摘しています。

その上で、昨今、耳にする機会が増えてきた「ワークライフバランス」に対する取り組みを通じて、就労と出産・育児をてんびんにかけるのではなく、仕事と生活を調和させることが必要であるとしています。

企業においても、女性労働者が結婚・育児をきっかけに仕事を辞めることはトータルで見るとデメリットの方が多いという調査結果もでています。今後はいかに女性労働者を長期間雇用するかが課題になりそうです。

H20.4.23

学校法人理事長が校長職を退任した場合の金員は退職所得

学校法人の理事長ほかの要職を務めていた人物が、高校・中学の校長職を退任した際に支払われた金員は「退職所得」か、「給与所得」かをめぐる裁判で、大阪地裁は2月29日、納税者の主張を全面的に認める判決を下した(西川知一郎裁判長)。

原告である学校法人Xの理事長甲は、学園長、中学・高校の校長、幼稚園の園長を務める、名実ともに同学園グループの“総裁”たる人物であった。平成14年3月末、甲は定年により中学・高校の校長職を退任し、4月からは新たにグループ内大学の学長に就任した。この際、退職金規程に基づいて、甲に約4800万円の退職金が支払われた。原告法人Xは、この金員を「退職所得」と判断し、約150万円を源泉徴収したうえで所轄税務署に納付した。

しかし、税務署サイドはこの金員を「給与所得」と認定、Xに対し納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を行った。その理由は、甲が校長退職後も相変わらず理事長、学園長などの重職に就いており、グループの総裁としての地位はいささかも変わっていないこと、また、校長退職後も依然として年間約1800万円の給与をXから受け取っていることなどに照らして、校長職の退任は実質的な「退職」には当たらず、単なるグループ内における担当業務の変更に過ぎない、というものだ。Xはこの処分に異議を唱え、提訴に至った。

裁判では、甲の校長職退任が「退職」に該当するか否かが争点となった。大阪地裁は、甲の校長退任後の職務がその量や質において軽減されていること、勤務形態自体が異なることなどから、最終責任者としての職務という点では本質的な相違はないものの、具体的な職務内容には相当程度異なるところがあり、学長としての職務に対する給与も校長としての職務に対する給与より約30%減額されているという面からも、その職務の量・内容・性質の変動が反映されていると認定。実際に校長職を「退職」したと認められるのであるから、甲の校長退任時に支払われた金員は当然「退職所得」に当たると判断。税務署の処分は違法であるとして全面的に取り消した。

H20.4.22

行政不服審査法案を国会へ提出

4月11日に、「行政不服審査法案」、「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」、「行政手続法の一部を改正する法律案」が国会に提出されました。
これらの法律案は、今後の国会審議を経て、46年振りに改正されることになります。
この行審法の改正には、国税に関する不服申立て制度の改正も含まれており、行審法の改正に伴う「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の改正により手当てされることとなります。
整備法においては、行審法の改正に伴って、国税通則法を含め約340の関係法律について改正が行われます。
国税通則法の具体的な改正点は、現行の「異議申立て」を「再調査請求」に名称を変更する、不服申立てのできる期間について、処分があったことを知った日から2月以内としている現行期間を3月以内に延長する、「再調査請求」についての決定を経ずに審査請求をすることができる期間を現行の3月から2月に短縮すること等があげられます。

また、改正行審法では、「標準審理期間」が定められることから、審理の終結予定時期について通知することとなりますが、国税の再調査請求や審査請求においても、同様の措置がとられることとなります。
さらに、担当の審判官に対して提出された書類その他の物件の閲覧を求めることも可能となります。
これらの新しい行審法とその整備法は、法律の公布日から2年以内に施行される予定となっています。。

H20.4.21

特許庁が中小企業向け「知的財産戦略マニュアル」を策定

特許庁は、このほど①「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル」と②「ものづくり中小企業のための意匠権活用マニュアル」を公表しました。①は技術を重視した経営戦略を行うR&D型企業が、②はデザインを重視したブランド型企業や技術保護との相乗効果を目指す企業が、それぞれ対象となっています。

我が国経済の発展を支える中小企業は革新的な技術を有していても、それを知的財産として保護・活用する意識が乏しい状況にあります。知的財産は、時には外部に公開して活用し、時には秘密として管理するとともに、違法な権利侵害には、知的財産権で毅然と戦っていく必要があります。これらを戦略的に行う“知財経営”──知的財産を自社の競争力の源泉として経営戦略の中に位置づけ、それを事業活動に組み入れること──は、大企業のみならず中小企業にとっても非常に重要となっており、同庁では、このマニュアルを「できるだけ多くの中小企業者に、知財経営の実現に向けて、第1歩を踏み出して欲しい」との思いで作成したとのことです。

マニュアルには、中小企業の取組事例なども盛り込み、わかりやすい内容となるよう配慮。中小企業支援者が中小企業経営者に対して、知財経営の必要性やメリットを説明する際や、中小企業経営者本人やその従業員が、知財経営を実践しようとする際の参考として、
知財スキルアップのために活用してほしいと呼びかけています。
※特許庁HPhttp://www.jpo.go.jp/indexj.htm

H20.4.18

親会社による子会社への“支援”の取扱い

経営危機等に陥っている子会社等に対して親会社が実施する支援策のうち、債務引き受けや債権切捨て、無利息貸付等による経済的利益の供与、損失負担は、それが緊急性を有するやむを得ないものであること、相当の理由があること、支援それ自体が過剰ではなく妥当であること等を前提に、寄付金として取り扱われず、単純損金算入することができます(法人税基本通達9-4-1、9-4-2)。

逆にいえば、経営危機に陥っていない子会社等に対する経済的利益の供与等は、緊急性・合理性がなく、やむを得ず行うものとは認められないことから、寄附金に該当することとなります。ここでいう「子会社等が経営危機に陥っている場合」とは、一般的には、子会社等が債務超過の状態にあることなどから資金繰りが逼迫しているような場合が該当します。

また、倒産の危機に至らないまでも経営成績が悪いなど、放置した場合には今後より大きな損失を蒙ることが社会通念上明らかであるかどうかも判定に当たっての指標となるでしょう。

ちなみに、海外子会社への支援については、それが寄付金と認定された場合、ただちに全額損金不算入となります(損金算入限度額の不適用。租税特別措置法第66条の4③)。また、寄付金課税に代えて、移転価格課税のリスクも生じますので、要注意です。

H20.4.17

飲食サービス業は四種でもデリバリーのみは三種

日本標準産業分類の改定に併せて、消費税の簡易課税制度の事業区分についての通達が改正されている。インターネットやデリバリーによる無店舗型サービスが普及・定着するなか、大分類のサービス業は細分化されるが、簡易課税の事業区分は役務の提供などの実態を見て判定していく必要があり、よく見極めるようにしたい。
産業分類改定はこの4月から実施されているが、ポイントは、①情報通信の高度化、②経済活動のサービス化の進展、③事業経営の多様化――に伴う産業構造の変化に適合させるための大分類等の新設。例えば、運輸関係者がほとんどの信書送達業は「情報通信業」から分離して「運輸業、郵便業」に統合される。簡易課税上はいずれも第五種なので影響ない。「物品賃貸業」は、ファイナンス・リースの所有権移転外取引が会計上、売買処理として扱われ、不動産業の活動に近くなったことや不動産リースの実態などを踏まえ、「不動産業、物品賃貸業」に統合される。この他、「学術研究、専門・技術サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」の新設は、全産業の2割程度に増え続けるサービス業を分離したもので、いずれも、簡易課税上は第五種のままだ。

一方、注意が必要なのは、飲食品を提供するテイクアウト(持ち帰り)やデリバリー(配達)。これらの比率が高くなったことを踏まえ、卸売・小売業から分離し、飲食サービス業に統合された。簡易課税上は、飲食サービス業の中でも第四種に該当するのは「主として客の注文に応じその場所で飲食させる事業(下線は通達改正部分)」であり、テイクアウトやデリバリーは製造小売業として第三種事業とされる点である。

つまり、産業分類では小売業から分離された弁当屋等のテイクアウトやピザ等のデリバリーは依然として製造小売業として扱われるのだ。また、食堂等が、店舗で顧客に提供する調理済みメニューと同じものを出前する場合は食堂等の事業として第四種事業に当てはまる。無店舗型であれば明確に第三種事業として取り扱うことができるが、寿司屋などではテイクアウトもデリバリーもする店舗も増えており、事業区分が整然とできるような工夫も必要となろう

H20.4.16

成長力強化への早期実施策」を読む

政府は経済対策閣僚会議において「成長力強化への早期実施策」を決定しました。この中で、「原油・素材価格の高騰に加えてドル安に伴う円高が企業収益に影響を与えつつ」あるとし、中小企業の経営が圧迫されているとしています。「非正規雇用の拡大などにより不安定化している雇用の現状に対しては、十分な注視が必要であり、一層の配慮が求められている」と指摘した上で、女性・若者・高齢者などの雇用促進に向けた対策が必要であるとしています。

具体的には(1)パートや有期契約労働者の正社員転換への助成、(2)ジョブ・カード制度の整備・充実、(3)70歳まで働ける企業の普及促進、(4)労働者派遣制度の見直し、などの具体的な取組みを打ち出しています。

大企業を中心に、すでに非正規社員を正社員に転換する動きが活発化しています。有能なパート社員などについては、引き抜きなども起きており、今後は老若男女を問わず、いかにしてしっかりと仕事をしてくれる労働者を確保するかが経営課題になりそうです。

H20.4.15

2008年度の雇用、3割の企業に採用予定なし──TDB調査

帝国データバンク(TDB)は、2008年度の雇用に関する企業意識について調査を実施、このほどその結果がまとまりました(調査期間:2008年3月19日~31日。調査対象:全国2万872社。有効回答企業数1万189社・回答率48.8%)。

それによると、2008年度(2008年4月~2009年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況では、「増加する(見込み)」と回答した企業は1万189社中2,174社、全体の21.3%、5社に1社となりました。直近3回の調査では、2005年度が28.2%、2006年度が27.0%、2007年度が25.6%で漸減しており、今回が最低水準となっています。「採用予定なし」も3割を超えており、企業の景況感が後退しているなか、採用意欲が低下する兆しが現れはじめた模様です。

非正社員(派遣社員、パート・アルバイトなど)の採用についても、「増加する(見込み)」と回答した企業は1万189社中1,012社、構成比9.9%で全体の1割未満にとどまっています。回答した企業からは、「賃金コスト上昇が急激で採用が困難(時給を上げるとコスト割れを招く)」(運輸・倉庫、群馬県)や「派遣法の改定により採用が困難」(金融、長野県)といった非正社員市場環境の変化による採用抑制の声も寄せられました。
※株式会社帝国データバンク http://www.tdb.co.jp/

H20.4.14

平成20年度改正法案の適用関係・経過措置はどうなる?成立後公布の改正政令に注目

既報のとおり、今国会に提出されていた平成20年度税制改正法案(「所得税法等の一部を改正する法律案」)は、3月31日までに未成立・未発効となりました(地方税改正法案も未成立)。3月31日に急遽提出・成立した“つなぎ法”により、同日で期限切れとなる現行の租税特別措置のうち、7項目については適用期限がひとまず「5月31日まで」延長されましたが、ガソリン税の暫定税率をはじめ、交際費等の損金不算入や使途秘匿金の40%課税など、“つなぎ法案”に盛り込まれなかった相当数の租税特別措置が「3月31日」をもって期限切れとなったほか、平成20年度改正法案に盛り込まれている新設項目等も、4月1日以降適用されない状態がつづいています。

平成20年度税制改正法案は、衆議院に差し戻しにより4月29日以降に再可決される公算が高まっていますが、それまでの間(改正法未成立=現行法適用下)に行われた取引・支出等に対し、“納税者の不利益”が遡及されることはありません。ただし、3月決算法人が4月1日以降の当期で支出する交際費については、「来年3月末までに改正法案が成立・発効していれば、当期の全額が損金不算入となる」との見解もあるようです。ちなみに一足はやく成立・発効した“つなぎ法”のなかで「4月1日後に公布される年度改正法案の適用・経過措置については同法案成立後の改正政令で定める」旨の規定が入っており、今後が注目されます。

H20.4.11

リース取引の改正

平成20年度の税制改正法案が4月になっても成立していないという極めて異常な事態になっています。29日には衆議院の再議決が可能になりますが、果たして本当に行われるのかは、はっきりしません。

ところで、平成19年度の税制改正事項でありながら、この4月1日からその適用が開始されるため、実質的には平成20年度改正のように扱われるものに「リース取引」があります。

これは、会計基準の変更に伴い、これまでは賃貸借処理も認められた「所有権移転外ファイナンス・リース」を、平成20年4月1日以後に契約したものについては、税務上も売買があったものとみなすというものです。
中小企業であれば、これまで通りに賃貸借処理が認められますので、特に問題が起こることはないと考えられますが、この改正に伴い、特に気を付けたいのは消費税の取扱いです。

これまでのリース取引であれば、リース資産を借りている側は、リース料を支払う際に、仮払消費税を計上するのが一般的であったと思われますが、今後は、リース契約を締結し、リース資産の引渡しがあった時点で、売買とみなされますので、その時点で、消費税を一括で計上することになります。

よって、その後に毎月支払うリース料の仕訳においては、リース料と支払利息のみが発生し、消費税は発生しないこととなります。
既存のリースについては、そのような処理は必要ありませんが、この4月からのリース取引には気を付ける必要があるでしょう。

H20.4.11

低価法による期末棚卸資産の評価は再調達原価でも可能

3月決算法人においては決算整理に取り組むこの時期、平成19年度税制改正における経過措置に注意したい。特に期末棚卸資産の評価について低価法を選定した場合には、原則とされた正味売却価額でなく、従来どおり再調達原価と取得価額等との比較によって簿価の切下げができるように手当てされている。この経過措置は、正味売却価額の具体的な測定方法が実務的に定着するまでにはいまだ時間がかかることを考慮したものといえ、簡便さが望まれる中小企業などではぜひ活用したいところだ。

期末棚卸資産の評価について低価法を採用している法人においては、平成19年度改正により、その取得価額が期末時点における正味売却価額よりも下落している場合にはその正味売却価額をもって貸借対照表に計上することとされた。この原則に対して特別に経過措置が設けられ、正味売却価額の代わりに再調達価額によっても評価できることとされたわけだ。

具体的には、平成19年4月からの1年間に開始する事業年度において低価法を選定している場合には、正味売却価額でなく、従来どおり再調達原価によって取得価額等と比較することが措置されている(平成19年度改正法令附則10)。

この経過措置を適用するには以下の二つの要件を満たすことが求められている。一つは、低価法の選定した期末棚卸資産について、棚卸資産の受払簿等にその取得のために通常要する価額、いわゆる再調達原価を記載すること。もう一つは、事業年度の終了時におけるこの再調達原価が原価法により評価した価額に満たないこと。これら2要件を満たす場合には、正味売却価額でなく、再調達原価を期末棚卸資産の取得価額等と比較する金額として用いることができることとされたわけだ。

再調達原価による低価法の適用は、正味売却価額を用いる原則に対するいわば例外といえる。正味売却価額とは文字どおり、ある棚卸資産を実際に売却したと仮定した場合の価額といえるが、実務上これを客観的に測定することは難しい。たとえ可能であるとしてもこれに費やす事務量は小さくないであろう。その意味では、本経過措置を積極的に採用すべきであるといえそうだ。

H20.4.10

会計基準委が「資産除去債務」の会計基準等を公表

企業会計基準委員会は3月31日、「資産除去債務に関する会計基準」と同適用指針、「棚卸資産の評価に関する会計基準」の改正案(公開草案)を公表しました。

前者は、資産除去債務の会計処理と開示について定めたもので、資産除去債務を「有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるもの」と定義されています。

資産除去債務は、有形固定資産の取得等により発生した時に負債に計上します。また資産除去債務に対応する除去費用は、負債計上時に、当該負債計上額と同額を関連する有形固定資産の帳簿価額に加えます。減価償却を通じて、費用化されることになります。

同会計基準は、平成22年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。早期適用も認めています。
一方、棚卸資産の評価に関する会計基準の改正案では、会計基準の国際的なコンバージェンスの観点から、棚卸資産の評価方法のうち、後入先出法を廃止しています。

H20.4.9

社員のメタボを巡る企業の対応 その2

大企業を中心にはじまっている企業独自の社員のメタボリックシンドローム対策ですが、たとえばトヨタ自動車では、健診の対象年齢を新しい制度で規定されている対象年齢(40~74歳)より広げて36歳からに設定しています。国の基準よりも早期に対応することで社員の健康を確保しようというねらいです。

また、本社所在地である愛知県豊田市内に健康支援センターを開設するほか、4年に1度は社員のみならず、配偶者までを対象とした「夫婦健診」を実施します。

そのほか、松坂屋では40歳以上の社員とその家族に対して健康管理手帳を配布し、健康診断の履歴を残すことにより、健康に対する意識を高めようとしています。同時に、メタボ対策についてのアドバイスなども手帳に盛り込むことによって、社員自身が健康増進に対して意欲的に取り組める土壌作りを行う考えです。
いずれのメタボ対策についても相応の費用がかかりますが、企業として社員の健康を確保することを優先しているようです。

H20.4.8

20年度税制改正の行方

ガソリンの暫定税率については、3月末までに与党と野党で合意することなく、4月からガソリンの価格が1リットルあたり25円ほど安くなる事態となりました。

国会では3月31日に、いわゆるつなぎ法案を成立させることで、租税特別措置のうち特に期限の延長が必要とされる7項目については5月31日まで期限を暫定的に延長するという措置を図りました。ガソリンの値段にかかる道路特定財源の暫定税率についてはこれに盛り込まれなかったため、暫定税率の期限が切れて値段が下がったわけです。

つなぎの法律に盛り込まれなかった租税特別措置については、「所得税法等の一部を改正する法律案」の成立を待つこととなりますが、国会審議の動向が不透明であり予断を許さない状況です。
ただ、20年度の税制改正法案は2月29日に衆議院で可決し参議院に送付されているため、憲法の60日条項により、4月29日には衆議院の再議決が可能になります。

仮に、衆議院の再議決をもって税制改正法案が成立した場合、不利益不遡及の原則から、4月1日に遡及適用が行われないと考えられるものもあります。これは憲法84条に規定されている租税法律主義は、国民に不利益を及ぼす租税法規の遡及適用を禁じていると解釈されているからです。
いずれにせよ、20年度の税制改正は、4月になっても今後の国会の動向次第という異例の事態となっており、実務家にとっては頭の痛い状況がしばらく続くこととなります。

H20.4.7

会計士協会 監査時間の見積りの研究報告で公開草案

日本公認会計士協会は3月19日、「監査時間の見積りに関する研究報告(中間報告)の改正について」(公開草案)を公表しました。

同研究報告は、平成18年9月に、上場企業等に対する監査の信頼性を高めるためには「十分な監査時間の確保が必要」との認識から、監査時間の見積りに関しての参考とするために作成されました。今回の改正は、従来の財務諸表監査に加え、内部統制監査および四半期レビューが金融商品取引法により導入されたことから、監査時間の見積りを新制度導入に対応させるために行われるものです。

同研究報告では、監査時間を見積るための手法、見積りに当たって考慮すべき事項などのほか、監査時間の見積例が収録されています。見積例では、従来の4541.5時間から8042時間に年間の監査時間が増加しています。

なお見積例は、一定の前提の下で積上げ計算をしたもので、前提が異なれば、当然、計算された監査時間も異なってくるため、実際の監査時間の見積りに当たっては、被監査会社の固有の事情を勘案して計算する必要があるとしています。

H20.4.4

交際費の損金不算入など相当数の租税特別措置が3月末で期限切れに

今国会に提出されていた平成20年度税制改正法案(「所得税法等の一部を改正する法律案」)は、与野党対立により、参議院での審議が行われないまま3月31日までに未成立・未発効という異例の事態となりました(地方税改正法案も未成立)。

政府・与党は、3月31日に、同日で期限切れとなる現行の租税特別措置のうち、日本の金融機関等が外国法人等に支払う一定の利子の非課税特例や、土地売買時の登録免許税の税率の軽減など7項目について、適用期限を「5月31日まで」延長する“つなぎ法案を急遽提出、同法案は参議院本会議で野党を含めた賛成多数で可決・成立しました。ただしガソリン税の暫定税率をはじめ、交際費等の損金不算入や使途秘匿金の40%課税など、“つなぎ法案”に盛り込まれなかった相当数の租税特別措置が「3月31日」をもって期限切れとなったほか、平成20年度改正法案に盛り込まれている新設項目等も、4月1日以降適用されない状態となっています。

平成20年度税制改正法案は、衆議院に差し戻しにより最短で4月29日に再可決される公算が高まっていますが、それまでの間(改正法未成立=現行法適用下)に行われた取引・支出等──例えば移出されたガソリンに対し年度改正法案成立後に上乗せ税率を追徴するといったかたちで、“納税者の不利益”が遡及されることはないでしょう。
参考:財務省HP「租税特別措置の課税関係について」
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200331.htm
http://www.jisnet.co.jp/jsn/tax/tax_593.htm

H20.4.4

経産省がガソリン等の流通に係る対策をとりまとめ

経済産業省では、揮発油税(国税)・軽油引取税(地方税)の暫定税率の期限切れに伴い、ガソリン等の流通・販売で混乱を回避するために、安定供給面、消費者向け相談・広報、販売事業者に対する金融支援等からなる下記の対策をとりまとめました(3月31日付)。

1.安定供給面の対策
(1)石油業界に対し、安定供給を要請
(2)石油業界に対し、緊急車両等への優先供給を要請
石油業界(石油連盟及び全国石油商業組合連合会)に対し、国民の生命・安全に不可欠な救急車、消防車、パトカー等への優先供給を要請。
(3)日本自動車連盟(JAF)に対し、ガス欠車への給油に万全を期すよう要請
(4)石油業界等と連携した実態把握
(5)本省・地方局における対策本部の設置

2.消費者向け相談・広報対策
(1)本省・地方局における相談窓口の設置
(2)きめ細かい消費者等への情報提供
3.販売事業者に対する経営安定対策
(1)販売事業者に対する資金繰り対策
(2) 政府系中小企業金融機関等における特別相談窓口の設置(全国943ヶ所)。

【問い合せ先】
経済産業省 資源エネルギー庁資源・燃料部
「ガソリン・軽油に関する相談窓口」(03-3501-1353)

H20.4.3

被相続人から承継した訴訟で勝訴した場合の還付金の税務取扱い

被相続人が死亡前に裁判を起こしており、係争中に死亡してしまったため、やむを得ず相続人が承継して訴訟を継続するケースがある。その結果勝訴した場合、損害賠償金や土地・建物など、その勝訴による利益はどのような課税取扱いになるのだろうか?これまでは、訴訟によって得た財産はあくまで訴えを提起した被相続人固有の財産であり、したがって相続財産として相続税の課税対象になるというのが通説であったが、平成20年2月4日の大分地裁判決はこれとは全く異なる結論を下し、注目を集めている(一志泰滋裁判長)。

課税庁は平成8年、相続人Xの母親であるTに対し所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。これを不服としたTは、異議申立て・審査請求を経て、平成8年に大分地裁に対し上記課税処分を取り消す訴訟を提起した。

ところがTは、訴訟継続中の平成12年に死亡。相続人Xが同訴訟の原告としての地位を引き継ぎ、平成13年に上記課税処分を取り消す旨の判決が下された。結果としてXに納付済みの税金と還付加算金が還付され、Xはこれを自身の平成13年分一時所得として申告した。

ところが課税庁は、この還付金はXの一時所得ではなくTの相続財産であるとして、再び更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったものだ。

大分地裁は、①Tの死亡時(=相続開始時)には、課税処分取消訴訟が係属中であり、未だ過納金の還付請求権が発生していなかったこと、②還付請求権が発生するのはあくまで取消判決が確定したときからであること、③課税処分取消訴訟の原告たる地位は、取消判決が確定する以前の段階では、財産法上の法的地位ということもできず、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものとして評価することはできないこと――などの理由で、還付金は相続財産ではないと判示。Xの主張を全面的に認め、課税庁の行った処分を取り消した。

H20.4.2

社員のメタボを巡る企業の対応 その1

4月から労働安全衛生規則の改正もあり、企業における健康診断などでも、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)予防のための特定健康診断と特定保健指導が始まります。

そのような状況下、企業の間で独自に社員のメタボリックシンドローム予防に向けた動きが始まっています。
以前から、社員の健康は大きな経営問題となっています。心身ともに健康な社員がしっかり業務に励んでくれなければ、企業の業績にも大きな影響が出ることはいまさら言うまでもありません。社員が病気になることで病欠することになれば、業務遂行に与える影響ももちろんですし、その代替要員の確保や企業が抱える健保組合の医療費負担増など影響が大きいわけです。

現時点では、トヨタ自動車などの大手企業を中心に独自の健康管理についての取組みが始まっている段階ですが、いずれ中小企業でもなんらかの対応が求められることが予想されています。いまから対応策を検討する必要があるでしょう。

H20.4.1

平成20年度の労働保険の年度更新手続は4月1日~5月20日まで

労働保険の保険料は、毎保険年度(4月1日から翌年3月31日まで)を単位として計算することとなっており、年度当初に保険料を概算で申告・納付し(概算保険料)、翌年度の当初に確定申告の上、保険料を精算(確定保険料)することになります。

毎年度当初に行う、この旧年度分の確定保険料と新年度分の概算保険料の申告・納付手続きを労働保険の年度更新手続といいますが、平成20年度については、4月1日(火)から5月20日(火)の間に、これ(=平成19年度分の確定保険料と平成20年度分の概算保険料の申告・納付手続)を行うことになります。

具体的な手続としては、「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」を作成し、その申告書に保険料等を添えて、金融機関、所轄都道府県労働局、所轄労働基準監督署のいずれかに、上記期間中に提出する必要があります。なお、申告書は、あらかじめ労働保険番号、事業の所在地・名称、保険料率等が印書され、都道府県労働局から各事業主あてに送付されますので、そちらを使用してください。

全国の社会保険事務所内に設置されている「社会保険・労働保険徴収事務センター」においても、申告書の受付を行っているほか、電子申請・電子納付も可能です。
※問い合わせ先
厚生労働省労働基準局労働保険徴収課 Tel03(5253)1111(内線5158)