港区 税理士法人 大沢会計
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2008年9月

2008/09/30

H20.9.30

後だしジャンケンの是非

違憲が一つ、合憲二つ
平成16年の土地建物の譲渡所得と他の所得との損益通算を廃止する税制改正は
4月1日施行のものを年初に遡及適用させるというものだったので、実行の時の法律では譲渡損部分を他の所得から控除できるとの規定で税負担を予測していた人の税負担は予想外に大きなものになりました。この事例につき遡及立法の是非を問う裁判の判決が今年3件あり、1件はこれを憲法違反とし、他の2件は逆に合憲としました。どれも高裁で現在係争中です。

遡及立法ではないとの理由
合憲判決によると、所得税は期間税で、期間の終了を待ってはじめて所得が確定するのだから、納税義務の確定日としての12月31日からすれば遡及には当たらない、とされています。
しかし、納税義務の確定日は暦年終了日とは限らず、年中に死亡とか、海外出国の場合は3月31日以前に納税義務が確定してしまうことは大いに有り得ることですから、合憲判決の言い分は理論的に誤っています。また、不動産取引など一生に1度か2度か3度かするくらいのもので、同年中に別な取引をすることなどほとんど有り得ないわけですから、改正法下では、一度の行為時点で納税義務の内容は実質的に確定してしまいます。それを、形式論で歴年末の納税義務確定を言うのは詭弁です。

遡及立法だとする違憲判決
違憲判決は、納税義務の確定については合憲判決と同旨ですが、遡及適用に当たるかどうかについては、既存の納税義務の内容を変更するものかどうかではなく、既存の行為に適用されるものであるかどうかで判定すべきものとしています。理由として、期間税の場合であっても、納税者は、その当時存在する租税法規に従って課税が行われることを信頼して、各種の取引行為等を行うのであって、そのような納税者の信頼を保護し、国民生活の法的安定性や予見可能性の維持を図る要請は、期間税であるかどうかで変わりがないから、としています。納得できる論旨です。でも、これは少数派的見解であるところが残念です。

H20.9.29

税法は予知能力を要求?

法の不知は許されない
おびただしい数の法があり、それを国民は全部知っているということを前提に行政・司法は運営されています。「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」これは刑法38条です。税法条文がどんなに難解でも、それを知らないことを理由に申告を漏らしたり、不正確にすることは許されず、情状酌量の扱いも原則的にありません。

税法は予知
憲法は、法律によらなければ課税できないとしています。この条文を逆読みして法律に書きさえすれば遡った時期への課税も許されると解釈をする人がいます。誰がそういう解釈をするかというと、財務省・国税庁の役人・裁判官・税法学者達です。税法については、国民はそれを熟知しているだけでなく後から作られる法律まで熟知していないといけないのです。日本国民には高い予知能力が求められているのです。

遡及立法違憲判決合憲判決
4月1日施行の改正税法を1月1日まで遡及適用させるとの規定につき、これを憲法違反とする判決が1件、逆に合憲とする判決が2件あり、どれも高裁で現在係争中です。違憲判決も、合憲判決も、ともに国民に立法への予知能力が求められていることを否定していません。近い将来存在することになるかもしれない法律の内容を条文がまだ作成される以前に熟知しそれに基づいて経済行動することが必要という過酷な要求を満たすのに現実の情報の伝達の程度と余裕期間が2週間ということで十分であったか否かで、片や違憲とし、片や合憲としました。

憲法は予知ではなく予測の確保を要求
法律によらなければ課税できないとの憲法原則は、自分の税金がいくらになるのか予測しながら経済選択行動することを保障するためのものであり、予測計算判断を十分にできるようにするための期間こそ確保すべきことを要求するものです。翌年施行などのように、公布した法律の施行そして熟知までの期間の十分な確保への要求なのです。即ち、予測可能性の確保です。
それを有らぬことか、立法の予知可能性の確保の十分不十分の議論にしてしまっているのが、現在の憲法解釈論争なのです。

H20.9.26

法の不知は許されない

江戸時代の法
江戸時代を通じて実用された唯一の刑事法典が公事方御定書で、上巻は警察行政的法令81通を収めた法令集、下巻は刑罰・訴訟の先例・取極め(刑事法規)を整理・収録しており、一般に公布されておらず、江戸時代を通じて秘密法典でした。知らしむべからず、依らしむべし、ということです。
現代の法
昨年の通常国会と臨時国会で成立した法だけで139あり、今年の通常国会はネジレ国会なので提案法律数と通過法律数は少ないが、それでも83あります。その中の一つが国税に関する「所得税等改正法」で改正条文新旧比較表の冊子のページ数は200ページです。改正に伴う政令・省令の分量も同程度あります。
これらはすべて公表されており、手を尽くせば必ず入手できます。

法の不知
法は社会の強制力のあるルールであり規範です。法によって人は死刑とされることもあり、税として財産を侵されることもあります。そして、現代社会では国民は法を知っているというのが前提条件になっています。その上で、「法の不知はこれを許さず」という法原則が存在します。
税務判決などでは、訴えた者の法の不知や誤解は、本人責任であり、救済すべき「やむを得ない事情」には該当しないとの、文章をよく目にします。

法はいつから在ることになる
知る対象の法は、施行された時から、公布即施行のときは公布の時から、在ることになります。公布の時とは、東京の官報販売所にて閲覧・購入できるようになった瞬間を指す、という最高裁判決があります。
今年の改正税法は衆院で3分の2再可決をしたのが4月30日午後4時44分で、そののち、主任の国務大臣の署名及び内閣総理大臣が連署し、閣議決定を経たのち天皇に上奏され、御名御璽を賜って、そして官報に掲載という手順を踏んで公布即施行されたことになっていますが、官報はすでに印刷されていたとしても、手順をちゃんと踏んだとして、30日の官報販売所の5時半閉店前に閲覧・購入できるようにすることが可能だったか、疑問です。そのうえ、公布即施行の「時」は国会通過「時」前に遡ることになる30日午前零時とされています。なお、疑問です。

H20.9.25

銀行の見方は、「財務バランスが企業力」だ

成長性・未来性は客観的観察が困難
直前期“決算書の財務力”は過去の経営活動の集積結果であり、その数値が健全ならば、この企業はさほど問題が無いだろうと判断するのは一般的な判断であり、金融機関にとっても同様です。
社長の資質・理念・製品力の評価が正しい基準かもしれませんが、現在の企業格付システムは“スコア化の困難性と恣意性排除”などから、財務力を主要要素としています。
財務改善ポイント
①キャッシュベースで算定した総資産の時価から総負債を差引きした額(時価純資産)が自己資本額ですが、その自己資本額を同総資産額で除した比率(自己資本比率)を40%台に、更に50%以上に改善する。
②キャッシュフロー(CF)の改善です。銀行の言うCFは、“返済能力”を意味します。総借入額を何年で返済できるかの年数短縮が重要で、基本的には税引き後の営業利益で総借入額(担保は安全ラインで控除した額)を除した数が10年未満となるよう借入金を減らす。
緊急対策として、“親族の増資・在庫や売掛金回収・資産の処分等による総資産の圧縮”等があります。

H20.9.24

破産しても消費税は追いかけてくる 誰が納税義務者になるの

一般的に、会社が破産(個人破産も同じ)した場合、裁判所から破産管財人が選任され、破産管財人は公正な債務弁済のため、破産会社の資産(このことを破産財団といいます)を管理処分して、これを債権者に分配します。処分資産の中には、商品在庫・建物・什器備品等の課税資産の譲渡も含まれていますので、その消費税の納税が当然に問題になります。そこで会社が破産した場合、一体誰が納税義務者となり誰が履行するのか、破産法人なのか、それとも破産財団(破産管財人)なのか、消費税法では規定されていません。破産法人は実体として機能していないので、破産法人に納税義務があるとしても一体誰が納税義務の履行をするのか不明です。 一方、破産財団(破産管財人)は、破産者の財産を管理処分して、これを債権者に分配することを目的として存在するので、納税義務者になりうるかどうか疑問です。
(1)消費税の実務上の取扱い
実務解説書は、次のように述べています。①破産財団(破産法人の総財産)の管理及び処分をなす権利は破産管財人に専属することになりますが、②破産手続中であっても破産法人は存続し、破産財団は破産法人に帰属します。したがって、③破産手続中に破産管財人が行なった課税資産の譲渡に係る納税義務者は破産法人となります(よって、破産法人の基準期間における課税売上高により納税義務の判定を行なうことになります)。なお、納税義務の履行手続きは破産管財人が行なうことになります。

(2)破産管財人が納税義務を負う根拠
この実務上の取扱に異論を唱えて、提訴した破産管財人がいます。
その主張は、①破産財団と破産法人とは別の法的主体、結果、②基準期間における課税売上を引継がない、③破産財団は新設法人であり基準期間がないから「納税義務を負わない」であります。
一審の福井地裁で勝訴しましたが、控訴審で国側勝訴の逆転判決となりました。勝訴理由は、法人税が解散した場合の清算所得に対する規定は、破産清算を適用除外としていないこと。また、清算中の所得にかかる予納法人税の予納申告・納付義務規定は、破産管財人に及ぶとする最高裁平成4年判決などが根拠のようです。
なお、破産管財人は、判決内容を不服として上告した模様です。

H20.9.22

交換と株式

資産の交換と所得税法・法人税法
譲渡とは、税法では、有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為をいいますので、通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済、財産分与、収用、法人に対する現物出資なども含まれます。したがって、交換は譲渡の一種なので、資産の交換が行われた時は、原則として、交換引き渡し資産を譲渡し、その対価として交換取得資産を受け取った、ということになります。
ただし、譲渡と交換の違いを考慮して、土地や建物等の特定の資産の交換については、譲渡はなかったことにする特例が、所得税・法人税にあります。でも、ここで特例とされている資産には株式は含まれていません。

株式の交換と税法
譲渡の特例としての交換に該当する交換資産は、土地・建物・機械装置・船舶・鉱業権に限定されているので、株式と株式を交換しても譲渡はなかったことになりません。
株式と株式の交換は持っている株式を売却し、現金を受け取り、その金銭で別な株式を購入する行為と考えることになっています。ただし、株式と株式の交換にも、譲渡がなかったことになる特殊な特例があります。会社法における企業組織再編の一手法としての株式交換・株式移転です。会社法上の株式交換等は、“会社の意思”により決定されるもので、株主総会の特別決議で承認されてしまえば、個人の意思に関係なく、たとえその個人が株式交換等に反対していたとしても、株式交換等が実行されます。それゆえ、一定の要件を満たす株式交換等については、株主に譲渡課税を行わないことになっています。

株式と株式の交換
株式と株式の交換は株主の個人的な意思に依存するものですから「株式交換等」とは異質なものです。たとえば、TOB(敵対的買収)が行われるとき、買収会社が被買収会社の株主に対し、被買収会社の株式に対し、買収会社の株式を与えることがあります。これなどは、組織再編行為によるものではないので、単なる株式と株式の交換の仲間になります。

H20.9.19

銀行を理解しなければ生き残れない

好業績で倒産する
経営者や経理の銀行窓口責任者が、もしも『お宅の銀行が、メインバンクなのに・・・』などの表現を使ったならば、銀行の担当者は『この会社は、危ない!』と、考えるかもしれません。
そんな危険な発想は他にもあります。

危険な発想・企業側の勘違い
①長い付き合いだから
②返済が1回も遅れたことがないから
③支店長とツーカーの仲だから
このような情緒的なことで、金融機関と付き合っていけた時代はありましたが、今はもう無理です。
さらに「増収に伴う売掛債権分の資金不足」「設備投資資金」つまり、積極的経営に対する資金需要のケースでは、『きっと金融機関は前向きに対応してくれるはず』と、企業側は勘違いをしてしまいます。金融機関の置かれている環境や視点を理解していない中小企業は、大きなリスクを背負うことになります。

銀行の視点
銀行の視点は、
①キャッシュフロー経営として期待している健全性を持っているか。
②健全性の改善方向に向かっているか。
③企業経営者が収益活動の中にきちんと財務改善を意図しているのか
ということに帰結します。

H20.9.18

生涯現役・・でも・・

60歳台後半の在職老齢年金
9月5日のコラムで、60歳台前半の在職老齢年金についてお話しましたが、60歳台後半の在職老齢年金はどのようになっているのでしょうか。まず、①総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+年間賞与額÷12 ②基本月額=老齢厚生年金の年金額÷12の前提条件があります。
対象は昭和12年4月2日以降生れの方です。
60歳台後半の支給停止の対象となるのは報酬比例部分だけとなりますので、定額部分から算出される老齢基礎年金と経過的加算は全額支給されます。(経過的加算とは64歳までの特別支給の老齢厚生年金の定額部分の額と65歳から支給される老齢基礎年金の額に差額がある場合はその差額が支給されるものです。)
支給停止額=(総報酬月額相当額+報酬
比例部分の年金月額-48万円)×1/2
簡単に言うと、老齢厚生年金月額+月給+年間賞与額の1/12が48万円以下なら支給停止はなしということになります。

70歳以上の方の在職老齢年金
70歳以上の在職者は、保険料は納めませんが、在職老齢年金の支給停止方法は60歳台後半と同様です。65歳から在職老齢年金を、受給している方が70歳になると65歳からかけた年金額が加算されます。

厚生年金基金に加入した期間がある場合
年金額は厚生年金基金に加入していなかっかたものとして計算します。その年金月額と総報酬月額相当額によって支給調整します。支給にあたっては基金加入部分が優先され社会保険部分から支給停止されます。

満額支給はいつ?
以上のことから、給料が高いと何歳になっても、在職中は支給停止にかかる可能性があるということが言えます。
ですから、在職者が年金を満額受給したい場合は、方策が必要となるでしょう。

H20.9.17

~銀行の格付けの実態~ なんで、それが粉飾になるの?

粉飾と誤解される可能性が・・
「とんでもない、仕入原価の値上がりを見込んで多めに在庫しているのです!粉飾でもデッドストックでもなく、今後の収益改善になります。」と説明したところ、銀行担当者は理解を示したかに思えた。 

不良資産って何?
しかし、銀行内部の現実は「適正水準額を超えた在庫」は不良資産とみなし、資本の減少として扱い、自己資本比率を算定します。そのことは、銀行の機密である格付け評価に反映されてしまいます。このように経営者が考える利益追求行動の範囲内であっても、正常な資産とされない測定があることを予定しなければなりません。

測定のいろいろ
在庫に限らず、適正水準を超えた売掛債権、動産、不動産などについても同様の傾向にあり、それは会計基準でもなく税法基準でもない格付け基準といえるものです。

適正水準って?
格付け基準は、各金融機関独自のものですし、その時々の実施方針によって変化するものです。しかし、その適正水準なる数値は、国や民間の統計数値の平均指標や独自データをベースにしているようです。格付けのために経営をするのはおかしな話のようですが、格付けが低く融資が受けられなくては経営継続が困難になってしまいます。そこで、増収活動と共に、滞留している在庫や売掛金の改善によって資金化を進め、あらぬ疑いをかけられることなく、格付けアップを図ることが大切となります。

H20.9.16

破綻しない継続企業って?

利益の中身・利益の質を良くする
国土交通省によると2008年1月の日本の地価は上昇傾向にあったが、半年後の7月時点では大きく値下がりし、首都圏では約30%も下がったとの発表が8月にありました。1980年後半のバブル崩壊の経験から、“それもあり”と理解できた人も多く居られるのではないでしょうか。しかし、不動産業界はその道のプロであるから、先刻織り込み済みで損するはずはないということはなく、それどころか金融機関までもが、最近まで建築関連融資に一生懸命でした。
「一過性の金儲け」から「未来づくり」の理念経営へ
いかなる業界・業種にかかわらず経営者にとって【バブルの影響による悲劇】を自社経営とは無縁の健全経営とするには【人づくり、未来づくり】が大切と金言にありますが、言うのは簡単です。しかし、ある一方で、今日の厳しい経営環境化では今の利益が優先されるため、なかなか未来思考が難題となります。金儲け(利益)が一過性か、そして“未来づくりとなる投資”なのか判断に迷いが生じた時、次の視点で考えて見てください。
①時代の風潮に乗らないこと
②粗利益率が高い事業は、短命である
継続企業には、筋肉質な社員
上記二つの視点からのチェックは効果的です。時流の事業や高粗利益事業は、社員や経営者自身さえも甘く育ててしまい、数年後の逆境には対応できなくなります。 しかし、反対に低い粗利益率であっても営業利益が確保できる企業体質作りは、筋肉質な社員が育ち企業の継続性を高めることになります。

H20.9.11

少額減価償却資産とは

会計上は、重要性の原則により本来1年以上にわたって使用する減価償却資産(固定資産)であっても取得価額が小額のものは、取得した事業年度の費用として処理することが出来ます。何を持って少額とするかは、企業規模やその資産の重要度で各企業の判断に委ねております。
法人税は詳細です
一方法人税法では、30万円未満の減価償却資産について細かく定めています。
①10万円未満の減価償却資産
少額減価償却資産として、取得し事業の用に供した事業年度の損金とすることができます。
② 20万円未満の減価償却資産
一括償却資産として、取得し事業の用に供した事業年度を含む3年間での損金経理を認めています。
③ 30万円未満の減価償却資産
中小企業者(資本金1億円以下の法人)の特例として年間300万円までについては取得し事業の用に供した事業年度の損金とすることができます。

ややこしいのはここからです
ややこしい原因は、上記①~③の要件が全てダブっている点です。
最も有利に摘用する場合は、
イ)まず10万円未満の減価償却資産は
①を摘用し
ロ)20万円以上30万円未満の減価償却
資産には③を摘用し
ハ)上記ロ)が年間300万円に満たない
場合には10万円以上20万円未満の減価償却資産に③を摘用し超える部分に②を摘用することとなります。
消費税はどうなるの
消費税は、消費税を税抜き処理をしている企業は、消費税抜きの価額で判断し、税込み処理をしている企業は、消費税込みの価額で判断します。ですから税込み処理の場合は消費税分だけ不利となります。

H20.9.10

経過勘定って何?パートⅡ

貸借対照表の基本
現在の企業会計原則の基となる複式簿記は、現金で車を買った場合に、増えた財産(車)と減った財産(現金)を左右に併記することにより、平衡を保ち財産を管理しようと言うものです。
しかし安く買った商品が高く売れたような場合、減った財産と増えた財産が平衡を破ることになり、考え出されたのが販売益や売上等の名目勘定(損益勘定)です。
この名目勘定に対し、実際に存在する財産を実在勘定(貸借勘定)といいます。
ですから、貸借対照表には本来実在する財産や負債が表示されることが原則です。
名目勘定の台頭
しかし信用経済が高度に発展し、期間損益(原則1年間)の重要性が増してきた為、期間損益(名目勘定)を正しく表示する為に考えられた相手勘定が経過勘定(貸借勘定)です。
経過勘定には「前払費用」・「未収収益」・「前受収益」・「未払費用」の4つがあります。
経過勘定の前提
ですから経過勘定で重要なことは、正しく期間損益を表示する為の相手勘定として、必要であるかどうかだと思われます。
未払費用
例えば3月決算の会社で、給料が20日締めの翌月5日払いの場合2月21日~3月20日までの給与は既に支払い義務の発生した確定債務ですから未払金となりますが、3月21日~3月31日までの給与は3月31日現在未だ確定した債務となっておりませんが、期間損益を正しく捉える為に必要と判断されれば未払費用として計上されます。
前払費用
逆に年間契約の家賃を3月末に翌1年分支払ったような場合、現金は減って費用がたちますが、役務の提供は翌年度になりますので、期間損益を正しく捉える為には、前払費用として認識されます。

H.20.9

経過勘定って何?

経過勘定には、次の4つがあります。
前払費用(資産勘定)・未収収益(資産勘定)未払費用(負債勘定)・前受収益(負債勘定)
いずれも、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行っている場合で、時間の経過に伴い費用や収益となる場合に使用する勘定科目です。例としては、利息・家賃・保険料等が代表的です。 
前払費用とは未だ提供されていない役務に対して支払われた対価を言います。
未収収益とは既に提供された役務に対して、未だその対価の支払を受けていないものを言います。
未払費用とは既に提供された役務に対して、未だその対価の支払をしていないものを言います
前受収益とは未だ提供していない役務に対して支払われた対価を言います。

何処が違うの・・・
似たような勘定科目に前払金・未収金・未払金・前受金がありますが、これらの勘定科目は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行っている場合以外に使用します。ですから資産の譲渡(物の売買)の場合等はこれらの勘定科目を使い、経過勘定は使いません。
具体的には、微妙です。
会社法の改正を受けて日本公認会計士協会や、日本税理士連合会が経理処理をまとめた「中小企業の会計に対する指針」では未払費用の事例に未払給与が載っていますが、前払費用の事例には載っていません。  
顧問契約に基づく顧問料や、雇用契約に基づく給与等も継続した役務の提供に該当しますが、「時間の経過に伴い」の解釈によって、経過勘定として取り扱うか否かの議論が分かれるところとなっております。

H20.9.8

減価償却は原則任意

固定資産と減価償却資産
固定資産とは長期(1年以上)に渡って利用又は運用する目的で所有されるものをいいます。有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に大別されます。固定資産の中で、利用運用することで価値が逓減する資産を減価償却資産と言います。

減価償却費の計上
減価償却資産はその減価した価値を計算して毎期減価償却費として、費用化しなければなりません。企業会計の指針である会社計算規則には、「償却すべき資産については、事業年度の末日において、相当の償却をしなければならない」として具体的な計算方法は、企業の判断に任されております。しかし毎期継続した規則的償却を要求しています。

減価償却費の計算は任意
法人税法では損金算入の償却限度額を定めそれ以下であれば企業の任意としています。
ですから減価償却は基本的に現実の使用頻度や、買い替え時期をにらみ毎期継続した規則的な方法であれば、企業の自主性に任せることを原則としております。
法人税法も原則任意ですから、減価償却を償却限度額まで償却しないで、後日税務調査等で、他の課税所得が出た場合に、償却限度額まで償却を認めてくれと言っても、それは認められません。
現実は法人税法の償却方法による。
また銀行等も法人税法の償却限度額まで償却しているかどうかは、企業の業績判断として重要視しております。
さらに企業が独自の方法で減価償却したとしても、法人の申告では、償却限度額を超えているか否かを、判断する為に償却限度額計算を行いますので、2度手間となり、多くの企業が、法人税法の規定に従って減価償却費を計上することが常態となっております。

H20.9.5

働きながら年金受給

在職老齢年金を受けるには
「高年齢雇用安定法」の改正もあり、60歳定年後に雇用延長、再雇用で働き続ける方も増えています。一方で、在職すると年金が減額や停止されるということは知られていますが、どの位調整されるのでしょうか。
まず、前提として在職老齢年金額を決める際に考えることは
①「総報酬月額相当額」=その月の標準報酬月額+年間賞与額÷12
②基本月額=老齢厚生年金(加給年金除)÷12
があります。
60歳台前半の在職老齢年金
前項の①と②の合計額が28万円以下であれば、老齢厚生年金は全額支給されます。
①と②の合計額が28万円を超えた場合は、次の4通りの計算式の支給停止があります。

ア.基本月額が28万円以下で総報酬月額相当額が48万円以下の場合
(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2
イ.基本月額が28万円以下で総報酬月額相当額が48万円を超える場合
(48万円+基本月額-28万円)×1/2+総報酬月額相当額-48万円
ウ.基本月額が28万円を超え総報酬月額相当額が48万円以下の場合
総報酬月額相当額×1/2
エ.基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が48万円を超えた場合
(48万円×1/2)+(総報酬月額相当額-48万円)

以上のように計算式はやや面倒な方法となっています。さらに解り難いのは総報酬制が導入されてからは、前年の賞与の額が翌年の年金受給額に影響するからなのです。しかし、簡単にわかる早見表もありますので、おおよその金額はそれで確認するとよいでしょう。

H20.9.4

派遣労働の流れ

現在、労働者派遣を行う企業の多くは、主に日雇い派遣を行っているのが実態です。この日雇い派遣が今後、原則禁止になる可能性が高まってきました。その背景には、派遣最大手のグットウィルやフルキャストの二重派遣や派遣禁止業務への派遣の問題等が主となっています。

一般?特定?派遣って何?
労働者派遣には、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業があり、現在、前者が問題とされています。
派遣社員には、登録型と常用型があります。登録型は登録スタッフとも呼ばれ、日雇い派遣など短期間雇用される者をいい、常用型は正社員をいいます。この「登録型」のうち、契約期間が1ヶ月以内の派遣を原則禁止する方針を固めたことが厚生労働省の報告案に記載されました。
この報告案によると「日雇い派遣は禁止することを検討すべき」と明記され、さらに日雇い派遣の定義として1日単位ではなく「30日以内の期間を定めて雇用される者」とするよう提言されています。また、同じグループ企業内に対して派遣する「グループ内派遣」についても、規制が強化される方向にあり、労働者派遣業自体が大幅に制限される可能性が高まってきました。
労働者派遣は、企業にとっては現在欠かせないものとなっている反面、社会保険の未加入や賃金の低さなど雇用の不安定の温床ともいわれ、社会問題となっているのも現実です。

どうすればいいの?
中小企業にとっては、有料職業紹介を主に行うことや登録スタッフから正社員へ切り替えなど、企業存続に直結する問題です。それゆえ、今回の報告案を経営戦略と合わせて早めに検討されることをお奨めします。

H.20.9.3

棚卸資産は取得価額も要注意

棚卸資産は取得価額も注意して
税務調査では、まず棚卸資産の計上漏れがないか、調査されます。それと同時に注意しなければいけないことに棚卸資産の取得価額があります。
棚卸資産といっても製品・仕掛品のように「自社で製造されたもの」と、商品・材料のように「購入したもの」とがあります。

購入した場合には
購入先に支払った代金の他に引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税(附帯税を除く)等の購入のために要した費用を加算したものを取得価額としなければなりません。
また、販売するまでの間にかかる購入事務・検収・整理・選別・手入れ等の費用や、販売所への移動運賃等や、長期に渡って保管する場合には、その保管費用も少額(購入対価の概ね3%以内)のもの以外は取得価額に算入しなければなりません。

輸入の場合は要注意
国内で購入している場合は、こう言った費用はあまり出ませんが、輸入しているような場合は、必ず出ますのでご留意ください。
しかし現実の事務処理として、こう言った全てのものを計算して棚卸資産の単価を計算することは大変です。

「仕入諸掛」勘定を作ろう
引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税(附帯税を除く)等の購入のために要した費用や、購入事務・検収・整理・選別・手入れ等の費用・販売所への移動運賃等や、長期に渡って保管する場合の保管費用などがある場合は、これらの費用を様々な科目に振り分けないで、一括して「仕入諸掛」といった科目で管理し、期末に以下の算式を使い一括で振り替える方法を、お勧めします。仕入諸掛の合計金額×期末棚卸高÷期中仕入総額=期末棚卸に加算すべき仕入諸掛

H.20.9.2

棚卸資産は調査の要

棚卸資産とは
販売することを目的として保有される財貨、用役又は投下される財貨、用役を棚卸資産といいます。ですから、販売目的かどうかが問題で、同じ不動産でも、販売目的であれば棚卸資産ですし、そうでなければ、固定資産ということになります。

法人税法上の棚卸資産は
上記の棚卸資産から、有価証券と短期売買商品を除いています。
「短期売買商品」とは、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産です。金、銀、白金等の資産をいいます。
法人税法上何故、有価証券と短期売買商品を棚卸資産から除いているかと言えば、有価証券と短期売買商品は別個に評価方法を規定しているからです。

商売によって棚卸資産は色々あります
経理の勘定科目で棚卸資産と言われるもので主なものは、「商品・製品」「半製品・仕掛品」「原材料」「貯蔵品」「未成工事支出金・仕掛工事」等です。

期末棚卸資産は税務調査の基本です
なぜなら、売上原価は次の計算によって算出されますので、期末棚卸資産が増えるとその分売上原価が減り利益が増えます。

期首棚卸資産+当期仕入又は製造費用
-期末棚卸資産=売上原価

期末近くに仕入れた商品や材料や外注費が期末棚卸資産に計上されているか?
また、期首に売上となった物の原価が、前期末の棚卸資産に計上されているか?
特に最終期の期末と進行期の期首の、この一連の流れの確認は、税務調査で必ず最初に行われます。

H.20.9.1

有価証券の期末価額と留意点

有価証券とは
小切手や手形等も有価証券ですが、ここでは国債・社債・株券等の有価証券についてお話します。
有価証券の評価は複雑
有価証券は会社法の改正や金融取引の国際化に伴い、非常に複雑でややこしいことになりました。保有有価証券の一部売却や追加取得などの場合の価額評価等、実際の取引や評価に当たっては、必ずご相談ください。ここでは大枠について触れたいと思います。

評価における会計と税務
有価証券の決算期末評価額は、会計上は時価評価が基本です。
それに対して法人税法は時価評価を原則としておりません。
売買目的か否かでその評価方法が違います。売買目的の有価証券は、決算日の時価で評価し、取得価額との差額は評価損益として損金又は益金への算入が認められます。  
しかしその他の有価証券は、取得価額が基本です。時価評価をしたとしても法人税法上は損金や益金への算入が認められませんから、決算書の利益を元に戻す税務調整して申告しなければなりません。

売買目的有価証券とは
① 短期売買目的で取引を行うことに、専ら従事する者が短期売買目的で取引した有価証券
② 取得の日に「売買目的有価証券」と言う勘定科目により区分された有価証券
③ 短期売買目的の有価証券を取得する金銭信託財産に属する有価証券
上記の条件のいずれかに該当するものが、売買目的有価証券です。

持株会は要注意
取引先やそれ以外でも毎月1万円とか
2万円を積立てて、株式を取得する持株会という形で有価証券を取得している場合(評価は当然取得価額です)は、株式配当金があっても、実際には入金されずに、持株会の株式購入に当てられます。配当があったとの通知しかきませんので、知らず知らずの間に取得価額が増えていることがありますから注意が必要です。