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H21.5.29
本当に大丈夫?

米銀行の四半期決算

 このところ金融市場が一時期よりはやや落ち着きを取り戻し、アメリカの各種経済指標や米企業の決算内容が下げ止まりつつあることから、株式市場も低空飛行ながら株価が安定するようになってきました。また、米金融大手6社の1-3月期決算が出揃い6社のうち5社が黒字となりました。シティグループでは6・四半期ぶりに黒字になったと報道しています。実際に本業が儲かるようになったのでしょうか。今回の決算の内容は疑ってかかる必要がありそうです。それは、特殊な会計処理が施されているからです。ポイントは負債評価益の計上です。

利益のかさ上げ

 負債評価益とは、社債など企業の負債の時価が下落した場合に、企業から債権者への支払い義務も同時に減少したとみなしてその分を利益に計上するものです。米会計基準ではこの処理を認めていますが、これはいってみれば見せかけの利益なのです。その見せかけの利益が膨大で、シティグループにいたっては純利益が16億ドルに対して負債評価益が27億ドルとなっており、実質は11億ドルの赤字となっております。
このような利益のかさ上げまでして決算数字をよく見せようとすることは、米金融機関の実態は債務超過に陥っている可能性があるかと思われます。

ノーベル経済学賞教授の謝罪

 金融機関の不良債権処理の難しさに関して興味深いコメントがありました。2008年のノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授は、日本の不良債権処理に関して日本批判の急先鋒でしたが、以下のようなコメントをしています。「私たちは、日本に謝らなければならない。日本は対応が遅く、根本的な解決を避けていると、西欧の識者は批判してきた。だが、似たような境遇に直面すると、私たちも同じ政策をとっている。3月で8・5%と上昇する米失業率を見ると、失われた10年を経験した日本より悪化している」といっています。





H21.5.28

「貯蓄から起業へ」の転換

「貯蓄から投資へ」の誘導策

 預貯金利子の税金、非上場株の売却益や配当の税金は20%で、上場株式の売却益や配当の税金は10%です。その他、銀行への証券仲介業解禁、株式投資に関し3年間の損失の繰り越しを含む損益通算税制の導入、申告不要特定口座制度の創設、株式譲渡損失と配当所得の損益通算特例の創設など、これらが、「貯蓄から投資へ」の誘導税制です。

「貯蓄から投資へ」の認知度

しかし、内閣府広報室の世論調査によると、「貯蓄から投資へ」という言葉の内容を理解している人は18.3%しかおらず、聞いたことがあるだけ32.3%、聞いたこともない49.3%という実態であることが報告されています。「貯蓄から投資へ」という国の方針の認知度は極めて低いようです。

なぜ「貯蓄から投資へ」なのか

 金融取引の機能の基本は資金の余剰部門から不足部門への移転です。そして間接金融主体の日本では余剰資金は金融機関に集中し、事業資金の貸付のみならず証券市場へも広く投資されますが、機関投資家中心の市場は乱高下の激しいリスク煽動型になり易く、金融危機を誘発しかねません。
それで、金融取引のリスクを金融機関に集中させるのではなく、家計部門を含め広く社会に分散させ、そうすることで、結果的には景気循環や金融システムに起因する景気の振幅を小さくさせたいわけです。

「貯蓄から投資へ」の欺瞞

 しかし、企業に対するリスクマネーの供給は必要なことですが、そのリスクを家計に直接負わせるのは避けるべきです。
普通の家計がリスク資産に対処するには適切な知識を持っていることが前提となりますが、日本の家計資産の大部分は定期預金ですから、その知識は期待できません。

「貯蓄して起業しよう」への転換

 世界経済危機の中で、消費者利益を損なう円安誘導政策、円安に依拠した輸出立国政策、米国債・ドル資産の蓄積という経済循環政策が崩壊の危機に瀕しています。
 内需中心、雇用創出、新しい事業・産業創出型へ社会構造の大転換が期待されています。自立して頑張る個人事業者や零細法人がどんどん生まれ、雇用の場が創出される起業促進型社会へこそ誘導すべきものではないでしょうか。「貯蓄から起業へ」です。





H21.5.27
出産、10月以降は一時金増額

少子化対策、出産育児一時金引上げ
 子育て応援手当の制度が実施されている事は既に紹介しましたが、政府は経済対策として出産一時金の引上げと追加の増額を打出しています。
 平成21年1月から一時金の支給金額は、1児につき35万円だったものが38万円となっています。但、この3万円の加算を受給するためには条件があります。

その条件は
@分娩した医療機関が産科医療補償制度に加入している事
A在胎週数(妊娠週数)22週以降の分娩、又は死産であること

産科医療補償制度に加入の医療機関とは?
 お産に伴って発症した重度脳性マヒの子とその親の経済的補償を提供する制度で、医療機関が掛金を支払う制度です。その掛金の支払いの為、出産費用にはね返り、費用が上がる場合もあるので、出産する者の負担を軽減するよう3万円の増額が行われたものです。この、増額された出産一時金の請求をする際には、医療機関等へ支払った出産費用の領収証に「制度対象分娩であることを証明する」スタンプを受け、一時金の請求用紙に添付しましょう。普通は健保加入者が出産費用を病院に支払い、請求後に各保険制度から保険加入者に支払われていますが、事前申請用の一時金請求用紙を提出すれば、各保険制度から直接医療機関に一時金が支払われます。出産費用が一時金の額を超えていた時は差額だけ払えばよいので、一度に大きな額を負担することはなくなります。
 今後の一時金の改正予定は、10月には42万円に引き上げられる事が決まっています。10月以降に出産される方は、さらに4万円増額されることになります。但、緊急少子化対策という名目で、平成23年3月迄の暫定措置とされています。







H21.5.26
遅れに遅れて


給与から控除される税金や保険料
 月々の給与から税金や保険料など種々のものが差し引かれています。
給与と税金ですぐに連想されるのが源泉所得税ですが、月々の給与が上がれば税額も増え、下がれば税額も減ります。累進税率ゆえに増減割合は違いますが、感覚的にもなじみます。

給与が変動してもすぐに変わらない社会保険料
給与から控除される保険料には、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)と労働保険料(雇用保険)があります。このうち労働保険料は源泉所得税と同じく月々の給与に連動します。
ところが、社会保険料は給与の3か月間の平均額がそれまでの給与の等級と2等級以上変動した場合に、月額変更届を提出し、その後に保険料が変わることになります。
したがって昇給や減給が保険料に反映するのは4か月や5か月後になります。

こんなの不合理、住民税
給与から控除される住民税は、前年分の所得に対する税額が12等分され、今年の6月から来年の5月にわたって差し引かれます。今年の1月に給与が半減したとしても、5月までは前々年の所得に対する税額であり、その後来年の5月までは前年の所得に対する税額が差し引かれます。半減した今年の給与は来年の6月以後にならないと反映されません。
給与が上がって控除される税金や保険料が増えるのは負担感があまりないといえますが、給与の下落時に税金や保険料が高止まりするのは、感覚的になじめないどころか酷ともいえます。
源泉所得税、住民税、それと社会保険料みな「所得」を基にして税額や保険料を算出しているのに、その「所得」の中味は異にしています。「所得」申告の事務負担を国民に負わせながら、なおかつその結果の不合理さも国民に負わせる旧態依然とした制度を見直すべきなのではないでしょうか。






H21.5.25
個人事業も開業は大変!

個人事業は、簡単に始められそうですが、個人事業者の場合であっても、税務署へは様々な届け出が必要となります。開業届や青色申告の承認申請、専従者のいる場合には青色事業専従者に関する届出など、片手ではおさまらないほどの書類を作成しなければなりません。

原則的な効力発生は

 新規に開業した場合、大抵の書類は開業後しばらくの間に提出すればいいことになっています。例えば青色申告の承認申請は開業後2ケ月以内に提出すれば、開業の年から青色申告者として確定申告をすることになります。つまり開業後しばらくの間にこれらの書類を提出すれば、開業時点から各規定が適用されることとなります。

例外的な規定

その1 源泉徴収の納期の特例
 従業員に給与を支払うような場合には所得税を源泉徴収し、その翌月10日までに国に納付することとなっていますが、給与の支払を受ける者が常時10人未満である事業所等については申請書を提出した場合には特例としてその納付を1月(7〜12月分)と7月(1〜6月分)の年2回とすることができます。(これを源泉徴収の納期の特例と言います。)
ですから4月1日に開業して開業と同時にその申請書を提出したような場合には4月分から6月分の給与に係る源泉税をまとめて7月に納付すればよいと考えがちです。
 ですがこの申請書は一般的に提出月の翌月末日に承認がされるものとなっておりますから4月1日に提出した場合、特例の効力発生は5月31日となり、1回目の納付日である5月10日は特例の適用が受けられず、4月分の源泉税を納付しなくてはなりません。

その2 消費税課税事業者選択届
この届出は、開業した年の12月31日までに出せば良いこととなっております。開業時は何かと物入りで、尚且つ売上も見込めない場合、この届出を出せば消費税の還付が可能となります。しかし慌てて出して、結果納付となってしまわぬよう、じっくり見極めてから出すようにしましょう。




H21.5.22
発足1年長寿医療制度

低所得層の負担軽減

 「長寿医療制度」は75歳以上を加入者として一年前に発足しましたが、高齢者を軽視しているとの批判も続出したようです。当初は「後期高齢者医療制度」という名称で、この名も不評の一因ではありました。今では名称は両者並列的な扱いで表示されることが多くなりましたが、それ以外にも制度に不満を持つ人は今もいるようです。批判もふまえ、今年度よりいくつかの点が改正されたので見てみます。

@保険料の納め方は、年金からの天引きか口座振替かを選択することができるようになりました。配偶者や同居する子供の口座からでも振替利用できます。口座振替の場合の社会保険料控除は、口座の名義人に適用されます。ですから、口座振替に変更する場合は、誰の口座から振替するのか考えて行うことが必要でしょう。

A保険料に新たに9割減額制度創設。保険料は、全員一律に掛かる「均等割」と所得に応じて決まる「所得割」から成立っています。均等割額は、軽減割合が7割、5割、2割であったものが、7割軽減を受ける世帯のうち、長寿医療制度の被保険者全員が80万円以下の(例えば、夫婦共国民年金しか収入が無い等)低所得者世帯は9割軽減されます。又、所得割部分でも行われていた軽減措置は、21年度も継続されます。

B健康保険の被扶養家族だった方の保険料特例、制度開始前、政管や健康保険組合の健康保険の被扶養者で、保険料を払っていなかった方は、制度開始当初から2年間は、所得割額は無料となっています。均等割額の負担率は20年10月から負担無から1割負担にはなりましたが、21年度から5割負担になる予定のところ、今年度も1割負担のままということになっています。
 このように、保険料負担が軽減されることは良いことに違いありませんが、総選挙を意識した対策でもあるといえるかもしれません。




H21.5.21
やる気の中小企業に朗報!!

「愛媛県の従業員26名のタオルメーカー・株式会社オリムは、問屋主導の受身型生産体制であったが、シェアが東南アジアにとって代わられる状況下で、約13年前から素材や使用感にこだわった自社開発のオリジナル商品・ボディータオル・マフラー・帽子などを生産・販売、3年前に自社開発商品の売上が50%を超えたところで全社員が自社商品に誇りと責任が持てるようになった。」と言う事例が中小企業庁の経営革新事例集に紹介されています。
 この会社は政府の施策による「経営革新計画」の承認を平成15年に取得し、政府の支援を受けています。

「経営革新計画」とは
 「経営革新計画」は所定の計画を立てて、都道府県の承認を得ると、「やる気がある中小企業」として認められ、政府系金融機関による低利融資、税制措置(設備投資減税)
中小企業信用保険法の特例(別枠保証)などの支援策が受けられる制度です。また、東京都の調査によると、新製品開発計画の立て方が分かった、新商品の開発ができた、知名度・信用度が向上した、宣伝・営業がし易くなった、社内の意識づけができた、中長期計画の立案が可能になった、計画の実行性が増した、などの経営メリットがあ
るものです。
 この制度は平成11年施行の経営革新支援法、平成17年改正施行の中小企業新事業活動促進法に基づく施策で、10年前からの累計承認件数が全国で約3万件と、全国の中小企業(個人事業所を含む)420万社のわずか0.7%に過ぎず、あまり良く知られていません。

運転資金借入れのあとにくるものは
昨年からの大不況下で今、殆んどの業種が不況業種と認定され、特別な保証枠で運転資金を借りられますから、これを利用して多くの中小企業が生き残りを図っています。しかし、その次には、利益体質を確保した上で返済しなければなりません。
 つまり、真の生き残りは、経営力を高め、利益体質を確保する以外に道はないのです。

真の「経営革新」に取り組もう
大不況からの経済回復期を睨んで真の経営革新に取り組むべき時がやってきました。
「経営革新計画」の承認申請については、都道府県の相談窓口や全国の商工会議所等で相談に乗ってくれます。




H21.5.20
せこくてズルイ繰戻税制



今年の税制改正項目の一つに中小企業の欠損金の繰戻還付の復活があります。この適用には、繰戻還付の請求をすると必ず税務調査があると言われていることや、繰越控除との有利不利の検討が必要です。

還付請求ができる金額

前期法人税額 × 当期欠損金額 / 前期所得金額

この算式で繰戻還付税額は計算されます。
前期の課税所得が800万円で法人税額が176万円だったとして、当期に欠損金が400万円生じたとしますと、還付請求できる法人税額は、次のように計算されます。
176万円×400万円÷800万円=88万円
結果、88万円の法人税額が還付請求できます。

800万円超だったら
 前期の課税所得が1000万円だったとすると、税額は次のようになります。

800万円×22%=176万円
200万円×30%= 60万円
         計 236万円

 当期に欠損金が400万円生じたとすると、還付請求できる法人税額は、次のように計算されます。
 236万円×400万円÷1000万円=94.4万円
 課税所得が800万円の時に比べ、税額が60万円も増えていたのに、繰戻還付額は6.4万円しか増えません。
前期の課税所得が(1000万円−400万円)で600万円だったとすると、前期の本来の税額は、(600万円×22%=132万円)
だったはずであり、(236万円−132万円)ということで、差引き104万円戻ってもよいはずです。9.6万円も過少還付です。

累進税率なのに平均法
 前期と当期を通算して、前期の黒字の税額を還付してくれる、という制度を作りながら、計算してみると、還付額が少なくなります。累進税率で課税しながら、還付の段になると平均法にしているからです。
所得税にも同じ制度がありますが、こちらは平均法を採らず、欠損額控除後で所得税の再計算をするので、過少還付は生じません。なぜか、複数税率の適用を受ける中小法人に対してだけこんなせこくてズルイ扱いをしています。不公平不公正税制です。





H21.5.19
税制改正法律原案

今年の税制改正経過
「所得税法等の一部を改正する法律案」は、衆議院本会議では平成21年 2月27日に可決され、参議院では平成21年 3月27日に否決され、衆議院の優越権のもと、同日に法律は成立し、平成21年 3月31日公布されました。経過と法律案は衆議院のホームページで確認できます。

税制改正法案はこんな形
この法律案は、所得税ほか国税に関するいくつもの税法の改正部分を一括記載するとともに、各税法毎に1条文内に収め、「改め文」という形式で表現されています。
所得税法関係改正は第1条に、法人税法関係改正は第2条にという具合で、本則全7条で、その後に各改正部分の施行期日を記載する附則があり、これは全104条です。全分量は、1行50文字にして8500行近くあります。
「改め文」とは、「第○条中『△△』を『□□』に改める」、「第○条中『△△』の下に『□□』を加える」、「第○条中『□□』を削る」といったように、改め、加え、削る箇所のみを改正法中に示すもので、読んで書かれている意味がすぐわかるはずのないものになっており、元の法律の該当個所と見比べることが前提になっています。

国民が実際に見る形は
実用に供される法律書として市販されたり、ネット上にて公開されたりしているものにおいては、法案が法律になったあと、改正対象となった元の各税法の各条文は「改め文」の内容に従って書き換えられ、通常の法律文として読みやすいものにされて、提供されています。

地方税法改正の場合は
税制改正は基本的に2本立てで、もう1本は、「地方税法等の一部を改正する法律案」として提出されます。
この法律案も、表現形式は国税の場合と同じですが、地方税は、国税の場合と異なり、20以上の地方税関係税目が地方税法という一つの法律に収録されていますので、地方税改正法案の大部分は地方税法を改正する第1条で占められています。
それでも、1行50文字にして4000行近くあります。





H21.5.18
2010年代半ばの税制
 
税制改正法附則に書かれているもの

「所得税法等の一部を改正する法律案」は3月31日に公布されました。この法律は、本則と附則に分かれており、今年の、この附則の最後の条文は個別税法の改正項目ではなく、2010年代税制改正プログラムというもので、異例な内容になっております。
昨年暮れ、将来の抜本的税制改革の一環として消費税の見直しをすることが閣議決定されたことを承けたものです。

2010年代税制改正の内容

 それをみると、2010年代半ばの税制は次のようになるようです。
●個人所得税については、最高税率をアップし、給与所得控除の上限制限をし、高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除の採用等で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を図る。
●消費税については、税率をアップするとともに、低所得者への配慮として複数税率にする。
●資産税については、相続税の課税ベースを広げ納税者を増やす方向で検討する。
●法人税については、実効税率の引下げをするが、税収減にならないように課税ベースを拡大する。

民主党に政権交代したら

 昨年12月24日公表された民主党の「税制抜本改革アクションプログラム」が実現するとなると、次のようになります。
●個人所得税の最高税率引上げはしない。所得再分配機能の強化のために、所得控除を廃止し「給付付き税額控除」に切り替え、低所得者への生活支援を行う。給与所得控除には一定の上限額を設ける。
●消費税の「複数税率」は「消費税の物品税化」になり、課税ベースの侵食を招き、消費税の水平的な公平性を損なう。最低限の生活にかかる消費税については実質的に免除する「給付付き消費税額控除」を導入する。
●相続税については、米国と同じ「遺産課税方式」へ転換すべきである。相続人が資産等を得た時点で課税するのではなく、遺産そのものに課税することが適切である。
●法人税については、租税特別措置の抜本的な見直しをして課税ベースを拡大しつつ、法人税率を見直し、研究開発の促進などは時限措置から恒久措置へと転換していく。




H21.5.15
勤労税額控除の提案

同じ所得控除でも

 所得控除等の課税所得を減ずる制度は累進課税の下では、同じ減額幅でも、高所得者ほど税額の減額効果が大きくなり、そういう恩恵の効果は高所得者ほど有利になっています。
垂直的公平観からすると、不公平ということになります。

高所得者ほど控除も大きい

給与所得控除の場合は、課税所得の圧縮が定額ではなく、所得比例的に大きくなるので、高収入者に一層有利に作用します。
所得額を操作するような税制度は、その制度の趣旨に反して、高所得者優遇の結果になるので、所得の多寡に関連させないような単純公平な制度にするには、税額控除がその要求に最も沿うものと言えます。特に、「給付つき税額控除」ならば、年税額が控除額より小さくても、控除不足額は給付されるので、制度趣旨が損なわれることがありません。

給付つき勤労税額控除の提案

 「給付つき税額控除」については、最近3/19の日経新聞の「大機小機」欄に目新しい提案がありました。
正規雇用者のワークシェアリングも視野に入れた本格的な雇用政策として、勤労税額控除を導入すべきとしています。所得税・住民税から控除し切れなかったら、控除不足分は給付されるというものです。
 具体的には、100万円超300万円までの給与収入に対し15%の税額控除を認めるというもので、100万円程度の収入で満足しないで300万円ぐらいまでは頑張って働こうとの気持ちにさせる、勤労へのインセンティブ効果を期待するものです。

給与所得控除の原則廃止

 100万円超の給与への税額控除ということになれば、65万円を超える部分の給与所得控除とは制度重複になりますから、給与所得控除は65万円の定額制に置き換わるべき、ということになります。
こうなると、高収入者の受けていた恩恵が低所得者に流れるので、所得再配分機能が制度に組み込まれ、垂直的公平の実現に功を奏することになるとともに、制度改正実現の財源捻出もできてしまいます。




H21.5.14
法人税欠損金の繰戻還付

平成21年2月1日以後終了事業年度から、中小法人等について「法人税の欠損金の繰戻還付制度」が全面的に復活したことは、以前、当コラムにおいて紹介した通りです。
今回は、もう少し詳しく内容を見ていきたいと思います。

欠損金の繰戻還付とは
青色申告書を提出する中小法人等で、前事業年度が「黒字」で法人税を納めた法人が、今事業年度は「赤字」となり欠損金が生じた場合、この欠損金を前期の黒字と相殺し、前期に納付した法人税のうち、納めすぎとなった部分の金額を還付請求できるという制度です。
計算式は次のようになります。
繰戻還付金額=前事業年度の法人税額×欠損事業年度の欠損金額/前事業年度の所得金額

適用要件は
還付を受けるようとする事業年度から欠損金が生じた事業年度まで連続して青色申告書を提出し、欠損事業年度の青色申告書は期限内に提出しなければなりません。

請求書の提出が必要
欠損金の繰戻還付を受ける場合には、「欠損金の繰戻しによる還付請求書」に必要事項を記載して、欠損事業年度の確定申告書と同時に所轄税務署長に提出する必要があります。法人税の申告書を提出しただけでは、還付は受けられません。

地方税には制度なし
地方税には、欠損金の繰戻還付制度はありません。欠損金の繰越控除のみです。したがって、この制度の適用を受けた場合、翌期以降、法人税は納税になっても、法人住民税の法人税割と法人事業税は納税なしとなる場合があります。

税務調査が必須?
還付請求書が提出された場合、税務署長は税務調査を実施することとされています。
通常の法人税調査よりも簡易な調査になると言われていますが、中小企業経営者の心理的圧迫感は相当なものです。
くれぐれも、中小企業いじめにならないよう、すんなり還付してほしいものです。




H21.5.13
不利益不遡及の原則3月決算と応用問題


不利益不遡及の税法原則への抵触3法
 税法の遡及適用は可なれど、課税免除や緩和や繰延といった納税者有利規定に限られ、税負担が過重になる不利益規定に関しては立法無効とされます。昨年のネジレ国会で予算関連税法は3月中に成立せず、4月末日に成立し、日切れ失効期間の4月初日に遡及されることになりました。しかし、不利益規定であるため、不遡及原則に抵触することとなる規定が3つありました。

使途秘匿金への40%追加課税
 その1つが使途秘匿金課税規定で、日切れ失効期間内に支出した使途秘匿金について課税するとの規定は無効なので、法律公布と同時にその無効を確認する政令も公布されました。

欠損金の繰戻還付中止規定
 2つ目が、欠損金の前年への繰戻しによる税金の還付規定が法律にあるのに、それの中止規定を別途作っていたものが日切れ失効になったというものです。4月30日公布の新法では4月初日に遡及して繰戻還付を中止するとなっていますが、不利益規定ですから公布前期間への遡及部分は無効です。これについても、同時公布の政令に、この失効期間内に決算日を迎えて確定した欠損金については繰戻還付請求可との確認規定が置かれました。

交際費の損金不算入の日切れ規定
 問題は3つ目の交際費の規定です。日切れ失効期間に開始した事業年度の決算日がこの3月末日です。交際費に関しての確認規定は政令にありません。法律の解釈はどうあるべきか悩むところです。いくつかの解釈例が考えられます。
@ 新法公布前の日切れ期間に支出した交際費は損金不算入規定の対象外になる。
A 新法公布前の日切れ期間に開始したこの3月決算期間の交際費の全額は損金不算入規定の対象外である。
B 交際費の額の確定する3月末日時点での適用法律で判定するので全1年間の支出交際費が交際費課税の対象となる。

裁判で争うことになるのかも
 課税当局は説得力のある解説のもとに見解を示そうとしていませんが上記のBの立場のようです。しかし、公布が1年近く遅れたとしても、遡及適用可かと問えばBはおおいに疑問になるところで、最終決着は司法の判断と言うことかもしれません。




H21.5.12
試用期間と本採用拒否


昨年来の不況の影響を受け、業績の悪化した企業による新卒者の内定取消しが問題とされ、企業名も公表されています。
内定取消しをしなかった企業でも、試用期間の満了による本採用拒否を検討せざるを得ない企業があるかもしれません。

試用期間とは
従業員を採用するに当たり、履歴書や面接等だけでは、その資質や適格性について十分に判断できないため、後日の調査や観察による最終決定を留保する趣旨で設けられているものです。判例によると、試用期間とは解約権留保付雇用契約とされ、当初から期間の定めのない通常の雇用契約が締結されているが、試用期間中は使用者に労働者の不適格を理由とする解約権が留保されている、とされています。

本採用を拒否できる場合とは?
採用決定後における調査や試用中の勤務状態により、当初知ることができず、また知ることが期待できなかったような事実を知ったことにより、その者を引き続き雇用するのが適当でないと判断する客観的に合理的な理由が存在し、それが社会通念上相当であると認められる場合です。例えば、重大な経歴詐称、出勤率不良、無断欠勤が多い、勤務態度が悪く、上司から指導を受けても改善されない、協調性を欠き従業員としての適格性を欠く等が拒否できる正当な事由とされています。なお、企業は従業員に対し教育・研修を行う立場にあるため、まずは注意・指導する必要があります。

業績悪化を理由に本採用を拒否できる?
急激な業績悪化を理由に本採用を拒否できるかどうかは、正社員の場合と同様に「整理解雇の法理」に照らして判断されます。
@人員削減の必要性、A解雇回避義務、B解雇基準・選定の合理性、C手続きの妥当性、が整理解雇の四要件です。
解雇する場合は30日前に予告するか解雇予告手当を支給することになりますが、試用期間開始後14日以内に解雇した場合は、支払う必要はありません。
法律は会社を守ってくれません。会社を守り、最終的に従業員を守るのは社長です。事前に法律を知り、先手を打つことでトラブルを回避できることもあるのです。 






H21.5.11
5月末までに移行しないと


特別口座からは売却不可

 株券の電子化に伴い信託銀行等に「特別口座」が開設されました。これはタンス株券や単元未満株などを所有する人に開設される口座です。特別口座でも株主の権利は守られますが、特別口座内に保有される株式を売却する場合には証券会社等の口座への振替が必要になります。

3種類の口座

 上場株式を預け入れる証券会社等の口座は、@取得価額管理機能、A譲渡損益計算機能、B納税代行機能のどれを担っているかの相違により、3種類あると言えます。
@ABの全部を具備しているので、損益の計算をして納税も代行してくれるのが「源泉徴収ありの特定口座」で、申告をしなくても原則として納税額に影響ないので申告を省略できる特典が付いています。
@Aを具備しているので、損益計算だけしてくれて、申告納税は投資家本人がするのが「源泉徴収なしの特定口座」です。
@だけを具備しているので、投資家が自分で損益を計算して申告納税をするのが「一般口座」です。

本年5月末という期間制限

 特定口座の開設や特定口座での上場株式の取得には期限制限がありませんが、一般口座で保有されている上場株式、公募株式投資信託、特別口座で保有される株式、タンス株券などの特定口座への預け入れは、平成21年5月末までに行う必要があります。
 平成16 年末で終了した、いわゆるタンス株の特定口座への預け入れが、みなし取得費の廃止と実際取得費でとの限定のもと、平成17年4 月1 日から再開され、平成21年5 月31 日まで可能とされていたことによるものです。

「源泉徴収あり特定口座」の有利性

 今年から上場株式の配当や株式投信の分配金などを、上場株式や株式投信などの譲渡損失と確定申告の手続の上で通算できるようになっています。
 さらに来年からは配当や分配金を源泉徴収ありの特定口座で受け入れて、口座内で生じた譲渡損失と自動的に通算できるようになります。
当面売却の予定がなくても、なるべく早く源泉徴収ありの特定口座の開設を検討した方がよさそうです。





H21.5.8
エコカー減税


即効性ある減税策

 政策減税の目玉の一つの住宅ローン減税の目玉部分が後ろ倒しなのに比し、自動車をめぐる政策減税の目玉部分は1回限りの減税なので、前倒しそのもので、即効性がありそうです。

自動車税制の減税策の趣旨

最近の厳しい経済状況の中で自動車の販売台数が急速に落ち込んでおり、景気対策の観点から、自動車の購入や買換えを促すような施策であるとともに、排出ガス及び燃費性能に優れた環境にやさしい自動車の普及と技術開発促進を促すことにより環境技術立国も視野に入れているものです。

減税策の概要
景気対策と環境対策とを両立させるものとして、本年4月1日より3年間、(1)国税である自動車重量税についてはこの3年間のうちに初めて受ける車検時に、(2)都道府県税である自動車取得税については新車取得時に、それぞれ環境性能に優れた自動車に対して税の減免をします。乗用車について大雑把にいうと、次世代自動車は免税、排気ガスがきれいでガソリン消費量が少ない(=二酸化炭素排出量が少ない)乗用車は75%又は50%の税額軽減が行われます。

クルマ選びの参考に

 車両価格200万円、車体重量1.3トンの環境性能に優良な新車の購入の場合を例にとって試算してみます。
(1)電気自動車、一定条件を満たすハイブリッド自動車・天然ガス自動車、クリーンディーゼル車等(いわゆる次世代自動車) ⇒ 本来の税額をすべて免除
納税額は0円で、一般の自動車に比べ14万6700円の減税となります。
(2)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆認定車)、平成22年度燃費基準を25%超過達成している乗用車 ⇒ 本来の税額の75%を軽減
納税額は3万6600円で、一般の自動車に比べ11万100円の減税となります。
(3)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆認定車)、平成22年度燃費基準を15%超過達成している乗用車 ⇒ 本来の税額の50%を軽減
納税額は7万3300円で、一般の自動車に比べ7万3400円の減税となります。




H21.5.7
ローン控除の恩恵効果


昨20年の3倍以上
 本年平成21年度税制改正の目玉の中心は住宅ローン減税と言われています。平成21、22年に取得住宅に入居する場合、10年間に一般住宅で最大500万円の税額を所得税・住民税から差し引くことができます。平成20年に住宅取得した人の減税の最大控除可能額が160万円だったことと比べると大盤振る舞い振りがわかります。

有り難味は後で感じてね
 ところで、この大盤振る舞いの減税効果ですが、夫婦二人でそれぞれ2000万円づつの住宅ローンを20年返済金利3%で組んだ場合、年初取得年内入居だったら、当初6年間の減税額計は、平成20年取得入居と21年取得入居共に207万円で変わりありません。最後の4年間分の計には差があり、平成20年での取得入居では52万円、21年では103万円です。
即効性を期待する政策減税としては、効果は資金的にひっ迫する取得時に前倒しして発現するようにすべきで、このようにダラダラと後ろ倒しにしたのでは、有難味が実感しにくくなってしまいます。

住民税の住宅ローン控除の復活
所得税から控除しきれなかった分について翌年分の個人住民税から控除(上限9.75万円)する制度は、平成18年以前居住開始者についてのみ適用できるもので、平成19年以後居住開始者には適用拒絶となっていましたが、平成21年以後居住開始者に再び適用可能となりました。制度改正の経過からすれば当然(19、20年居住開始者のみ気の毒)とはいえ前倒し効果のある朗報です。

大盤振る舞いの恩恵を受けられる人
 ところで、10年間合計の減税額が最大控除額の500万円に達するケースは、当初の借入金を20年ローンで8800万円、25年ローンで7300万円もしている場合です。
最近の不動産価格高騰時の2007年に、リクルートが「首都圏新築一戸建て、マンション契約者動向調査」をしたレポートによると、平均借入額は概ね3000万円で、5000万円を超える借入をする住宅購入者の割合は5%前後に過ぎません。7000万円、8000万円も借入する人など滅多にいません。したがって、総額500万円もの控除を受けられる購入者はきわめて少数で、多数の人が実際に受けられる恩恵にあまり変化はないといえます。



H21.5.1
2度課税が起きる場合

ストックオプションという無償取得の場合

 1円ストックオプションなどで、株式を取得したときは、取得時に時価課税され、
(借)有価証券〇〇〇/(貸)給与収入〇〇〇
として、給与課税されるとともに、その金額が有価証券の取得価額となります。同時に売却した場合、譲渡益はゼロなので2度課税はありません。

広告資産の無償取得の場合

 広告宣伝用の資産として車両などを受贈されたときは、取得時に時価課税され、
(借)車両〇〇〇〇/(貸)事業収入〇〇〇〇
取得車両は減価償却の対象になるとともに、譲渡するときは、その未償却残額は譲渡収入から控除され、重複して利益に課税されることはありません。

取得時効という無償取得の場合

 測量により隣家敷地の長期占有が判明したことに際し、取得時効を主張して自己のものとしたときは一時所得に該当するとの解説があります。
その取得時効部分の土地の時価が1千万円だったらその価額で課税されます。
(借)土地〇〇〇/(貸)一時所得収入〇〇〇
次にその部分を同年中に1千万円で売却したら再び1千万円の譲渡所得が計算され、2度課税が起きます。この場合、なぜか、時価課税された金額が取得価額になるとの規定がないからです。
 遺失物の取得や無主物、埋蔵物、景品等の取得についても同じ現象がおきます。

相続・贈与という無償取得の場合

 相続や贈与で先祖伝来の土地を無償で取得した後に売却した場合、相続や贈与で時価課税の洗礼を受けていたとしても、相続や贈与で認識された時価は売却時の原価とはならず、原則として、先祖伝来の土地の継続所有者として再び時価課税され、2度課税となってしまいます。

2度課税への疑問

 昭和の時代には所得税と住民税の最高合計税率が90%で、相続税贈与税の最高税率が70%ということがありましたから、限界事例でみると、所得税の2度課税、所得税と相続税の2度課税がされることにより、無償取得財産の価額より多くの税負担を負うことになってしまいました。今は、それぞれ50%にまで下がっていて、そういう悲惨さは大分緩和されましたが、税の理屈からいって、2度課税はもともとあってはいけないのではないかと思います。