港区 税理士法人 大沢会計
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2010年5月

2010/05/31

H22.5.31

利子税の割合もいろいろ

国の税金は、納付期限までに金銭で、一時に納めるのが原則です。しかし、納税者の申請により所得税や相続税の納付を延納することができます。また、法人税では、一定の事由により、申告期限の延長によって納付期限も延期できます。この申請によってかかってくるのが利子税です。この利子税には、罰則的な意味合いはなく、期限までに納めた人との公平の観点から設けられた制度で、利息に相当するものです。   
したがって、利子税は、所得税のおいては、不動産所得、事業所得、山林所得の必要経費に、一方、法人税では、損金額に算入されます。
所得税及び法人税の利子税の割合は、現行法では、7.3%と前年11月30日の公定歩合に4%を加算した割合のいずれか少ない方の割合になっています。

相続税の延納に伴う利子税の割合
 利子税の割合は、課税相続財産の価額に占める不動産等の価額の割合に応じて、特例で次のように定められていますが、現行法では、さらに特例の特例で、下記表の右端の特例割合を適用することになっています。ちなみに、表の特例割合の数値は、公定歩合が0.75%の場合です。
特例割合は、「利子税割合×(分納期間の開始の日の属する月の2月前の月の末日を経過する時の公定歩合+4.0%)/7.3%」(0.1%未満の端数切捨て)で求められ、延納の時期により変動します。

 区   分 利子税割合 特例割合

不動産等の価額75%以上
不動産等に対応する税額 年3.6% 年2.3%
他の財産に対応する税額 年5.4% 年3.5%

不動産等の価額50%以上
不動産等に対応する税額 年3.6% 年2.3%
他の財産に対応する税額 年5.4% 年3.5%

不動産等の価額50%未満
不動産等に対応する税額 年6.0% 年3.9%
他の財産に対応する税額 年6.0% 年3.9%

物納にも利子税がかかる
 平成18年度の税制改正により物納にも利子税が課されましたが、実際にかかる期間は、物納申請に当って物納手続関係書類の提出期限を延長した期間及び物納申請後に申請者において物納関係書類の整備や財産の措置等を行った期間です。 
その割合は、特例により、年7.3%と前年11月30日の公定歩合に4%を加算した割合のいずれか少ない方の割合です。

H22.5.28

加入を促進改正雇用保険法

大きく分けると4つの改正点
 景気の一部に明るさが見られるというものの、雇用情勢は新卒の内定率も就職氷河期並みといわれる状態では雇用の改善はまだ先のこととなりそうです。このような中で非正規雇用労働者に対するセーフティネット機能の強化や財政の基盤強化を図るため4月より雇用保険法が改正されました。改正点は大きく分けると四点となります。

非正規労働者に対する適用範囲の拡大
 平成21年の雇用保険法の改正により、短時間労働者の適用基準を「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上の雇用見込み」で雇用保険に加入することができるようになりましたが、厳しい失業情勢の下では6カ月以上の雇用の要件も満たせない人も多く、更に「31日以上の雇用見込み」があれば適用ができるようになりました。しかし、離職と受給を繰り返す人の防止の観点から受給条件は現行のままとされています。

雇用保険未加入者に対する遡及適用期間改善
 会社が従業員に対し、雇用保険の加入手続きを行わなかった場合、遡及加入は2年前までしかできませんでしたが、失業給付の受給日数が減ってしまうこともあったため、2年以上の遡及も認めることになりました。具体的には給与明細等に雇用保険の控除がされていたことを示す書類の確認が行われます。

雇用保険の財政基盤強化
 雇用保険2事業(助成金等)については雇用調整助成金の支給要件の緩和措置等の継続雇用対策で財政の不足が生じてきたこともあり一般の事業の場合で2事業に係る保険料率が1000分の3.5に改正されました。又失業給付に係る保険料率は1000分の12(事業主と被保険者でこれを折半する)で全体の保険料率は1000分の15.5となりました。

育児休業給付金制度の変更
 22年4月以降に育児休業を開始される方は育児休業基本給付金と職場復帰給付金が統合され、全額を育児休業中に受給できるようになりました。

H22.5.27

「なぜなぜ5回」の原因分析

 顧客ニーズの変化が激しい、新しい競争相手が現れたなどの原因で、今日買って下さった顧客が明日も買って下さるとは限りません。
 売上確保に懸命になって営業活動や店頭販売に努力していると「売れ行きが悪い原因は自分達の頑張りが不足しているからだ。」と反省し、ひたすら頑張り続ける一方で「自分達の売り方が外部環境の変化や顧客の変化に対応できていない。」と言う事業の本質的問題発見を遅らせ、戦略レベルの反省を鈍らせてしまう可能性があります。

 需要の変化を自社データでつかむ
 顧客が減った、顧客層が変わった、顧客の年代層が変わった、売れる製品が変化している、客単価が低下している、利益率が低下している、季節変動が激しくなった、等の現象データは需要の変化を的確に表し、自社のデータを分析すれば判明します。
 このような客観的データを手掛かりにして売上や利益が変化した本質的原因を追求し、第一線の営業努力・販売努力だけでなく、抜本的な戦略の転換を検討することも大変重要な場合があります。
 需要の変化をつかんだ次のステップでは「なぜなぜ5回」と言う問題の本質を追求する思考法を使うと良いでしょう。

 「なぜなぜ5回」原因分析と留意点
 これは有名なトヨタの「カイゼン」手法の一つで、問題の原因を「なぜか、なぜか」と具体的な対策がとれるところまで5回以上掘り下げる原因分析の方法です。例えば、売上が低下した原因分析を例にとると次のように掘り下げます。
 ・製品Aの売上が前年比10%落ちた。
 ・競合他社B製品が同じ価格帯で使い勝手がよく、当社の製品Aが劣っているから。
 ・製品Aの顧客満足度調査をしてこなかったので問題を見逃していたから。
 ・製品Aの使い勝手の悪さに対する改善策を検討したことがないから。
 ・製品Aの使い勝手を改善する製品デザイン改良を行っていないから。
 ・改良設計・改良計画がないから。
 
 なぜなぜ分析の留意点は次の三点です。
 ・事実に基づいて分析する。
 ・複眼で分析する(関係者が参加する。)
 ・原因分析で外部環境や自分達以外のことへ「責任転嫁」しない。

H22.5.26

早生まれはダブル損

早生まれ組は、税制上の有利な控除がいつも1年遅れで、学齢期に係る扶養控除の場合は1年分損をする、という「早生まれは損」の現象は以前から存在していました。
それが、今年の税制改正によって、ダブル損になることになりました。

年少扶養親族の扶養控除廃止の改正
今年の税制改正で、15歳以下の年少扶養親族には扶養控除の適用がないことになりました。改正法で、本来扶養控除の適用開始年齢と考えている高校1年生のときには、早生まれの生徒は判定ではまだ15歳なので扶養控除の適用を受けられません。
相変わらず1年遅れで、必要な時に必要な政策的支援が行き届かず、さらに結果的に適用できる期間が1年短くなる、ことが続いています。これが第一の損です。

子ども手当と年少扶養親族
子ども手当を支給するから年少扶養親族を扶養控除から排除する、というのが新制度の趣旨です。でも、子ども手当はその支給期間が中学校修了までの子育ての支援ということで、3月の卒業時までの支給で打ち切りという制度設計になっています。
そのため、早生まれの高校1年の生徒については、税法では年少扶養親族として扶養控除対象外としておきながら、一方で子ども手当については支給がありません。
高校1年で、社会的子育て支援としての子ども手当もしくは扶養控除のいずれの恩恵も受けられない、これが第2の損です。

放置された不平等に対する真摯な検討を
今年の予算をめぐる国会の議論を記録した衆議院財務金融委員会の3月1日の議事録をみると、「早生まれは損」が今年からダブルの損になる、という指摘が佐々木憲昭議員から菅財務大臣に投げかけられていました。
官僚答弁は、高校の実質無償化が同時進行するので、負担は緩和されている、と言うものでしたが、菅財務大臣は「私たちが必ずしも気がつかなかったことを含めて御指摘をいただいたと思っております。まさに、佐々木議員がおっしゃったように、私たちも、こういうことで一部の人に不利益な扱いにならないようにどうすればいいのか、ちょっといろいろ工夫が必要かもしれませんが、PT等で真摯に検討していきたい」と答弁しました。

H22.5.25

早生まれは昔から損

早生まれは1年待たされる
所得控除において、特定扶養親族や老人控除対象配偶者や老人扶養親族に該当する年齢になると控除額が増える仕組みになっていますが、この判定は12 月31 日で行います。
したがって、早生まれの人は同級生がこれらの有利な控除を受けられることになっても、1 年間待たされます。
その意味で、早生まれは損なのです。

早生まれは1年分損する
それだけでなく、早生まれの子を持つ親は特定扶養控除で公平に扱われていません。
平成22年までの制度で言えば、特定扶養控除は高卒なら高校3年間、大卒なら高校大学の7年間の教育費負担の家計への配慮として、扶養控除額を増やしてくれる趣旨で設けられていましたが、1月から3月の間に生まれた早生まれ組は、高卒なら高校2年生と3年生の2年間しか、大卒なら大学4年生になった年までの6年間しか特定扶養控除の適用がありません。
高校や大学を卒業して就職すると所得が生ずることになり、所得制限により扶養親族に該当しないことになるからです。(浪人して大学入学したり、大学院に進学したり、就職浪人したり、の場合には1年分の損は発生しません。)

早生まれは損の波及効果
所得税・住民税以外にも、国民健康保険料や国民年金保険料の減免制度、公営住宅の入居収入基準、ホームヘルプサービス事業費用負担基準、母子家庭に支給される児童扶養手当の額を確定するに当たっての所得基準、などで特定扶養親族該当・非該当が関わっています。

前政権時代からずっと放置されてきた
これらは明らかに法の下の不平等です。ただ、この課税上の不公平について、過去誰かが憲法違反といって争ったという形跡がありません。
しかし、1月から3月の早生まれ組は全体の4分の1を占めており、量としては大変多く、この制度的欠陥が認知されてしまうと、運が悪いから我慢しろと言うことでは済まなくなり、世論も容易にこれを是認しなくなるように思われます。

H22.5.24

平成22年度の法改正と給与計算

保険料率改定が目白押し
 平成22年度は社会保険料率が軒並み値上げされ、さらに労働基準法の時間外労働の割増率の引き上げ、扶養控除の改正等が行なわれます。給与計算を行なう担当者はこの改正内容や実施時期を把握しておく必要があります。給与や賞与の計算に関係する改正内容見てみましょう。

①健保-介護保険料率の改定(22年4月)
協会けんぽの料率が改定されました。健康保険料率は都道府県別で各々異なりますが介護保険料率は全国共通の1000分の1.5(被保険者負担分0.75)となりました。また組合管掌保険でも保険料を改定した組合も多く、組合の通知を確認してみましょう。

②雇用保険料率の改定(22年4月)
雇用保険料率は特別措置や弾力条項等で保険料率を抑えてきましたが、財政面の悪化から原則に戻し、労使が負担する保険料率は一般事業の場合で事業主1000分の9.5被保険者1000分の6となりました。
また「31日以上雇用見込みのあるもの」も雇用保険の加入対象者となりました。

③時間外労働手当の割増率の引上げ
従来は時間外労働の割増率は2割5分以上とされていましたが改正で1ヶ月60時間を超える部分は5割以上、又45時間を超える場合は2割5分を超える率とするよう努めるとされました。但し中小企業は60時間を超える部分の5割以上割増は当分の間適用を猶予されています。

④厚生年金保険料率の改定(22年9月)
 9月からは1000分の160.58(労使折半1000分の80.29)にされます。

⑤扶養控除等の改正(23年1月)
 満16歳未満の親族に対する扶養控除が廃止されます。年齢が16歳以上19歳未満の親族の扶養控除は特定扶養がなくなり、一般扶養(38万円)のみになります。これは23年1月以降に支給される給与が対象となります。

 以上のように給与計算の内容や料率が繁雑に改訂され細分化されてくると、担当者としては各人に応じて細かく注意を払った計算が必要になってきますね。

H22.5.21

国税訴訟と裁判管轄

国税訴訟の被告は誰か
 国税裁判の被告は税務署長ではありません。平成17 年4月1日施行の新行政事件訴訟法によると、処分行政庁が国の機関の場合には被告はすべて国となります。
また、「国の利害に係る訴訟についての法務大臣の権限法」というのがあって、国を相手にするときは、すべて法務大臣が代理人(実際は法務大臣が指名した者=訟務検事ほかの公務員)になることになっており、被告代理人のところには5,6名の名前が書かれます。
前記の施行日以後の判決をみると、それまで「被告 〇〇税務署長」とされていた部分は「被告 国」「上記代表者法務大臣 〇〇〇〇」「処分行政庁 ××税務署長 △△△△」と記されています。

原則的な管轄裁判所は東京地裁
行政事件訴訟法は被告所在地管轄裁判所を原則的な訴訟提起裁判所と規定しています。従って、被告は国なので、全国で発生するすべての国税訴訟の訴訟提起先は首都東京を管轄する東京地方裁判所ということになります。

処分税務署を管轄する裁判所にも
しかし、すべての税務訴訟が東京地裁に限定されるということは、地方の原告にとって事実上裁判の途が閉ざされるということでもあるので、当然ながら地元裁判所への提起も可能とされています。
よって通常の場合は、処分行政庁である××税務署所在の管轄地方裁判所が原則的訴訟提起先となります。

さらにもう一つ訴える先がある
前記の施行日以後のことですが、管轄裁判所が拡大され、被告側の管轄ではなく、原告在住地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも訴訟提起できることとされました。
なお、これは訴える側の任意の選択肢でもあるので、例えば、京都市在住の原告が京都下京税務署長の処分の取消訴訟を提起する場合は、東京地裁、京都地裁だけでなく、原告在住地管轄高裁が大阪高裁なので、その地を管轄する地裁たる大阪地裁に訴えてもかまわない、と言い直せることでもあります。
また、過去3年分に亘っての更正処分について取消訴訟をする場合、有利判決を期待できる裁判所への移送の可能性を視野に入れつつ、異なる裁判所に年次別に提起するという試みもあることになります。

H22.5.20

おーいお茶・商品の個性化

巷には商品やサービスがあふれ、買い手は多様な選択肢の中から、自分が買う価値があると判断したものを買い、ありふれた平均的なものは選んでもらえません。
 実際、衣料品について消費者の満足度と店の個性化度の関係を調べたある調査でも個性的な店は消費者の満足度が高いことが明確に示されています。
東京商工会議所の2007年度の調査によれば、「製造業として今後『自社独自のブランドや技術を開発する』企業を目指していく」とする割合は次の通りで、中小企業の製品・技術の個性化努力が示されています。(550社・偏差値は総合経営力の高さを示す指標・60以上が高く、40未満が低い)

中小企業は商品の個性化で頑張れ
 個性や独自性をもつ製品・サービスを生み出すには次の4点が大切です。
①得意分野へ経営資源(人・モノ・金など)を集中する。
②こだわりを持つ。
③何を売って、何を売らないのか明確に線引きする。
④顧客満足を得るターゲットを絞り込む。
 これらがあいまって鮮明な個性・独自性のある商品を生み出し、顧客を創造することができます。また、大企業は小回りが利かないのに比べて中小企業は個性化した商品を生み出し易い身軽さに強みがあります。

 商品個性化のやり方
 近年「商品の個性化」が進んでおり、例えば「おーいお茶」と言う飲料のブランドは、ほのぼのとした夫婦の日常的情景が想像できる見事な商品の個性化で、2009年2月で発売20周年を迎え、あらゆる茶飲料で一番売れているロングセラー商品になっています。
このように多くの製品が基本的な機能のほかに便利さ、美しさ、楽しさなど様々な利用価値が付け加えられ、魅力的、個性的な製品として販売されるようになりました。
 その個性化の重要なコツは、商品の買い手である生活者の視点で楽しさ、便利さ、情緒性などを製品に付加することです。

H22.5.19

修正申告不可の場合

修正申告とは
 納税申告書を提出し、あるいは更正処分や決定処分があって、既に税額などが確定している者が、自らの税額などを増加させることのために行う手続が修正申告です。
 税額を増加させる権限は税務署長にもあるので、修正申告の提出は、税務署長による更正処分がある前に行われなければなりません。

提出無効の修正申告
修正申告の提出は納税者の自由意志に委ねられているので、提出されればどんな修正申告書も有効か、というと必ずしもそうではありません。
 国税の徴収権は、偽りその他不正の行為により税額を免れた場合を除き、その法定納期限から5年間行使しないときには消滅することとなるので5年を超えた年分の修正申告書は提出することができません。

提出不可の修正申告
 修正申告は、既に確定済みの課税標準等又は税額等を修正するために提出するものですが、
◆税額に不足額があるとき
◆純損失等の金額が過大であるとき
◆還付税金の額が過大であるとき
◆納付税額を無から有にするとき
に提出するとの、法律の規定になっているので、税額に異動はないが所得金額を増加させるというような修正申告書は提出できないことになっています。
 たとえば、繰越欠損金を使い切れずに切捨てることになった場合において、本来は計上すべきであった売上があったので、切捨て欠損金を減らすことになる修正申告書を提出しようとするようなときです。

扶養親族の所属の変更目的の修正申告
 同一生計内に2人以上の納税者がいる場合において、その控除対象配偶者又は扶養親族は、納税者の選択によりそのうちいずれか1人にのみ該当するものとされ、その選択は、①「予定納税額の減額の承認申請書」、②「確定申告書」、③「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載されたところにより適用することとなっています。
 上記の申告書等には、「修正申告書」も「更正の請求書」も含まれていないので、一方が「修正申告書」を、他方が「更正の請求書」を提出しても、それによる所属の変更は認められません。

H22.5.18

期限後と過少申告の加算税

無申告加算税と過少申告加算税
期限後申告には、申告によって納める税金のほかに無申告加算税が課されます。原則として、納付すべき税額のうち50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合となります。ただし、自主的期限後申告の無申告加算税は5%です。
 修正申告には、修正により増加する税金のほかに過少申告加算税がかかります。増加税額の10%相当額です。なお、増加税額が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%になります。ただし、自主的修正申告には過少申告加算税はかかりません。

期限後還付請求申告についての加算税
 予定納税額又は源泉徴収税額の還付を受けるために提出する申告書を「還付請求申告書」といいます。
 還付のための申告は例え期限後であっても加算税の対象になりません。しかし、期限後に還付請求申告があった場合で、その後の更正又は修正申告によって増差税額が生じた時には加算税が課せられます。
なお、当初の還付金が多すぎただけの場合には、増差税額に対して課せられるのは過少申告加算税です。当初から本来は還付ではなく納税申告書を提出すべきであった場合には、増差税額に対して課せられるのは無申告加算税です。

自主的申告であったとしても
 期限後又は修正申告書の提出が調査による更正又は決定を予知してなされたものでない場合が自主的申告です。
 自主的修正申告には加算税というペナルティーはなく、自主的期限後申告には無申告加算税というペナルティーも5%と軽減されています。
 では、自主申告と税務署の指摘による申告とが混合しているときは、どうなるかというと、税務署が指摘していない内容を含むものであったとしても、その提出自体が税務署の指摘に基づいてされたものである限り、無申告加算税や過少申告加算税の軽減措置の適用は一切ありません。
申告によって新たに納める税額全体に対して軽減のない無申告加算税又は過少申告加算税が課せられます。

H22.5.17

住宅手当と割増賃金

 
割増賃金の基礎から除外される住宅手当
 時間外労働の割増賃金の計算の基礎となる賃金に参入しない賃金としては、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1カ月を超えるごとに支払われる賃金があります。このうち住宅手当については、計算の基礎に含まれる場合と含まなくて良い場合があります。

割増の基礎から除外される例
 具体的にどのような住宅手当が除外されるのか見てみましょう。
① 住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給するとされているもの。例えば賃貸住宅に住んでいたら家賃の一定割合、持家に住んでいたらローン月額の一定割合を支給するとされている場合等。
② 住宅に要する費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って、額を多く支給するとされているもの。例えば家賃月額5万円~10万円の者には1万円を、家賃月額10万円を超える者には2万円を支給するとされている場合等。
 
割増賃金の基礎から除外されない例
① 住宅の形態ごとに一律定額支給されるもの。例えば賃貸住宅に住む者3万円、持家に住む者、2万円を支給するとされている場合等。
② 住宅手当以外の要素に応じて定率又は定額で支給するもの。例えば扶養手当のある者には2万円、扶養家族がいない者は1万円を支給する場合等。
③ 全員一律定額で支給するとされているもの。
 住宅手当として割増賃金の計算の基礎から除外する者には「住宅に要する費用に応じて算定される手当であり、名称と関係なく実質により支給される」ことが必要で、住宅手当は費用の何%というような細かい取り決めでなくとも、住宅に要する費用が手当額を決める基準となっている事がポイントです。

H22.5.14

遅延損害金等の法定利率と延滞税

2005年12月に起きたジェイコム株の誤発注事件を巡り、みずほ証券が東京証券取引所に約415億円の損害賠償金を求めていた訴訟で、昨年12月、東京地裁は約107億円の損害賠償の支払を命じました。その後、この訴訟は控訴審で引続き争われているようです。
 訴訟の内容はともかく、東証の賠償金が膨らんでいるのは、4年分の金利に当たる約25億円の遅延損害金が加算されているためと言われています。

超低金利時代の高い法定利率 
損害賠償債務のような金銭の支払を目的とする債務の遅延損害金の場合、当事者の合意がなければ、民法の定める年5分の民事法定利率か、または商法の定める年6分の商事法定利率によって計算されます。
 この法定利率の趣旨は、得べかりし運用益、言い換えれば、被害者が賠償金を現実に受取るまでの期間について「利子」を付けてもらわないと、実質損害が填補されたとは言えない、ということでしょう。
 であれば、現下の超低金利時代にこの法定利率はあまりにも高すぎはしないかという疑問が生じます。
 この法定利率は、法の趣旨からいって、罰則、懲罰的な意味を込めて定めているわけではないと思料します。
 高度成長時代から昭和の終わりにかけては、市場金利が9%前後も珍しくありませんでした。しかし、現状の金利水準を考えると、法定利率が今も昔も同じ水準というのは問題です。

税務はすでに対応した
 税務においては、資金繰りが厳しくて納期限までに税金が支払えなかった場合には、その遅延による損害金(税法では「延滞税」)は、懲罰的な意味を込めて(税の公平性の観点から)、納期限から2ヶ月以内までの期間は未納税の7.3%でした。
しかし、平成12年1月1日以後については、年7.3%と各年の前年の11月30日を経過するときにおける公定歩合に4%を加算した割合のいずれ低い方で計算することに改められました。(遅延が2ヶ月を超える場合の14.6%は変更ありません)。
 現在、債権法の見直し作業が進められており、この法定利率も変動方式に改めることも検討されているようです。

H22.5.13

改正される育児介護休業法

難解さを増す育児・介護休業法
 子育てや介護をしながら働き続ける人の休業制度を定めた育児・介護休業法は育児・介護各々の対象者の範囲や社内手続きの違いで内容が複雑になっています。これまでにも改正を重ねてきましたが、この度休業後就労形態の選択肢の拡張に対応した改正が6月30日に施行されます。主要な改正ポイントを紹介します。
①3歳までの子を養育する労働者に対する短時間勤務制度(1日6時間)の措置の義務化、および所定外労働の免除の制度化
②子の看護休暇の拡充
③父親の育児休業取得促進
④介護休暇の創設
今回の改正の大きな柱は①ですが①と④については常時100人以下の労働者を雇用する企業は2年遅れで施行予定です。

子の看護休暇の拡充
 現制度では養育する小学校就学前の子が病気やけがをした時にその子に対する看護休暇は1年に5日ですが、子が2人以上の場合は10日まで取得できるようになります。2人の子各々5日ずつということでなく1人の子だけの看護でも10日まで取得でき、子の予防接種や健康診断でも取得可能となります。

介護休暇の創設
 改正法では要介護状態にある家族の介護を行う労働者が休業を申し出た場合1年で最大5日まで世話を行うための短期休暇が取得できるようになります。従来の介護休業とは別扱いで家族の病院の付添い、介護サービス受給のための手続き代行等、長期間でない介護や世話が対象です。

育児休業取得促進
 妻の出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、子が1歳2カ月になるまでの間に再取得ができるようになります。又、パパ、ママ育休プラスと称し、父母ともに育休を取得する場合も子が1歳2カ月になるまでの間に各々1年まで休業できるようになります。

会社は事実証明を提出してもらう
 事業主は育児・介護休業を申し出た労働者に事実の証明を求めることができます。又、事業主は休業期間を書面等で通知することが必要です。

H22.5.12

相続と消費税

被相続人の申告の承継
課税事業者である個人事業者が課税期間の中途で死亡した場合、その相続人は、相続開始を知ってから4か月以内に、被相続人の消費税に係る準確定申告書を被相続人の納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。

相続人の免税課税判定
免税事業者である相続人が、課税事業者である被相続人の事業を承継したときの免税・課税の判定は、次の通りです。
● 相続があった日の翌日から年末までの期間については課税事業者
● 相続年の翌年又は翌々年については、それぞれの年の基準期間の相続人と被相続人の課税売上高の合計が1000万円を超えていれば課税事業者

相続人の簡易課税判定
簡易課税適用中の相続人が、簡易課税不適用の被相続人の事業を承継したときの簡易課税適用の判定では、基準期間の課税売上高に被相続人の課税売上高を合算することにはなっていません。
免税・課税の判定と異なり、被相続人の基準期間の課税売上高が5000万円をはるかに超えていても、それは相続人の簡易課税適用の判定には影響を及ぼしません。

非課税事業の相続の場合
 貸地やアパートなどの非課税事業の相続があったところで、相続人が新たに課税事業を始めるとした場合、その課税事業開始日の属する課税期間に「消費税課税事業者選択届出書」を提出した場合には、翌期からではなく、その課税期間から届出の効力が生じます。なお、これは相続の場合の特例ではなく、非課税資産の譲渡を行っていた事業者が、新たに課税資産の譲渡等に係る事業を開始したときの一般的規定です。

課税選択があった場合
そもそも、被相続人が提出していた「課税事業者選択届出書」の効力は、事業を承継した相続人には及びません。したがって、相続人が課税事業者を選択する場合は、新たに「課税事業者選択届出書」を提出する必要があり、相続のあった日の属する課税期間中に届出書を提出すればその課税期間から課税事業者になることができます。
なお、これは、「課税期間特例選択届出書」及び「簡易課税制度選択届出書」についても同様です。

H22.5.11

離職票の退職理由と助成金支給

離職票をめぐるトラブルの増加
 景気回復の兆しが少し見えてきたとはいえ、雇用情勢の回復はまだ遠く、失業率も0.3ポイント回復したものの、4・9%止まりとなっています。
 このような雇用の背景にあって、退職時のトラブルも増加しています。退職した際に交付される離職票に記載される退職理由に異議を申し立てるケースが多くあります。会社都合退職と自己都合退職では失業給付の所定給付日数の違いがあり、会社都合退職のほうが給付日数は多くなります。19年10月の法改正で、失業給付は直近に退職した会社の離職理由で給付日数が判定される事になり、直近の会社の勤務日数が短い期間の離職票であっても、離職理由が受給日数に関係し、自己都合か会社都合かは受給者に大きな影響を与えるようになりました。
 トラブルを避けるには、退職日がいつか、理由は何かを退職願や合意文書等で文書を残しておく事が良いでしょう。

助成金への影響は
 企業が助成金を受給していると、会社都合退職の離職票をハローワークへ提出した場合、助成金の受給要件にひっかかることがあります。対象労働者の雇い入れの期間の前後一定期間の間に退職勧奨を含んだ会社都合退職を行っていないことや特定受給資格者を一定数以上出していない事が助成金受給要件に挙げられますので注意が必要です。

事業主都合が不支給要件となる助成金
 よく、会社都合退職者を出すと助成金が受けられなくなると耳にします。
 しかし、事業主都合退職で全ての助成金が不支給になるわけではなく、対象となる主な助成金は次のようなものがあります。

? 特定退職者雇用開発助成金
? 試行雇用奨励金
? 中小企業人材能力発揮奨励金
? 中小企業基盤人材確保助成金
? 介護基盤人材確保助成金

H22.5.10

税務当局も誤った医療機器の区分

取得した医療機器が「器具及び備品」に該当するのか、それとも「機械及び装置」に該当するのか、その判断に迷うこともあります。
 税務当局も納税者(医療法人等)から申告書とともに提出された「中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却」の適用申請書に、その明細書の記載の種類欄に「医療機器」、名称欄に「血管造影X線診断装置」「超音波診断装置」との記載があることで、当該医療機器が「機械及び装置」に該当するものとして、同制度の特別償却(税額控除も含む)を認めていました。しかし、この適用が誤りであることを会計検査院が発見、同院の指摘を受けた国税庁は、各国税局に適正な運用を促す異例の通知を送ったとのことです。
 会計検査院の仕事の1つには、税務行政が適正に運用されているかどうかの検査権限があります。言うなれば、税務署を税務調査するようなものです。

医療機器は「器具及び備品」に該当
 医療機器は、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」のうち「8医療機器」に当たることから、「機械及び装置」には該当しなと判断されます。
なお、中小企業者等が機械等を取得した場合の同制度の対象資産は、①機械及び装置、②特定の器具及び備品、③一定のソフトウェア、④車両総重量3.5t以上の貨物自動車、⑤内航海運業用の船舶となっています。また、②の特定の器具及び備品は、一定の電子計算機など「事務処理の能率化に資するもの」となっていますので、医療機器はその対象資産から除外されます。

獣医も医療機器の特別償却が可能か
 医療機器には前述のような制度の適用はありませんが、医療機関等が取得する一定の医療機器には、別途、「医療用機器等の特別償却」の制度があります。
この制度は、青色申告書を提出する法人(個人も含む)で医療保健業を営むものにその適用が認められています。
 そこで、医療保健業に「獣医業」が含まれるかどうか、社団法人日本獣医師会からの事前照会に、国税庁は、①医療保健業が人間を要件としていない、②公益法人の収益事業34種にある「医療保健業」に獣医業が含まれていることを根拠として、同制度の特別償却の適用が可能である旨を回答しています。

H22.5.7

社員の力を出し切る目標設定法

経営理念を実現するためには、戦略や事業計画を立てることが不可欠です。
 これは中小企業にとっても大変重要で、 実際に2007年度に東京商工会議所が実施した調査によれば、経営総合力が高い中小企業では、5年以上の経営計画を策定している企業が約2割、3年以上までを含めると6割に達しています。
 ここでは経営計画策定の4つのステップ
① 現状分析
② 経営ビジョンの明確化
③ 経営戦略の策定
④ 事業計画の策定(数値目標を含む)
の内、事業計画の眼目である、目標設定の方法に注目して、「社員の力を出し切る目標設定法」について解説することにします。

「目標」が持つ意義
経営にとって目標設定が重要な訳は、
・経営戦略・事業計画が達成されたかどうかを評価する基準であること
・社長をはじめ、社員が「頑張ればクリアできるぞ」と日々努力するバーの機能を果たすこと
にあります。
特に難しいのは、「社員がやる気になって力を出し切るストレッチ目標」をどう設定するか、と言う点です。

ストレッチ目標への誘導法
「ストレッチ」とは「従来の改善ではとても達成出来ない目標を設定して、全く新しい発想を出し合い、革新的な方法を考え出し、実践して目標を達成すること」です。
 言いかえれば、「みんなが力を出し切ってようやく手が届くレベルの目標」のことで、社長や幹部社員の腕前が問われるのは、事業計画の目標を、社員にとって自らチャレンジする「ストレッチ目標」に置き換える誘導方法・技の使い方です。
 そのヒントは次の2点です。
① 社員に事業計画の背景・ニーズ・目的・目標の根拠を良く説明し、Q&Aで理解してもらい、協力を求める。(事業計画へ参加を求めればやる気につながる。)
② 自分達の具体的目標とその達成手段について自ら考えてもらい、意見・アイディアを出し合い、「衆目評価法」を使う等によって、手段の裏付けがあるストレッチ目標に誘導する。

H22.5.6

生保上場株式への課税

第一生命の株式上場
 第一生命が、2010年4月1日に株式会社に組織変更して、東証1部に上場しました。
 第一生命の保険契約者821万人のうち、120万~130万人が株を受け取ったとみられており、上場に合わせて取得する人も含めると株主数はNTT(昨年9月末時点で125万人)を上回って国内最多の150万人といわれています。
 発行株式総数は1000万株で、売り出し価格は14万円だったものの、初値はそれを上回り16万円を付けました。上場日における株式時価総額は約1兆6000億円ということになり、国内企業の中では30位~50位にランク付けされます。

先行事例がある
 ところで、保険契約者が組織変更時に株式をもらった場合、課税はどうなるのでしょうか。生保会社の株式会社化としては、大同生命(2002年)・太陽生命(2003年)・三井生命(2004年)に次いで4社目なので、先例を確認することになります。大同生命保険が株式会社化されたときの処理が公開されています。
割当てを受けた株式に係る課税関係
①保険契約者が受け取る割当株式に係る経済的利益は、株式会社化に伴って偶然に実現する一時の所得なので、個人については一時所得の収入金額、法人については益金の額とされます。
②割当株式の評価額は、適正な時価を反映させる方式で出した売り出し価格により評価することとされています。
③ただし、組織変更と同時に強制売却される端株については、保険契約者が端株に関する権利を行使できないことから、実際に交付される金銭の額により評価します。

原価はゼロ
 保険契約者には、保険会社への寄与度に応じて株式が交付されるようです。即ち、生命保険会社を儲けさせてきた人には沢山の交付があり、古くからの個人年金保険や一時払養老保険などのように予定利回りが高くて逆ザヤの人には株式の交付なし、ということなのでしょうから、過去の保険会社への提供利益の一定割合が株式の原価になるとも言えます。
 しかし、計算可能性の困難さもあり、一種の割り切りで、原価はゼロの扱いです。