港区 税理士法人 大沢会計
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2010年6月

2010/06/30

H22.6.30

未払いの賞与の注意点

1.賞与の損金算入時期の原則
従業員に対して支払う賞与は、原則として、その支給日の属する事業年度の損金の額に算入されます。従って、決算日時点で未払いの賞与はその決算期の損金にはなりませんが、例外的に、一定の要件を満たしている場合には、未払いであっても賞与の損金算入が認められます。

2.未払いの賞与の損金算入要件
 次に掲げる賞与は、未払経理をすることにより、未払経理をした事業年度の損金に算入することができます。
(1)就業規則等にて定められた支給予定日が到来している賞与(使用人に支給額が通知されているもので、かつその事業年度において損金経理しているもの)は、その支給予定日又はその通知した日のいずれか遅い日の属する事業年度
(2)以下の要件を全て満たす賞与
①その支給額を各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること
②通知した金額を、通知した全ての使用人に対しその事業年度終了の日の翌日から1ヵ月以内に支払うこと
③その支給額につき通知をした日の属
する事業年度において損金経理していること

3.もうひとつの要件
 上記の未払いの賞与が例外的に損金算入できるのは、決算日時点で債務が確定しているとみなすことができるからです。
なお、賞与規定等において、「支給日に在職する使用人のみに賞与を支給する」と定めている会社では、決算日時点では最終的に支給する賞与の金額が確定していないこととなるため、未払いの賞与の全額が損金に算入されない点に注意が必要です。

4.未払いの賞与の社会保険料
 未払経理をした賞与に係る社会保険料は、賞与と同様に未払経理をした事業年度の損金にできるでしょうか?
それはできません。賞与に対する社会保険料の支払義務が確定するのは、実際に賞与の支給があった日の月末となります。

H22.6.29

消費税:課税資産の譲渡等とは

消費税の課税対象は、①「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等(資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供)」と②「保税地域から引き取られる外国貨物」とされています。前者は国内取引、後者は輸入です。
消費税は、あくまで「国内消費税」という位置づけがなされているので、国外取引は課税対象外(不課税)ということになります。
したがって、納付すべき消費税は、原則、国内における課税資産の譲渡等に係る消費税から国内における課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物に係る消費税の合計額を控除して算出します。控除不足額が生じれば、消費税額は還付です。

事業活動が海外、国内本店は指令機能
 最近では、中小企業でも第三国間取引や海外での事業活動(現地調達、現地生産、現地販売等)の比重が増え、国内の本店は指令機能しか有しない場合もあります。極端なケースでは、国内での課税資産の譲渡等に係る消費税がほんどなく、本店の事業は、金融資産の運用益たる受取利息といった、非課税売上のみということにもなりかねません。このような場合、国内での課税資産の譲渡等に係る消費税額がないので、国内における本店運営費等(人件費を除く)の課税仕入れに係る消費税額が控除できなくなるのではないかという懸念があります。

課税売上割合と課税資産の譲渡等
課税売上割合は、国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額と国内における課税資産の譲渡等の対価の合計額とをベースに計算することになっています。
一方、課税資産の譲渡等とは、非課税売上として消費税法6条に規定されているものを除き、その譲渡等の場所が国内、国外を問わないことになっています。したがって、国外での事業収入のほとんどが課税資産の譲渡等に該当します。
それゆえ、国内での課税資産の譲渡等に係る消費税額がなくても、個別対応方式により(課税売上割合が95%に満たない場合の仕入れ税額控除の規定)、国内における課税仕入れに係る消費税については、「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入」として、その関連付けを明確にすることにより仕入税額控除が可能です。

H22.6.28

「クロスSWOT分析」

「クロスSWOT分析」は「SWOT分析」を基にして、強み・弱みの内部環境と機会・脅威の外部環境をクロスさせ、戦略の具体的な方向性を検討する手段です。
  
 「クロスSWOT分析」の方法

         外部環境

内部環境 機会
① ○○顧客のニーズ
② △△顧客のサービスニーズ 脅威
① 競合△社のB製品
② ・・・
強み
① 核商品A
② アフターサービス 1.・・・・・・
2.・・・・・・ ・・・・・・
弱み
① 顧客構造
・・・・・・・

 この図のように、内部環境(強み・弱み)
と外部環境(機会・脅威)を「SWOT分析表」から「クロスSWOT分析表」に転記し、それぞれがクロスした4つの枠内に
・「強み」(核商品A)を「機会」(○○顧客のニーズ)」に活かす方策など
・「強み」で「脅威」を回避する方策
・「弱み」を補強して「機会」に活かす方策
・「弱み」を補強して「脅威」に対処する方   策を検討します。

留意点
・「強み」の①を「機会」の①と②それぞれと組み合わせて検討し、同様に「強み」の②を「機会」の①と②それぞれと組み合わせて検討する、と言うように、組み合わせに漏れがないように検討することが大切です。
・検討した方策は、ただちに着手できる程度に具体的な記述をすると良いでしょう。                
「クロスSWOT分析」の利点
最も役に立つのは「SWOT分析」で把握した自社の「強み」を「機会」にどう活かすか、具体的に突っ込んで考える点にあります。それは、この事業を貫く「コンセプト」になることが多いのです。

H22.6.25

わかりにくかった解散後事業年度

会社解散等の清算所得課税の廃止
 平成22年度税制改正により、法人税の清算所得課税は廃止され、通常の各事業年度の所得課税に移行することになりました。
課税所得の計算構造については、期限切れ欠損金の損金算入や完全親会社への青色欠損金の引継ぎ等の重要改正がありました。

みなし事業年度はどうなったか
なお、解散に伴うみなし事業年度の規定には変更はありませんでした。変更はなかったものの、みなし事業年度については、 旧商法の改正と会社法の立法に際して、税法の規定は表面上何も変わらなかったのに、会社法が変わったことにより、税法のみなし事業年度規定には実質的に大きな変更があったので、ここで復習しておきます。

旧商法と法人税の旧解釈
 旧商法では、会社が解散等によって清算した場合の営業年度等に関する規定は特になく、解散後においても会社定款等の定めの営業年度等によると解釈されており、税法上もこれを承けて、解散によって、通常の事業年度が分断された場合、その事業年度開始の日から解散の日までの期間及び、解散の日の翌日からその事業年度の終了の日までの期間が、それぞれみなし事業年度となると規定されていました。

新会社法と法人税の新解釈
 これに対して、新会社法では、株式会社が解散して清算が開始する場合には、解散の日の翌日から一年の期間を清算事務年度とする、という新しい規定を設けました。そのため、清算事務年度に入った場合には、会社の定款がどのような定めをしていたかとは無関係に、清算日の翌日が事業年度の期首日となり、毎年これが繰り返されることになりました。
 税法の条文は変更されませんでしたが、その事業年度開始の日から解散の日までの期間についてのみなし事業年度は従来と変わらないものの、解散の日の翌日からその事業年度の終了の日までの期間、の意味がまったく変わってしまい、みなし事業年度ではなく、本来の事業年度となりました。解散の日の翌日からその事業年度の終了の日までの期間、は新会社法でそのまま1年と定められたからです。

解散の日は適切に決めよう
 この清算事業年度は定款ではなく、法律の規定に依っているので、事業年度の変更をすることもできません。長期の清算期間を予定するときには、区切りのよい日を清算日とすることも肝要です。

H22.6.24

マンション節税のホントの問題

消費税の原則課税方式の場合、課税売上に係る消費税よりも仕入れに係る消費税の方が多いときは、その差額は還付されます。また、課税売上割合が95%以上の場合、仕入れに係る消費税は全額還付されます。
この法律の規定をもとに、賃貸マンション建設に係る多額の消費税還付を受けるという節税が行われていましたが、本年の税制改正により封じられました。

改正の概要
免税事業者が課税事業者の適用を選択し、2年間の強制適用期間中に1取引単位税抜き100万円以上の固定資産を取得した場合、その取得のあった課税期間を含む3年間は、引き続き事業者免税点制度を適用できないとされ、その期間は簡易課税制度の適用も受けられないこととされました(詳しくは1/13配信の「平成22年度税制改正速報 消費税編」をご覧ください)。
もともと、3年目に平均課税売上割合による調整が行われ、1年目に還付された消費税の納税が生じるのが法の予定するところですが、簡易課税制度の選択または3年目に免税事業者に戻ることにより、その納税を免れていました。この行為を封じようという趣旨です。しかし、このことは、本質的な問題ではありません。

ホントの問題とは
 消費税は、各取引段階で課税され、最終的に消費者に転嫁されることを予定しています。そのため、各段階での税の累積を排除するため、売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を控除して納税する前段階税額控除法が採用されています。つまり、消費者に転嫁できないものについては、対応する仕入税額を還付するのが理にかなっています。還付しなければ、その事業者が負担することになるか、価格に上乗せせざるをえないので、マンション節税は節税ではなく、当然の権利だったとも言えます。
したがって、例えば、輸出取引のように非課税取引をゼロ税率とするか、軽減税率を適用するかなどで仕入税額を控除・還付できるような制度に改めるべきでしょう。
政府は、安易な増税論議や税収面のみに囚われるのではなく、もっと税制の本質的な問題に取り組んでほしいものです。

H22.6.23

どうなる労働者派遣法の行方

登録型派遣や製造業派遣が原則禁止に
08年から09年にかけ、製造業では、景気悪化から大量の派遣社員の雇用打ち切りがニュースとなった事は記憶に新しい事ですが、労働者派遣法の改正案が国 会に提出されました。それによると改正の大きな柱は①日雇派遣の原則禁止と②仕事のある時だけ働く「登録型派遣」派遣や日雇い派遣は原則禁止とされる事と なっています。

派遣規制は二段階で行われる
① の日雇い派遣は2カ月以内の短期派遣や日雇い派遣は禁止されることとなり、施行は公布から6カ月以内ですので早ければ年内にも施行される事もあるかもしれ ません。
② の登録型派遣とは派遣先が決まった時点で期間を定めて雇用契約を結びますが、雇用が短期で断続的になりがちです。改正法案では通訳など専門26業務を除き 禁止、製造業派遣についても常時派遣会社と雇用契約を結び派遣先との仕事がない時でも派遣元との雇用を続ける常用型派遣以外認めないとしています。こちら は公布から3年以内に施行されますが、登録型でも、一般事務等の需要の高い業務はさらに2年の猶予期間があります。
その他の改正点では、派遣会社がグループ企業に派遣する時は派遣される者の割合は8割以下にする必要があります。親会社が労働者を転籍させて派遣社員で再 雇用することを防ぐためとしています。
 又、契約期間を超えて派遣社員を雇用している場合は、派遣社員が直接雇用を申し込める「直接雇用みなし制度」も創設されます。
さらに、退職した人を派遣社員で受け入れることは離職後1年を経なければならないとしています。

規制が柔軟な働き方を難しくすることも
全体には非正規労働者の雇用安定を目指す内容ではあるのですが、企業では直接雇用による負担増になる事を懸念し派遣労働者の活用に慎重になったり、中小製 造業では海外移転の動きも加速する事も予想され雇用環境の悪化の恐れもあります。いずれにしても施行されるのが3年先だとしても派遣元も派遣先も適正な請 負、直接雇用、労働者派遣の3つを使い分ける準備に取り組まざるを得ないのかもしれません。

H22.6.22

迷ってしまう災害義援金と支援金 等

 災害救済法に基づき、宮崎県で発生した口蹄疫の被害救済に「義援金」の指定がなされました。義援金の名称は、「宮崎県 口蹄疫被害義援金(以下「義援金」といいます。)」です。これを受け、平成22年5月21日、国税庁は、当該義援金は所得税法第78条第2項第1号及び法 人税法第37条第3項第1号に規定する地方公共団体に対する寄付金に該当する旨の情報を発遣しました。

 寄付金控除額又は寄付金の損金算入額の計算
したがって、個人の方が義援金を支払った場合には、特定寄付金として寄付金控除の対象となります。寄付金控除額は次の算式で計算します
(その年中に支出した特定寄付金の額の合計額)-2千円=寄付金控除額
 なお、特定寄付金の額の合計額は所得金額の40%相当額が限度です。また、控除額2千円は平成22年度の税制改正で改められました。
一方、法人が義援金を支払った場合には、その支払額の全額が損金算入の対象になります。

適用を受けるための手続き
 所得税においては、確定申告書に寄付金控除に関する事項を記載するとともに、確定申告書の提出の際に義援金の領収書を添付又は提示する必要があります。 また、法人の場合は、確定申告書に義援金の金額を記載し、寄付金の明細書を添付するとともに義援金の領収書を保存する必要があります。

被災した取引先に対する支援金等
 被災された事業者と取引関係にある事業者の方が、直接、被災された取引先に対して、お見舞金、事業用資産の供与、売掛金の免除、貸付金の免除等の支援を した場合、当該支援金等が交際費や寄付金に該当するのではないかと疑問に思う向きもあります。  
しかし、当該支援金等の趣旨が被災前の取引関係の維持、回復を目的として、相手の救済を通じて自ら蒙る損失を回避するためのものであり、災害発生後相当の 期間内になされたものであれば、原則、交際費等に該当することなく、全額損金の額に算入されます。
阪神・淡路大震災のときに、国税庁は通達を発遣してこの解釈を喧伝しました。

H22.6.21

会社解散の改正税法

清算所得課税の廃止
 今年の税制改正で、清算所得課税は廃止されることになりました。この改正は即施行ではなく、平成22年10月1日以後に解散した場合に適用されます。それ以前の解散については従前の清算所得課税の規定が適用されます。

財産処分や債務免除による益への課税
 なお、清算中の事業年度における、課税所得計算においては、清算所得課税ではなく、通常の各事業年度の所得計算を行うことになりましたが、残余財産がない会社が解散した時に、従前の制度下ではありえないような、清算処理の中途段階での思わぬ課税を受けないよう、配慮もされました。

期限切れ欠損金の損金算入
 すなわち、解散により株主に分配する残余財産がないと見込まれるとき、すなわち最終的な債務超過が見込まれるときは、期限切れ欠損金の損金算入を認められることになったということです。その見込みの予測は一回限りということではないので、各決算申告時に予測し直して、その予測見込にもとづいて、期限切れ欠損金の損金算入をすることになります。
ここで言う期限切れ欠損金とは、税務上特に管理されてきたものはないので、税務上の利益積立金のマイナス残の金額を指すものと思われます。

清算事業年度での交際費、仮装経理
 また、清算中の事業年度については、交際費損金不算入は不適用、仮装経理税額は即還付とされていたところ、今後は交際費課税は適用されることになり、仮装経理税額は清算確定ではじめて即還付、それまで5年間は納付税額と相殺となりました。これも、平成22年10月1日以後に解散した場合に適用されます。

解散後の親会社への影響
 なお、解散会社が債務超過状態で解散したとき、その株主が法人だった場合には、子会社株式消滅損の損金算入処理をします。
 ただし、子会社の100%親会社だった場合には、子会社株式消滅損は損金不算入ということになりました。そのかわり、子会社に残った青色欠損金で引き続き51%超子会社のときに発生したものについては親会社に引き継げることになりました。
これも、平成22年10月1日以後に解散した場合に適用されます。

H22.6.18

IBMスキームと税制改正

IBMの節税スキーム
(1)米IBMは2002年にAPHという持株会社を日本に設立。米IBMが持つすべての日本IBM株をこの持株会社に2兆円で売却。
(2)日本IBMは持株会社から自己株の一部を3回に分けて5千億円で購入。持株会社に税務上の4千億円の赤字発生。
(3)2008年に連結納税制度を導入。持株会社の税務上の赤字と、日本IBMの生み出した税務上の千数百億円超の黒字を相殺し、三百数十億円の納税額を圧縮。

自己株による損金発生のメカニズム
推測するに、購入株式5千億円に対応する日本IBMの資本金等は千億円。5千億円との差額4千億円はみなし配当となり、かつ譲渡損となるが、配当は益金不算入、譲渡損は単純損金。
これに対して、国税当局は、法令の乱用として4千億円の赤字を否認し圧縮納税額を追徴したと報じられています。

税理士会機関紙で公開の節税手法
 M&A等で買ってきた子会社株式の取得価額が高い場合には、子会社から配当を受ける代わりに、子会社にその株式を自己株式として取得させることにより、受取配当金の益金不算入と譲渡損の計上で、税務上の損金を多額に計上することも可能である、との節税手法が東京税理士会の機関紙で紹介されたことがありましたが、今回は配当代用自己株取得ではなく、連結納税導入の手口でした。

法令の乱用とは行為計算否認のことか
こういう手法の中で、特に親会社が子会社に自己株を買い取らせるということについて、節税以外にその行為選択の理由がないとすると、行為計算否認規定が適用される余地大とするのが常識です。
情報によると、これら類似の隠れた節税手法は他にもありそうで、IBMスキームは否認しやすい事例だったようです。

今年の改正税法で手当
多々あったであろうこの手の節税手法を封ずるために、今年の税制改正で、完全支配関係にある内国法人の株式を発行法人に対して譲渡した時には、みなし配当の額は生じ得るが、譲渡損益はないこととされました。改正税法の適用は10月1日以後です。

H22.6.17

子ども手当支給と家族手当

子ども手当の支給が始まる
 政府は今年度から「中学卒業までの子ども一人当たり年31万2千円(月額2万6千円)の「子ども手当」を支給すると発表しています。22年度は半額の月額1万3千円支給としていますが、支給は22年6月及び10月と23年2月に各々の月の前月迄、その後は6月に2、3月分が支給される予定です。子ども手当の月額2万6千円を0歳から15歳まで受給し続けたとすると468万円になります。子どもが2人なら936万円、累計額をみると額の大きさがわかります。

賃金で支払われている家族手当
 ここで、企業が支給している「家族手当」について考えてみましょう。会社員に扶養されている配偶者や18歳未満の子(又は高校生まで)に賃金として家族手当を支給している企業も多く、子ども手当と家族手当も受けられるとなると、子どものいない人から見るとかなり手取り額の差が出ると感じる人もいるかもしれません。又、この先子ども手当の支給が続くならば財政確保のため扶養控除や配偶者控除の廃止もありそうです。企業としては家族手当をどう考えるのがよいのでしょうか。

各企業に応じた家族手当の考え方
 景気低迷で生産高や労働時間も減り、手取りの収入が減少している勤労世帯では、定額の家族手当が給料額の中に占める割合が高まっています。今後の政治の動きもあり先行きは不透明ですが、子ども手当の支給が続いて行くのなら、家族手当は見直しや廃止もあり得るという考え方も出てくるかもしれません。もちろん一方では政府の方針に関係なく家族手当は支給していくという企業もあるでしょう。各企業の事情や経営者の考え方、社員の反応等いろいろな事態を考慮して検討する課題となるかもしれません。

H22.6.16

株主優待利益への課税

株主優待制度の人気
  “株主優待券”を株主に支給する施策は個人株主作りや自社製品・施設の宣伝等の経営目的をもって行われており、上場企業の実施数は約4分の1くらいのようです。
 所有株数に応じて、優待内容が変わることが多いものの、所有株数に完全比例はせず、概ね名義ごとに付与されるため、零細株主であるほど金銭に換算した利回りが高いようです。それゆえ個人投資家に人気があり、個人株主を増やしたい企業は積極的に実施しています。

株主への利益還元ではあるが
 株主優待による収入の所得区分は、一見すると配当所得に区分されそうですが、株主に対して法人が与えた経済的利益であっても、法人の利益の有無に関わらず支払われるものは、いわゆる利益の配当又は剰余金の分配とは性質が異なるものとされるため、配当所得からは除かれ、原則として雑所得として分類されています。

雑所得に申告不要はない
 従って、配当所得ならば申告不要の制度があるのでこれに該当すれば申告漏れでも問題はないのですが、雑所得ということになると、原則として、確定申告の対象になります。ただし、税額計算をしても納税額が出ない人や、年末調整の適用のあるサラリーマンの場合で給与所得のほかの申告を要する所得が20万円以下というときは確定申告をしなくても差し支えありません。

厳密に考えると申告漏れしていそう
 給与以外の申告を要する所得が20万円近い場合は、株主優待券などによる所得があることによって、確定申告をしなければならないことにもなります。通常に確定申告する人の場合は、少額だから申告から除外してもよい、との規定はないので、株主優待利益は申告書に常に反映させるべきということになります。

非課税所得という実態
 しかし、優待の物やサービスがいくらの所得と評価計算すべきかはなかなかの難題です。金券ショップなどで換金した場合はその金額が所得収入となりますが、そのような換金価値が不明なものや優待券等の自己利用では所得額のみならず所得の事実の補足も困難です。株主優待利益を申告しているという話を聞いたことがなく、税務統計もみたことがないので、実態的には事実上の非課税所得となっていそうです。

H22.6.15

前納報奨金制度の存続危機

市県民税(普通徴収分)や固定資産税は通常年4回に分けて納めることになっていますが、最初の納期に全期分を前納した場合には、市税に未納がないことなどを条件に、年税額から前納報奨金(交付分)を差し引いて納めることができます。この制度のことを「前納報奨金」といいます。報奨金制度は、地方税法第321条及び365条にその設置を認める規定がおかれ、また、交付率の上限も税額の100分の1と定められています。
近年、多くの自治体では、制度そのもの廃止、市県民税の廃止、交付率の引下げ、報奨金の限度額の減額といった措置が取られ、その存続は危機的な状況にあります。
その理由として、①創設以来60年以上(昭和25年シャープ勧告に基づいて創設)の経過で社会情勢が大きく変化し、当初の目的である税収の早期確保や自主納税意識の高揚などが達成されてきたこと、②市県民税を給与や年金から天引きされる納税者には本制度の対象にならないため、恩恵を受ける納税者との不公平感が大きくなってきたこと、③納付したくても一括納付する資力がない人には、本制度の恩恵がなく、納税の公平性に欠けること等が挙げられていますが、実際のところは自治体の厳しい財政事情が背景にあるようです。

前納報奨金の求め方(計算方法)
 前納した一の納期の税額×0.5/100(交付率)×納期前に係る月数=前納報奨金
※ 前納となる月数は、条例では、固定資産税は18ヶ月、市県民税は10ケ月が一般的です。
例)固定資産税、年税額160,000円(各期の税額40,000円)を4月30日に前納する場合 
40,000円×0.5/100×18月=3,600円
市県民税、年税額200,000円(各期の税額50,000円)を6月30日に前納する場合
50,000円×0.5/100×10月=2,500円
*自治体では条例により交付率をさらに引き下げ0.3%、また、報奨限度額も3万円と定めているところもあります。

所得税法の取り扱い
 非業務用固定資産に係るものは、一時所得の収入金額となります。なお、一時所得の計算においては、50万円の特別控除があります。一方、事業用固定資産に係るものは、事業の遂行に付随して生じた収入として、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しなければなりません。

H22.6.14

転ばぬ先の杖 実施はいつから?

小規模と倒産防止共済の改正

 平成22年度税制改正を受け、「小規模企業共済法及び中小企業倒産防止共済法(経営セーフティ共済)の一部を改正する法案が平成22年4月14日成立、同月21日に公布されました。しかし、その実施時期はそれぞれ異なり、小規模共済法は公布日から1年以内、一方、倒産防止共済法は1年半以内で詳細な施行日は未定です。
この2つの共済制度は、個人事業者や中小企業の将来に対する備えとして、長期にわたりセーフティネット機能を果たしてきました。そして、今回の改正で、さらに、その機能が強化されました。以下、両制度の主な改正内容を見てみましょう。

小規模企業共済制度の概要と改正内容
 この制度は、小規模企業者のための「退職金(年金)制度」です。税法上、掛金は月額7万円が限度で、全額所得控除の対象、また、受取る共済金も退職所得控除、公的年金等の雑所得の対象になります。
 今回の改正最大のポイントは、加入対象者の拡大です。改正前は、個人事業形態では事業主ただ1人しか加入できませんでしたが、今回、個人事業主の配偶者や後継者などの共同経営者2人まで加入が拡大されました。また、共同経営者については、必ずしもその親族に限定されていません。

倒産防止共済制度の概要と改正
 この制度は、別名「経営セーフティ共済」とも呼ばれ、万一、取引先の倒産等により売掛金等の債権の回収が困難になったときに、共済金の貸付が受けられる制度があり、中小企業を連鎖倒産から守ることを目的とします。具体的には、月額8万円を限度に最高320万円まで積立ができ、原則、積立た金額の総額10倍まで、無利子、無担保、無保証人で金融審査なく迅速に資金の貸付が受けられます。
 掛金は、所得税では事業所得の必要経費に、法人税では損金の額に算入されます(別表10(6)の添付が必要です)。
 今回の改正の主なポイントは2つです。
1つは、掛金の積立限度額を800万円に、貸付限度額を8,000万円に、一方、毎月の掛金の限度額が20万円に引上げる方針、2つ目は、共済金を貸付ける事由に私的整理の一部を追加しました。具体的には、弁護士や認定司法書士からの書面による支払停止通知があった場合などです。

H22.6.11

ワークライフバランスを意識した改正労働基準法

改正の大きな柱は3つある
 昨今の景気後退で企業の労働時間は減っており、残業時間の減少は顕著であります。しかし働き盛りの30代の男性は労働時間が最も長く、メンタル面でも一番支障を持っている世代かもしれません。このような背景の下、労働基準法が4月より改正されました。

①時間外労働の限度に関する基準の見直し
 労働時間は原則1日8時間、1週40時間と定められていますが、労使で協定を結べばこれを超えて働くことができるようになっています。一方時間外労働の限度時間の基準がありますが、今回の改正はこの限度時間を超えて働く一定期間(1日を超え3カ月以内、または1年間)ごとに割増賃金率を現状の2割5分を超える割増率を定めるよう努めることとしています。

②法定割増賃金率の引き上げ
 1カ月の60時間を超える法定労働時間外労働について、割増賃金率が5割に引き上げられます。この場合で深夜労働においては2割5分と60時間を超えた場合の割増率5割以上で7割5分以上になる計算となります。又、法定休日(1週間に1日または4週に4日の休日)に労働させた場合は3割5分以上の率で計算した率となります。この1カ月60時間を超える法定時間外労働は労使協定で代替休暇に代える制度を設けることもできます。
 この法定割増率の引き上げは、中小企業については当分の間適用が猶予され、3年経過後に導入が再検討されることとなっています。

③年次有給休暇は時間単位付与ができる
 もともと労使協定が結ばれていなくとも半日単位の年休は取得が認められていましたが、改正では協定を結べば年5日までは時間単位で付与することもできるようになります。今回の改正のうち②については中小企業は適用の猶予がありますし、①と③を導入するのは、協定や就業規則の改定が必要となります。もともと長時間労働を抑制する目的の内容ですので昨今の経済情勢の下では改正による影響は少ないとも思えます。しかし先々のことを考えると長時間労働にならない方策をとっておくことが必要かもしれません。

H22.6.10

還付加算金の割合引下げ?

 還付加算金とは、税金の還付に対する一種の利息と考えられ、還付金の区分により起算日が定められています。
還付加算金の額は、起算日より、還付の日までの日数に応じ、本則、年7.3%の割合を乗じて計算した金額です。
しかし、平成12年からは、特定基準割合(4%+日本銀行が定める基準割引率=公定歩合)と7.3%の低い方を適用することになっています。
なお、還付加算金は、個人では雑所得に区分され、法人では益金の額に算入されます。

還付加算金の起算日
 所得税、法人税の確定申告においては、原則、①源泉徴収税額や所得税額の還付金は、確定申告期限の翌日(期限後申告の場合は、その申告日の翌日)から、また、②予定納税や中間納付額の還付金は、納期限の翌日からです。なお、消費税における中間納付額の還付金の起算日も納期限の翌日からです。

還付加算金などの端数処理
 還付加算金の計算式は、次のようになります。
還付すべき金額×[7.3%又は特定基準割合
/365]×[税法で定められた日から支払決定日又は充当日]=還付加算金の額
(1)還付加算金の額を計算する場合において、その計算の基礎となる還付すべき金額の額に1万円未満の端数があるとき、又は還付すべき金額の額全額が1万円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てます。
 なお、地方税においては、上記1万円を2,000円に読み替えた規定になっています。
(2)還付加算金に100円未満の端数があるときは、又はその全額が1,000未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てます。地方税においても同様の規定です。

還付加算金の割合見直し
 この還付加算金の特例基準割合ですが、国税、地方税ともに、現在4.3%と長期の定期預金金利などと比べても断然高い利率です。そこで、税調などからも総合的な観点から見直し、検討案もでています。
しかし、還付加算金の割合は、利子税の割合、延滞税の割合(国税では法定申告期限から2ヶ月まで)と同率が適用されているため、紆余曲折が予想されます。

H22.6.9

差押え禁止や非課税の趣旨

子ども手当等の支給と差押さえ禁止措置
子ども手当支給法、高校授業料無償化法が成立しました。子ども手当と就学支援金については非課税所得とされ、譲渡・差押も禁止です。
 非課税の趣旨は、公共の資金を交付しておいて他方で所得課税で税金として回収するのでは交付の意味が薄れるということにあります。差押さえ禁止も、滞納税金の回収に充ててしまうようなことのないように、との趣旨です。
同じような差押さえ禁止債権としては、児童手当や年金や生活保護費などがあります。

振り込まれた後の預金への差押さえ
 ところで、差押さえ禁止債権の児童手当13万円が銀行口座に振り込まれた9分後に県税事務所がこれを差押さえ、全部没収してしまったという鳥取県の事件が平成21年6月にありました。また、千歳市では年金への差押さえ事件が起きています。
確かに、最高裁平成10年2月10日判決で、差押禁止債権が受給者の預金口座に振り込まれて、預金債権となると差押禁止債権としての属性は消滅してしまうので、従って預金に対する差押えは認められることになる、としています。

国会でも取り上げられている
鳥取県の事件は訴訟になっており、当時の財務大臣の与謝野さんも、児童手当はちゃんと児童の養育のために使うものであるから、差し押さえてはならない、児童の養育のために使えるようにしてやるのが本来の筋だと、国会で答弁しておりました。
 今年の国会でも、菅財務大臣が、「現金で受け取ればそれは差し押さえの対象にならなかったんでしょうけれども、実質上、ほとんど残高のない口座に振り込まれたものまで、まさにねらい撃ち的に差し押さえるというのは法の趣旨に反する」と答弁しておりました。

最近の判決の新方向
 確かに最近は違う判決もでるようになっています。入金するものは年金だけというような預金口座を差し押さえることは年金債権を差し押さえていることと実質的に同じであるから、年金債権への差押禁止効果は預金口座にも及ぶ、としているものもあります。平成20年1月の神戸地裁の判決です。

H22.6.8

リスクの分散

 取引先の集中は、生産や流通でコストダウンが図り易い、商品開発や情報のやり取りの連携がうまく行くなど取引メリットが多い半面、次のようなデメリットがあります。

取引先集中のデメリット
第一に、取引先の海外移転、仕入方針転換、廃業・倒産、最悪の場合は連鎖倒産など取引を失った時のダメージが大きくなります。
原材料の仕入先についても同様に、集中していると、倒産して原材料の供給がストップすれば、当社の操業ストップにつながり易くなります。
 第二の問題として、価格競争力が弱くなる点があります。取引先への依存度が高ければ、価格交渉で単価引き下げ圧力につながり易く、事実下請け企業が、取引先から定期的に単価引き下げ要求を受けることが多いのです。
 第三に、大口取引先を持っていれば、安定した取引に慣れ、新しい取引先開拓の熱心さに欠けることになり易く、知らず知らずの内にリスクが高まって行くことにもなります。
 このように少数の取引先への過度の集中は、企業にとって大きなリスクを抱えることになりますから、ある程度計画的に取引先の集中度を低めてリスクの分散を図ることが大切です。

リスク低下の具体策
1.全体の売上目標と販売先別売上目標を決め、定期的にバランスをチェックする。
例えば、取引先1社への売上を、全体売上の10%以内にコントロールする方針を立て、年度計画で取引先確保に取り組み、3カ月ごとにその実績比率をチェックしてアクションをとる。
2.取引先の信用情報がつかめるようにしておく。取引先が倒産すれば自社への影響は計りしれず、資産と社員を守るために、取引中止の決定も含めて、迅速な処置が必要になるので、定期的に訪社して取引先の経営実態を肌で感じる、業界の噂情報にも耳を傾け、信用調査会社の情報と付け合わせて見る、など定期的・意識的なチェックを行う。

H22.6.7

何気ない表現にも法の網?

フレーズの拝借にも問題が・・・?
 宣伝やスローガンのキャッチコピー等で、既存のフレーズを拝借、あるいは、改変することが問題となることがあります。これは、主に著作権侵害の有無という形で現れ、神経を尖らせる(べき)ところです。
表現の方法や内容が無数ある一方、参考になる裁判例も少なく、明確な指針を示すことには困難を極めますが、ここでは、考え方の傾向をお示しします。

(1)短くとも、創作性があれば、著作権法による保護の対象となりうる
著作権法が保護する著作物は、法文上「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されていますが、学術性や芸術性に乏しくとも、創作性があれば、著作物性が認められ、それは、短い表現でも同様です。

(2)但し、短ければ、保護の可能性は狭まる
もっとも、短ければその分、表現の幅に限界があり、少しでも変わると同一性を失いがちであることから、著作権法による保護の可能性が狭まります。
「ママの胸よりチャイルドシート」という交通標語を作成して、テレビCMで放送したことに対し、「ボク安心 ママの膝より チャイルドシート」の標語の作者が、自らの著作権を侵害されたとして損害賠償請求をしました。裁判所は、訴えた作者の標語に著作物性があるとしながら、両標語を比較し、「ボク安心」の有無、「膝」と「胸」の違い、五七五か七五調の違いを挙げ、共通する「ママの」、「より」、「チャイルドシート」に著作物性がないとして、結論としては著作権侵害がないとして、訴えを却けました。

(3)著作権法以外の法律に抵触する場合もありうる
 以上著作権を中心にお話ししましたが、それ以外の法律にも留意が必要です。
 裁判所は、Webニュース記事の見出しには、創作的表現はないとして著作物性がないとしながら、これを無断で利用した者に民法上の不法行為責任(損害賠償)を課する判断をしました。
 また、陸上自衛隊の「守りたい人がいる」のコピーのように、商標登録されている例もありますので、商標権との関係で要注意です。

H22.6.4

自己株式の取得に伴うみなし配当と譲渡損益

 自己株式の取得は、それに応じた株主にとっては、①有価証券の譲渡とされ、その譲渡対価(「交付を受けた金銭等の額」から「みなし配当」を控除した額)と譲渡原価の額との差額が譲渡損益と認識され、一方、②交付を受けた金銭等の額が発行会社の資本金等の額を超えた部分は「みなし配当」と認識され、受取配当金の益金不算入の適用を受けることができます。

みなし配当と譲渡損益の仕訳
 これを仕訳で表せば次のようになります。
(設例)株式の取得価額(譲渡原価)60、発行会社から交付を受けた金銭等の額80、発行会社の資本金等の額50
 現金預金   80 / 有価証券 60
 有価証券譲渡損10  受取配当金 30
 *みなし配当に伴う源泉徴収税額は割愛
過日、日本IBMグループが自社株購入で赤字を作り出し、連結納税と組み合わせて過去最大規模の4,000億円もの課税回避をしたとの報道がありました。
 国税当局は、これらの行為は「租税回避行為」にあたるとして更正処分に踏切ったようです。一方、IBM側は、法人税法の規定に従って処理したまでで、「合法的な節税」であると主張しています。

自己株式の取得に伴う税務取扱の改正
 平成22年度の税制改正において、この自己株式の取得に伴う税務上の取扱が改正されました。改正内容は、次のとおりです。
(1)100%グループ内の法人間の自己株式の譲渡
 100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する場合には、譲渡対価を譲渡原価に相当する金額とすることにより、その譲渡損益は認識しないこととされました。前述の設例の「有価証券譲渡損10」は、「資本金等の額10」になるものと思われます。なお、「みなし配当」に関しては、現行法通り、受取配当金の益金不算入制度が適用されます。
(2)上記(1)以外の法人間の自己株式の譲渡
 自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずる「みなし配当」については、受取配当金の益金不算入制度を適用しないこととされました。なお、有価証券の譲渡損益の認識に関しては、現行法通り、適用があります。
 適用は、平成22年10月1日以後の譲渡、取得からです。

H22.6.3

賞与に対する源泉徴収

1.給与と賞与で全く異なる源泉徴収
 給与や賞与を支給する時には、所得税の源泉徴収をしますが、賞与からの源泉徴収は毎月の給与からの源泉徴収とは計算方法が違います。
毎月の給与からの源泉徴収は、その給与の金額に比例して増減しますが、賞与からの源泉徴収は、基本的には賞与自体の金額には関係なく計算される仕組みになっています。

2.賞与からの源泉徴収
賞与からの源泉徴収は、社会保険料控除後の賞与の金額に一定の率を乗じて計算されます。この一定の率は、賞与支給月の前月中の「給与」の金額と扶養親族の数に応じて決められています。

3.特殊なケース
 前述のとおり、賞与からの源泉徴収は、賞与の金額に無関係に、前月の給与の金額によって税率が決定されることになるため、年末調整の際に不都合が生じる場合があります。
 極めて特殊なケースですが、賞与の形で支給される金額がとても大きい給与制度になっている場合などで、例えば前月の給与
は5万円程度でも、賞与は300万円の人が
いたとします。月給が5万円の場合は賞与に乗じる率は0なので、300万円の賞与に対して源泉徴収税額が0ということが起こり得ます。このようなケースでは、年末調整の際に高額な源泉所得税額を追加で徴収しなければならなくなります。
 そこで、このような不都合を避けるために、特例が定められています。

4.特例の計算
前月中の給与がない場合や賞与の金額が前月中の給与の金額の10倍相当額を超える場合等には、前述の方法によらずその賞与の金額を6分の1(賞与計算の基礎期間が6カ月を超える場合は12分の1)にしたうえで、毎月の給与の源泉徴収と同様に計算した源泉徴収を行います。
 この特例計算によって、前述のような特殊なケースでも、源泉徴収税額が過少となる不都合を避けることができます。

H22.6.2

どう給付される賞与の保険料

賞与にも保険料がかかっている
 健康保険や厚生年金保険、雇用保険は毎月の賃金から保険料が引かれています。労災保険は全額事業主負担ですので賃金からは控除されませんが、労働保険料として申告納付しています。さて、賞与が支給された際は毎月の賃金と同じように保険料が徴収されますが賞与にかかる保険料は年金や手当等の受給にどのように反映されているのでしょうか。

保険料がかかる賞与とは
 労災・雇用保険では「賃金、給料、手当、賞与その他の名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」とあり、通常支払う賃金と区別していません。健保・厚年保険では「賃金・給料・俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるもの」とあり、通常の賃金とは区別されています。これは年に3回まで支給されるものをいい、保険料は実際の支給額の千円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を乗じて計算されます。

賞与の保険料が反映される給付は
 どの制度も賞与に保険料がかかりますが、給付はすべてには反映されていません。
・労災保険 労災保険の給付額は「給付基礎日額」で決められますが、年3回までの賞与は反映されません。但し、労働福祉事業の特別支給金については算定基礎となります。
・雇用保険 雇用保険の給付額は「賃金日額」で決められますが、年3回までの賞与は給付額には反映されません。
・健康保険
 健康保険の給付の基礎となる「標準報酬日額」には賞与の保険料は反映されません。
・厚生年金保険 老齢・障害・遺族の厚生年金額を計算するとき、平成15年4月以降支給の賞与については、被保険者期間は標準報酬月額と標準賞与額の総額をその間の加入期間で除して得た額が平均標準報酬月額となり年金の額に算入されます。
 このようにみると長期的給付に賞与の保険料が反映されているといえるでしょう。

H22.6.1

役に立つ企画の立て方

 中小企業経営では、社長をはじめ幹部が自ら販売、生産、開発などの企画・実行計画を明文化し、P(計画)-D(実施)-C(点検・評価)-A(処置・改善)のマネジメントサイクルを的確に回して実現を図らなければなりません。

企画を立てる定石
そこで、事業の成果に結び付く、実際に役立つ企画を立てることが重要な課題になります。社長や企画担当責任者にとって「定石」と言える企画の要素と思考順序は次の7点です。
① 「何について企画するのか」、テーマを明確にする。(商品改良・売り方改善等)
② このテーマの背景・ニーズから「企画の具体的切り口・目的」を明確にする。
③ テーマに関する現状(社内状況・外部の変化など)を的確に状況判断する。
④ 「SWOT分析」等により重要課題を発見し、企画の方向性を決める。
⑤ コンセプトと数値目標を設定する。
⑥目標達成の成功要因・障害要因を見つけ、解決具体策・処置を検討する。
⑦目標達成までのスケジュールを立てる。

実現力を持つ、役に立つ企画を
 実行に移された企画が営業・販売・生産などの現場で実効を上げなければ、価値がありません。的確に現場に理解され、事業の成果に現れる実現力を持つ企画とするために最も大切なことは
企画担当者と実施担当者が、企画が実行に移される現地で現物を見て、現実に即して、話し合い、状況判断を一致させること
 すなわち“解は現場にあり”です。
このようにすると「机の上で、単なる先入感や希望的観測による判断をしてしまう重大な誤り」が回避できます。
 また、実施担当者が企画に参加するため、
実行しやすい企画になり、やる気も引き出せ、役割意識、責任意識を持って実行に移してくれますから、成果が生まれ易くなります。

P-D-C-Aのサイクルを確実に
 企画の実行段階では、企画段階で想定外の様ざまな障害や変化が起こりますから、実行の経過を見守り、C-AをかけてP-Dにはねかえす軌道修正が欠かせません。