港区 税理士法人 大沢会計
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2010年4月

0210/04/30

H22.4.30

衆知を集めて合意形成

新しい商品やサービス、新しい販売方法生産方法など、売上・利益の向上・生産性向上などにつながる事業にとって価値ある方法を生み出すこと、それも単発でなく、継続的に絶えず新しい「モノ」や「コト」を生み出す企業体質は、重要な経営資源です。その様な企業体質は、全ての経営活動で、事業の方向性を踏まえて社員一人ひとりが考え、さらに力を合わせて様々な課題を発見し、解決策を見出し、自ら実行して結果を確かめる習慣づけから生まれます。

衆知を集める「衆目評価法」
その元になるのは、力を合わせるために衆知を集める具体的方法であり、実技として「衆目評価法」が役立ちます。文化人類学者の故川喜田二郎氏が開発した、発想と問題解決の方法「KJ法」の手法体系の中に「衆目評価法」があり、この方法を次のように簡易に使って、チームメンバーの合意形成ができます。
①具体的なテーマに基づいて、メンバーからすぐアクションがとれる具体的表現で多様なアイディアを出してもらう。
②それらのアイディアを各メンバーが5点法で採点し、投票する。
③合計点数が多いアイディアほど、「衆目評価」が高いと考え、リーダーがメンバーに確認し、合意形成する。

衆目評価の留意点
①テーマは仕事上のことに限る。
②正社員・パートさんの区別なく参加してもらう。
③仕事の合間のちょっとした時間を活用して、楽しみながら、しかし真剣にやる。

使いどころと効果
衆目評価法は、問題点の確認、目標の検討・改善具体策の選択・改善結果の評価等課題解決の様々な場面で使えます。
その効果は次の3点です。
①参加メンバーの納得度が高い合意形成ができ、決定後「やらされ感」がなくなり、自ら進んで「やりたくてやる」主体性が生まれる。
②重要な判断の焦点が絞り易く、小田原評定が避けられる。
③リーダーの決断がし易い

H22.4.28

共有物分割なれど

共有物分割は譲渡とされないという原則
共有物の分割は、交換行為に類似するものの、原則として、税法上は資産の譲渡にはならないと取り扱われています。
それでは、甲と乙とが、A土地とB土地とをそれぞれ共同で購入して共有(持分は甲乙2分の1)していた場合、共有に係る土地を、分割して、甲はA土地を乙はB土地を単独所有するというような時、これを共有物の分割だからとして、譲渡がなかったものと扱えるか、となるとにわかに疑問となりそうです。

共有物につき前提がある
譲渡とされない共有分割では、1つの物を2人が共有で所有しているという関係が前提にあります。
先の甲乙の事例では、2つのものを2人で共有しています。甲はB地の共有持分権を放棄する対価として効用の異なるA地の単独所有権を取得し、乙はA地の共有持分権を放棄する対価として効用の異なるB地の単独所有権を取得するということになります。
従って、これには、分筆登記による共有分割の場合のような扱いにはできません。
所得税法第58条の固定資産の交換の特例の適用がない限り、一般の譲渡として譲渡所得課税の対象とされます。

単独から共有への場合も同じ
同じように、それぞれが単独に所有していた土地を共有とする場合も、実質的には、自己の所有に係る土地の共有持分と他人が所有する土地の共有持分とを交換することなので、本来の譲渡行為に該当します。
この場合、分筆による分割に対応するような、隣接地同士の合筆による共有化だったら、分筆の場合の不課税の論理が合筆にも当てはまるのではないか、との類推が起きても不思議ではありません。
でも、それはダメなのです。所有者の異なる土地は合筆ができないことになっているからです。複数の単独所有土地を一つの共有土地にするには、それぞれの単独所有土地に、他の者の共有持分権を新たに発生させる持分交換を先にして、合筆対象土地の所有者名義を同一にしなければならないからです。

H22.4.27

共有物分割の税務

共有物分割は交換に近い
1つの土地を2人が共有で所有しているという関係は、それぞれがその共有土地の全部について、その有する共有持分に応じて権利を有するということになります。したがって、甲と乙とが共有していた1つの土地をAとBの2つに分割し、甲がA土地を、乙がB土地をそれぞれ単独で所有することとなった場合には、甲はB土地の部分について有していた共有持分権を放棄する代償としてA土地を単独所有することになり、乙はA土地の部分について有していた共有持分権を放棄する代償としてB土地を単独所有するということになって、法律的な構成からすれば、いわば交換に近いことが行われたといえそうです。

交換とは見ない税法の立場
 交換は譲渡の一形態です。しかし、共有物の分割は譲渡に該当するかということになると、税法上はそういう見解をとっていません。
譲渡所得は、資産の値上り益が譲渡によって実現した時に一時の所得として課税の対象とされるものであることから、2人の共有に係る1つの物がその持分に応じて2つに分割されたということだけでその資産に係る譲渡所得が実現したと考えることには無理があるからです。
 共有に係る1つの物をその持分に応じて現物で分割した場合には、その物の全体に及んでいた所有権が単独所有することとなったその物の部分に集約されたに過ぎないので、このような場合における共有物の分割は資産の譲渡にはならないと税法上取り扱われています。

譲渡がないものとされることの意味
 交換はその特例の適用する旨の申告をして課税の繰延を受けられるのですが、共有物の分割の場合は、譲渡がなかったものとするという扱いなので、申告も不要です。
 もちろん、交換特例のための要件である、1年以上の所有とか、直前用途と同一用途とか、という縛りもありません。
土地の分筆による共有分割の場合、分筆の登録免許税こそかかりますが、不動産取得税もかかりません。

H22.4.26

2つの育児給付金を統合

育児休業給付の改正{H22年4月1日改正)
 育児休業給付金は、育児休業中に休業開始時賃金の30%の育児休業基本給付金が支給され、その後職場復帰し6カ月経過後に、20%の育児休業者職場復帰給付金が別々に支給されています。この両者を統合して、育児休業中に支給することになりました。
 これについては、育児休業を取ってもやむを得ない事情で職場復帰できないケース等満額受給できない場合もあり、所得保障の観点から改正が望ましいとする意見の一方で、現在の職場復帰率8割余りを引き上げる観点からは、慎重であるべきという意見も出ていました。しかし、最終的には、育児休業者の所得保障を優先する事とし、2つの給付金を統合する事となりました。

統合された給付金は4月以降の休業開始者に支給
 平成22年4月1日以降に育児休業を開始した人については、2つの給付金がまとめて育児休業中に支給されます。(職場復帰給付金は廃止)。つまり育児休業が終わって職場復帰後6カ月経過を待たなくとも従来の職場復帰給付金を含めた額の給付金を受給できます。
 手続きにおいては、22年3月31日までに育児休業を開始した労働者の職場復帰給付金の手続きを忘れないように注意が必要です。

給付率引き上げ延長措置
 現在の職場復帰給付金は、平成22年3月31日までは本来の給付率が暫定的に20%に引き上げられていて、2つの給付金は合わせて50%となっています。
 今回の改正でこの引き上げ期間は当分の間延長される事となりました。2つの給付金は統合されて基本給付金のみとなりますが、統合後の基本給付金は50%になり支給されます。

H22.4.23

更正の請求の原則と例外

更正の請求のできる期間の原則
所得税などの税金の増額修正は修正申告により納税者自らが行えますが、減額修正は税務署長にしか権限がありませんので、納税者は減額修正の請求を税務署長にすることになります。これを更正の請求といいますが、それには期間制限があり、法定申告期限後1年以内とされています。

法定申告期限がない場合
給与所得者である納税者が医療費控除を受けるための平成21年分の還付申告書を平成22年4月10日に提出した、という場合、この申告書には法定申告期限がなく、期限後申告ということになるものではないので、この還付申告書についての更正の請求期限は、その申告書を提出した日から1年以内となり、平成23年4月10日が提出可能期限となります。

法定申告期限がない場合でも
先の例で、平成21年分の還付申告書を平成22年1月10日に提出した、という場合には、更正の請求期限は、申告書提出後1年以内の平成23年1月10日ではなく、一般の法定申告期限から1年以内のいずれか遅い日であれば行うことができる、とされているので平成23年3月15日が提出可能期限となります。

1年以上経過している場合でも
平成19年分の売上げを平成20年分に計上していたため、平成19年分について平成22年3月19日に修正申告書を提出したという場合、それに伴い、翌年分の平成20年分の確定申告に係る所得税の額が過大となるような時には、修正申告書を提出した日の翌日から2か月以内に限り平成20年分の所得税について更正の請求をすることができます。訴訟が確定したような場合も同じです。

更正の請求の撤回可能性
確定申告書は、提出と同時に所得税額が確定するため、原則として、撤回することはできません。(申告義務のないサラリーマンの申告書のみは例外的に撤回可能です。)
それに対し、請求や届出等は、「法律上の効果が発生するまでは撤回することができる」ものと解され、一旦提出した更正の請求書でも未だ更正処分が行われていない場合には、撤回することができます。

H22.4.22

更正処分の原則と例外

更正処分のできる期間の原則
所得税などの税金の確定は本人からの申告に拠りますが、税務署長もそれを変更する権限を持っています。その権限行使を更正処分といい、期限内申告書に対する(増額)更正処分には法定申告期限(平成21年分の場合は平成22年3月15日)から3年以内、(減額)更正処分は5年以内という期間制限が付されています。(なお、脱税で刑事訴追を受けるようなケースでは7年です。)

そもそも申告義務がない場合
給与所得者である納税者が医療費控除を受けるための平成21年分の還付申告書を平成22年1月10日に提出した、という場合、この申告書には申告義務、すなわち法定申告期限がないので、この還付申告書についての(増額)更正処分の期限は、その申告書を提出した日から3年以内となり、平成25年1月10日が処分可能期限となります。

期限後申告だと3年縛りを超えることも
 申告義務のある者が期限に遅れて、期限後申告書を提出した場合には、(増額)更正処分の期間制限は、法定申告期限から3年を経過する日と期限後申告書提出日から2年を経過する日のいずれか遅い日まで、となっています。
ただし、最長5年が限度なので、4年9ヶ月で出した期限後申告では更正処分可能期間は3ヶ月しかないことになります。

期限内申告でも3年縛りを超えることも
判決があったこと等に基づいて5年前分の申告について更正の請求をしたことに関連して4年前分の所得税額が増加するような場合には、3年経過後にかかわらず、更正の請求に拠る更正があった日から6か月間であれば、期間制限の特例により(増額)更正処分をすることができることになっています。

増税のない場合の増額更正は5年
繰越損失の額を少額なものにする更正処分は増額更正の仲間ですが、損失額の発生年度の額の変更に関しては3年ではなく、5年の期間制限です。ただし、その更正に伴い3年を超える過去の期間について納税額が算出されたとしても、それは期間制限により更正処分の対象になりません。

H22.4.21

青色控除の奇妙現象

青色申告特別控除には10万円と65万円の2種類があります。
 適用対象所得は、10万円の方は不動産所得、事業所得、山林所得で、65万円の方は事業所得と事業的規模の不動産所得です。

控除のときの順序
 控除の順序は、不動産所得、事業所得、山林所得の各所得につきそれぞれ青色申告承認の要件を満たしている限りで不、事、山、の順序です。

なぜか事業規模でないのに65万円控除
 不動産所得と事業所得がある場合で、不動産所得の方は事業的規模ではないので、簡易帳簿で記帳し、申告での不動産所得の青色決算書でも貸借対照表の作成を省略していたとしても、控除の順序には影響はありません。あたかも、65万円控除の適用を受ける資格のない不動産所得について65万円の控除の適用を受けているように見える奇妙なところです。

家内労働者控除の65万円と青色控除
 事業所得者がたまたま内職者などであった場合、必要経費については実額計算の結果が65万円に満たない場合には赤字にならない限りで65万円とすることとなっています。
 この65万円を適用すると、青色決算書の必要経費の欄には何も書かれず、家内労働者控除65万円とでも書かれるだけです。
家内労働者控除の65万円は必要経費で、青色申告控除の65万円は必要経費ではありません。

帳簿要件等、BS記載等があれば可
65万円の青色申告特別控除は、「事業」を営む者が、これらの「事業」につき備え付ける帳簿書類について、その所得の金額に係る一切の取引の内容を詳細に記録等しているほか、貸借対照表及び損益計算書を作成している場合に適用することとされています。
したがって、青色申告の承認を受けている事業所得者で、家内労働者控除65万円を必要経費にしたとしても、そういう損益計算書を作成し、その上で貸借対照表を複式簿記で作成していれば65万円の青色申告特別控除が受けられるということです。
あたかも、65万円控除を二重に受けているように見えてしまう奇妙な現象です。

H22.4.20

営業の目標達成力を上げよう!

営業の目標達成力を上げるには、営業担当個々の営業力を高める方法と、営業グループ全体の営業力を高める方法がありますが、ここでは後者の方法に焦点を当てて、担当者間で競い合いながら営業目標達成力を上げる方法を紹介しましょう。

目標はシンプルに
 競い合う目標は売上高・利益を、毎月・半期・1年で評価するなど、なるべく分かりやすくシンプルにします。
そして、営業担当者のペアを作るなどグループを決め、その一人当たり達成目標を決めて競い合う仕組みにします。
ペア間の競争意識が出て、ペアになった担当者はあれこれと営業のやり方を工夫しながら競い合うようになるでしょう。

営業のゲーム化でやる気を高める
社長がこのような競争を仕掛けるときは、尻を叩いたり、単純に馬の鼻先に人参をぶら下げる意識ではなく、ゲーム感覚で、明るく楽しく真剣に、どんな小さなことでも担当者がああでもない、こうでもないと自分達で工夫したり、試したりしながら頑張るように仕向けると良いでしょう。

ゲーム化の留意点は
①毎月・半期・年間で定期的に各ペアの営業目標達成実績を社内公表し、評価、表彰します。
②社長自ら成績が良いペア・営業マンのどのような工夫が売上・利益の向上に効果があったのか、具体的に解説した上で表彰状を渡します。
そうすると、新しい営業ノウハウが、営業社員全体に広がって行きます。
このように営業担当者が、自分達の営業のやり方を自由闊達に話し合い、常に自分を深堀しながら、競争を楽しむようになると継続的な好業績に結びつくのです。

パートさんの頑張りを引き出そう
パートさんなど女性の競争感覚は大変鋭く、責任意識が高く、また楽しいことが大好きだと言う特性を持っていますから、パートさんに頑張ってもらうと販売が伸びる業種でもこの考え方、方法が使えます。

H22.4.19

たばこ増税と禁煙効果

たばこ税の増税
2010年度税制改正案は3月24日参院通過し成立しました。そこにはたばこ税の増税が盛り込まれました。今年10月から1本当たり3.5円の増税となり、その結果、平均で1箱あたり100円の値上げとなるようです。
JTのホームページによると現在1箱300円の場合、63.1%の189.17円が税金です。今後は65.98%の263.93円が税金となる計算です。

日本人の喫煙状況
平成20年の成人喫煙率調査では、日本人の喫煙者は2477万人、喫煙者率は21.8%で、男性喫煙者は1946万人、喫煙者率は36.8%、女性喫煙者は531万人、喫煙者率は9.1%です。女性喫煙者が漸増しているのに対し、男性喫煙者は平成7年より減少してきており、平成17年度以降4割をきるようになり、年々減少しています。
たばこ税の税収2.2兆円から逆算して喫煙者平均1人1日0.8箱消費していることになります。

たばこ値上げの禁煙効果
 インターネットでのアンケート調査をしたとの報告がある喫煙補助剤を販売するJohnson & Johnsonのホームページをみると、禁煙・節煙を考えている喫煙者の6割超が、たばこ税増税を機に禁煙すると回答しています。
増税を機に「完全にやめたいと思う」が21.5%、「本数を徐々に減らし、やめたいと思う」が40.7%、「本数は減らしたいが、やめたいとは思わない」が20.2%、「やめたい、減らしたいと思っているが、増税とは関係ない」が17.6%です。

禁煙成功確率3分の1として
 この調査報告によると、日本全国には将来、禁煙・節煙を考えている喫煙者は、約1800万人いて、これは喫煙者の72.7%で、さらにその6割すなわち全体の43.6%約1080万人の喫煙者が、この機会に禁煙にチャレンジすると推測できます。禁煙成功確率が3分の1として、14.5%のたばこ売上減少となります。増税による税収増が30%で、禁煙による税収減が15%といったところがここから見えてくる予測値です。
 政府の大義名分としての健康という観点からのたばこ税の見直しとしてはまだまだ不十分ということになるかもしれません。

H22.4.16

滞納借主への対処にご注意を

鍵の交換は確かに即効的ではあるが・・・
不動産の賃貸経営で避けられないのは、借主の賃料滞納と明渡しの問題です。
長期間にわたり賃料を滞納する借主に対しては、賃貸借契約を解除の上、明渡請求をなし、それでも応じなければ裁判を起こすことになろうことは、大方察しがつくことでしょう。
しかし、建物賃貸借について、より手っ取り早い方法として、こちらで鍵を替えて、借主を締め出す方法を聞いたことがある、あるいは、現にやったことがあるという方もおられるかも知れません。

自力救済の禁止
しかし、これは、法治国家である我が国では問題ありと言わざるを得ません。
すなわち、自力救済禁止の原則から、仮に自らの権利が侵害されても、その回復は、自らの実力行使ではなく、司法手続に委ねて図らねばならないとされております。 
もっとも、かつては、借主は賃料を滞納している手前、それを問題だとして訴えることはなかったかも知れません。
しかし、今日の権利意識の高まりの表れとして、このような手法を問題視し、司法の場で責任追及する事例が出てきました。

損害賠償の対象に
そして、本件建物内の動産類の撤去の機会を与えず、明渡しの要否について判断ができず、鍵の交換を承諾又は容認したとは認められない事情の下でなされた鍵の交換について、借主の占有権を侵害する自力救済で、違法であるとして不法行為が成立し、貸主の損害賠償責任を認めるという裁判例が出されました。

刑事罰の対象になりうる
また、家賃債務の保証業者による悪質な取立てによる弊害を背景に、これを刑事罰で取り締まろうという動きも出て来ました。
すなわち、借主に無断で鍵を換えて部屋に入れなくしたり、深夜や早朝に家を訪れて督促したりすること等の行為を禁止し、これに違反すれば2年以下の懲役または300万円以下の罰金を科し、悪質な事例には両方を科すという厳しい内容の法案が今国会で提出されました。
このような現状からすれば、鍵の交換という手段はもはや禁じ手と心得るべきです。

H22.4.15

医療・介護の保険料負担膨らむ

協会けんぽ保険料率改定
 全国健康保険協会は、3月(4月納付分)からの健康保険・介護保険料の引き上げを発表しました。これによると、健康保険は全国平均で現在の8.2%(労使折半)から22年度は9.34%に引き上げられます。景気低迷から、保険料収入の落ち込みと高齢化による医療費支出の増大等が主因で財政悪化と言われていました。

新保険料負担増分の計算方法
 協会けんぽ加入者各人の保険料負担が4月納付分からいくら位増えるのかは、簡単な計算で把握できます。
 保険料の上昇率は医療保険の1.14%に介護の0.31%を合わせた1.45%。労使折半した保険料率0.725%(40歳未満は介護分が無いため0.57%)。この数字を自分の税引き前の年収に乗じれば、おおよその負担増額が分かります。
 実際には健康保険料率は住んでいる地域によって違っており、計算には各人の算定の基礎となる標準報酬月額と標準賞与の合計額に保険料率を乗じて計算します。

協会けんぽだけでない厳しい財政状況
 自分の加入している健康保険が協会けんぽでなく、健康保険組合だったとしても安心はできず、財政悪化の背景は同じ状況です。厚労省は組合健保に協会けんぽへの財政支援を義務付ける法案を国会に提出している段階で、今後、保険料値上げをせざるを得ない組合も出て来るかもしれません。
 物価は下がっても、給料の手取りの減少や保険料の値上がり等で負担はむしろ増えていく方向が見えてきています。

各都道府県の保険料率(H22.3~)
北海道9.42% 滋賀県9.33% 青森県9.35% 京都府9.33% 岩手県9.32% 大阪府9.38% 宮城県9.34% 兵庫県9.36% 秋田県9.37% 奈良県9.35% 山形県9.30% 和歌山県9.37%福島県9.33% 鳥取県9.34% 茨城県9.30% 島根県9.35% 栃木県9.32% 岡山県9.38% 群馬県9.31% 広島県9.37% 埼玉県9.30% 山口県9.37% 千葉県9.31% 徳島県9.39% 東京都9.32% 香川県9.40% 神奈川県9.33%愛媛県9.34% 新潟県9.29% 高知県9.38% 富山県9.31% 福岡県9.40% 石川県9.36% 佐賀県9.41% 福井県9.34% 長崎県9.37% 山梨権9.31% 熊本県9.37% 長野県9.26% 大分県9.38% 岐阜県9.34% 宮崎県9.34% 静岡県9.30% 鹿児島県9.36% 愛知県9.33%沖縄県9.33% 三重県9.34%

H22.4.14

「のれん」

「のれん」とは、何ですか?の問いに、それは「超過収益力」であるとよく言われます。しかし、「のれん」には、「負ののれん」もあり、その整合性をどう説明するのか、さらに、無形固定資産である「営業権」との関係をどう峻別するか、難しい論点もあります。ですが、ここでは、この「のれん」がどのような仕組みで計上されるのか、少し整理してみたいと思います。

差額概念としての「のれん」
 会計基準では、「のれん」とは被買収企業または取得した事業の取得価額が、取得した資産及び引受けた負債の純額を超過する額をいう、と定義しています。
 より具体的には、買収価額>被買収企業の時価純資産価額のときに「のれん」が生じるということです。この場合の「のれん」は、買収価額が被買収企業の時価純資産価額を上回っていますので、その意味では、この超過額は超過収益力(被買収企業が持っている確立したブランドなどの無形の価値)と言っても問題ないかと思います。
 一方、買収価額<被買収企業の時価純資産価額のときに「負ののれん」が生じます。この「負ののれん」ですが、被買収企業に純資産額に見合った企業価値がないと判断された場合の買収や合併の際に生じるものです。具体的は、事業資産を有効に活用し、投資効率を上げるまでには時間を要する場合などがその例のようです。

「のれん」の会計処理
 会計基準では、「のれん」の償却は20年以内の投資効果の及ぶ年数で規則的に償却するものとされています。しかし、「負ののれん」に関しては、その生じた事業年度において一括で利益に計上すべきものとされています(貸方のれんですので、利益に計上されます)。

法人税法と「のれん」
 法人税法においても、原則、この「のれん」の計上の仕組みは、会計基準と同じです。しかし、取扱に関しては、非適格合併などの場合にその計上が認められ、「のれん」は「資産調整勘定」として借方に計上され、一方、「負ののれん」は「差額負債調整勘定」として貸方に計上されます。
 償却に関しては、いずれも5年間にわたり月割で償却(減額)し各事業年度の損金又は益金の額に算入されますが、損金経理は不要です。

H22.4.13

医療と介護の負担軽減

高額医療・高額介護合算療養費制度
 同世帯の中で同時期に医療保険や介護保険を支払い、両方を合算した額が一定の基準を超えた場合に自己負担額を軽減する措置が新たに設けられました。

支給要件は?
 健康保険の被保険者とその被扶養者が平成20年8月~平成21年7月に支払った医療保険・介護保険の自己負担額(高額療養費及び高額介護サービスの支給額は除く)の合計額基準額を超えた場合に支給されます。
①以後、毎年8月~翌年7月までの1年間に支払った医療保険・介護保険の自己負担額が対象
②入院時の食事代、差額ベッド代は対象外
③基準額を501円以上超えた時が対象

支給される一例と申込方法
 被保険者・被扶養者とも70歳未満で所得が一般の方の場合の例
 一年間で一人が医療保険53万円、もう一人が介護保険で44万円を支払った場合、年間負担額の合計は97万円となり、基準額(67万円)を超えた金額30万円が支給されます。
 支給申請は介護保険(市区町村)の窓口で申請手続きをして介護保険の自己負担額の証明書の交付を受け、これを添付して協会けんぽや健康保険に申請します。平成20年4月から21年7月までに、現在加入している以外の健保に加入していて、現在の健保に移ってきた方は、以前に加入していた医療保険の窓口への手続きも必要です。

基準額 ( )内はH20.4-H21.7の額
70~74歳の方
① 高齢受給者証の負担割合が「3割」となっている場合 67万円(89万円)
② ①③④以外の場合 56万円(75万円)
③ 被保険者が市区町村民税非課税の場合 31万円(41万円)
④ ③のうち、被保険者とその被扶養者全員の所得が一定以下の場合 19万円(25万円)
70歳未満の方
① 被保険者の標準報酬月額が53万円以上の場合 126万円(168万円)
② ①③以外の場合 67万円(89万円)
③ 被保険者が市町村民税非課税の場合 34万円(45万円)

H22.4.12

個人の確定申告 誤り・失念に気付いたとき!

 確定申告も終わり、ホッと一息です。いろいろと申告書に関する資料を整理していると、「税金を過少(過大な還付)」に申告していたり、また、「税金を過大」に申告していたり、その誤りに気付くことがよくあります。
 そこで、それぞれのケースについて、適正申告のための諸手続きに関して整理したいと思います。

「税金の過少申告(過大還付)」に気付いたとき
 まず、自主的に「修正申告」をすることでしょう。これによって過少申告加算税はかからず、延滞説(納付期限の2ヶ月以内は4.3%、以後は14.6%)だけの課税で済みます。
 しかし、税務署からの指摘などによって不足税金を納めるときは、原則、追加して納めるべき税金の10%の過少申告加算税がかかり、追加税金額が、期限内に申告して納めた税金または50万円のいずれか多い金額を超えるときは、その超える部分の税金に15%相当の加算税がかかります。余分な税金を納めなくてもすむよう、適時適正な対応が必要かと思います。

「税金の過大申告」に気付いたとき
 税金の納めすぎが判明したときは、来年の3月15日までに「更正の請求」をするとによって税金は戻してもらうことができます。
 なお、申告の誤り内容によっては、「更正の請求」期間経過後であっても、税務署長への「嘆願」あるいは憲法16条に保証された請願法に基づく「請願権」によって税金を戻してもらうことができます。
このことを「減額更正」といいます。この減額更正は、税務署長が申告期限から5年以内であればできることになっています。

確定申告を失念してしまった場合
 うっかり、申告期限まで確定申告を失念してしまった場合には、原則、期限後に申告して納める税金の15%、その納める税金が50万円を超えるときは20%の無申告加算税と延滞税が課されることになるので注意が必要です。
 但し、期限後申告であっても税務調査や税務署から指摘される前に自主的に申告をしたときには、無申告加算税も5%に軽減されます。

H22.4.9

提出を要しない確定申告書

 一ケ所からの給与しかなく、他に所得のないサラリーマンで、妻を控除配偶者として年末調整を済ませていたが、妻の所得が38万円超であると分かったため、税務署に配偶者控除不適用の確定申告書を提出した場合のその意味について考えて見ます。

申告義務のない確定申告書の提出
 このサラリーマンには確定申告の提出義務はなく、税務署長にもこれに対し確定申告を強制する決定権限はありません。しかし、自主的に提出された確定申告書は法的には有効です。
サラリーマンには確定申告をすることが禁じられているのではなく、申告義務が免除されているに過ぎないからです。

提出した確定申告の撤回も任意
 とはいえ、サラリーマンの自主申告に対する国税庁の姿勢はこれを本来のあるべき姿とは捉えていません。
通達によると、確定申告義務のないサラリーマンの提出した申告書は、撤回の申立てをすると当然に撤回されることになり、申告により納付した税額も還付されることになっています。

過年度分の申告の場合の附帯税
 また、サラリーマンには、そもそも確定申告書の提出義務がなく、従って提出期限の定めもないので、サラリーマンの提出する自主的申告書は、例え過年度分であったとしても期限後申告書には該当しません。
 従って、加算税や延滞税の課せられるべき構成要件に該当することはありません。

再年調処理が実務の慣例
 サラリーマンの自主申告があったことによって、その者に係る国の歳入額がすでに充足されていたとしても、源泉徴収義務者が正当な計算を行って追徴税額を徴収する義務が免除されるわけではありません。
 課税庁が年末調整の不適正を知った時は、源泉徴収義務者を通じた年末調整の再計算を慫慂(しょうよう)してきます。

再年調の規定はない
しかし、法的には再調整の規定は存在しません。年末調整は年の最後の給与で行うものとされ、扶養控除等の情報申告・修正も給料日前に行うものとされており、予測された真実に基づく限りそれは適正であり、源泉徴収義務者にはその申告の正否を調査する義務も権限もありません。

H22.4.8

人事考課の留意点

人事考課の難しさ
人が人を評価することは、大変難しいものですが、さりとて評価をしないとできる社員も働きが悪い社員も賃金や昇進で同じ扱いを受ける「悪平等」につながって、会社の活力が生まれません。 
例えば社長が、人事考課の結果をA~Eの5段階区分になるように努力しても考課結果が中間評価のCに集まってしまい、メリハリのある考課にならない、と言った悩みが生まれます。社長としては、良く頑張った者とそうでない者を明確に区分して、社員のモラールを上げたいと思っても、メリハリのある評価結果が出せないことがよく起こります。

人事考課・5つの誤り
人事考課で陥り易い誤りの代表的なものは次の5項目です。

1. ハロー効果:ハロー(HALO)とは、太陽・月などのかさや後光のこと、ハローがかかっていると本体が見えにくくなり、部下のある特性が優れている(又は劣っている)と他の特性も同じに見えてしまう誤り

2. 寛大化傾向:常に甘い方へ偏ってしまう誤り(人情・愛情・好意・部下に恨まれたくない、などが原因)

3. 中心化傾向:考課が「普通の成績」にあつまり、優劣に差がない傾向(考課をする人に自信がないことが原因)

4. 論理誤差:「責任感」「規律」など考課の概念が似ていると、同じ考課にしてしまう誤り

5.対比誤差:考課者が自分を基準にして考課する結果、生じる誤り(自分の専門分野については厳しく、専門でない分野については甘くなるのが原因)

誤りを防ぐ対策
 社長として、評価を受ける社員が「どんな立派なことを言ったか」ではなく、「実際にどんな時、どんな行動をとったか、その結果はどうなったか」に注目して、優れた点、劣った点を褒めたり、注意したりしながら、都度具体的に記録しておき、きちんと見分け、メリハリのある考課を実践することが5つの誤りを防ぐ共通のカンどころです。

H22.4.7

全国で6名のための制度

超稀少な人々
 サラリーマン5500万人のための税制に特定支出控除という制度があります。この利用者は極めて少なく、1000万人に1人の割合でしか利用されていないので、利用者に遭遇することは限りなく困難といえます。
平成20年の利用者数はたったの6人です。平成19年で7人、平成18年で9人、平成17年で13名、平成16年9名、平成15年10名という状況です。

特定支出控除とは
サラリーマンにも確定申告の道を拓くものとして1987年(昭和62年)に創設されたもので、給与所得者が特定の支出をした場合、その年の特定支出の合計額が給与所得額を超えるときは、その超える金額が給与所得控除後の金額から差し引ける、というものです。
もし、給与に係る必要経費があるとして、給与所得控除額よりも少ない金額で確定申告をしたとしても、その申告は誤りのある申告として、給与所得控除額による所得計算に置きかえる更正処分をされて税金は還付されます。

限定的な特定支出
特定支出は、1)通勤費、2)転勤に伴う引っ越し費用等、3)研修費、4)一定の資格取得費、5)単身赴任者の勤務地と自宅の往復旅費の5つだけです。
この5つという特定支出の範囲が極めて狭いこと、またその適用にあたっては、要件が事細かく定められていて限りなく使いにくいこと、ということをみていると、国税庁としてこれの利用者を絶対に増やさせない、との決意を固く持っていることが自ずと推測されるところです。

政権交代でどうなるのか
今年の税制改正大綱に「給与所得控除と特定支出控除を見直すことにより、特定支出控除の選択的適用の増加を通じ、給与所得者の確定申告の機会拡大につなげます」とありました。ただし、今年の改正税法の原案にはこれに係るものは全然ありませんでした。
言うは易く行うは難し、です。特定支出控除制度は、すなわち架空経費控除になっている給与所得控除問題のことなので、容易には手がつけられないものです。

H22.4.6

法人税法上の役員

役員の範囲が広い

 会社が従業員に支払う給料・賞与は、原則、その支給時期、支給額等の如何を問わず、費用として損金の額に算入することができます。しかし、役員ともなると、給料については定期同額、賞与に関しては事前確定届出といったその支給形態等について一定の要件を満たさなければ損金の額に算入されません。
 税法上の役員が会社法上の役員よりその定義が広いため、うっかり、従業員と思っていた者が役員に該当し、結果、その者に支払っていた給与・賞与の一部が損金不算入になってしまうことがあり、役員の是非について慎重な対応が必要かと思います。

税法上の役員となる人
 役員と言えば、会社法上の役員(取締役、監査役、執行役、会計参与など)を言いますが、これらの役員は、当然、法人税上の役員です。
 税法特有の役員とは、役員の肩書きがなくても、事実上、会社の経営に関与している人で、例えば、会社法上の役員でありませんが、会長、相談役、顧問といった肩書きで経営に従事している人、また、同族会社の従業員になっているけれど、一定の持株割合を超える株を持っている人で、経営に従事している人などが該当します。
これらの人を法人税法では「みなし役員」と言います。

会社の経営に従事するとは
 「みなし役員」に該当するかどうかは、経営に従事していることが要件です。「経営に従事している」とは、経営上の重要な意思決定に参画していることで、具体的には、資金調達等の決定、新規事業や設備の決定、事業の撤退、重要な契約に関する決定、価額の決定、主要な取引先の選定や変更などが上げられます。

使用人兼務役員とは
 役員の中には、取締役営業部長・経理部長・工場長などの肩書で、役員でありながら従業員としての職制上の地位を持ち、かつ、常時使用人として職務に従事している人がいます。このような人を「使用人兼務役員」と言います。この兼務役員の使用人としての賞与の損金算入については、その支給に関して一定の制約があります。なお、代表取締役など一定の役員、同族会社の役員で一定の持株割合を超えている人は、使用人兼務役員にはなれません。

H22.4.5

チームワークづくりのポイント

 不況で製品が売れにくい時などに、営業部門は「開発部門が良い製品開発をしてくれないから売れないのだ。」と言い、開発部門は「営業が製品の特長や強みを良く理解して売ってくれないから売上が上がらないのだ。」とお互いが責任を追及する、と言ったチームワークの乱れが起こりがちです。

チームワークが低下する原因
 営業担当・開発担当などの間のチームワークが低下する本質的原因は、次のような点にあります。
① お互いが経営目標(売上・利益目標)と「顧客ご満足」を得るお互いの役割分担を理解し合っていない。
② お客様から見て、製品の品質や営業方法・納入方法等どこがどのように不足しているのか、事実を通じて具体的に掴んでいない。
③ それぞれの部門が、お互いに謙虚に反省せず「うまく行かないのは相手の責任だ。」と責任転嫁をしている。
①~③の結果「チームワーク・人間関係が良くないと言う事態」に陥っているのですが、社長が中に入って、それぞれに反省を促したり、仲直りをさせようと、一杯やる席を設けたりしても一向に改善されません。
何故かと言うと、チームワークが良くないのは「人間関係」に起因しているのではなく、「仕事関係」の悪さに起因して「人間関係」がおかしくなっているからで、根本の改善が必要なのです。

「仕事関係」改善でチームワークを
このような場合、社長におすすめの処方箋は次のように「仕事関係」を改善するリーダーシップを発揮することです。
① 売上・利益など経営の現状、経営目標(在りたい姿)を数値で理解し合う。
② 経営目標を達成するために、「納入製品や、関連サービス・納期など、お客様の具体的な要望事項・ご注意」を事実に即して的確につかむ。
③ その情報から、それぞれの担当が改善に取り組むとともに、協力してお客様への対応の仕方を変える改善を行う。
このような「仕事関係」の改善は売上高・利益の向上と社員の一体感を高め、しかも皆が成長する上策と言えます。

H22.4.2

司法書士の立合責任

司法書士の取引立合い
 税理士も時には不動産取引の契約決済の場面に立ち合うことを依頼されることがありますが、司法書士さんの場合はそれが本来の業務です。
 司法書士として不動産取引に立ち合うことは、その取引の信頼性を保証するような役回りを引き受けることになります。取引当事者はそれで安心できますが、ほとんど立合料という特別の報酬を受け取っていないにもかかわらず、すごく大きなリスクを負っているわけです。

当事者に悪意があるとき
 善意の当事者だけならリスクは少ないでしょうが、詐欺師のような人を相手にしたとなると、責任重大です。
 土地所有者になりすました人物との間で売買契約を締結し、売買代金を騙し取られた当事者が、土地所有者と称した相手側について本人確認作業をした司法書士及び司法書士法人に対し、本人確認を誤った過失があると主張して、損害賠償を求めたという事件があります。

司法書士の過失と損害額
 司法書士は、相手が真正な不動産所有者であることを確認すべきであるにもかかわらず、偽造の運転免許証をつぶさに検証することなく安易に信用し、売買代金を騙し取られる原因を作ったと主張されました。
 売買代金は2億円で登録免許税は262万円でした。

判決による損害賠償額
 判決は、原告の側にも過失があったとして過失相殺2割を減じた1億6千万円余の損害賠償義務を負うとしました。
司法書士には運転免許証が偽造であるかどうかを見抜く専門的能力はないのであるから、過大な要求であるなどと反論していましたが、認められませんでした。
裁判は高裁に控訴されています。

税理士の場合にも
 平成の時代になってから、税理士への損害賠償請求訴訟も起こされるようになってきており、過去に買換え特例を適用した事実があるかないかについて税務署に問い合わせる義務があるとされた判決や、相続税の納付についての物納手続きの依頼を延納手続きにしてしまった事案で2億8千万円余の損害賠償義務を課せられた判決があります。専門家の責任は重くなっています。

H22.4.1

新卒者を雇った時の助成金

新卒者体験雇用奨励金
 長引く景気低迷を受け、新卒者の雇用も今年度の就職内定率は大卒で73.1%と過去最も厳しかった04年春卒業者を下回っています。このような雇用情勢の中、就職先が未決定の新規学卒者を、31日間の有期雇用の体験者として受け入れた時に支給される助成金が新設されました。

受給要件、受給額は
 雇用される対象者は、ハローワークに求職登録を行い、就職先が未決定の者で、平成21年10月から平成22年9月末までに卒業した者の内、雇い入れ開始日現在の満年齢が40歳未満のものです。受給要件は、以下の通りです。
①ハローワークからの紹介により、対象者を雇い入れ、31日間の有期雇用の体験雇用を実施する事。
②体験雇用に係る職業紹介を受ける以前に、その対象者を雇用する約束をしていない事。
③体験雇用開始日から10日以内に、対象者の同意を得て「体験者雇用実施計画書」を提出する事。
受給額は一人当たり8万円です。手続きは、「体験雇用結果報告書兼新卒者体験雇用奨励金支給申請書」を指定された添付書類とともに、体験雇用終了日の翌日から起算して1カ月以内にハローワークへ提出します。

注意するポイントは
①体験雇用期間中の賃金・労働時間等については、体験雇用の開始にあたり、実施計画書にあらかじめ定める必要があり、労働時間は原則、各事業所の通常の労働者の1週間の所定労働時間と同程度(30時間を下回らない)である事です。
②実施計画書に定める「正規雇用へ移行する為の要件」を対象者が満たした場合、原則、体験終了後には正規雇用扱いに移行しなければならない為、要件は吟味して記載しましょう。
③この制度は22年度限りの時限措置で平成23年3月末までに体験雇用を開始した人が奨励金の対象者です。