港区 税理士法人 大沢会計
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2008年11月

2008/11/30

H20.11.28

固定資産税日割負担額譲渡代金とみなす不合理

公租公課の負担条項
不動産の売買契約書には、固定資産税と都市計画税について、日割り計算で所有者期間に応じて負担しあう旨あらかじめ印刷されています。不動産を所有することによる自治体の行政サービスへの応益負担費用としての公租公課は資産の所有・使用・収益する期間に対応させて按分するべきだからです。

税務署の捉え方
ところが、税務当局はこの按分された税金を不動産の売買価格の追加払いとみなします。固定資産税等は1月1日所有者に課税され、その日後に所有者の異動が生じても納税義務に変動が生じるものではないので、買主負担額は固定資産税等そのものではなく、取引代金の一部にすぎない、という極めて形式論の理由からです。この見解は以前から当局の代弁者から開示されており、平成7年に消費税基本通達が出されるに際しては、それが通達に記載されました。その後平成13年、14年の国税不服審判所の裁決でこの見解が支持されるに及び、当局監修の質疑応答集に全税目を通した見解として掲載されました。そして、税実務上のこれへのチェックが厳しくなってきました。

民間サイドからの疑問
この税務当局の解釈に対して、民間サイドでは大勢的には順応でありながらも、これを疑問とする意見も根強くありました。支払い済みの固定資産税等の未経過分を回収しただけの収入に利益(所得)は存しないからです。年末年始日譲渡だと固定資産税等の按分はないのに、1月2日譲渡の場合は1年分の固定資産税等の負担替えがあり、これを譲渡代金とすると、不動産価格が年始の2日に騰貴したことと理解するしかありません。これは不合理なことです。

裁判所の先例をみると
昭和47年の最高裁判決は、所有権の異動に伴い固定資産税等の負担の変更をするのが本来で、そうしないのは地方税法の課税技術上の都合に過ぎず、買主が負担を免れるとすれば不当利得であるから、当事者間で精算をするべきである、としています。これは民民の事件でした。
公租公課の負担精算を譲渡収入として課税する不合理はいずれ税金裁判の場で争うテーマになりそうです。

H20.11.27

端数処理の定め

基本法がある
税金や社会保険料などの計算をするときの端数処理については、「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」という基本法があります。1円未満は切り捨てとの定めを置いています。そして、他の法律に優先する法規である旨を唱っています。

税金は国税通則法でさらに詳しく
1円未満切り捨ての後の金額について、国税通則法にはさらに、国税納付額の100円未満端数、又は全額が100円未満(延滞税は1000円未満、加算税は5000円未満)の時の全額を切り捨てる、との原則、課税標準(税率を乗ずる前の金額)については1000円未満端数、又は全額が1000円未満(附帯税は1万円未満)の時の全額を切り捨てる、との原則が定められています。
なお、地方税については国税準拠ですが、地方税法に少し異なる定めもあります。

社会保険の場合は
社会保険は、会社と従業員で負担を折半するので、折半時に端数がよく出ます。社会保険の「標準報酬月額料額表」をみると1円未満の端数が記載されています。この折半端数は官民の関係としての国との債権債務ではないので、「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」の範囲外になり切り捨てが強制されません。こういう場合に適用されるのが「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」です。これは民民の関係にも適用されます。この法律は、1円未満を四捨五入と規定しています。したがって、社会保険料の折半後の負担額に1円未満があった場合は四捨五入によって金額が確定されます。

強硬法規ではない
なお、折半額の端数が0.5円だった場合は、両方で繰り上げとなり、納付額が1円多いことになってしまうので、その時は従業員負担側のみ切り捨てとする、という行政案内が示されています。
これでわかるように、「通貨の単位及び貨幣の発行
等に関する法律」は強硬法規ではなく、任意の定めを優先としています。1円未満はすべて会社負担と特約してもよい、ということです。

H20.11.26

似て非なるもの請負と委任はどう違う?

1)そもそもどんなもの?
請負とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して請負人に報酬を支払うことを約束する契約です。
委任とは、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方(受任者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約です。委任の定義においては、委任の対象となるのは「法律行為」とされていますが、事務処理や管理業務等の法律行為以外の委託も「準委任」と呼ばれ、委任の法律が準用されます。

(2)両者の特徴は
請負は定義のとおり、有償契約であり仕事の成果である目的物が存在します。報酬の支払い時期は、特約がない限り目的物の引渡と同時に行われます(後払いが原則)。
一方委任は、無償を原則としており、報酬を支払う特約がない限り、受任者は報酬を請求できないこととされています。

(3)似ている点は
両者とも、一方の当事者がもう一方の当事者に何かを依頼する契約です。また、請負も委任も、当事者の合意があれば契約書を作成しなくても成立する諾成契約です。

(4)印紙税法では大違い
ただし、契約書を作成する場合、印紙税の関係では請負と委任で大きな違いが生じます。請負契約書は第2号文書として印紙税の課税対象となりますが、委任契約書は印紙税の課税文書には該当しません。契約書を作成する場合、その契約が請負契約なのか委任契約なのかによって、収入印紙の貼付の要否が異なります。
例えば、税理士とお客様が顧問契約書を作成する場合、税務相談や事務処理を行うことは委任契約となりますので、これを内容とする契約書は印紙税の課税対象にはなりませんが、決算書や申告書の作成に対して報酬を支払う契約は、一般的には請負契約とみなされるため、この内容が記載された契約書は印紙税の課税対象とされます。この点では、両者を厳密に区分する必要があります。

H20.11.25

中小企業の資金調達方法あれこれ

急速な景気悪化を受けて、政策公庫のセーフティーネット貸付の拡充、自治体の制度融資枠の拡大や融資条件の緩和等が実施されていますが、資金調達には次の方法もあります。
少人数私募債
社債の一種ですが、大企業のように不特定多数を引受先とするのではなく、身近な少人数の縁故者(役員及びその親族、従業員、取引先等)に直接引き受けを依頼するものです。特徴は次の通りです。
(1)取締役会の決議で発行でき、発行金額、償還期間や利率を自由に決められます。
(2)無担保、社債券の発行不要、官庁への届出義務もなく、比較的簡単に発行可能。
(3)募集できるのは49人まで、社債1口の最低額が発行総額の50分の1より大きいこと、など一定の制限があります。
(4)定期預金利息よりも高い利率を設定することなどで、従業員の福利厚生制度としても活用できます。
(5)利息は20%(所得税15%、住民税5%)の源泉分離課税ですので、確定申告の必要はありません。社長個人からの借入金があれば、少人数私募債に切り替えてもよいでしょう。
(6)社債利息の一部に対し、補助金を支給する制度のある自治体もあります。

流動資産担保融資(ABL)
不動産以外の動産(在庫、機械設備等)・債権(売掛金等)など流動性の高い資産を担保として融資を受ける制度です。不動産担保や第三者保証に依存せず、事業収益の源泉となる様々な資産を資金調達に活用できる制度として期待されています。
また、昨年、中小企業信用保険法が改正され、担保対象に売掛債権のほか、商品・製品、原材料等の棚卸資産が追加され、信用保証協会において「流動資産担保融資保証制度」が取り扱われることとなりました。
棚卸資産の場合、簿価の30%までが融資限度額とされていますが、金融機関との協議次第で最大70%まで引き上げが可能です。必要に応じて、取引金融機関にお尋ねいただくと良いでしょう。

H20.11.21

夫には年齢制限あり遺族年金

悲しいことですが、万一厚生年金保険加入中に配偶者が亡くなった時、遺族が受けられる年金はどうなっているのでしょうか。
厚生年金の遺族給付が受けられる場合は
①厚生年金、共済年金に加入中の方が亡くなった場合
②病気退職後に亡くなった場合
(但、在職中に初診日のある傷病が原因で初診日から5年以内の死亡に限る)
③1級又は2級の障害年金を受給中の方が亡くなった場合
④3級の障害年金を受給中の方が同一病名で亡くなった場合
⑤老齢厚生年金受給中の方又は受給資格のある方が亡くなった場合

①~⑤のような場合、遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母)の先順位者が受給できますが、妻以外には年齢による制限があります。
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた妻が死亡した場合、遺族基礎年金と違い夫も受給できます。但、妻が死亡した時に夫の年齢が55歳以上で、妻が生計を維持していたことが条件で、60歳から受給できる事となっています。生計を維持していれば妻の方が収入が多い専業主夫であっても受給権はあります。しかし、一般的には夫がずっと会社員の場合、自分の厚生年金の方が多いので、妻の遺族厚生年金を受給する人は少ないのですが、妻がずっと会社員(又は共済組合員)で夫が自営業で国民年金だけに加入していたケース等は受け取るケースもあるかもしれません。但、妻の死亡時夫が55歳以上であることが要件です(夫の要件は年齢による制限があります。)。一方、妻に年齢制限がかかる場合では、妻が満30歳未満で子が無い時に夫が亡くなった場合は、5年間しか遺族厚生年金は受け取れないこととなっています。

H20.11.20

妻と夫の遺族年金

遺族年金の給付の種類
もしも配偶者や親が亡くなった時、残された遺族に支給される遺族年金ですが、国民年金では、遺族年金と寡婦年金、死亡一時金が支給され、厚生年金では遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。配偶者が亡くなった場合、受給要件は夫と妻でかなり違います。国民年金の受給要件を見てみます。
国民年金の遺族給付は
①遺族基礎年金が受給できる場合
ア 国民年金に加入中の夫が亡くなった場合
イ 60歳以上65歳未満の夫が日本に住んでいる間に亡くなった場合
ウ 老齢基礎年金を受給している(受給資格のある)夫が亡くなった場合
ア~ウのような場合で18歳到達年度末までにある子(又は20歳未満の障害のある子)がいる妻又はこの条件にある子が受給できます。但、ア、イの場合には死亡日前の保険料納付済期間と免除期間を併せた全期間の3分の2以上の納付が必要です。又は平成28年3月31日までは、死亡日前1年間に未納期間がなければ受給できます。
②寡婦年金が受給できる場合
妻が60歳から65歳になるまでの間の5年間に一定の条件を満たした夫が亡くなった場合に受給できます。
③死亡一時金が受給できる場合
自分自身で国民年金保険料を納めた期間が3年以上ある人が亡くなった場合に一定の条件の下、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順に、先順位者が受給できます。
このように、たとえ夫が「専業主夫」で、又、何歳であったとしても、夫には遺族基礎年金の受給はできません。
夫は65歳になった時、自らの老齢基礎年金を受けることとなります。

H20.11.19

どちらが得か税込経理と税抜経理

選択はいつでも任意
消費税の経理処理としては、税込経理と税抜経理どちらの方式を選択してもよいことになっています。そして、どちらの方法を選んでも年間に納付すべき消費税の金額は同じになります。
また、税込経理でも、期末で確定する消費税の額を未払金として計上すると、税抜経理の時の会計上の利益の額と、基本的には同じになりますので、損得はありません。
ただし、税込経理、税抜経理にそれぞれメリット・デメリットがあります。

例えば税込経理では・・・
●交際費損金不算入額が大きくなり不利。
●償却資産税の課税標準が大きくなり、税額も増加するので不利。
●少額減価償却資産等の30万円(または20or10万円)未満の判定では不利。
●特別償却や税額控除の判定では×××万円以上という要件が多いので有利。
●売上金額を大きく見せるのに有利。
●経理処理方法が簡便なので有利。
●控除対象外消費税が生じないので、その知識が不要につき有利。

損得が著しいケースとは
高額な資産、たとえばマンション一棟買いをした場合などを想定してみましょう。

税込価格10億5千万円で取得、減価償却計算の基準となる建物の耐用年数を50年とします。
<税込経理の場合>
建物10億5000万円 /現金10億5000万円
未収金5000万円 /還付消費税5000万円
減価償却費2100万円/建物2100万円
<税抜経理の場合>
建物10億円 /現金10億5000万円
仮払消費税5000万円 /
減価償却費2000万円 /建物2000万円

減価償却費と還付消費税を考えると
税込経理の場合、消費税還付金5千万円が収益として処理され、法人税・所得税計算上、課税所得となります。逆に、減価償却費が増えて、当初の課税を後の耐用年数期間で取り戻していきます。長期的には損得ないことになりますが、金利的・資金計画的には明らかに損です。
高級絵画を購入した場合を想定すると、絵画は減価償却できませんから、売却するまで消費税部分は費用にならず、売却がないとすると、永久に取り戻せません。

H20.11.18

予定申告と中間申告

予定納税
予定納税という言葉は所得税法にのみ出てきます。ただし、予定申告という言葉は出てきません。所得税の予定納税は、自主的な申告を前提にしない、前年実績による賦課課税の性格のものなので、予定申告という言葉がありません。従って、臨時的救済措置として、減額の手続きだけが用意されています。

予定申告
地方税法をみると、法人住民税、法人事業税の規定のところに、予定申告という言葉が出てきます。予定申告法人、予定申告に係る法人税割額、予定申告に係る事業税額などと使われています。
法人税の扱いに連動しているので、法人税も同様な規定になっているのか、と推測したくなるところです。

中間申告と中間納付
法人税法をみると、あにはからんや、予定申告という言葉には全く遭遇しません。出てくるのは、中間申告、中間納付額、中間申告による納付、中間申告書という言葉です。消費税法でも同じですが、さらに中間申告対象期間という言葉も出てきます。
中間申告書には、法人の選択により、前年度実績を基準にする額を記載する場合と、6か月間の仮決算による額を記載する場合とがあるので、予定納税とは異なり、前期実績基準額を減額するだけでなく、増額することになる中間申告納付が可能です。

法人税の予定申告書
ところで、法人税には予定申告はないのか、というと、不思議なことに、現実に国税局から送られてくる中間申告書のタイトルは「予定申告書」となっています。表紙には、「中間(予定)申告」と記載されていて、中間申告と予定申告とは同じ意味というニュアンスの表現をしていて、収受印の押される提出用と控用の用紙には「予定申告書」のみの表現をしています。
仮決算を組んだときに使う申告書用紙の注意書きには「中間申告」という表現しかありませんので、もしかすると、前年度実績基準での中間申告については、法の根拠なしに慣用的に「予定申告」と言い慣らわしているのかもしれません。

H20.11.17

協会けんぽ設立

平成20年10月1日より政府管掌健康保険が全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)に変わりました。それにともない、手続を行う場所が変更されました。

協会けんぽで行う業務は、
① 療養費や傷病手当金・出産手当金などの給付、
② 任意継続被保険者関係の手続、
③ 健康保険被保険者証の交付、
④ 高額医療費貸付等の申込み、
⑤ 生活習慣病予防検診等の申込みです。

協会けんぽで行う手続は、原則、郵送で行います。

例えば、病院に通院中の従業員を雇い入れた場合、今までは社会保険事務所で資格取得手続の際に窓口に申出れば、健康保険証を即日発行してもらうことができました。しかし、今後は協会けんぽが健康保険証の発行を行うため、社会保険事務所においては、即日発行してもらえないというデメリットが発生します。なお、事業所で社会保険に加入するときの手続や従業員の入退社時の手続、賞与支払時の手続、社会保険の算定などは、従来どおり事業所管轄の社会保険事務所で行います。
健康保険料率は現在8.2%ですが、今後は都道府県別に保険料率が設定されます。ただし、当面は保険料率の変更はなく、早くても1年後に変更される予定です。
今後は、給付関係の手続については協会けんぽで行いますが、給付内容については従来どおりとなり、変更はありません。

H20.11.14

会社のものさし

「そんかとくか人間のものさし うそかまことか佛さまのものさし」とは相田みつをの言葉ですが、会社にとっての「ものさし」とは、どんなものが考えられるでしょうか?

会社は誰のもの?
会社の所有権はもちろん株主にありますが、中小企業の多くは、株主=社長ですので、この意味では、会社は社長のもの、ということができます。また、お客様や取引先に必要とされなければ、売上はあがらず会社は存続できないのですから、お客様等のものといえますし、生産、営業活動等の企業活動は社員の力がなくては行えず、社員もそれにより生活の糧を得るという側面からは、社員のものである、といえます。さらには、公器として地域社会に貢献する存在であるべきことを考えると、地域社会のものともいえます。そして、企業活動を通じこれらの利害関係者に貢献していくためには、適正な利益が必要です。したがって、適正な利益がでているかどうかが、会社にとってのひとつの「ものさし」と言えるでしょう。

適正な利益とは
会社の利益には、粗利益、営業利益、経常利益などいくつかありますが、一般的には経常利益を指すことが多いと思います。この経常利益が適正にでているかどうかを測る指標に、「総資本利益率」(ROA)があります。

総資本利益率とは
{経常利益/(総負債+自己資本)}×100の算式で求めることができます。
(総負債+自己資本)は総資産と同じですので、いくらの元手でいくら稼いだのか、すなわち、利回りの計算です。この利回りが低ければ、利益がでていても、適正(儲かっている)とは言えないでしょう。例えば、製造業の業界平均は2.1%ですが、それ以上を目標にしましょう。

H20.11.13

内部統制とは何か

内部統制の必要性
今日、企業の内部統制の欠陥が企業の致命的な影響を及ぼすケースが沢山あります。
大和銀行のNY支店員による米国債の不正売買事件、三菱自動車のリコール隠し事件、不二家の期限切れ原料使用事件などです。
経営者は個々の業務や従業員の行動などを直接監視できません。その代りにそれらを有効にチェックするリスク管理体制を構築する責任があります。

内部統制とは何か
従来、内部統制は企業の中に適切な決まり事を設け、様々な不祥事の発生を防ごうとするものと理解されていましたが、今日では幅広く下記の4つの目的を達成するために業務に組み込まれ組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいうものとされています。
①業務の有効性及び効率性
②財務報告の信頼性
③事業活動に関わる法令の遵守
④資産の保全
経営者は、企業を取り巻く環境、事業の特性、規模等に応じて、いかなるリスクをどのように統制するかという観点から内部統制を整備し運用して行かなければなりません。

内部統制の限界
内部統制の構築に完璧を期しても下記のような一定の限界があります。
①判断の誤り、不注意、複数担当者の共謀があった場合には有効に機能しない。
②当初想定していない組織内外の環境変化や非定形的な取引には対応できない。
③内部統制の整備運用に際しては費用と便益との比較衡量が求められる。
④経営者が不当な目的なため内部統制を無視したり無効ならしめることがある。

内部統制の監査が義務付けられた
上場企業の場合、経営者が実施した財務報告に係る内部統制の有効性についての評価の結果は、内部統制報告書として有価証券報告書に含めて開示されますが、この内部統制報告書は、平成20年4月以降に開始する事業年度から金融取引法の規定によって監査人による監査を受けなければならなくなりました。

H20.11.12

振込め詐欺にも雑損控除を

ネーミングが悪い
「振り込め詐欺」とか「オレオレ詐欺」とか、「詐欺」と名がつくと、被害に対する税法上の扱いは、急にかたくなになってしまいます。

被害救済の雑損控除
被害額を税の負担軽減で救済しようというのが雑損控除ですが、対象となる雑損とは災害・盗難・横領を原因とするものに限られています。詐欺・恐喝による損失は含まれていません。それで、「振り込め詐欺」も対象外と理解されています。詐欺・恐喝が税の救済の対象から外れているのは、詐欺や恐喝により相手側に財物を交付させられることの一因が当事者にあるからと解されています。

詐欺ではなく横領ではないか?
しかし、「振り込め詐欺」の場合は、子供や孫に渡すつもりで振り込んでいるのであり、渡された相手が子や孫ではないのだとしたら、その相手に財物の所有権は移転しません。ここは通常の詐欺・恐喝と異なるところです。
通常の詐欺・脅迫の場合は、財物を相手に渡す意思をもって、その相手に財物を交付します。
そうすると、「振り込め詐欺」では、犯罪者は振り込まれた金銭に対しては、それを仮に預かっている状態にすぎないわけです。そして、預かっているものを隠匿・略取することは横領にあたります。「振り込め詐欺」は、錯誤を誘発して横領できる条件を作り出す犯罪として理解することができます。

なぜ雑損控除がある?
また、雑損控除を設ける理由の中には、個人の自力救済・自力報復を禁止する社会制度が選択されていて、その裏側に個人の社会生活上の安全平穏の保障が国家の義務であるということから、国家として予防しきれなかった犯罪による被害については国家責任としての被害補てんをいささかなりともするべき、という考えがあるとの理解をしてもよいように思われます。
そうであるなら、病んだ社会が生み出す新しい犯罪類型により高齢年金者が狙われることに対し、税による救済の配慮は一歩踏み込んで、もっと寛容であってもよいのではないでしょうか。

H20.11.11

役員賞与は利益処分ではない

役員賞与は役員報酬の一部
役員賞与に関する会計上の取扱は、会社法の改正に伴い大きく変りました。
従来、役員賞与は儲かった利益からの分配すなわち利益処分の一つで、配当金などと同じ扱いでした。しかし、平成17年11月に公表された企業会計基準では、役員賞与も役員報酬と同様職務執行の対価と考え、「役員賞与は、発生した会計期間の費用として処理する」こと、となりました。

役員賞与の決定は株主総会
しかし、役員賞与は、会社定款に報酬等に関する一定の定めがない時は、従来どおり株主総会で決定されることには変りありません。

前期の役員賞与は今期の費用?
例えば3月決算の会社が5月に株主総会を行い前期の業績が良かったので役員賞与を支給することを決議した場合、前期の業績に対する役員賞与は今期の費用と言うことになってしまいます。
こうなると、今期の業績が正しく判断できなくなってしまいます。

経理処理は
そこで役員賞与を支給する場合には以下の経理処理が必要となります。
3月決算で
役員賞与引当金繰入/役員賞与引当金
5月株主総会で
役員賞与引当金/未払役員賞与
支払時
未払役員賞与/現預金

税務上は、ご存知のように、原則否認されますから3月決算で役員賞与引当金繰入額を否認しておけば処理は終わります。

今後は賞与引当金より役員賞与引当金
従来よく見られた賞与引当金が税務上認められなくなり、姿を消したのに変わって、今後は役員賞与引当金が頻繁に使われることとなると思われます。

H20.11.10

自治体のゴミ処理券と消費税

自治体が行う事業系ゴミの収集・運搬・処理の行政サービス料金に対して消費税が課税されるか?

自治体が提供する行政サービスに対しては、消費税は一切かからないと考えてしまう人もあるかも知れませんが、そうとは限りません。消費税を非課税としているのは自治体固有の行政サービスである、登録、認定、確認、指定、免許、検査、検定、試験、審査及び講習、証明、公文書の交付、閲覧及び謄写、旅券の発給などです。自治体が行う事業系ゴミの収集・運搬・処理サービスには消費税が課税されます。これらの業務は、民間企業と競合するところがあり、民間企業だけを課税するならば民業圧迫となってしまうため非課税としないのではないかと考えられます。

有料ゴミ処理券の性格
コンビニエンスストアなどの店舗で購入するゴミ処理券は、自治体に事業系一般廃棄物を収集してもらうための手数料が予め納付済みであることを証明する券であり、物品切手としての性格を有します。

有料ゴミ処理券の課税仕入の時期
消費税において課税仕入れ※があったとされる時期は、原則として、ゴミ処理券をゴミ袋に貼り付けてゴミを自治体に収集してもらった時です。ただし、毎期継続して同様な処理を行うことを条件に、ゴミ処理券を購入した時をもって課税仕入れの時期とすることができます。

※消費税上の課税仕入れとは
商品などの棚卸資産の仕入れ、機械や建物等の事業用資産の購入又は賃借、原材料や事務用品の購入、運送等のサービスの購入、そのほか事業のための購入などをいいます。

H20.11.7

全国社会保険協会とはどんな組織?

中小企業加入の「協会けんぽ」
現在私達の社会保険は、法人に勤めていれば厚生年金保険と健康保険に加入しているわけですが、それを運営していた社会保険庁は一連の不祥事も影響し、組織解体され廃止されることが決まっています。新しい組織は年金については平成22年1月より「日本年金機構」が引き継ぎ、政府管掌健康保険については、平成20年10月より「全国社会保険協会」が事務を取り扱っています。

健康保険証や給付内容は従前のまま
健康保険の加入や保険料の納付は従来通り社会保険事務所を通じて、厚生年金保険の手続きと一緒に行われます。傷病手当金等の健康保険の給付や退職後の任意継続は、協会各都道府県支部で行われます。但し、当面は社会保険事務所でも申請できますが、協会に郵送で行うこともできます。
健康保険証は今までの保険証を使用できますが、今後順次新しい証書に切り替えられます。
健康保険の自己負担割合や傷病手当金等の現金給付の金額に変更はありません。

自分の住む地域の医療費はどうなる?
この組織による今までとの大きな変更点は、現在は全国一律の従来の保険料率を適用していますが、ふくらむ医療費を背景としてこの先一年以内に都道府県別ごとに医療費の高低を反映した保険料率に変更されるということです。単に都道府県単位で考えると、年齢構成が高い県の医療費が高くなったり、所得水準の低い県ほど同じ医療費でも保険料率が高くなってしまうので地域間格差を少なくするため激変緩和措置の調整はされるそうですが、高齢化社会が進み、自分の住む地域の医療費の負担がどうなるのか気になるところです。ただ、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)の始まりの時のように周知不足の混乱にはならぬようにして欲しいものです。

H20.11.6

ソフト開発の落とし穴

経済のグローバル化
ソフト開発は人件費の安い外国でとお考えの企業も多いことと思います。
何も商売だけでなく自社のシステム開発を外国企業に発注することもあろうかと思います。

経理処理と消費税
外国企業へソフト開発を依頼した外注費は売上と対応する場合は外注費で処理しますが、自社使用の場合は無形資産となります。当然外国での役務の提供でありますから消費税は不課税取引となり、課税仕入れとはなりません。ここまでは特に問題はないと思います。注意しなければならないのはここからです。

著作権はどっち
当社が依頼して作ってもらったソフトであるから、当然著作権も当社に有ると考えがちですが、著作権は本来下請であったとしても、その作成者に有ります。そこで単なる外注契約では著作権は外注先にあることとなります。ですから著作権の譲渡契約を結んでおかないと、当社の依頼ソフトを
勝手に他社に販売されてしまう可能性があります。

これで安心したらダメです。

源泉所得税は20%
もう一つ注意しなければならないのは支払時です。全額を支払ってしまってはダメです。外国からの著作権の譲渡には20%(国によっては租税条約で15%~免税まであるが、概ね10%が多い)の源泉所得税の徴収義務が支払者に発生します。ですから支払時には源泉所得税を控除して支払う必要があります。

これら一連のことを当初の契約時にハッキリさせておかないと後でトラブルの元となりますのでご留意ください。

H20.11.5

賞与引当金と未払賞与

会計上の処理
中小企業の会計に関する指針(以下会計指針と言う)では、翌期において従業員に対して支給する賞与でも、当期の負担に属する部分の金額は賞与引当金として計上しなければならないとしております。

当期の負担に属する部分の金額とは?
賞与対象期間が、就業規則等で定められている場合は、その対象期間の一部が当期に属している場合ですが、定められていない場合でも、合理的に見積もって計上しなさいと言っており、合理的な見積方法として平成10年度に法人税法の改正で廃止された、法人税の賞与引当金の「暦年基準」と言う方法を紹介しています。

税務上の処理
法人税法では先にも述べたように平成10年度の法人税法の改正で、賞与引当金の損金算入は認めなくなりました。税務上は本来確定していない債務は損金として認めないことが大原則ですが、別段の定めを持って賞与引当金を認めてきたのであって、別段の定めをやめて原則に戻っただけの話です。

未払賞与
しかし債務が確定していれば、未払いの賞与であっても税務上は認められます。それが「未払賞与」です。
未払い賞与の条件として税務当局が言っている条件は以下の3点です。
・支給額を各人別に、かつ、同時期に全ての支給対象者に通知していること
・通知日の属する事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に支払っていること
・通知日の属する事業年度で損金処理していること

一般的には
決算月が賞与支給月の1ヶ月前の企業や業績賞与の場合は「未払賞与」を計上し、そうでない場合は、「賞与引当金」を計上し税務上は否認すると言うのが正しい経理処理かと思われますが、多くの中小零細企業は賞与引当金の計上は行っていないのが現状です。

H20.11.4

残りものには福はない?

資金繰り改善の第一歩
会社が成長し、売上が順調に伸びていったとしても、売掛金の回収がしっかりできなければ、いずれ資金繰りが厳しくなり、時には、黒字倒産をも引き起こす原因となります。したがって、売掛金の回収管理は、資金繰り改善の第一歩なのです。

まずは売掛金管理表を
資金繰りに苦労している会社の中には、売掛金の管理が杜撰で、回収期間が長くなってしまっていたり、さらには、未回収のまま長期間放置されているケースも見受けられます。
まずは、営業担当者別、得意先別の売掛金管理表を作成し、いつ発生し入金予定日はいつか、その入金予定日に実際に入金があったか、こまめにチェックしましょう。
また、得意先の与信管理も大切ですので、年に1度は行う必要があります。 

入金がなかったら
期日までに入金がなかった場合、翌日には営業担当者から連絡を入れ、必要があれば、直接訪問して確認します。そして、1か月以内に入金がなければ、「支払いのお願い」を内容証明郵便で送付し、2か月後までに入金がない場合、内容証明郵便で「警告書」を送付します。
3か月後までに入金がなければ、弁護士等に相談し法的措置の要否等を検討します。

売掛金年齢調べ
売掛金年齢調べとは、得意先別に、いつ売り上げたものがいくら回収されずに残っているかを月別に分析し、表にしたものです。古い月の分が多く残っている得意先は要注意です。早期回収に努めるとともに、今後取引を継続するかどうかも検討します。滞留債権の発生に対する対処を速やかに行うことで、貸倒損失のリスクを最小限にとどめるのです。「残りものには福がある」と言いますが、売掛金は例外です。
(大阪地裁・平成18年10月25日/判決確定)