港区 税理士法人 大沢会計
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2015年6月

2015/06/30

H27.6.30

65歳以上の高年齢者を雇用した時の助成金

高年齢者雇用開発特別奨励金
 新たに人を雇用する場合、年齢にこだわらず経験豊かな人や、高年齢者でもできる仕事の求人に使える助成金を紹介します。
 この助成金は雇用した日の満年齢が65歳以上の離職者をハローワーク等の紹介で1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れる時(1年以上継続して雇用する事が確実な場合)に支給されます。

受給要件
 雇用保険の適用事業主であり、次の要件には該当していない事が条件です。
①ハローワーク等の紹介以前に雇用の予約があった対象労働者を雇用する
②雇用の前日から過去3年間に雇入れ事業主の事業所で職場適応訓練を受けた
③雇用の前日から過去3年間に雇用関係、出向、派遣、請負により雇い入れ事業所に就労した事がある方を同一事業所に雇う時
④対象労働者に対する支給対象期間についての賃金を、支払期日を超えて支給申請を行うまでに払っていない場合(時間外手当、深夜手当、休日出勤手当を法定通り支払ってない場合含む)
⑤ハローワーク等の雇用条件と異なる労働条件で雇って対象労働者に不利益や違法行為があり、本人からも申し出があった場合
⑥支給申請の前年度以前の労働保険料を滞納している場合
⑦支給申請日や支給決定日に倒産していた

対象労働者となる人
①雇用日の年齢が65歳以上
②紹介日雇用日に以下事項に該当しない事
ア、高年齢継続被保険者
イ、短期雇用特例被保険者
ウ、アイ以外の人で雇用にかかる事業主以外の事業主との間で1週間の所定労働時間が20時間以上の雇用関係にある労働者
③雇用保険の被保険者資格を喪失した離職日の翌日から3年以内に雇用された人
④雇用保険の被保険者資格を喪失した離職日以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あった人

支給申請と支給額
 支給対象期間6ヶ月毎に2回に分けて支給されます。支給対象期間の末日から2ヶ月以内に申請します。支給額は30万円×2回、短時間労働者は20万円×2回です。

H27.6.29

育児関連助成金 要件緩和や受給額アップ

改定された中小企業両立支援助成金
 以前からあった育児関連の中小企業両立支援助成金は支給額が上がったり、要件が緩和されたりと内容が変更されているので紹介します。

代替要員確保コース
・育児休業を終了した労働者を、原職又は原職相当職に復帰させる旨の取り扱いを就業規則等に規定する
・休業取得者の代替要員を確保
・休業取得者を原職又は原職相当職に復帰
支給額 対象労働者1人あたり  30万円
 支給対象者が期間雇用者  10万円加算
 1企業5年間、1年度延べ10人まで
支給申請期間 育児休業終了日の翌日から起算して6ヶ月を経過する日の翌日から2ヶ月以内

期間雇用者継続就業支援コース
・期間雇用者と正社員が同等の要件で利用できる育児休業制度、育児短時間勤務制度を就業規則に規定
・期間雇用者の育児休業取得者を原職又は原職相当職に復帰させ、6ヶ月以上継続して雇用等
支給額 1人目 40万円
    2人から5人目までは15万円
休業終了後、正社員で復職した場合は1人目10万円、2人から5人目5万円加算
育児休業を終了した期間雇用者が平成25年4月1日以降28年3月31日までに出た事業主が対象です。
支給申請期間 育児休業終了日の翌日から起算して6ヶ月を経過する日の翌日から2ヶ月以内

育児復帰支援プランコース
・労働者と面談し、育児復帰プランナーの支援を受けて育児復帰支援プランを作成
・プランの実施により、育児休業予定者の業務の引き継ぎを行い、当該者が3ヶ月以上育児休業(産後休業を含む)を取得
・プランの実施により上記の対象となった育休取得者の育休中に職場に関する情報、資料の提供を実施
・職場復帰前後に育児休業取得者と面談し原職又は原職相当職に復帰させ、6ヶ月以上継続して雇用  1企業各1回支給
育児休業取得時   30万円
職場復帰時     30万円

H27.6.26

役員給与の改定時期の「定期同額給与」
定期給与を総会翌月分から増額する場合

役員給与を改定した場合の「定時同額給与」
 法人税法では、法人が役員に支給した給与のうち、①定期同額給与、②事前確定同額給与、③利益連動給与については、支給事業年度の損金算入が認められています。
 このうち「定期同額給与」とは、「定期給与」(支給時期が1月以下の一定期間ごとである給与)でその事業年度の各支給時期における支給額が「同額」であるものをいいます。なお、その額を改定した場合において、次の要件を満たすときは、改定前後の各々を「定期同額給与」として取扱います。
【要件1】その事業年度開始の日からその3月を経過する日までに「定期給与」の額が改定されていること
【要件2】次の①と②の期間内で各支給時期における支給額が「同額」であること
①事業年度開始の日~改定後の最初の支給時期の前日
②改定前の最後の支給時期の翌日~事業年度終了の日

役員給与の改定時期と支給日の関係
 国税庁「役員給与に関するQ&A」Q2では、役員給与の支給が毎月末日である場合の増額のタイミングについて解説しています。
「Q&A」の事例は次のとおりです。
 当社(年1回3月決算)は、定時総会を6月25日開催し、役員給与額を50万円から60万円に増額改定することを決議した。
 当社の役員給与額の支給日は毎月月末となっている。
 この場合、総会の翌月である7/31支給分から60万円増額支給する場合には、「定期同額給与」に該当するのでしょうか?
 結論としては「定期同額給与」に該当します。まず、役員の「職務執行期間」は、一般に総会日から翌総会日までの期間と考えられ、定時総会における役員給与の改定は新たな「職務執行期間」の給与額を定めたものとも考えられるため、7/31支給からの改定はよくあることなのです。この場合、新給与を7/31支給分からと定めたときは、
①事業年度開始の日(4/1)~改定後の最初の支給時期の前日(7/30)
→4/30、5/31、6/30に50万円支給
②改定前の最後の支給時期の翌日(7/1)~事業年度終了の日(3/31)
→7/31、8/31…翌3/31に60万円支給
となり、【要件2】を満たすこととなるため、「定期同額給与」と認められます。

H27.6.25

弁当の路上販売を許可制へ
「許可」と「届出」の違い

東京都で弁当の路上販売規制強化
 お昼時、オフィス街で安く手軽に購入できる弁当の路上販売。ここ数年、路上に大量の弁当等を陳列して販売する形態が多く見られるようになりました。これに対し、東京都では衛生環境等を懸念する声から対応を検討していましたが、いよいよ今秋から具体的な規制がされることになりました。

「弁当等人力販売業」で許可制に
 東京都内で弁当販売を行うためには原則、施設基準や一定の資格を要する人的基準を満たした上で許可を受ける必要があります。しかし、弁当を「人力による移行」で販売する場合は「行商」に当たり、この場合、これまでは「許可」を受ける必要はなく「届出」をすれば足りるとされていました。これは、行商が「人が一人で運搬できる量を取り扱う」小規模な営業を想定していたことから来ていましたが、近年では業者の大多数が弁当の運搬に自動車を使っており、本来の想定よりも大規模な営業を行っている実態などを受け、「弁当類」「そう菜類」の移動販売業者を「弁当等人力販売業」として許可制にしたのです。

「許可」と「届出」の違いとは?
 そもそも「許可」と「届出」ではどのように違うのでしょうか。「許可」とは、公共の安全や秩序の維持などの公益上の理由から、法令で一般的に禁止されている行為について、特定の場合に限ってその禁止を解除する行政行為を言います。たとえば今回の例で言うと、食品を販売することは、本来誰でも自由にできるはずです。しかし、食中毒などが発生する場合を考慮し、法令で自由に販売できないようにしています。これに対し、食品販売に関する営業許可をとることにより、この禁止を解除できるようにしているのです。次に「届出」とは、法令で定められている特定の行為について、一定の事項を予め行政官庁へ通知することを言います。「許可」の場合、申請した行政官庁から「許可」や「不許可」の判断を受けますが、「届出」には行政官庁の判断がなく、必要な要件(書類)を満たしてさえいれば、行政官庁に到達することで完了します。
 このように、どちらも同じ行政上の手続きですが、両者でその性質が異なります。今回の条例改正で「届出」から「許可」になり、衛生面が向上することに期待が持てる一方、少なからず業者に負担がかかるわけですが、他の道府県での対応も含め、今後の販売にどのような影響が出るのか、気になるところです。

H27.6.24

チームの時間効率向上

 会社全体の時間効率を高めるには、社員一人ひとりの仕事に取り組む時間効率を高め、そのやり方を社員全員に浸透させることが有効ですが、それとは別に、目標管理の共同目標のように、部署内で複数の社員がチームを組んで目標達成に取り組む場合や、大きな課題になると部署間のプロジェクトチームを編成して目標達成を図る場合があり、その時間効率向上を図る必要が生じます。

時間効率向上の原則
 時間効率向上の原則は、社員個人の場合、
①一人ひとりにとって興味が湧く、得意技が生かせるテーマ、専門能力の向上でキャリア形成ができるなど、自己の成長機会が得られ、意欲を持って取り組めるテーマを担当させること。
②それに加えて、テーマに対する集中度を高めるため、時間予算の重点配分を行なうこと。
にありますが、チーム目標達成の時間効率を上げたい場合にもこの原則は基本的に当てはまります。

チームの時間効率向上法
 チームとしての仕事の時間効率を高めるには、次の点に留意することが大切です。
①基本は「働き手個人の時間効率向上」にあり、日常業務で前述の方法を習慣化しておく。
②テーマ設定の段階で、チームメンバーがテーマ発生の背景、会社にとってのニーズを理解し、その中で個々の専門技術を生かしたり、さらにその幅を広げ、高める成長機会を知って挑戦意欲を高める。
③チームとしての活動において時間を無駄なく使い集中度を高める。そのポイントは「課題に対するチームとしての状況判断の誤りの排除」とその誤りに基づく「誤った対策の防止により、課題解決の迂回(無駄)を避けること」、状況判断の誤りを避けるには“三現主義”(現地で、現物を見て、現実に即して)で的確な状況判断を行ない、チームとして共有すること。
④問題・課題解決の段取り、ステップを可視化して、重点的な時間配分を行なう。
⑤チームメンバーの意欲と集中度を高め、時間効率を高めるには、チーム内での健全な競争心を引き出すことが有効であり、巧みなファシリテーションや評価・表彰のしくみを活用する。

H27.6.23

平成27年度厚労省関連
新設助成金 労働環境改善型

 平成27年度新設助成金は職場労働環境等を改善した場合にも適用されるものがあります。それを紹介します。

職場定着支援助成金(中小企業労働環境向上助成金が名称変更)
 健康・環境・農林漁業の事業を営む事業主が雇用管理制度の導入等を計画(3ヶ月以上1年以内)し実施した場合に支給されます。⇒ 1制度10万円
①評価・処遇制度 ②研修制度
③健康作り制度 ④メンター制度
(別に介護事業は福祉機器導入にも助成)
 また、目標達成助成として、雇用管理制度整備計画期間の終了から1年経過するまでの間の離職率を、雇用管理整備計画を提出する前1年間の離職率より低下させた時にも支給されます。
目標達成した時の支給額⇒60万円(定額)
 離職率を比べて計画実施前より定着率が上がる事が必要です。

職場意識改善助成金 職場環境改善コース
 残業時間の削減や年次有給休暇の取得促進を図る中小企業事業主に対して経費助成をします。対象は雇用する労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が13日以下であって、月間平均所定外労働時間が10時間以上であり労働時間等の設定の改善に積極的に取り組む意欲がある中小企業事業主。
対象となる取り組みは、
①労務管理担当者に対する研修
②就業規則・労使協定の作成・変更
③労働者に対する研修・周知・啓もう
④労務管理用ソフトの導入
⑤外部専門家によるコンサルティング
成果目標
ア、年次有給休暇の取得促進・・労働者の有給取得日数を年間4日以上増加
イ、所定外労働時間の削減・・労働者の月間所定外労働を5時間以上削減
⇒改善に要した経費の4分の3
 2015年10月15日までに計画書を提出し、承認の日から2016年2月15日までの任意の3ヶ月間で実施。支給申請期限2月末。
 アとイの目標を達成した場合は経費の4分の3、100万円(上限額)ですが片方の達成でも8分の5の83万円が支給され、両方達成できない場合でも取り組みを計画し、実施すれば経費の2分の1、上限67万円までが支給されます。

H27.6.22

平成27年度厚生労働関連
新設助成金 人材育成型

 平成27年度で新設された助成金があります。人材育成関連のものを紹介します。
金額は中小企業の場合の支給額です。

キャリア形成助成金 ものづくり人材育成訓練
 15歳以上45歳未満の者(短時間労働者で既雇用者を除く)で雇用保険被保険者に建設業や製造業が実施する厚労省認定のOJT付き訓練で実習訓練を実施した場合。
・実施期間 6ヶ月以上
・訓練期間 1年間850時間以上
・訓練中OJTは2割以上8割以下
・ジョブカード評価シートで評価を実施
受給額⇒
Off-JT 時給800円 OJT 時給700円
経費助成 1コース15万円から50万円
 かかった費用の3分の2(1年間)
 上限 1000万円

キャリアアップ助成金 多様な正社員コース
 多様な正社員とは次のような方です。
①勤務地、職務限定正社員制度を新たに規程し適用した場合⇒1事業所 40万円
②有期雇用契約労働者を勤務地限定社員、職場限定社員又は短時間正社員に転換、又は直接雇用した場合⇒1人につき30万円
③正規雇用労働者を短時間正社員に転換又は短時間正社員を新たに雇入れた場合⇒1人につき20万円

キャリアアップ助成金 短時間労働者の週所定労働時間延長コース
 支給対象となるのは週所定労働時間25時間未満の有期契約労働者等を週所定労働時間30時間以上に延長し社会保険を適用した場合⇒1人につき10万円

企業内人材育成推進助成金
 従業員に教育訓練、職業能力評価、キャリア・コンサルティング等をジョブカードを利用し、計画的に実施する制度を導入。継続して人材育成に取り組む事業主。支給対象となる取り組みとは、
①教育訓練・職業能力評価制度
②キャリア・コンサルティング制度
③技能検定合格報奨金制度
⇒制度導入では上記の
①50万円 ②30万円 ③20万円
⇒実施・育成1人につき上記の
①5万円 ②5万円又は15万円 ③5万円

H27.6.19

マイナンバー漏洩リスク対策

マイナンバーへの国家総動員態勢
 10月からのマイナンバー配布に向けて、マイナンバーの周知化情報が溢れ出しました。ネット世界には「マイナンバーの受け取りを拒否しよう」などという書き込みもありますが、マスコミや実業社会、マイナンバーに直接関わる税理士・社労士などの世界では、素直に受け容れることを前提にした情報しか存在しません。疑問を呈することを排除する同質化社会がここにも現れている印象を受けます。

マイナンバー漏洩対策は可能か
 税理士とその顧客の大半にとっては、独自にマイナンバー漏洩対策を行うことは出来ないと思われます。
ベネッセの顧客情報漏洩事件2070万件というような大量の情報を抱えていないので、情報窃盗の対象にならないだろう、と判断されるものの、クラウドサービスとして給与計算情報をバックアップしているところからの流出は十分考えられます。
流出ルートが不明なまま、流出の事実だけが発覚した場合、漏洩対策不全は、刑事罰や損害賠償のリスクを生み出します。

税と社会保険料徴収事務をやめる
 漏洩リスクから解放されるようにするには、漏洩リスク対策を完全に実施でき、損害賠償にも備えられる、超大手企業に、給与計算事務等や社会保険事務を全面委託してしまうのが、最善の策です。そして、そのような超大手企業が出現してくるかもしれません。
本当は、民間企業に無償で押し付けている源泉徴収事務や社会保険料徴収事務を廃止して、国家や自治体が直接行ってくれるのがベストです。

ベターな策としての情報不取得
 マイナンバー情報を得て、使用した後に直ちにその情報を削除して不保持にする、のは煩雑で、ほとんど実行不可能です。
そもそも、マイナンバー情報を得なかったら、何か困るのでしょうか。給与支払や年末調整に差し障りがあるのでしょうか、税理士個人のマイナンバーを知らないまま顧問料の支払が出来ないなんてことになるのでしょうか、マイナンバーを書かなかったら、健康保険証を発行してくれないのでしょうか、多分何も困ることにはならないと思われます。
 マイナンバーが本人確認手続を簡略にする利便性を提供するだけだとしたら、その利便性の享受の放棄で済むことです。

H27.6.18

大法人が中小企業になった場合 大法人時代の欠損金は全額控除可?

シャープの「中小企業化」報道
 シャープの経営再建の記事が、連日新聞の紙面に取り上げられています。同社が公表した中期経営計画では、欠損てん補のため資本金約1,200億円の減資を行い、その後に取引銀行とのDES(デット・エクイティ・スワップ)等による約2,250億円の増資を行うこととされています。当初、資本金を1億円とする減資を行い「中小企業」となると報道されていましたが、政府関係者や市場等の反応が芳しくなく、正式発表時には5億円までの減資に変更されました。

減資を行う場合の法人税務への影響
 減資を行う場合の参考として、法人税務では「資本金の額」を基準とするものと「資本金等の額」を基準とするものがあります。
「資本金の額」とは、登記されている「資本金」の金額そのものを指します。
この「資本金の額」を基準とする税制には次のようなものがあります。
貸倒引当金の繰入、青色欠損金の控除制限、法人税軽減税率、留保金課税の不適用、特別税額控除・特別償却、交際費等の定額控除額、欠損金の繰戻還付、少額減価償却資産の損金算入、外形標準課税
 一方、「資本金等の額」は、株主が払い出したものとされる一定の金額(税務上の資本金と資本剰余金の合計概念)です。
この「資本金等の額」を基準とするものには次のようなものがあります。
みなし配当、一般寄附金の損金算入限度額、法人住民税の均等割、事業税の資本割
なお、無償減資を行い、「資本金の額」が減少したとしても、「資本金等の額」には異同は生じません。

大法人が中小法人となった場合の欠損金
 平成27年度税制改正では、法人税率引下げの代替財源確保のため、「資本金の額」が1億円超の法人の欠損金繰越控除限度額が現行の欠損金額×80%から65%(最終的には50%)に引き下げられました。巨額の赤字がある会社では欠損金の有効利用を考えた場合、「資本金の額」1億円への減資は施策の一つとして考えられるものです。この場合、「大会社時代に生じた欠損金は80%しか認められないのでは?」と心配になるところですが、期末の「資本金の額」が1億円以下である限り、100%控除はできるものと考えられます。

H27.6.17

第6回「税理士実態調査報告書」
会計事務所が使用する「会計ソフト」

 第6回「税理士実態調査報告書」(H27年3月 日本税理士会連合会)では、税理士事務所(税理士法人)が使用している会計ソフトのアンケート結果が公表されています(回答者25,970名、複数回答)。最も利用されている会計ソフトベンダーは「弥生(弥生会計)」の29.0%。以下「JDL」(17.1%)、「日本ICS」(14.5%)、「TKC」(14.0%)という結果でした。
会計ソフトベンダー   回答数  割合
①弥生(弥生会計)   7,529  29.1%
②JDL           4,428  17.1%
③日本ICS        3,763  14.5%
④TKC          3,634  14.0%
⑤MJS          3,118  12.0%
⑥エプソン        2,711  10.4%
 上位6社でかなり高い占有度を示していますが、2位以下の会社は会計事務所との付き合いの中で、はじめて名前を知ったという方も多いと思います。これらは「会計事務所向け」のソフトベンダーです。

会計事務所向けベンダーと市販ソフト
「会計事務所向け」のソフトベンダーは、会計事務所ごとに担当営業を置き、会計事務所は、彼らから提供を受けたソフトを顧問先に勧める形になります。
そのため、顧問先と会計事務所との連携がしっかり取れるソフトであり、税理士の本来業務である「税務」には強いという「安心感」があります。ただし、会計事務所内の大量処理を念頭に置いたソフトでもあり、伝票・仕訳を意識した「教科書どおり」の作りでもあるため、経理を知らない方から見ると、わかりづらい面もあるかもしれません。これに対して、「弥生会計」や「PCA会計」「勘定奉行」などの市販パッケージソフトは、ユーザーフレンドリーなアイコンを用いており、分かりやすい操作感と低価格が特徴です。会計事務所は基幹ソフトとして「会計事務所ベンダー」のソフトを利用しながら、市販ソフト(中でも「弥生会計」)も併用しているというのが実情です。

それぞれに特徴があります!
どちらにせよ「遡及訂正ができないソフト」「エクセルデータの出し入れが行いやすいソフト」「分散入力に強いソフト」「部門計算が強いソフト」など、それぞれに特徴があります。会社の規模や業種によっても、様々な選択がありえるところです。

H27.6.16

名簿売買時代のマイナンバー

住民票データ公開の時代から
 住民票は、2006年10月までは、公開情報でした。選挙民のデータやダイレクトメール宛先データとして、自由に閲覧・複写が許されていました。
 このデータをもとに、名簿業者は、企業や団体の住所録や紳士録、あるいは高額所得者リストとか消費者金融顧客リストとか、様々な名簿を付け加えて、名寄せをし、特定の人々の詳細なデータを集積し、さらに地域や年齢や社会階級や消費嗜好や病歴などなどと様々に分類して、売却価値の有る名簿商品を作っています。

現金よりカード
 カードで購入すると割引があるけれども、現金で買うと何の割引もない、というのは今では当たり前です。後払いの場合でも、ポイントやショッピング保険がつくため現金払いよりもカード有利になっています。
 カード利用者は買物好きになるから、と言えたとしても、それ以外に、明らかにカードに集積される個人データに価値があるので、企業としては、カードの利用を推進するための費用負担をしているのです。

ネットはすべてを知っている
 スマホは、手のひらサイズのコンピューターとして、メールのやりとり、WEBページの閲覧、ゲームやSNS、ネット通販での買物、お財布ケータイ、モバイル定期券、などなど朝から晩までの行動の記録を残し、それがネットを介してサービス提供会社に提供されています。
本人特定ができれば、他の種々のカード情報とも、ネット上でひも付けされ、特定個人に関する情報は本人自身の自覚以上の本人に関する正確なデータになります。

マイナンバーは情報ひも付け役
 マイナンバーは、国や自治体による税や社会保険料の徴収などに役立てることからはじまり、投資口座・預金口座の管理、そして戸籍事務、旅券事務、医療・介護・健康情報の管理・連携、自動車検査登録事務の各分野での利用に拡大していくことが検討されており、マイナンバーカードの身分証明書機能から、クレジットカードの機能も持たせることも検討に含まれています。
 こう見てくると、永久不変のパスワードとしてのマイナンバーが、種々のカードやスマホ、ネット情報の中心的なひも付け役になっていく可能性の大きさに身震いしそうです。

H27.6.15

管理能力の開発法

手管理者の管理能力開発に成功することは、言いかえれば社長の右腕となって活躍する人材を開発することで、戦略目標の達成のキーファクターです。

管理能力とは
管理能力とは次のような能力を言います。
1. 概念的思考能力(戦略的な企画力・計画力)
2. 対人関係能力(交渉力、実務推進・人材育成のOJTにおけるコミュニケーション能力・評価能力など対人マネジメント能力)
3. 業務推進指導力(管理の基本:P-D-C-Aに基づく指導力)
4. 担当業務に関する専門技術・知識の理解力(専門分化した今日、専門分野で自分より優れた人材を理解、活用する能力)
5. リスク対応能力(リスクの発見、予防的対応能力、顕在化したリスクへの対応力)
 それらの実践的能力を開発する機会は実務推進、とりわけ目標管理のプロセスにワン・パッケージとして存在すると言え、管理者が自部署の目標管理に如何に真剣に取り組んだか、によって、体験的に管理能力開発効果が上がることになります。

経営者の留意点
 経営者として管理者の管理能力向上を、より効果的に進めるポイントは、目標管理プロセスの質的向上を目的として、管理者自らが切磋琢磨する機会を提供し、刺激を与え続け、健全な競争意識を刺激することです。
具体的な方法として次の二つの場を意図的に設定し活用することをお勧め致します。
1.目標管理プロセスにおける部署間相互啓発の場を設定、部署目標の設定、部署間連携プロジェクト目標設定に関する発表、提案、評価の実施、中間での目標達成状況、達成阻害要因・成功要因の発見と対処策等部署間相互の体験発表、当期目標達成状況の評価と反省、次期目標設定へのアクションの交換、討議
2.管理者研修の場を設定、各部署におけるOJT、P-D-C-Aの実施状況、その結果等を体験素材とする相互の発表、意見交換、経営者からの質問、率直な感想等のメッセージ
 このような場の設定は管理能力開発と同時に事業成果向上に直結する上策です。

H27.6.12

税務調査の概念の修正

「調査」により更正する
 税法では、更正処分、再更正処分、再々更正処分は「調査により」行うこととされています。
 従って、税務調査が終了し、更正処分や修正申告がなされた後、税務署長がそれをさらに変更するような再更正を行うには、再調査が必要です。
 しかし、再調査は「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」にのみ行うこととされています。
 一度調査が行われたら、余程の新情報がない限り、再調査はありません。

「調査」による減額や繰戻還付
 既に行った申告について、納付すべき税額が多すぎた場合、申告書に記載した翌期へ繰り越す欠損金が少なすぎた場合、申告書に記載した還付税額が少なすぎた場合などでは、納税者から税務署長に対し減額更正の請求ができます。
 また、所得が赤字だった時の、その前の期間への赤字の繰り戻し請求という制度もあります。
 これらの請求により、税務署長が減額修正、還付処理をする場合には、「調査」し、その「調査」したところにより、処分や還付を行うことになっています。
 これらの税負担を軽減する処置もそれぞれ「調査」を経て行われることになっていますが、「調査」といっても、机上調査とか電話確認調査とかの程度の「調査」で済ませている事例が多そうです。

「調査」概念の統一性?
 「調査」という言葉は税法の中に何回も出てきますが、それらが、同一の意味なのだとすると、減額更正や繰戻還付の請求があって、机上調査で処理が済んだ場合、その年分に関しては一度調査がなされたということなので、もはや「新たな情報」がない以上、通常の税務調査は行えないのか、という疑問が湧きます。
 税務当局も、こういうことについて、このままでは、まずいと判断したようで、今年の税制改正で、異なる2種類の調査概念を設けることにしました。

「調査(実地の調査に限る)」
 机上調査とか電話確認調査とかをもって「調査」としてよい場合と、実地に出向いて行われる臨場調査のみを「調査」という場合とに、法律上の「調査」という言葉を使い分けることになりました。

H27.6.11

消費税 課税事業者の判定
被相続人の事業を承継した、の意義

  その年に相続があった場合において、その年の基準期間における課税売上高が千万円以下(ゼロも含む)である相続人が、当該基準期間における課税売上高が千万円を超える被相続人の事業を承継したときは、当該被相続人の当該相続のあった日の翌日からその年の12月31日までの間における課税資産の譲渡等については、免税事業者の規定の適用はありません。

消費税法上の相続及び相続人とは
 消費税法上、「相続」及び「相続人」については、「相続」には包括遺贈を含むものとし、「相続人」には包括受遺者を含むものとする、と規定しています。
 この規定は、「包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する」、この民法の規定からきているものと理解されます。
 では、特定遺贈の場合はどうなるか、ですが、遺贈は相続ではなく遺言による贈与の一種ですから、相続による承継にはあたらない、と考えられているようです。
 しかし、本来の相続人は包括遺贈を受けるかどうか、特定遺贈を受けるかどうかにかかわらず相続人であることに変わりありません。とすれば、相続人に対する特定遺贈は、当然に、相続による承継に含まれるのでは、と理解することもできます。

消費税法の法令解釈通達の文言
 しかし、法令解釈通達では、この事業の承継の解釈にあたっては、単に、特定遺贈によるものは含まれないとし、その特定遺贈が相続人に対するものなのか、それ以外の者に対するものなのか、まったく触れていません。ただ、素直に読めば、特定遺贈はいずれの場合も「承継」にはあたらない、と取ることもできます。
 解説書の中には、特定遺贈について「たとえその者が相続人であっても相続によって事業を引き継いだことにはならない」と論述しているものもあります。

「遺贈する」と「相続させる」の文言解釈
 相続人に対する特定遺贈で「遺贈する」と「相続させる」の文言があります。どちらでもよさそうですが、最高裁は、「相続させる」の文言は、遺産分割方法の指定であると解し、当該遺贈を放棄するには相続そのものを放棄しなければならないと解しています。
 とすれば、相続人に対する特定遺贈について、その文言が「相続させる」であっても、相続による事業の承継には当たらない、との理解でよいかどうか疑義が生じます。

H27.6.10

マイナンバーが可能にする満足税

マイナンバーの周知化は間に合うか
 日本居住者総背番号制度というべきマイナンバー制度の実施が始まることに向けて、国家の各機関の動きがいよいよ急になり出しました。
 国民に付番されるマイナンバーを国民自身には他に告知する義務はありません。告知の強制もできません。しかし、義務であり、強制であるかの如き、マスコミ情報が流されています。制度の是非を論ずる機会を暗黙裡に抹殺する合意をもって、動き出しているかのようです。

マイナンバーは必要か、有効か
 明治維新後の国家のように、徴兵制を敷くわけでもなく、戦後の混乱期のように、預金封鎖を実施して国民の財産の没収を企図しているわけでもなければ、国民管理のための付番の必要性は薄そうに思われます。
 税の有効な徴収という側面から、国民に対する番号管理を考えるとしたら、国民の2、3割程度の富裕層の財産管理ができれば十分なはずで、小市民の源泉税まで番号管理する必要性はなさそうです。

マイナンバーの真の狙いと機能的活用
 5000万円超資産の海外財産保有者、2000万円超所得者で且つ3億円以上の財産(有価証券だけなら1億円以上)保有者については、財産明細の申告を義務付けることになりましたが、マイナンバーでの管理の本当の狙いはこの層にあります。
 国外への出国に際しての、課税消失を防ぐための出国税の創設は今年の税制改正項目で既に実現しています。

富裕税から累進消費税(満足税)へ
 財産捕捉のための番号管理は、まず相続税・贈与税の課税漏れ防止、それから、富裕税という財産への直接課税の制度化、さらには累進消費税の創設を可能にします。
 真の所得とは満足である、という租税学説があります。満足とは消費とも置き換えられます。従って、真の所得である消費の総量に累進課税をすることこそ、あるべき税制かもしれません。満足税です。
 消費の総量は、
期首純財産-期末純財産+当期利益=消費
として計算できます。
 この消費額に累進税率を乗じ、平均税率分(現在なら8%)を控除して満足税額となります。(消費税の還付も仕組めます。)
 財産申告は、新たな税制を可能にします。

H27.6.9

時間効率を上げよう

 知識集約型産業社会となった日本の現状では、専門人材の知的生産性の差は3倍に及ぶと言われています。
 知的生産性の違いは、業務処理の時間効率の問題とも言えますから、この問題について考えて見ましょう。

社員の時間効率向上法
 個人の時間効率が上がる要因は、仕事に対する“意慾と集中度”にあります。
 それらを上げる主な方法は働き手が次の点に努力することです。
①自分にとって興味が湧く、得意な技術・技能・経験が活かせる分野のテーマ・目標を設定し、自分の専門能力のさらなる向上、キャリア形成の機会を得る、すなわち成長する期待を持つことで仕事に対する意欲を生み出す。目標管理制度における目標設定時がその好機として活用できる。
②集中度は、①で生まれた意慾が基本的に影響して高まるが、時間予算の重点配分でさらに高めることが出来る。具体的には、仕事を重要度(例えばA~Cランク)で区分し、1年間・52週間の時間予算を割り振る。 
③週単位・日単位の時間予算配分でも、仕事の重要度区分に応じて配分し、週・日ごとの集中度を高める。
④②③の前提として、業務単位(例えば目標設定した業務・ルーティン業務の単位)に、達成目標から逆算して、細分化した仕事の段取りを作成しておく(最少2時間単位の作業までブレークダウンすると、集中しやすい)。
⑤パソコンソフトやTV会議システム・IPフォーン会議などを活用、コミュニケーション効率を上げ、時間の無駄を省く。

経営者・管理者の留意点
 目標設定時に、企業戦略、部門目標を社員によく説明し、質疑応答などで十分に理解させると、個々人はその中で自己の成長機会を自ら見出し、意慾を持って取り組みたいテーマ・目標を発見します。
 このような“経営参加”は、社員の主体性・創造性を高め、時間効率を上げることにもなります。このような機会をおおいに作りましょう。

H27.6.8

所得拡大促進税制 中小企業の留意点

 所得拡大促進税制、正式には、雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除です。

大企業に配慮した改正
 大企業といえども適用要件の1つである①適用年度の給与等支給増加額が基準年度の給与等支給額に対する増加率5%はそのハードルが高く、また、雇用者の新規採用に比して今後もかなりの退職者が見込まれることから、もう1つの適用要件である②平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額以上とはならず、結果、この特例が適用できないこととなる事態も想定されることから、平成26年度税制改正で次のような改正が行われました。
 1つは、増加率は平成26年度2%、27年度は3%、平成28・29年度5%、そして、もう1つは、継続雇用者をベースにした平均給与等支給額の算定と平均給与等支給額が前期のそれを超えるとする改正です。この2つの改正により、大企業でもこの特例を容易に適用できる環境が整いました。
 ちなみに、この継続雇用者とは、雇用保険の加入対象者で給与等の支給を受けた国内雇用者であり、前期と適用年度のいずれの事業年度においても給与等の支給を受けた者です。加えて、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づくところの継続雇用制度の対象者は除く、とされています。

中小企業への配慮があってしかるべし
 いったい何が問題なのか、ですが、対象となる雇用者給与等支給額から、使用人兼務役員の給与等支給額は除かれている、ということです。そして、その上で、適用年度の給与等支給増加額が基準年度の給与等支給額の2%増の要件を満たさなければこの特例が使えない、ということなのです。
 仮に、基準年度において、使用人であったものが、その後の適用年度において役員、例えば、取締役経理部長、取締役営業部長といった役員に昇格した場合、当該使用人兼務役員になった者の給与等は基準年度では雇用者給与等支給額に含まれ、一方、適用年度において除かれることになり、適用年度の給与等支給額が基準年度のそれを上回ることにはならず、結果、この特例の適用を受けられない可能性は大となります。
 平成26年度の税制改正においては、中小企業のこの点にも配慮した、使用人兼務役員の給与等支給額の取扱いについての改正が望まれたところでした。

H27.6.5

ピケティの資産課税とマイナンバーと富裕税

ピケティの提唱
 ピケティの「21世紀の資本」は世界中で爆発的な売れ行きを示しています。ピケティは、資産格差を拡大させないよう、累進的なグローバル資産課税を提唱しています。個々人が持つ資産を全世界的に把握し、資産総額に応じて課税したうえで、税収を関係国間で配分するというものです。

資産課税への日本の制度化準備
 わが国でも、資産総額への課税制度創設の準備は進んでいます。今年の税制改正事項として、従来の「財産債務明細書」を改変し、国外国内を問わないもので、且つ「国外財産調書」と同じように運営する「財産債務調書」制度が創設されます。懲役刑を含む罰則をもつ「国外財産調書」制度の施行に引きずられての見直しのようにも見えます。

罰則ナシでスタート
「財産債務調書」の新制度には、懲役刑を含むような罰則は設けられないようです。提出を義務付けられる人のプライバシーの開示を強制するに等しい、財産と債務のオープン化は、100%完璧な申告も限りなく不可能であろうし、心理的には相当な抵抗が予想されるところだから、と思われます。
 罰則がなくてもまともな申告が期待できるものでしょうか。現行の「財産債務明細書」については、罰則がないため、提出義務があっても提出しない人が沢山おり、提出はするが形ばかりというものでも、これへの問合せは皆無です。

まずはスタートで少しのフォロー
 従来と違うのは、「財産債務調書」の信憑性を担保するための税務調査の制度を設ける、としているところです。相続財産の事前調査のようになりそうです。調査非協力には罰則があります。でも、調査官が職権により「国外財産調書」や「財産債務調書」の書き換えをする職権更正というのはなさそうです。

そしてマイナンバーが来年から
 財産申告と施行真近いマイナンバー制度をかけあわせると、当面の狙いは、相続財産の捕捉もれへの対処であるとしても、その先に資産課税としての「富裕税」を見据えている、ことが透けてきます。富裕税は、日本でも、戦後3年間実施されていましたが、フランスには今でもあります。
 財産申告が富裕税の税額計算申告になるまでは、財産適正申告の実現は相当な困難事のように思えます。

H27.6.4

~著作権とは~ 著作物はだれのもの?

平成26年度の中小企業診断士一次試験の経営法務にこんな問題が出題されました。 
 「ゴーストライターが自らの創作に係る著作権を他人名義で出版することに同意した場合、そのゴーストライターは、その著作物の著作者とはならない」○か×か?
 著作者の権利を保護するために著作権が存在するのですが、著作権は、「著作者の権利」と「著作隣接権」に分類され、さらに著作者の権利は「著作者人格権」と「著作財産権」に分類されます。

この問題は「著作者人格権」について問われているのですが、
 著作者人格権は、一身専属的な人格的利益を保護する権利であり、譲渡・相続できない権利(著作権法第59条)で、著作権法では次の3つを規定しています。
①公表権
著作物を公表するかどうか、また公表する場合の時期や方法について決定する権利
②氏名表示権
著作物に著作者名を表示するかどうか、また表示する場合どのように表示するか(本名、ペンネーム)などについて決定する権利
③同一性保持権
著作者の意に反して著作物の内容や題名を勝手に変えたり、切除したりさせない権利
 今回の問題ですが、著作者には②に記載した「氏名表示権」があります。これは実名もしくは変名を著作者名として表示することも表示しないこともできます。つまり、ゴーストライターが著作物を他人名義で出版することに同意したとしても、それは氏名表示権に基づくものです。あくまでも著作物は創作したゴーストライターのものであるために、解答は×ということになります。

では著作財産権は?
 ゴーストライターが、他人名義で出版する代償として金銭を受け取っていた場合は著作権の譲渡となり、著作財産権はゴーストライターになくなりますが、契約書に明確に著作権の譲渡と謳わず、単なる役務の提供や買取の対価と受け止められるような表現だと、著作財産権もゴーストライターに残る場合があります。
 コンピューターソフトの開発も著作権が関係しますのでご留意ください。

H27.6.3

今年の税制改正とマイナンバー

税制改正大綱のプラン
 税制改正大綱では、国税通則法を改正し、銀行等に対し、マイナンバーによって検索できる状態で預貯金情報を管理する義務を課す、としていました。
 しかし、グリーンカードでの預貯金管理を狙った1980年代での付番はマル優(少額貯蓄非課税制度)口座重複開設への対策だったものの、現在はマル優預貯金は障害者などに限定適用なので無きに等しく、むしろ「貯蓄から投資」へと政策が変更し、投資マル優とも言うべきNISA(少額投資非課税制度)を推進しているので、預貯金への付番の必要性は低下しています。

預貯金へのマイナンバー付番はなし
 国税通則法のみ、先の税制改正大綱通りの改正案になっていますが、マイナンバー法の改正での預貯金口座付番のほうは、大義が預貯金保険であり、その緊急的必要性が希薄なため、強制付番ではなく、任意付番になりました。
 預貯金については、口座数の大量性から全てへのマイナンバー付番は無理としても、新規のものについては義務化するのでは、と推測する向きもありましたが、結果として、平成27年改正では見送られました。
 預貯金口座への個人番号の付番を行う場合には、預貯金等へ損益通算範囲拡大の適用条件としてマイナンバー付番口座限定にするものと推測されます。

ジュニアNISAには即付番
 平成27 年度税制改正により、平成28年4月1日から、ジュニアNISAが導入されることになりましたが、口座重複開設防止の必要性から、マイナンバー付番が義務付けられています。
 証券会社等の営業所長に、未成年者口座開設届出書に添付して提出する未成年者非課税適用確認書にマイナンバー等を記載することになっています。

NISAへの付番は遠からず
 成人NISAに対するマイナンバー付番については、口座重複開設防止の必要性をマイナンバーで確保するには既に時機を失しているので、今年は先送りされました。
 しかし、法適用上の次の区切りとなる期間開始の平成30年分以後からのマイナンバー付番については、その効果があるので、義務付けられることになるのではないか、と予想されます。

H27.6.2

同族会社グループ内の合併
合併比率と税務

 合併の中心的な議論は、適格要件を満たすか、つまり、簿価引継ぎにより被合併会社(消滅会社)及び被合併会社の株主に課税関係が生じないよう所定の要件を充足しているかどうか、また、欠損金の繰越控除及び特定資産の譲渡等損失の損金算入のための要件を具備しているかどうかです。
 同族会社グループ内の合併にあっては、同一の者、つまり、親族関係のある一族で100%保有され、その保有期間も長期にわたる兄弟会社・関係会社間の合併が大部分ですので、多くの場合、適格要件及び欠損金の繰越控除並びに特定資産の譲渡等損失の損金算入に関する要件(以下、適格要件等)は満たされていると思われます。

合併比率の算定
 適格要件等は、満たされているとしても、合併比率に不合理な差異がある場合には、株主である親族間で「みなし贈与」といった課税関係が生じる場合もあります。
合併比率とは、一般的に被合併会社の株式1株に対して合併会社の株式を何株割り当てるかの割合です。合併比率の算定にあたっては、被合併会社の1株当たりの価値と合併会社の1株当たりの価値の算定は不可欠です。
 この1株当たりの価値の算定ですが、株主が個人のみであれば、相続税法上の株式評価方法で問題ないと思いますが、法人株主等が存在する場合には、いわゆる子会社に該当するものとして、土地等及び上場有価証券があればその時の時価で、また、評価益に対する法人税相当額を控除しない、といった評価になるものと思われます。

1株に満たない端数株の対応
 合併比率を算定して、その比率で合併会社の株式を割り当てると、多くの場合、端株(1株未満の端数)が生じてしまいます。この端株を売却等でその代金を株主に交付、ということは非上場株式ではまずありえません。ではどうするかですが、一般的には、株式分割、併合の手続きが用いられます。
 例えば、被合併会社の発行済株式100株、株主Aは79株、Bは21株を保有、合併比率は、「被合併会社の株式1株につき合併会社の株式1.5株」とします。
 この場合、株主Aには118.5株、Bには31.5株が割り当てられ、端株が生じてしまいます。これを回避する方法の1つとして、合併会社の1株を10株に分割することで、合併比率が「1対15」になり、端株を生じさせなくすることができます。

H27.6.1

プロジェクトチームと労働法

 企業が創造的な開発業務を行なう場合、自社が保有する技術を補完するため、外部の企業、専門人材を集めてプロジェクトチームを編成する必要が生じます。
 このようなプロジェクトチームでは、専門人材が自由にコミュニケーションを行ない、合意形成を図りつつ成果物を開発する組織運営が不可欠です。

プロジェクトチーム活動の障害
 しかし、現実には労働局の指導、監督により、業務委託企業・受託企業の従業員間で、間仕切り、配席区分が行なわれ、専門人材間の自由で創造的な直接コミュニケーションが行なえず、機能不全が生じています。この状況は、人口構成の高齢化や少子化に伴う課題先進国であり、創造的課題山積国である日本にとって、開発力の基本を脅かす重大問題で、国際的開発競争力の問題でもある障害です。

障害が生じた基本的な原因
 この問題は、労働集約型産業社会の高度成長期に建設業界における重層下請け構造による中間搾取の取締りのため、労働省が行なった規制を、今日の知識集約型産業社会に適用した結果生じたものです。言わば時代錯誤の労働行政が基本原因と言えます。

問題回避の方策は合同会社の活用
 この問題回避の方策は合同会社(LLC)を活用してプロジェクトチームを編成することです。その実務的要点は次の通りです。
①企業が創造的成果物を開発する目的で合同会社(LLC)を設立し、そこに開発業務を委託する。
②開発業務委託企業と外部の専門人材(企業、または個人事業主)を合同会社(LLC)の代表社員・業務執行社員として登記する(外部人材は合同会社と業務委託契約の上、業務執行社員となる)。
③合同会社(LLC)には定款自治が認められており、定款で、代表社員・業務執行社員間の直接コミュニケーションによる合意形成、その結果を尊重した代表社員による成果物の承認、決定の組織運営方法を定めて業務を執行できる。

経営者・管理者の留意点
 合同会社(LLC)であっても、業務委託契約に伴う労働法・税法上のコンプライアンス確保策が必要になります。