港区 税理士法人 大沢会計
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2015年9月

2015/09/30

H27.9.30

役員の訴訟リスクに対応する保険
会社役員賠償責任保険の取扱い

会社法における「役員会社法における「役員の賠償責任」
 会社法では「役員の賠償責任」として、①役員の会社に対する賠償責任、②役員等の第三者に対する賠償責任の規定を置くとともに、③株主が会社を代表して役員等の法的責任を追及する「株主代表訴訟」制度が定められています。そのため、役員を被告とする訴訟は、①会社訴訟(原告:会社)、②第三者訴訟(原告:第三者)、③株主代表訴訟(原告:株主)の3タイプに分類することができます。

会社役員賠償責任保険(D&O保険)とは
 これらのうち、②と③の訴訟リスクから役員を守る保険として「会社役員賠償責任保険」(D&O保険)があります。
 D&O保険がカバーする範囲(勝訴の場合は争訟費、敗訴の場合は賠償金と争訟費)は、訴訟タイプ別に次のとおりになります。

●会社訴訟
   賠償受取…会社
   保険金(役員勝訴・敗訴)…保険支払対象外(免責)

●第三者訴訟
   賠償受取…第三者
   保険金(役員勝訴)…(A)争訟費
   保険金(役員敗訴)…(A)賠償金 争訟費

●株主代表訴訟
   賠償受取…会社
   保険金(役員勝訴)…(A)争訟費
   保険金(役員敗訴)…(B)賠償金 争訟費

 Aの部分はD&O保険の普通保険約款契約、Bの部分はD&O保険の株主代表訴訟担保特約でカバーしている内容となります。
 なぜ、このような保険の設計となっているかというと、株式代表訴訟の役員敗訴(B)の場合には、会社が賠償金受取人となり、会社と役員が利益相反関係となるからです。そのため、(B)の保険料を会社に負担させることは難しいため、この部分は役員個人に負担させるように「特約」とし、他のリスク(A)を会社側で保険料負担する契約の形を採用したようです。株主代表訴訟の役員勝訴の場合(A)には、正当事由なため、このような問題は生じません。

D&O保険の法人税の取扱い
 税務では、このような契約形態をなぞる形で、損金の取扱いが定められております。
①基本契約(普通保険約款部分)の保険料(A)…損金算入
②株主代表訴訟担保特約(特約部分)の保険料(B)…法人負担の場合は役員給与
(個別通達「会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱い」)

H27.9.29

教育資金の非課税導入から2年 教育資金を追加したい場合

教育資金信託は安定した増加傾向
 教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税制度が開始して2年が経過しました。この非課税制度は、信託・預金・証券の3取引について設けられていますが、このうち信託については、信託協会から受託状況が公表されています。
教育資金信託受託状況(信託協会調べ)
新規契約(累計) 設定金額
(累計)
平成25年度 67,073件 4,476億円
平成26年度 118,554件 8,030億円
 契約・金額とも安定的に増加しており、このペースでいけば、平成27年度は設定金額の累計は1兆円を超えるかもしれません。

「追加」をするときの手続は?
 制度導入から2年が経過していますので、そろそろ「前回設定したものに金額を追加したい」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
 国税庁から公表されている「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」では、次のような設例を設けて、追加の手続きの仕方を

説明しています。
【設例】 祖父→孫(書面による贈与)
当初設定額 1,000万円
その後、非課税の限度額を使い切っていなかったため、700万円の金銭を非課税が適用される口座に入金した。
① 非課税の限度額(1,500万円)から既に非課税の適用を受けている1,000万円を控除した残額(500万円)を限度に、追加分の非課税の適用を受けることができます。
 この場合、贈与を受けた方(受贈者)は、「追加教育資金非課税申告書」を取扱金融機関の営業所等を経由し、所轄税務署長に提出することになります。
② 500万円を超える部分である200万円については、その贈与により取得した年分の贈与税の申告を行う必要があります。

当初は祖父、今回は祖母で追加したい場合
 追加の贈与が祖母からの場合も、上記と同じ手続になります。なお、別の教育資金管理契約に係る口座を新たに開設し、非課税の適用を受けようとする場合には、当初開設した口座に係る教育資金管理契約を終了する必要があります。

H27.9.28

中小事業主の労災特別加入制度

役員でも労災保険加入ができる制度
 労災保険は本来、労働者の業務又は、通勤による災害に対して保険給付を行う制度です。しかし代表者や役員、代表者の同居の親族等でもその業務の実情、災害の発生状況から見て、労働者に準じて保護する事が適当であると認められる人は労災に任意加入する事ができるのが特別加入制度です。

中小事業主等とは
①下記に記載する業種と常時雇用労働者数の企業規模である中小事業主である事
ア、金融業、保険業、不動産業、小売業は50人以下
イ、卸売業、サービス業は100人以下
ウ、それ以外 300人以下
②労働者以外で①の事業主の事業に従事する人(事業主の同居家族従業員や代表者以外の役員等)
 労働者を通年雇用しない場合でも1年間に100日以上使用している場合は加入可能。

特別加入の加入手続き
 特別加入をするためには
①労働者の労災保険加入をしている事、していない場合は成立させる事
②労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託している事
この2つの要件を満たし、所轄の都道府県労働局の承認申請を行います。

保険料と補償内容
給付基礎日額×365日×各事業の保険料率
が年間保険料です。年度の途中で加入、脱退をした場合は月割で計算されます。給付基礎日額は3,500円から25,000円の間で金額を選択します。
保険料は金額に関わらず年間の労働保険料全額を3分割して払う事ができます。
 特別加入の補償の範囲は業務災害では申請書に記載された範囲が対象です。労働者の就業中、時間外、休日労働に応じて就業していた場合や準備、後片付け、事業場施設内での行動中、出張等ですが事業主の立場で行われる行為は除かれます。通勤災害は一般労働者と同様に取り扱われます。
 特別加入者が業務災害又は通勤災害による場合にも所定の保険給付に併せて特別支給金も支給されます。

H26.9.25
目標管理の適用範囲

 目標管理制度の目的は経営目標を達成するための業績管理にありますから、各部署を所管する管理者と、部署の目標達成に直接的な貢献が期待されている中堅以上の一般社員が適用範囲に入るのは当然ですが、社内等級で初級クラスの育成過程にある一般社員や、補助的職務に従事する一般社員に適用すべきかどうかについては、様々な考え方があります。

適用の考え方と問題点
目標管理適用の代表的な考え方と問題点は次の通りです。
ケース
 適用する
考え方
 全員が経営目標の達成に貢献すべきであるから目標管理制度の適用対象とする。
問題点
 管理者の制度運用負荷が過大になる。

ケース
 適用しない
考え方
 ・初級クラス社員については能力開発に重点を置くので対象外とする。
 ・補助的職務に従事する社員については、経営目標達成に直接貢献することがないので、対象外とする。
問題点
 社員の経営参加度が低くなり、モラール低下を招くおそれがある。

適用する場合に生じる管理者の運用マネジメント負荷が過大となる問題は、部署の業績向上に責任を持っている管理者にとっては長時間労働・過労を招き、今日的に無視できない大きな問題であるといえます。

第三の解決策の勧め
 管理者の過大なマネジメント負荷を回避し、しかも社員全員が経営目標達成に何らかの貢献をし、トータルモラールを維持、向上させる方法は、一般的な「改善提案制度」を変形して活用することにあります。
[ 改善提案制度の変形活用法(要点)]
1.社員全員を対象とし、質・量・コスト・納期・時間・情報・環境など全ての身近かな改善を対象とする。(これは一般的)
2.管理者の権限で改善を実施し、効果が実証された改善の実績登録制度にする。(通常、改善前に行われる提案審査の無駄を省く実践的方法)
これは、全員参加の部署目標とすることもでき、「目標管理制度の発想転換」ともなる上策といえます。

H27.9.25

“成果主義”の問題解決

 日本の産業社会が労働集約型から知識集約型へ移行するに伴って“成果主義”の評価が日本企業に導入されましたが、目標管理制度などで実際に適用して見ると、多くの問題が発生し、一時は混乱状態に陥ったものの、今日では一段落したようです。

“成果主義”評価の問題解決状況
 発生した問題点と今日の解決状況を整理しますと、次の通りです。
[問題点の要約]
①外部環境の変化や、会社の方針変更などにより、当初設定した目標達成の困難性が変化し、成果が公正性・納得性をもって評価できない。
②達成度評価を過度に意識し、達成が容易な目標設定(目標の矮小化)に陥る。
③個人の成果の評価を高めるため、ノウハウの独り占めなど、個人主義が横行し、チームワークを阻害する。
④評価の対象にならないプロセス努力が軽視され、人材育成がうまく行かない。
[今日の問題解決状況]
それらの問題は、多くの企業による改善努力によって、次のように解決されつつあります。
①成果の評価は外部環境の変化などを考慮して、結果が出た時点で、困難性の実態を踏まえて行なう。
②目標の矮小化を防ぐため、目標設定時にチャレンジ度を設定する。
③成果は外部環境変化を考慮に入れ、チャレンジ度と達成度を組み合わせて評価する。(これは、外部環境変化などによって、目標達成の困難度・チャレンジ度が変化し、達成度評価の意味も変化するため。)
④個人主義の横行など、チームワークを阻害する目標管理制度の運用を排除するため、チーム目標を設定し、協働の成果を評価する。
⑤成果に繋がったプロセスでの行動を成果に含めて評価する。

経営者・管理者の留意点
 このように“成果主義”の評価は適正な方向へ向かって改善されつつあると言えますが、特に「チームワークを重視する目標設定と達成度評価」の問題など、なお不断の改善努力が必要な事項があります。
 チームワークの公正性・納得性を持つ評価は「チーム全員の協働による成果として、メンバー全員が同じ評価を受ける部分」と、「プロセスで成果に結びついた行動により成果に貢献したメンバー個人の評価を的確に行なう部分」の評価割合・基準にあると考えられ、引き続き努力したいものです。

H27.9.24

名義変更等後に贈与の取消しがあった場合 合意解除による贈与の取消し

「贈与の取消し」と「贈与税の課税」
 民法では、書面によらない贈与は、贈与の履行が終わるまでの間は、その当事者はいつでも取消すことができることとされています。一方で、贈与税の課税のタイミングは、書面による贈与は、その契約の効力発生時、書面によらない贈与は、その履行の時とされていますので、一旦履行されてしまえば、贈与税が課税されます。

法定取消権・解除権による贈与の取消し
 ただ、国税庁では、履行後に贈与の取消しや解除があった場合の特例的な取扱いとして「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」という個別通達を公表しています。その中に法定取消権等や合意解除に基づき贈与が取消された場合の贈与税の取扱いが示されています。
 贈与契約が①詐偽・強迫による取消権、②夫婦間の契約取消権、③未成年者の行為の取消権に基づき取消し・解除が行われた場合には、元の贈与者の名義に変更し、一定の事実が確認された場合に限り、その贈与はなかったものとされ、納税者は更正の請求を行い税金を取戻すことができます。

合意解除による贈与の取消しの場合
 このような法定取消権・解除権による贈与の取消しの場合を除き、当事者の合意による贈与の取消し・解除があった場合においては、原則として、当初の贈与税課税が取消されることはありません。しかし、当事者の合意による取消し・解除が次の事由に該当するときは、贈与税課税が著しく負担の公平を害する結果となると税務署長が認める場合に限り、その贈与はなかったものとして取扱うことができます。
①贈与の取消し・解除がその贈与年分の贈与税の申告期限までに行われ、取消し・解除したことが名義変更等で確認できること(更正の請求は想定していません)
②贈与に係る財産が受贈者により処分等されていないこと
③その贈与に係る財産について贈与者・受贈者が譲渡所得等の申告等をしていないこと
④受贈者がその財産の果実を収受していないこと(収受している場合には、その果実を贈与者に引き渡していること)

H27.9.18

明治・大正時代に設定された抵当権?
「休眠抵当権」とは?

「休眠抵当権」とは?
 不動産登記簿を確認していると、「乙区」欄に「債権額」が数十円、「原因」に明治・大正の年号が記載されている抵当権にお目にかかることがあります。
 これは「休眠抵当権」又は「休眠担保権」とよばれるもので、既に返済を終えている債権、あるいは消滅時効を迎えている債権の抵当権です。抵当権の抹消は、登記申請の手続を踏まなければならず、期間が経過すれば、自動的に登記がはずされるものではありません。手続が行われず、放置されているものは、そのまま登記に残ってしまうことになるのです。
 その金額が少額であることが多いため、実際には害があるものではありません。ただ、不動産を売却したい、借入を行い担保にしたいということになると、この「休眠抵当権」が登記に残っていることで、交渉の妨げになることもあるようです。

共同申請による抵当権抹消手続
 この「休眠抵当権」の登記の抹消手続にはいくつかの方法があります。抵当権の抹消手続は、登記権利者(所有権登記名義人)と登記義務者(担保権者)が共同で申請することが原則となります。
 そのため、登記権利者は、抵当権者の相続人全員の申請書、委任状、印鑑証明書を入手するなどして、抹消手続を進めることになりますが、百年前の抵当権者の相続人など何人になるか分かりませんので、非常に煩雑な手続になります(抵当権者が行方不明である場合には、登記された金額と利息、損害金を供託する方法もあります)。

裁判により抹消手続を行う場合
 一方、抵当権者の相続人の協力が取り付けられない場合や煩雑な事務手続を避けたい場合であれば、裁判の判決を得ることで単独で抹消手続を行うことができます。
 裁判というと、面倒なイメージがありますが、債権の認否に関わるものでなく、抵当権抹消の裁判なので、あくまでも形式的なものにすぎません。この場合、抵当権者の相続人も参加することなく、数十分で終了することになるようです。
 ただし、訴状等が相続人に届くことになりますので、ビックリする方もいるかもしれません。あらかじめ、そのことを周知しておく必要があるでしょう。

H27.9.17

組織開発と目標管理

 “組織開発”とは、組織の経営革新能力を高め、継続的に維持する組織をつくることを言い、経営戦略目標の達成力を高める価値があります。目標管理制度など全社的な戦略目標達成施策が限界にぶつかったと感じられる時などが、組織として本質的問題を捉え、総力をあげてその限界を突破すべく経営革新力を創出する組織開発に着手する好機であると言えます。

“組織開発”の取り組み方
 “組織開発”はトップを補佐する経営管理部門が中心となり、次の手順で推進します。
① 経営陣が中心となって、企業の価値観・経営理念から、どのような会社にしたいのか、そのためにどんな組織活動が必要か、を確認する。
② 各部署のミッションと現状の確認(自部署のミッションは何か、どのような組織であるべきか、自部署の現状はどうなっているか)
③ ミッション追求の障害となる問題点の発見(②と③は過去1年の活動実績から事実に即して認識)
④ 次年度の経営戦略、経営目標に基づいて、部署目標を設定する際、③の問題点解決策・革新策を的確に織り込む。
上記①~④の取り組みの真剣さ、従業員間の共通認識の程度が、組織開発の成果を決定付けます。そのため、出来るだけ多くの従業員が参加し、それぞれの体験事実に基づく率直、自由な意見交換を行うことが不可欠です。

経営者・管理者の留意点
 組織開発の価値を発現させるために、次の点に留意しましょう。
1.高齢従業員の増加・女性の活躍機会の増加、外国人労働者との協働、ワークライフバランス等働き方の多様化は価値観の変化を生じさせ、目標管理制度の運用においても、会社の価値観再統一の必要性、重要性が高まり、“組織開発”に着手する必要性が生まれることがあります。
2.日本企業の組織は、いままで同質性によるチームワークを特色としてきましたが、今後は「異質な個人の集まりが新しい知を創出する“共創”」によるチームワークを重視して組織開発を進めたいものです。
3.“組織開発”は、トップ層を含めて社内各層・各部署の理解度、徹底度にバラツキが生じやすいので、トップは注意深くその進展を見守り、不退転の決意をもって革新に取り組むよう要請する等、継続的な働きかけを行うことが欠かせません。

H27.9.16

気をつけたい役員の労災保険

労災の原則は労働者が対象
 法人の役員であっても常勤で勤務する者は健康保険や厚生年金保険の適用があります。一方、労災や雇用保険は原則として対象外です。労災保険でいえば「労働者の業務上の負傷、疾病、障害、死亡等の業務災害に関する保険給付」を行う事になっており事業主や他の役員、事業主と同居の親族等は適用されません。労災保険に加入していないならば健康保険を使えるのでしょうか。健康保険は「業務外に起因する傷病」に対して療養の給付を行う制度ですから、原則使用できません。業務上傷病であっても事業主や役員は労災の適用はないので実態に応じて対策をしておく事が必要です。

取締役で労災対象者の場合
 代表権や業務執行権を有する役員は労災保険の対象者ではありません。業務執行権とは株主総会、取締役会の決議を実行し、日常的な取締役会の委任事項を決定、執行する権限を言います。しかし法人の取締役等であっても事実上、業務執行権を持つ者に指揮監督を受けている者は原則労働者として扱います。また、取締役会規則により業務執行権を有すると認められている者は対象にはなりません。
 また、監査役や監事は法令上では使用人を兼ねる事は無いのですが、事実上一般の労働者と同様に賃金を得て労働している場合は労働者として扱います。
 これら兼務をしている取締役等は役員報酬の部分は労災の対象でなく労働者部分の賃金が対象となります。

法人5人未満事業所の代表者等労災の扱い
 特例として、傷病が発生した当時に被保険者が5人未満の社会保険適用事業所の代表者等で一般の従業員と著しく異ならない労務に従事している様な場合は業務上の傷病についても健康保険の給付対象とされています。平成25年5月からは休業中の傷病手当金も給付される事になっています。
 又、他に中小事業主等の労災特別加入をしていれば役員の労災適用を受ける事ができますが、その場合は5人未満事業所でも労災保険から給付を受ける事になります。

H27.9.15

芥川賞の賞金品は所得税の課税対象
「事業所得」か「一時所得」か?

芥川賞の賞金品は所得税の課税対象?
 第153回芥川賞は、お笑い芸人の又吉直樹さんが受賞して話題になりました。同賞の正賞は懐中時計、副賞は100万円だそうです。これらの賞金品については、特に非課税として所得税法に特掲されていないため、所得税が課せられることになります。
 この場合、受賞の経緯が、既に公表された候補作品の中から選考委員(第三者)により選ばれるものであることから、「著作の対価」としての性質は有していない―すなわち、源泉徴収の対象(原稿報酬)とはならないものと位置づけられています。

では「事業所得」か「一時所得」か?
 では、「事業所得」か「一時所得」のどちらに該当するかといえば、少々判断が難しいところではあります。所得の区分は、「継続性・対価性」があるもの、ないしは「付随収入」としての性質があれば「事業所得」、そうでなければ「臨時的・一時的」な収入として「一時所得」となります。ただ、この新人文学賞の受賞をきっかけに作家生活(事業)が軌道に乗る方もいらっしゃることを考えると必ずしも「一時所得」とは言い切れない部分があることは否めません。

正面から聞いてみた作家さんがいました!
 東京国税局から公表されている文書回答事例の中に「吉川英治文学新人賞の受賞に伴って受領した副賞の取扱いについて」というものがあります。これは平成10年から作家業を営んでいる方が同賞を受賞した際に受け取った副賞は所得税法上「一時所得」に該当するものと解して差し支えないか、国税局に直接文書で問い合わせたものです。
 こちらの作家さんは、同賞は、①財団法人が選ぶもので「出版社」が選ぶものではないこと、②既存の作品の中から選考委員によって選ばれたもの(非公募型の新人文学賞)であって、自らが応募するもの(公募型の新人文学賞)でないこと、③芥川賞などが源泉徴収の対象でないように、「著作の対価」としての性質は有していないことから、作家としての本来の事業活動による収入ではなく、文筆活動を行う中で一般的に受領し得る性質のものではない―むしろ、予期せぬ臨時・偶発的収入だと主張したのです。結果としては、国税サイドではこの作家さんの主張を認めております。

H27.9.14

「新国立競技場」ではないですが・・・
計画変更のために不要になった設計費

新国立競技場建設計画が白紙撤回
 2015年7月、安倍首相は2020年東京五輪のメイン会場となる新国立競技場の建設計画を「ゼロベースで見直す」ことを表明しました。
 発注元である日本スポーツ振興センター(JSC)が2012年に開催した国際コンペでは要綱に1,300億円と記載されていた総工事費は、基本設計案の段階で1,625億円、有識者会議を経て最終的には2,520億円まで膨れ上がり、根拠も曖昧なまま、10月には着工する予定となっていました。
 しかも、財源が1,000億以上不足している状況での見切り発車。とても国民の理解を得ることができませんでした。
 デザインを手掛けていた建築家ザハ氏に既に支払った監修料は13億円といわれ、返金されないと報道されています。

企業ならば、不採用の設計費はどうなる?
 「これはあまりにも極端な事例なので、企業では起こらないよ」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、企業が建物を建築する場合においても、当初の計画が思うように進まず、計画を変更しなければならないケースが少なからずあるようです。
 このような場合、不採用となって用いられなくなった当初の計画に基づく各種の測量費用や設計費用は、新たに計画を変更し直して、完成した建物等の取得価額を構成するものなのでしょうか?

計画変更により不要となったものは損金に
 法人税の通達では、「固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示」の中で、「建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額」は、固定資産の取得価額に算入しないことができる―としています。
 同一建物の建設のために、いく通りもの設計を行い、それに修正を加えながら最終的な設計が確定したような場合には、その全体の設計費用がその建物の取得に要した費用として、取得価額を構成すると考えるようですが、建設計画を変更したことにより不要となった費用については、計画変更後の建物の取得価額に含めることは適当でないと考えられています。

H27.9.11

経理処理の留意点 覚えて便利0.9779

約束は簡単だけど
 講師料等の支払いや士業と言われる先生方への支払いは、手取りで約束される場合が良くみうけられます。
講演を頼み「それでは講演料は10万円でお願いたします」と言った時は概ね手取り10万円を想定してのやり取りとなります。
しかし手取りで約束された金額を支払った場合の経理処理は大変面倒なことになります。

何が面倒なのか
 企業が講師料や士業と呼ばれる個人事業主への支払いをする場合は源泉徴収税額を徴収して、残りを支払うこととなります。
更に支払った10万円には消費税が含まれていることになります。
そうなるとはたして経理上の講師料は幾らになるのか大変面倒です。

講師料10万円で計算してみましょう
 経理上の講師料をAとしますと以下の算式が成り立ちます。
A×1.08(消費税)-A×10.21%(源泉税)
=10万円
Aで括ると以下となります。
A(1.08-10.21%)=10万円
よって
A=10万円÷(1.08-10.21%)
括弧の中の数字が0.9779です。
A=102,259.9447 ……となります。
講師料を102,260円とすると
消費税は102,260×8%=8,180円
源泉所得税は
102.260×10.21%=10,440円となります。

経理処理は以下となります
 講師料 102,260  現預金 100,000
 仮払消費税 8,180 預り金 10,440

結論としては
 手取りで約束された場合、手取り金額を0.9779で割った数字が経理上の経費金額です。しかしこれは源泉所得税が10.21%の場合です。因みに源泉所得税が20.42%の場合は0.8758で割った数字となりますのでご留意ください。

H27.9.10

高齢化と人件費

 従業員の高齢化に伴って人件費が増加し、赤字体質に陥ってしまう企業があります。
 その原因は賃金制度が従業員の加齢とともに毎年昇給する年功賃金型となっているか、能力に応じて賃金を決定する職能資格制度を持っていても、実際の運用が年功的に行なわれている場合が多いと言えます。

人件費適正化の考え方と方法
 人件費は従業員の働く意欲を維持、向上させる重要性から、単純に高齢者の賃金を抑制する考え方は適正とは言えません。
 人件費を「コスト」と考えるのではなく、「人材に対する投資」と考え、年齢にかかわらず、能力活用を図って業績を向上させることで回収する考え方が重要です。
 その方法として、次の人事賃金制度を設計、適用することを推奨致します。
① 社内等級制度を「仕事・役割」に基づいて設定し、対応する賃金体系を設定する。
ⅰ)定型的職務群(製造職など)は職務給をベースにして習熟給を組み合わせる体系
ⅱ)非定型的職務群(開発職・企画職など)は等級別の職務給をベースに、等級内で賃金額に幅をもたせて設定、等級間重複型賃金(下位等級の上限が、その上位等級の下部と重複する賃金設計。実力評価を反映しやすい)を行なう。
② 目標管理制度などにより、業績・能力を評価して、年功を排除した実力主義で社内等級・賃金を決定する。
③ 人件費の使い方が適正か否かを判断する基準は「人件費当りの利益」の増加(例えば「営業利益/総額人件費」の増加)の程度、人件費負担が適正か否かを判断する基準は「労働分配率」(=総額人件費/付加価値・80%以下が目安)とする。

経営者の留意点
高齢化と言う現象にとらわれず、全従業員を対象に「実力主義」の評価・処遇を徹底することが人件費対策の基本です。
高齢化による人件費の上昇で経営が危機的な状況にある場合、前述の人事賃金制度を準備して、個人別の再評価を実施し、現状から移行する非常措置をとらざるを得ないことがあります。
そのケースでは、労働条件の下方修正が生じるため、労働組合の有無にかかわらず、従業員への事前の説明を十分に行ない、納得を得ることが重要です。

H27.9.9

経理処理の留意点 「取引先持株会」株式

「取引先持株会」株式とは
 毎月数万円ずつ積み立てて取引先の会社の株式を取得する仕組みです。取引先から安定株主として協力してほしいとの依頼で、それほどの負担になりませんのでお付き合いで行っている企業も多いかと思われます。
「投資有価証券」の科目で処理し決算時には上場企業の場合は時価で、非上場企業の場合は取得価格で貸借対照表の投資等の部に計上します。
しかし税務上時価評価は認められませんので、資本の部に「その他有価証券評価差額金」(全部純資産直入方式)と言う科目を設けて処理する方法が一般的です。監査法人等の監査を受けていない中小企業にあっては、取得価格で表示している場合も多々見受けられます。

問題は配当金です
 毎月定額で株式を取得していますが、配当金も株式の取得に充てられます。毎月の定額の取得は、預金等から資金の移動がありますから、計上漏れはありませんが、配当金は、通知が来るだけで全く資金移動はありません。しかも通知と言っても現在では、葉書形式の簡単なものです。
何年も気が付かずにいると、株式の計上漏れの金額も多額になってきます。

配当金の処理
 配当を受けその資金で新たに株式を取得した場合の処理は以下となります。
配当金 10万円
源泉所得税 2万円
(現在は復興特別所得税が掛かりますから、20.42%ですが便宜上20%とします)

投資有価証券 8万 受取配当金 10万
法人税・住民税等 2万

要は整理整頓
 「取引先持株会」の株式を取得されている企業の経理担当者は、「持株会」ごとに専用のファイルを作成し、全ての通知を保管するようにしましょう

H27.9.8

労働保険に加入する人・しない人

労働保険とは労災保険と雇用保険の総称です。保険給付は別個に扱われますが保険料の徴収は一体として扱われています。
 労災保険の加入対象者
①労災保険は雇用形態にかかわらず労働の対償として賃金を受ける全ての人が対象です。1日限りのアルバイトでも適用されます。
②法人の役員で代表権・業務執行権を有する人は労災の対象外です。取締役でも指揮監督を受けて労働に従事し、その対象として賃金を受けている者(労働者としての賃金部分)は労災の対象となります。代表権や業務執行権を有する人は労災の対象外ですが、労災保険特別加入制度を利用すれば労災加入ができます。
③事業主と同居の親族は原則として労災保険の対象外です。事業主の指揮監督に従っている等、一定の条件の下では対象者になる事もあります。取締役と同様に労災保険特別加入者の対象者にもなります。
④出向労働者は、出向先で指揮監督を受ける場合は、出向元賃金も出向先賃金に含めて計算し、出向先対象労働者とします。
⑤派遣労働者は派遣元の対象労働者です。

 雇用保険の加入対象者
①名称や雇用形態にかかわらず被保険者。
ア、1週間の所定労働時間が20時間以上で
イ、31日以上の雇用の見込みのある場合
②法人の役員、取締役は原則として対象になりませんが兼務役員として部長、支店長、工場長等従業員としての身分を有し、労働者的性格の強い者は被保険者になります。その場合、職安に雇用の実態を確認できる書類を提出しておく必要があります。
③事業主と同居をしている親族も兼務役員と同様の取り扱いになります。
④派遣労働者は派遣元で加入します。
⑤出向者は主たる賃金の支払い会社で加入。
⑥除外される人
ア、季節的に雇用され4ヶ月以内の期間を定めて雇用される者や1週間の所定労働時間が30時間未満の者
イ、昼間学生
ウ、65歳以上で新たに雇用される者

H27.9.7

経理処理の留意点
繰延資産と長期前払費用

繰延資産とは
 中小企業会計指針によると、「既に代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用を資産として繰り延べたものをいう。」とあり、「旧商法に規定する創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費、新株予約権発行費が繰延資産に該当するが、税法に規定する繰延資産は、長期前払費用等とする。」と言っております。

長期前払費用とは
 中小企業会計指針によると「前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対して支払われた対価をいい、前払利息、前払保険料、前払家賃、前払保証料等が該当する。」そして「年度末後1年を超えて費用となるものを長期前払費用とする。」と規定しております。

会計指針自体が矛盾しています
 要は「既に役務の提供が終わり効果が長期間続くものを繰延資産、これから役務の提供を長期にわたって受けるものを長期前払費用」と言っておきながら、「税法上の繰延資産は長期前払費用等としろ」と言うから現場では混乱が起きるのです。

繰延資産に対するスタンスは
 どうしてこんなことが起こるのかと言えば、税務上は多額の費用であっても効果が長期にわたるのだから、減価償却資産と同様に扱うべきと主張し、会計上は費用の塊で何の資産価値もないのだから、資産に計上するのは最低限にすべきと主張して、対立しているからです。
 そこで、税務上どうしても資産にしろと言うのなら、繰延資産と言う表示ではなく長期前払費用等他の科目にしてくれといった一見子供じみた対立が今でも続いているのです。
 現場の経理担当者はいい迷惑ですが、税務上の繰延資産は、一般的には長期前払費用に含めて処理されているのが現状です。

H27.9.4

役職定年制

 従業員規模1000名以上の企業の約半数が導入している「役職定年制」とは、管理職の役職を一定年齢で外す制度ですが、中堅・中小企業で導入する場合はいくつかの注意点があります。

「役職定年制」の目的、形態
 管理職が定年まで、その職位に止まることで後輩社員の管理職登用が遅れ、そのモラールが低下したり、働き盛りに管理職として活躍してもらう機会を奪うなど、全体として管理職層のマネジメント能力が低下する企業の人材活用戦略の問題を回避することを目的として導入するのが一般的で、その形態は次の通りです。
①部長・課長などの職位別に役職定年を区別して設定し(例えば部長58歳、課長56歳)、ライン長から外す。
②または、管理職は全て一定年齢(例えば60歳)を役職定年とする。
③上記①②とも、理事など役員に準ずる処遇を受けている場合は役職定年を適用せず、ライン長に止まる。
④役職定年を適用された者は、専門職、または一般職として業務に従事する。

「役職定年制」導入の留意点
 この制度を導入した場合、生じやすい問題は、役職交代後のモラールの維持が難しい点にあり、次のような対策が必要です。
①対象者への事前の目的説明を丁寧に行なうとともに、交代後には、その能力・経験を生かした業務遂行と後進の人材育成面に期待する会社の意図を伝える。
②前項の裏付けとして、社内等級で管理職に並び、かつ管理職の指揮下で専門的業務に従事する「複線型専門職制度・専任職制度」を設定して処遇し、業績・能力発揮の査定と報酬への反映を行なう。

経営者の留意点
 中堅・中小企業で「役職定年制度」を導入する場合は、目的を達成できるよう、次の点に留意したいものです。
1.事業推進の中核として、マネジメントを行なう人材を確保し、経営戦略の実現力を確保するため、自社における現状と将来のマネジメント人材確保状況を的確に洞察、判断して、管理職層の弱体化に陥らないよう「役職定年制」の導入を決断する。
2.後進の管理職登用は、業績に裏付けられた実力の評価に基づいて行ない、「役職交代制度」のメリットを事実で証明する。

H27.9.3

社会保険に加入する人・しない人

 会社や事業所で働くと普通、社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入しますが、労働時間や勤務期間等の条件により、社会保険に加入すべき人と加入しなくても良い人がいます。

社会保険の加入対象者
 すべての法人事業所に働く人(社長1人であっても)が加入の対象者です。個人事業所では従業員5人以上が対象ですが一部サービス業、農林水産畜産業、法務などの個人事業所は5人以上でも除外されます。
 社会保険に加入している事業所に雇用される従業員は原則全員加入します。但し下記の通り雇用契約期間や労働時間によっては加入しないで良い場合があります。

加入する場合としない場合
ア、常時使用される人⇒加入
イ、2ヶ月以内の期間を定めて使用される人⇒定めた期間を超えて引き続き雇用された人は加入
ウ、季節的業務(4ヶ月以内)に使用される人⇒継続して4カ月を超える見込みの場合は当初から加入
エ、臨時的事業の事業所に使用される人
(6ヶ月以内)⇒継続して6カ月を超える見込みの人は当初から加入

パート・外国人・年金受給者の加入は?
①パートタイマー・アルバイトの加入者
ア、労働時間が正社員の4分の3以上
イ、労働日数が正社員の4分の3以上
上記ア、イ両方に該当する場合は加入
②外国人…国籍は問わず、加入要件該当者は加入
③年金受給者…厚生年金の加入上限は69歳まで。健康保険は74歳まで。要件に該当すれば加入

健康保険の被扶親族の範囲
 被保険者に生計を維持されている75歳未満の人です。被保険者から見て父母、祖父母、曾祖父母、配偶者、子、孫、弟妹は生計維持関係があれば良い事になっています。被扶養者年収要件は130万円未満である事(60歳以上や障害者の方は180万円未満)。同一世帯でない時は被保険者からの仕送り額より、被扶養者の年収が少ない事。
 また、被保険者から見て3親等内の親族で上記被扶養者以外の被扶養者は同一世帯と年収の要件の両方が必要です。

H27.9.2

役員等の勤続期間5年以下
退職金の2分の1課税なし

退職金課税(住民税も含む)の特徴、あるいは節税効果があると喧伝される理由は、勤続年数に応じた退職所得控除額(勤続20年まで年40万円、20年超年70万円)が大きい、という点もありますが、何といっても退職所得の金額(課税標準額)が、退職金(退職所得控除後の金額)の「2分の1」である、という点です。
 退職所得の金額を具体例で算出すると、次のようになります。
例、退職金の額1,500万円、勤続年数5年
(退職金の額「1,500万円」-退職所得控除額「200万円」)×1/2=退職所得の金額「650万円」
※退職所得控除額200万円=5年×40万円

役員等の勤続期間5年以下の場合
 この退職金に対する2分の1課税は、一部外国人役員の給与等の節税に利用され、また、特権を持った一部の人が退職後、外郭団体で役員等に就任しては、短い期間で退職し、その都度、退職金の支給を受ける、いわゆる「渡り」と呼ばれる人が、退職の都度、この適用を受けていました。
 現行の2分の1課税方式は、超過累進税率の適用を緩和するためのもので、こういった特殊な事例で適用されることは想定されておらず、本旨に反するとの批判が高まり、平成24年度の税制改正で、役員等に就任し、その勤続年数5年以下の当該役員等の期間に対する退職金については、2分の1課税は適用しない、旨の改正がなされ、平成25年1月1日以後の支給分から適用となっています。

すべての法人等に適用
 この2分の1課税適用除外ですが、中小法人であっても適用され、当然に使用人から兼務役員になった役員期間も対象です。
 中小法人では、よく、定年前に使用人から兼務役員、場合によっては、さらに本役員(常務等)に昇格、そして、5年以下で退職してもらう、という事例はままあります。この場合ですが、役員等の勤続期間が5年以下ですので、役員としての退職金には2分の1課税の適用はありません。留意が必要かと思われます。
 対策としては、5年超勤続させるか、それができない場合には、役員期間の退職金を合理的に算定し、できる限り少なくするか、です。少なくとも、見栄で役員部分の退職金を多くすることは禁物です。
 なお、使用人部分の退職金は、勤続期間の有無にかかわらず、2分の1課税は適用されます。

H27.9.1

経理処理の留意点
有償支給

有償支給とは
 外注先に加工等の仕事を依頼する場合、材料等を無償で支給すると、外注先での管理が杜撰になり、材料等のロスや不良が発生しかねないということで、支給する材料等を有償で行うことを有償支給と言います。多くの製造業で導入していると思います。
 有償支給は管理目的ですから、科目としては材料や外注費のマイナス科目が一般的ですが、利益を乗せて支給することが一般的とされております。

東芝のパソコン事業部不正問題もこの有償支給を利用して行われました
 概要を簡単に言うと、有償支給の部品に利益を乗せて売り上げ、完成した製品を購入して在庫として計上していました。
 こうすることによって、有償支給の部品利益を多額に計上しておりました。

東芝の経理処理は以下となります
①100円の部品等の購入時
部品仕入 100    買掛金 100
②200円で有償支給した場合
売掛金 200    部品売上 200
③1,000円で製品を仕入れた時
製品仕入 1,000  買掛金 1,000
 しかし製品は売れるまでは在庫ですから在庫1,000円となり、原価には算入されません。結果として部品の仕入れと売り上げの差額100円が利益に計上されます。

本来の経理処理では
②の時点で以下となります。
売掛金 200    部品売上 200
部品売上 100   有償差益 100
③の時点では以下となります。
製品仕入 1,000  買掛金 1,000
有償差益 100   製品仕入 100
とし、在庫計上は900円となるべきでした。

何故利益の先食いか
 製品が2,000円で売れた時、東芝の経理処理では1,000円の販売利益しか立ちませんが、本来の経理処理で行うと、1,100円の販売利益が立ちます。その意味で利益の先食いと言われております。