港区 税理士法人 大沢会計
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2015年12月

2015/12/31

H27.12.25

労働基準監督署の調査は何を見るのか

労働基準監督署の行う調査の種類
 労働基準監督署の行う調査にはいくつかの種類があります。「定期監督」「申告監督」「災害時監督」「再監督」等です。
 「定期監督」とは年度ごとに重点業種の重点項目を決めて行う調査です。必ずしも法令違反の事業所と言うわけではありません。対象の業種等に該当したと言う事です。  まず書面で通知があり日時が指定されますのでその日に管轄の監督署へ書類を持参します。法令違反があった場合には調査をした監督官から是正勧告書が出される事があります。また、監督官が事業所に来訪する場合もあります。
 「申告監督」は労働者の申告を受けた場合に調査を行います。事前連絡をしてくる場合と、予告せず直接来訪する場合もあるようです。申告内容で調査項目は違いますが、誰が申告したかは告げられません。申告監督は定期監督よりは厳しくチェックが入りますので、例えば未払い残業代等があれば全社員2年遡り支払いが命ぜられると言う様な場合もあります。
 「災害時監督」は労働者災害が起きた場合に行う原因究明、再発防止の為の調査です。
 「再監督」は一度是正勧告後、是正報告がなされ、一定期間経過後に確認を行うためのものです。

どんな調査をするのか
①賃金や時間外労働手当が適正に支払われているか、未払い賃金や手当はないか、労働時間管理をしているか、時給者の賃金は最低賃金を下回っていないか等をチェックします。
②休日や年次有給休暇を取得させているか、慢性的に長時間労働になっていないか等をチェックして防止、予防策を求められます。 
③残業がある時は時間外労働協定届が出されているか、賃金台帳、出勤簿、労働者名簿は作成されているか、労働条件は明示されているか等がチェックされます。
④10人以上事業場では就業規則の作成届出がされているか、内容が法令や事業所の現状と適合しているか等チェックがあります。
⑤安全衛生関連では年1回以上の健康診断(深夜業は年2回)は実施されているか、50人以上事業場では衛生管理者、産業医等の選任届出、新しくストレスチェック制度が始まりますのでこの先はここも見られるようになるでしょう。

H27.12.24

海外からダウンロード購入する
電子書籍等への消費税課税

消費税の落とし穴
 消費税は基本的に、日本国内での商品の販売と役務の提供に課税されます。内国消費税ですから外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです。
 海外の業者が国内の消費者等に商品を販売した場合でも、商品が動けば輸入時に消費税は課税できました。役務の提供は空間的に限定される為、海外の事業者が国内の消費者等に大量に役務を提供することは想定外でした。ところがインターネットの普及により海外の業者(アップルやアマゾンなど)から行われる電子書籍・広告の配信等のサービスが急速に普及し、これには消費税が掛かりませんでした。しかし同様のサービスを国内で行っている国内の業者には8%の消費税が課税され価格面で国内の業者が圧倒的に不利な立場にありました。

消費税における内外判定基準の改正
 平成27年10月1日から、海外から行われる電子書籍・広告の配信等のサービスの提供について消費税が課税されることとされました。それまでは、インターネット等を介して行われる役務の提供について、役務提供者の住所地によって国内取引か国外取引かの内外判定が行われていましたが、今後は、提供を受ける者の住所地で内外判定が行われることになりました。

海外からのダウンロードと消費税の課税
 海外の業者から音楽や電子書籍をダウンロードする際、いままで消費税は発生していなかったのに、これからは消費税が課されるのです。
 インターネットの世界では国境がなくなっていますが、今回の税制改正で国内事業者が受けてきた消費税課税での国外事業者との価格競争の不利益がようやく解消されることになったのです。

課税方式はちょっと面倒
 課税方式は、役務の提供を行った者が国外事業者である場合、「事業者向け電気通信利用役務の提供」であれば、受ける側の事業者の消費税申告に織り込み、申告・納税する「リバースチャージ方式」です。
 一方、「消費者向け電気通信利用役務の提供」であれば「国外事業者申告納税方式」となり、役務を提供する側の国外事業者が日本の税務署に申告・納税を行います。そのため、値段は上がりますが、消費者側での納税手続きは不要です。

H27.12.22

経営環境と目標管理

 経営環境の変化を見て目標管理の課題を発見しようとしている企業では、適切な時期と方法を選ぶことが必要です。

経営環境と目標連鎖の関係
 経営環境と目標の連鎖は、「経営環境の変化(外部環境、内部環境の変化)」→「中期経営計画・目標」→「年度経営計画・目標」→「部署目標~個人目標」の関係にあり、年度経営計画を達成するための部署目標・個人目標設定の段階で、経営環境の変化を評価し、目標管理の課題発見・目標設定に生かそうとするのでは、タイミングが遅すぎます。

経営環境変化情報の活かし方
 2~3年間の経営に大きな影響を与える中期経営計画は、その期間で外部環境や内部環境の変化にうまく対応することによって事業を発展させ、業績の向上を図ることをねらいとするもので、
① 市場・顧客・技術・法令等、外部環境の変化に関する情報収集
② 自社商品の売上高と利益・人材・設備・保有技術・財務状況等、内部環境の変化に関する情報収集
③ 外部環境・内部環境変化の諸情報を整理、評価して、自社の経営にとって価値が高い環境変化を発見、中期経営計画の課題・中期目標設定、年度経営計画の策定・年度目標設定、の手順で経営環境情報を活用しなければなりません。
その場合、最も重視すべき点は情報の価値判断であり、多くの情報に惑わされて混乱しないように気をつけることです。具体的にはSWOT分析・クロスSWOT分析を用いて、「自社にとっての強みと機会」を突き詰めて評価し、「強みをより強化する課題形成」と「その強みを活かす機会を発掘する課題形成」を行い、「中期目標設定」につなげることが最重要です。
このアプローチは年度経営計画で、最新の経営環境情報から再評価、検証を行い、目標管理につなげます。

経営者・管理者の留意点
 日常市場や現場で生の情報に接している多くの社員に参加してもらい、その知見を活かして情報収集と1次評価をおこない、経営者・管理者が最終判断することで、目標設定精度が高まります。

H27.12.21

分割支給役員退職金判決を読む
食事会は株主総会か

議事録は作成しなければならない
 役員に対する退職慰労金の支払いは、株主総会承認事項です。総会や取締役会などの議事については議事録を作成すべきこととされていますので、遅れたタイミングででも作成しておくべきです。
 議事録がないため株主総会の開催の有無を訴訟で争うことになった事案があります。

誕生会の食事会は総会にあらず
 納税者側は、株主総会を開催した証拠として、「5:00 家族 食事会」との記載のみがある原告役員の手帳を示したのですが、税務署は、同食事会がその役員の誕生日を祝うために開かれたものであり、その席上で話し合われた内容についてメモ等による記録も取られていないことなどによれば、同食事会は、単なる親族の食事会であったものとみるのが自然かつ合理的である、と主張しています。

議事録の存否は総会の存否にあらず
 開催当時に作成した議事録が存在しないからといって、株主総会及び取締役会が開催されなかったということにはならないし、株主は原告役員及びその親族の僅か4人であることに照らせば、親族での食事会における話合いの結果をもって、原告が株主総会としての決議としたことが特段不自然、不合理であるということはできず、株主全員による決議であることに照らせば、その有効性にも特段問題はない、というのが、納税者側の主張でした。

尋問等による丁寧な審理の裁判
 裁判は公判法廷にて口頭弁論により主張を戦わせることになっているのですが、税務訴訟の場合、実際は、準備書面を事前に提出し、法廷では、準備書面を陳述しますと言うだけで、口頭弁論は終わり、次回日程を決めて、5分で終わるのが通常です。
しかし、本件税務訴訟は、裁判官の訴訟指揮が丁寧で、資料の不足は関係者への尋問により、事実関係を明らかにしていました。その結果、総会及び取締役会はいつも食事会を兼ねて、月に2度ほど開催し、登記が必要なときは司法書士に内容を伝えたうえで議事録作成を委任し、今次の場合も、総会たる食事会で代取辞任表明と退職慰労金の支給と委細の取締役会への委託決議をしていること、を明らかにしています。
 税額計算の記録や、納税の手続、分納申請書類の存在が、裁判官に好印象を与えたのかもしれません。

H27.12.18

分割支給役員退職金判決を読む
公正な会計処理基準とは

法人税は公正なる会計処理を前提にする
法人税で定める「公正処理基準」とは何かについて、これを争点とした訴訟がありました。役員退職給与の分割支給時費用処理の是非が論点です。

納税者の主張する更正処理基準
 納税者の主張は次のように要約できます。
(1) ①会計慣行又は会計基準に従ったものであり、②公平な所得計算という要請に反しないという2つの要件を満たしていれば更正処理といえる
(2) ①株主総会等での決議時全額費用計上、②各分割支給日事業年度で分割額を費用計上、の二つが会計慣行として確立している
(3) 多くの税務署関係者の解説書、多数の税理士のウェブサイトが(2)に言及し、広く知られるに至っていることは、その会計慣行化の証しである

税務署の主張する更正処理基準
 税務署の主張は次のように要約できます。
(1)支給時に費用として計上することを許容する会計処理の基準や会計慣行はない
(2) 企業会計原則や中小企業の会計に関する指針は、費用の計上について、発生主義を採用し、確定債務を支払時の費用として計上することを許容するとはしていない
(3) 分割支給時費用化の会計処理は、決算状況を見ながら支給の有無、額や時期等を決定し、恣意によって所得金額の調整計算を行うことを認めることになるものであるから、法人税法の企図する公正な所得計算という要請に反するものであって、とても公正処理基準とはいえない

裁判所の示した更正処理基準
 裁判所は次のような見解を示しました。
(1) 公正処理基準は、明文化された特定の会計基準自体を指すものではなく、確立した会計慣行をも広く含むものである
(2) 通達は、実態がないところで作られたのではなく、実態を前提として規定されたものであるはずで、支給年度損金経理は、既に相当期間に亘り、相当数の企業によって採用されていると推認でき、役員退職給与を分割支給する場合における会計処理の一つの方法として確立した会計慣行であるということができる
(3) 中小企業においては、会計基準よりも税務会計に依拠している実態があり、そのような中小企業においては、通達に依拠した支給年度損金経理は、一般に公正妥当な会計慣行の一つといえる

H27.12.17

目標管理制度の問題解決

近年、目標管理制度スタート当初の目的と本当に企業にとって役立つ制度とする上での目的との間で矛盾を感じて悩む企業が現われています。

問題の代表的発生原因
 このような問題が発生した原因は主として次の通りです。
①制度スタート当初の目的を「社員が自主的に意欲をもって業績向上に取り組むための制度」としていた。
②その後、成果主義人事賃金制度などの影響で、目標管理制度を「企業の業績向上を図る業績管理のための制度」とした。
③上記①②の目的の違いは、制度の設計・運用の基本的な矛盾となって、次のような問題を引き起こした。
ⅰ)①の目的、目標設定責任は社員本人にある、としてきたが、その目標の総和が、企業の中期経営計画や年度計画を達成できる水準にならない。
ⅱ)制度運用上、目標達成プロセスの管理、目標達成度評価は②の目的では、管理者
 の関わりが重要視され、①の目的に基づく従来制度とは根本的な相違が生じた。
ⅲ)目標管理制度を通じた人材育成においても、①②の目的の違いから、管理者の関わり方に大きな違いが生まれた。

問題解決の方向性
 このような問題を放置すれば、管理者も一般社員も目標管理制度の運用で迷いが生じ、制度そのものが機能しなくなります。問題解決の基本方向は次の通りとすべきです。
①目標管理制度の目的を、中期経営計画・年度経営計画目標達成のための「業績管理の手段」とし、部署目標・個人目標の設定はこれをクリアする。
②制度運用は管理者の責任とし、社員の自主的参加を期待し、要請する。
③したがって目標設定・プロセス管理・達成度評価は、社員本人の納得性を重視するためその積極的関わりを求めるが、最終的な決定責任は管理者・経営者に置く。

経営者・管理者の留意点
 長い年月、従来制度で目標管理制度を運用してきた習慣は、簡単には切り替えられません。それだけに、中途半端な問題解決は禍根を残します。問題解決の方向性を粘り強く追求し、徹底しましょう。

H27.12.16 12月はふるさと納税の最終調整月

地方の自主財源にも険しい道
 地方自治体は、条例により法定外税(=法律で決まっている税以外のもの)の新設ができることとされています。(地方税法第259条・地方自治法第14条等) すなわち、独自の財源を条例で制定できます。実際に、核燃料税(福井県外10県)、別荘等所有税(静岡県熱海市、)などが制定され、平成25年度決算額で355億円(地方税収額に占める割合0.10%)~平成27年4月1日現在の総務省資料による~の税収があります。
 しかしながら、税収に占める割合はわずかなものであり、自治体が独自に税制を設けても、納税者から違法であるとして訴えられ、税制の存在が否認されてしまうこともあり、なかなか容易な話ではありません。
 実際に、神奈川県では臨時特例企業税条例の制定で税収増加を目論みましたが、平成25年3月21日の最高裁判所の判決において、違法・無効とされ、既に納付された臨時特例企業税を過去10年に遡り返還することとなりました。

創意工夫による税収の拡大合戦!?
 なかなか厳しい税収拡大の道ですが、納税者が悦んで、かつ、自ら進んで税金を納付してくれる制度があります。昨今過熱気味とも言われている“ふるさと納税”です。
 平成27年からは納税者に優しい制度に変わっています。国の措置として、5つの自治体までは確定申告が不要となる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」ができ、特例控除限度額も2倍に引き上げられています。また、自治体側もいままで年一回だった御礼の特産品の送付制限を撤廃するところも増え、益々熱を帯びています。

自分でトライ!(もちろん頼っても良し)
 ふるさと納税の限度額は、その年の所得によります。その年の所得は、12月の給与や賞与が決まるとほぼ確定します。限度額ギリギリまでふるさと納税をするためには、12月にその年最後の年末調整をした給料をもらってから、少し頑張って限度額計算をしなければなりませんが、その価値は十分あります。
もちろん、顧問税理士に税務申告をお願いしているような社長さんたちは、年末に専門家に計算してもらえば答えは一発です!12月末ギリギリに駆け込み納税してもOKです。

H27.12.15

分割支給役員退職金判決を読む
「一時に」とは「一時に一括」か

「一時に」とは
 「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」という所得税法の規定にある「一時に受ける」について裁判で争ったものがあります。
 一時とは、一度、一回、一括などの意味なのか、ということについてです。

税務署サイドの主張
 退職所得とは、給与の一括後払いとして一元的に性格づけることができ、給与所得と退職所得の違いは、支給の態様とタイミングの相違にすぎないものであることに鑑みると、退職所得に該当するためには、その支払時期、支払方法(支給の態様)において、「退職により一時に受ける給与」と同視できるようなもの、すなわち、一時に一括で支払われるようなものでなければならないと解すべきであり、支払いを決めた最初の時点において、「一時」に一括で支払うことを予定しないで、まして、不確定な数年先での抽象的な支払予定に止めるなどは、実質的にみて一時金要件を満たさないことは明らかである、と税務署サイドは主張しました。

納税者サイドの主張
 「退職により一時に受ける給与」との定義からも明らかなとおり、「一時に」支払われれば足り、「一時に一括で」支払われるべきことを法律は要求しておらず、退職年金のような定期的、継続的な支給でないことが明確であれば、それでよいわけで、世の実例としても、退職慰労金が分割支給されることは少なくなく、所得税の通達や、国税庁のホームページに公表されている質疑応答事例においても、退職金等が分割支給され得ることを前提としている、と納税者サイドは主張しました。

裁判所の示した判決
 退職を基因として支払われる金員が、年金として定期的、継続的に支給されるものでなければ、「一時に受ける」ものに該当するのであり、複数回にわたって分割支給されたからといって、そのことのみをもって、当該金員が一時金要件を満たさないということができないことは明らかで、所得税通達が退職手当等の分割払等をする場合の源泉徴収税額の計算等について定めており、また、国税庁が、その通達の内容をホームページにおいても公表している、と裁判所も納税者と同じ見解を示しました。

H27.12.14

分割支給役員退職金判決を読む
法人税法と所得税法の退職給与

法人税と所得税では同じ概念か?
 所得税法では、退職給与につき、「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時における給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」と定義していますが、法人税法には、定義規定がありません。
 法人税法の退職給与と、所得税法の退職手当等とは同じ概念なのでしょうか?

法人税法と所得税とは同じと納税者主張
所得税での「これらの性質を有する給与」に該当するものとして、法人税通達での退職(退職と同視し得る職務分掌変更等を含む)という扱いが生まれているのであり、完全な勤務関係の終了以外にも、職務分掌変更等による実質的な退職といえる状態の場合の退職金を含むのは当然で、同通達はその解釈を明示しただけのものであり、逆に、特定の要件を定めた特例創設通達と解するべき、というのだとしたら、それは租税法律主義に反することになる、と納税者は主張しています。

異なるというのが国側の主張
 法人税法上の退職給与については、その定義規定がない以上、語句の通常の意味を踏まえて解釈するのが相当であり、所得税法上の創設的な意味合いを包含するものとして特に定義されている「これらの性質を有する給与」は含まれない。
 特例通達は、正当な目的を有し、合理的な規定として納税者に異議なく受容されており、その要件を厳格に解釈・適用する限り、一部の者の租税負担を軽減する結果とならず、合法性の原則に反しないものとして容認される、と国側は主張しています。

裁判所の判断は対価の後払い性
 裁判所は、法人税法上の退職給与とは、役員が会社その他の法人を退職したことによって初めて支給され、かつ、役員としての在任期間中における継続的な職務執行に対する対価の一部の後払いとしての性質を有する給与であると解すべきである、としています。
 赤字決算を回避するなどの理由で、その事業年度において発生した費用を翌事業年度以降に繰り延べるなどの利益調整があったとしても、過去勤務に係る対価の後払いと退職一時金としての性格を持っているならば、法人税法上の退職給与であることを否定できない、としています。

H27.12.11

上級専門職等の給与制度

 役割・成果責任に基づく処遇制度を導入し、役職者を「マネジメント職群」と「上級専門職・上級技能職群」に区分して制度設計を行なう場合で、後者の「上級専門職・技能職群」の給与制度について、設計のあり方を述べます。

上級専門・技能職群の給与制度設計
 「マネジメント職群」の成果責任が組織目標の達成にあるのに対して、上級専門職・技能職群の役割は、個人のパフォーマンスによって組織目標の達成に貢献することにあります。そこで、そのモチベーションを高めるため、例えば右の表に示したような制度を設計、適用します。
①専門レベルに応じて設定した等級別基準本給
②等級別業績給(組織目標の達成に貢献した成果の評価に基づいて決定する給与)。習熟を考慮して「積上げ方式」を採用、各等級内で、成績の高さに応じて昇号、または降号する。等級内の高い昇給ゾーンになるほど、成績の高さ(低さ)による昇号のメリハリを利かせ、全対象者の昇給額の平均がゼロとなるように成果給テーブルを設計、適用する。

【上級専門職・技能職の給与制度(例)】
給与体系  金額設定                     支給基準
基準本給  専門等級・1~5等級別範囲給テーブル    専門レベルの高さ(困難度等)に応じてテーブル適用
業績給    範囲給テーブルの設定、ゾーン(高・中・低)  業績の高さ(目標達成度等)とゾーンの位置に応じて昇号。テーブル適用(注)

(注)業績給テーブルの昇号基準(例)
ゾーン      業績の高さ
        C  B-  B+  A  S
 高     -4 -2  0 +1 +2
 中     -3 -2 +1 +2 +3
 低     -2 -1 +2 +3 +4

この給与制度の効果と留意点
 業績の改善による本給のベースアップを行なわなければ平均昇給額(平均昇号数)はゼロとなり、「基準基本給+平均業績給」の平均値は変わらないので、総額人件費管理が容易となりますが、評価基準の整備・運用における公正性・納得性確保を通じて、趣旨徹底に留意しましょう。

H27.12.10

取得or賃借
課税関係が異なる場合も

 資産を「取得」するか「賃借」(ファイナンスリースを除く)するかは、その資産の費用対効果、そして、資金繰り等の諸要素を勘案して決定しますが、場合によっては、「課税上の効果」が大きな要素になることもあります。
 例えば、接待のための専用資産(クルーザーや別荘等)を「取得」するか、それとも「賃借」にするか、といった選択の場面では「課税上の取扱い」が重要な要素になります。それは、「取得」と「賃借」では異なる課税関係を招来させるからです。

接待用資産を自社所有した場合
 法人税法上、交際費等とは、接待、供応、慰安、贈答等の行為のために支出するものをいうとされています。
 クルーザー(船舶)や別荘(建物)といった、接待を目的とした専用の資産の取得ですが、その支出は当該資産の取得のためのものであって、接待等のための具体的な支出ではありません。ですので、当該支出は交際費等には該当しません。
 また、これら資産は、減価償却資産であり、事業の用に供されている限り償却すべきものとされています。その減価償却費は、その事業年度における接待等のための支出ではありません(時の経過とともに費用化されるもの)ので、当該減価償却費は交際費等に該当することはありません。
 また、接待専用資産の所有に伴って支出する固定資産税や火災保険、修繕費、管理人の給与等といった、維持管理に伴う支出も交際費等には含まれないものと考えられます。

接待用資産を賃借した場合
 接待のために上記資産を賃借するのですから、たとえその賃借料にその資産の減価償却費や維持管理費等の諸経費が含まれていたとしても、支払賃借料はまさに接待等のための具体的な支出です。
 したがって、当該賃借料全額が交際費等に該当することになります。

実施記録等の整備は不可欠
 なお、取得、賃借のいずれの場合においても、明白な事業関連性があることが前提です。ですので、当該資産の管理運用・使用記録、そして、詳細な実施記録の整備が不可欠と考えます。利用・実施記録が曖昧な場合、オーナーだけの使用・利用と認定され、法人の取得それ自体が否認されることもあります。留意しましょう。

H27.12.9

相続税の自主申告 国税庁 誤りやすい事例を公表

 専門誌等では、あれやこれやの節税策が喧伝されています。
 では、相続税の基礎控除4割カットがそれほど大きな負担に繋がるのでしょうか。負担増にならないとは言いませんが、実際のところ、自宅(住居地にもよりますが)と現預金2,000万円前後の遺産では、相続税の負担はせいぜい200万円前後です。財産を貰っての負担ですから、決して払えない金額ではありません。何か不安を煽っているようにも思われます。
 ところで過日、国税庁は今後、専門家に頼らず相続人の自主申告が増えると予測してか、誤りやすい事例を公表しました。幾つか紹介をしてみたいと思います。

●被相続人の兄弟姉妹が相続人
 相続税法では、相続・遺贈で財産を貰った人が一親等の血族及び配偶者以外であれば、算出された税額に2割加算することになっています。兄弟姉妹は二親等の血族ですから、2割加算の対象になる、というものです。また、孫が相続した場合、その孫が代襲相続人でない場合には、2割加算の対象になることも事例として掲げています。

●お墓の購入費用に係る借入金
 事例の内容は、被相続人が借金して350万円のお墓を購入、相続開始時には220万円の残債があり、その残債220万円を債務控除して申告した、というものです。解説は、お墓は非課税財産であるから、非課税財産に関する債務は、相続税の計算上、債務として差引くことができません、です。

●未納の固定資産税・住民税
 事例は、相続開始日(3月7日)には、固定資産税と住民税の納税通知書が送付されてきていなかったので、債務控除しなかった、というものです。解説は、固定資産税と住民税の納税義務は既に成立しているので、納税通知書の有無にかかわらず債務控除ができます、という内容です。

●団信生命保険と住宅ローン
 事例は、団体信用生命保険契約に加入しているにもかかわらず住宅ローンを債務控除している、というものです。解説では、住宅ローンは相続人が支払う必要のない債務なので控除できません、とするものです。

●養子縁組と法定相続人の数
 事例・解説では、相続税の計算に当たっては、養子の法定相続人の数は制限されている、被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人で計算する、といった内容です。

H27.12.8

借地権の簿価劣化

同じ更新料でも
 賃借建物の更新の場合の支払更新料は、税法上の繰延資産として、5年もしくは賃借期間で償却するものとされています。20万円未満であれば少額繰延資産として一時の費用とすることも出来ます。
 同じ更新料でも、借地権に係る更新料は、全く損金算入できせん。10万円未満であっても、資産計上し、借地権価額に単純加算しなければなりません。借地権は税法では土地と同じものとして扱われ、非減価償却資産とされているからです。

既存簿価の償却計算
(借地権の更新前の帳簿価額
×更新料÷更新時の借地権の時価)
 この算式は、借地権の権利が経年劣化したので、権利を保全するためには更新料を払ってそれを補完しなければならなくなった、との考えの上で、補完としての更新料は追加払いの借地権代金としてそのまま資産計上するが、経年劣化した既存の借地権簿価の一部分は、すでに権利を主張する裏付けを失ったものとして資産性を否認して損金算入する、というような理屈を表現したものと推測されます。
 借地権時価に変動がなく、時価と簿価が同じだったら、更新料相当額が簿価劣化額として損金算入です。

更新料の何倍もの損金算入もアリ
 バブル時の借地取得で、更新時では底値だったような場合、時価が1/2、1/3に下落していたら、「更新料×(更新前簿価÷更新時時価)」と算式を変形してみると解るように、支払更新料の何倍もの損金算入額が計算されることになります。
 こんなことは、賃借建物の更新料の場合ではあり得ないことで、不思議な印象が残ります。

法令上の強行規定
 この算式による借地権の更新時取り扱いは、通達ではなく、法令にきちんと規定されているものです。
 また、減価償却や繰延資産償却の規定と異なり、損金経理の要件はなく、「できる」規定でもなく「損金の額に算入する」との、任意性のない強行規定になっています。
 従って、損金算入額は更新時に一時に全額であり、別表の上だけでの損金算入も可であり、損金処理漏れは法令違反なので、更正処分や更正の請求の対象でもあります。

H27.12.7

マネジメント職群の給与制度

 役割・成果責任に基づく処遇制度を導入した企業では、次のような給与制度とすることが必要です。

マネジメント職群・給与制度構築法
 マネジメント職群の役割は、組織のマネジメントであり、組織目標の達成責任を負うため、目標達成への意欲と危機感、達成した場合に報われるモチベーションの両面を狙いとし、例えば右表に示したように、給与を「役割給」と「業績給」とに分けて支給する給与制度を構築、適用します。
① 責任の重さであるポスト(役割レベル・階層)の重要度・困難度に応じて支給する「役割給」
② 組織目標の達成度評価に基づいて支給する「業績給」
役割階層別の成績(目標達成度)で洗い替えを行なうため、同一役割階層内で最高額~最低額・S-1~S-5まで変動するしくみ。成績評価は正規分布とするため、毎年の全対象者の平均本給は一定となる。
 このような給与体系のもとでは、会社の業績に応じてベースアップ(またはダウン)を行なわないかぎり、マネジメント職群の平均昇給額はゼロとなります。
【マネジメント職群の給与制度(例)】
給与体系 支給額設定 支給基準
役割給 役割等級別
定額
1等級~4等級 役割の重要度・困難度に応じて支給
業績給 役割等級別・業績評価ランク別に設定
各等級別
S-1~S-5 組織目標達成度評価に基づいて支給(毎年の評価で洗い替え)

この給与制度の適用効果
 この給与制度に基づく制度運用は、前述のマネジメント職群の目標達成意欲・モチベーションの向上とともに、業績に応じた賞与の増減や、ベースアップ(またはダウン)の実施により、総額人件費を業績に見合ったレベルで管理することができます。

経営者の留意点
 この制度は毎年昇給する定期昇給制度ではなく「業績に応じた制度」であることを周知徹底することが重要です。

H27.12.4

遅刻・欠勤通知のメール連絡

 従業員が就業に関して、始業直前に遅刻、欠勤の通知を一方的に所属長の電子メールや携帯電話のLINE等のSNSに「遅れます」「休みます」と送ってくる事もあるでしょう。このような取り扱いを認めている会社ではそれでも良いのですが、この方法は好ましくないとしている会社ではルールを決めておく必要があるでしょう。

遅刻、欠勤は願い出て許可を得る
 そもそも雇用契約上労働者には労務提供義務があるのですから、基本的に従業員が自分の判断で遅刻、欠勤を決めるものではなく、就業時間に働かなければ債務不履行になります。元々決められている休日でなければ休みを容認するかしないかは会社の判断になります。
 本来であれば従業員は会社に欠勤や遅刻の許可を願い出て、会社が承認して初めて認められる事を決めておく必要があります。
 会社によっては会社に許可を求めるのではなく、届け出ればよい決まりになっている場合もあります。これでは、遅刻、欠勤は従業員の意思だけで良い事になりそうです。許可を願い出るならば会社に所定の用紙で届出をしてもらうのが良いでしょう。

当日の申請はどう扱うか
 書面での申請は原則としてあるとしても当日の朝に体調不良や、電車の遅延で遅刻、欠勤もあるでしょう。この場合は「始業時刻までに電話で直接所属長に連絡し、許可を得る」と言うルールを定める事が良いでしょう。この事で従業員からの一方的な電子メール等の通知ではいけない事を理解してもらう必要があるでしょう。また、賃金カットする場合も規定は必要です。

どのように規定しておくと良いか 規定例
 (遅刻、欠勤の手続)
第〇条 1 社員が遅刻、欠勤をする時にはその直前の就業日の終業時刻までに所定の書面で所属長に願い出ること。
2 やむを得ない理由により第1項の手続きを取れず当日遅刻や欠勤を願い出る時は、始業時刻までに所属長に電話をして許可を得ること。この場合は出社後速やかに届出書を提出すること。
3 第1項、2項の手続きをせず遅刻、欠勤をした時は無断欠勤として懲戒処分をする場合がある。

H27.12.3

退職後に前職の健康保険証を使用したら

 退職等で前の会社の健康保険の資格がなくなった後は、すぐに再就職しなければ普通は国民健康保険に加入します。その手続の前に旧保険証を使用して、医療機関を受診した時は、一旦協会けんぽ(健康保険組合の場合もあり)が立替えて病院へ支払いし、後日受診者から協会けんぽに負担分(総医療費の7割から8割)を返還する事になります。

返還手続
 医療機関ではその保険証が有効か無効か判断できないため、医療機関が協会けんぽに保険者負担分を請求すると協会けんぽは医療機関に医療費の立替え分を払います。協会けんぽでは無効の保険証使用を確認した場合、本人に療養費の給付費用の返還を通知します。その際納付書が送付されますので、本人はコンビニや郵便局で医療費全額の差額分支払いをします。
 返還した保険料は領収証が出ますので改めて国民健康保険に療養費の請求を行います。その時には、領収証を添付します。

退職時の事務を滞りなく行うには
 会社では退職者の保険証は退職日に遅滞なく返却してもらいましょう。
 扶養家族の異動があった時、特に被扶養者が就職したり、収入が基準を超えたり被扶養者に該当しなくなった時は速やかに保険証を返却してもらうのが良いでしょう。

新しい保険証がまだ手元にない時
 新しい有効な保険証がまだ手元にはないが医療機関にかかりたい時は全額医療費負担をして後から療養費の支給申請をするか、手続中であるなら「健康保険被保険者資格証明書」を申請し、交付してもらうことも出来ます。また、同月内であればかかった医療機関に新しい保険証を提示すれば後から本人に請求される事もないでしょう。

間違いやすいケース
・月単位の保険料なので月途中の退職でも月末まで使用できると勘違いした
・次の保険証がまだ手元になかったので前職の保険証を使った
・被扶養者の異動で削除すべき手続が遅れてしまった
・医療機関の受付で何も聞かれなかった
等が前職の保険証を使ってしまう誤り易いケースです。

H27.12.2

実は優良パスポート?日本のパスポート事情

海外出張とビザ
 皆さんは海外出張や旅行のとき、「ビザ」の申請をしたことはありますか? おそらく、「ビザ」と言われてもピンと来ない方が多いと思います。それもそのはず、日本のパスポート(旅券)を持っていると、そもそも海外出張時に「ビザ」を意識する必要がほとんどないのです。

日本はノービザ渡航可能国数世界第3位
 「ビザ(査証)」とは、各国が自国民以外に対して、入国しようとする人のパスポートが有効であり、かつ入国しても差し支えないことを示す証書です。ビザの発給手続きは、入国するにふさわしいかどうかを事前判断する身元審査に当たり、基本的にはビザの発給をもって入国許可申請を行うことになります。しかし、国同士の外交関係により、旅行や出張などの目的で短期的に滞在する場合について、このビザ発給手続きを免除する措置が行われていることがあります。ビザの発給を必要とせず入国許可申請ができること、これがいわゆる「ノービザ渡航」です。
 2015年10月、英国の民間機関が一国のパスポートで何か国ノービザ渡航ができるかを調査したところ、日本は調査対象の173か国中3位で171か国へのノービザ渡航が可能という結果になりました。日本人にとって「ビザ」という言葉があまり馴染みのないことも、こうした環境がひとつの要因かもしれません。

日本へ呼ぶときは少しだけ意識を
 一方、日本への入国時にビザが免除されている国と地域は2014年12月時点で67。これらの国と地域以外から日本へ来られる方については、たとえ一日の会議に参加する場合であってもビザの発給手続きが必要です。近隣諸国で見ると、たとえば中国やフィリピン、ベトナムから招へいする場合はビザの発給を要します。
 ビザ発給手続きでは、招へいする企業などから、行き先や宿泊先を示した行動予定表、身元保証書、渡航費用の証明など、渡航の目的に合わせた書類を提出します。ノービザ渡航に比べ事前準備に時間がかかりますので、招へい予定は余裕を持って計画したいところです。

H27.12.1

役割・成果責任の明確化

 職務内容にかかわらず役職者を一括して「管理職」として処遇している企業では、組織のマネジメントを職責とする者・専門技術などを駆使して組織業績に貢献すべき者が同一の管理職として混在し、役職者個々の役割・成果責任が曖昧で、いわゆる「名ばかり管理職」を生み出しているケースが多いと言え、処遇制度改定に迫られています。

役割・成果責任に基づく処遇制度
 管理職層の役割・成果責任を明確化するには、一般に次の通り三つの職群に分けて、役割・成果責任を定義することが必要です。

[役割・成果責任の区分設定(例)]
マネジメント職群:組織の管理・監督を通じて所轄組織の成果をあげ、経営管理に大きな影響を与える。
上級専門職群:事務・技術系で、高度な専門知識・技術上の個人のパフォーマンスで、組織業績の目標達成に貢献する。
上級技能職群:生産職など、現場の管理・監督を通じて、または高度な技能の発揮により、組織業績に貢献する。
 このように、職群別に基本的な役割定義を設定した上で、個々の役職者の具体的役割・成果責任を明確化することができます。

役割・成果責任明確化の効果
 このような、役職者の役割・成果責任の明確化は、次の効果を生み出します。
①目標管理制度(=業績管理制度)上、組織目標達成上の個々の管理職層の役割・成果責任が明確化される。
②今後、役職者に格付け、登用する際の人材要件(業績・発揮能力等)が明確化出来、評価基準が明確化される。
③一般社員層の能力開発目標が明確になり、会社の人材育成施策、本人の自主的努力に役立つ。

経営者の留意点
 役割・成果責任に基づく処遇制度の設定は、目標管理制度による業績管理の重要な基盤整備を行なう価値があり、将来の人材育成にも貢献することに留意し、重視しましょう。