港区 税理士法人 大沢会計
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2016年1月

2016/01/31

H28.1.29

償却方法及び耐用年数と組織再編

包括的承継の個人と法人
 個人の相続は包括的承継といわれ、判決では、償却方法は法令の文理解釈から引き継ぎなし、耐用年数は法令の趣旨解釈から引継ぎ、とされています。(最高裁係争中)
法人に関しては、同じく包括的承継といわれる適格合併や会社分割等について、係争になっている事例はないのですが、実務の取扱いはどうなっているのでしょうか。

「移転・引継ぎ」という表現で
 適格合併・適格分割型分割により資産等を移転した場合には被合併法人の合併直前の帳簿価額による引継ぎをする、ことと法令上表現されています。「譲渡(取得)」という言葉に対する「引継ぎ」との言葉を対置しての使い分けで、法人税法では、適格合併・適格分割型分割のみを包括的承継の性格を有する組織再編と位置づけして立法したように見受けられます。

組織再編の多様性と包括承継
 減価償却資産の所有権変動を伴う適格組織再編には、合併・分割・現物出資・事後設立・現物分配があります。
このうち、適格合併・適格分割型分割以外は、簿価引継ぎとしての「譲渡(取得)」という規定なので、取得資産は新品の取得ではなく、中古資産の取得に該当することになります。従って、中古資産に対する耐用年数の特例が適用できます。
なお、合併は100%の会社分割で、分割型分割は分社型分割と子会社株式現物分配(あるいは株式交換)との組合せで、代替できてしまいます。
それ故か、適格合併・適格分割型分割も、初めは引継ぎ耐用年数のみの適用でしたが、「引継ぎ」も「取得」の一種との解釈となり、今では、他の適格組織再編に対するものと同じ扱いになっています。

包括承継の場合の償却方法の引継ぎ
 償却方法の引継ぎがないという点は、法人税でも、個人所得税での相続の場合と同じ扱いのようです。
ただし、法人税には、実質的に償却方法の引継ぎがあるとの公開情報があります。合併や分割での資産承継法人の引継ぎ取得時期としての過去の時点において、その資産承継法人が選択していた償却方法が、資産引渡し法人と同じならば、その償却方法が適用になる、とのことなので、実質的に償却方法を引き継いだと同じ結果になります。(なお、遡及しての償却方法の選択届も認められています。)

H28.1.28

償却方法及び耐用年数と相続取得

相続は包括的承継
 相続は包括的承継といわれ、相続取得財産は相続人が相続時に取得するのではなく被相続人の取得時から引き続き所有をしていたものとみなすことになっています。これを、取得時期、取得価額の承継といったりします。その財産が減価償却資産のときは、取得時期と原始取得価額と償却累計額と未償却残額を引き継ぎます。
 包括的承継の趣旨が、人格間での権利義務の変動がなかったものと考える、ということであれば、減価償却の他の要素である償却方法や耐用年数も一括して引き継ぐというのが自然なことのようにも思われます。

償却方法も引継ぐべきかは文理解釈で
 それで、建物について被相続人の選択していた定率法の適用が引き継げるべき、と主張して訴訟になった事例がありました。最高裁まで争われましたが、判決は、取得とは所有権の取得の意であり、相続取得も取得の一種であり、法令で取得時期別の選択可能償却方法の制限をしている以上、相続取得もその定めに服するのは当然との文理解釈を示して、納税者を敗訴にしました。

耐用年数を引継ぐべきかは趣旨解釈で
 この判決を承けて、それならば、償却方法のみならず、耐用年数も引き継げないはずだと判断して、相続取得は中古資産の取得に該当するから、中古資産取得時の耐用年数算定方法が適用できるはず、と主張して訴訟になった事例が次におきました。裁判は、地裁高裁を経て、現在最高裁に上告されています。
 地裁高裁ではいずれも納税者敗訴の判決になっているのですが、こちらの判決は前の判決と異なり、条文の文言を前提とする文理解釈ではなく、趣旨解釈による判決になっています。法令には取得価額の承継としか書かれてなかったとしても、その趣旨を考慮すると、取得価額承継の文言によって耐用年数、経過年数及び未償却残高についても承継することを予定していると解釈すべきが相当と言えるとしています。

行政も司法も論理無視でよいのか
 それぞれの判決を読むとそれなりの論理の一貫性はあるのですが、二つの事例の判決を通貫した論理の一貫性はありません。最高裁で不受理となってこのまま判決が確定するのかも知れませんが、モヤモヤの気分が残ります。

H28.1.27

立法趣旨にそぐわない事業所税の課税拡大

事業所税とは
 事業所税は、人口・企業の集中に伴う都市環境の整備のための財政需要の増大に対処するため、1975年度税制改正で市町村の目的税として創設されました。高度経済成長末期です。
当初は政令指定都市など人口50万人以上の都市が課税団体でしたが、その後人口30万人以上の都市とされました。市町村税とはいっても、町村や一般の地方の市とは無縁な大規模市税です。

対象となる市が増えている
 平成の市町村大合併で、大きな地方中核市の周辺の市町村が合併消滅編入された結果として、規模要件を充足する形式上大きな市が増え、課税団体と判定される市が増加しています。
 市町村合併特例法により、人口が30万人以上になったとしても少なくとも5年間は課税団体になれないことになっていましたが、その経過期間も過ぎて、新規の課税自治体が増えているところです。

異変が起きている
 現在は、東京都の特別区を筆頭に、政令指定都市20市のほか、55市、合計76市が課税自治体になっています。その結果、まわりは山と田畑ばかりである地域の企業が課税対象地域に含まれることになる、という新たな現象が生まれ、突然思いがけない課税が起きることになったという事例が現れています。

事業の拡大の結果の課税ではなく
 都市の中に事業所を増やしたので課税されることになったというのが通常ですが、周辺農山村が市に編入されたので農山村部の事業所が課税されるようになる、というのは予定外の事態です。
 なお、事業所税の事業所とは、事務所、店舗、工場、倉庫等を指し、自己の所有に属するか否かは無関係で、賃借物件も含まれます。

事業所税の留意すべき問題点
 事業所税の免税点は、事業所床面積1000㎡以下、従業者数100人以下で、それを超えると㎡当り600円、給与総額の0.25%という課税が、基礎控除等激変緩和措置のないまま生じます。床面積免税基準を超えると最低でも60万円の納税額となります。
 床面積や給与への外形標準課税で、赤字企業でも課税です。固定資産税や事業税の外形標準課税とも重複性があります。

H28.1.26

役員と旧姓の登記

夫婦別姓について最高裁が初めての判断
 平成27年12月、夫婦別姓を認めない民法の規定について争った裁判で、最高裁判所が初めて「憲法に違反しない」という判断を示しました。夫婦が同じ名字にするか別々の名字にするかを選べる「選択的夫婦別姓」については、女性の社会進出などに伴い長い間検討されてきましたが、今後も制度の必要性を巡ってまだまだ議論が続きそうです。そうは言っても、職務上旧姓を利用しないと不便が生じる方も多いですよね。民間企業や公務員、弁護士などの国家資格者をはじめ、旧姓利用を可とする団体もだいぶ増えてきました。こうした流れを受け、昨年から、法務局でも役員の旧姓を登記することができるようになっているのをご存知でしょうか。

法務局でも婚姻前の氏が登記可能に
 これまで、商業登記簿では戸籍上の氏でのみ登記を認めていたため、普段対外的に旧姓で職務を行っている役員であっても、登記簿上では新姓しか確認することができませんでした。周囲が馴染んでいる氏と登記簿上の氏が違うと、同一人物であることを都度何らかの資料で説明しなくてはならず、不便な思いをされた役員の方々も少なくないでしょう。平成27年2月27日に施行された「商業登記規則等の一部を改正する省令」では、商業登記簿の役員欄に役員の婚姻前の氏を併記することができるようになっており、こうした煩わしさから解消されることにも期待が持てそうです。

登記の申出方法
 婚姻前の氏の登記については現在、①設立の登記、②清算人の登記、③役員又は清算人の就任による変更の登記、④役員又は清算人の氏の変更の登記のどれかを申請する際、同時に申し出ることが認められています。これらの登記を行う際、婚姻前の氏を証する書面として戸籍謄本等を添付することで、旧姓が括弧書きで併記されます。尚、旧姓の登記ができるのは婚姻により氏を改めた方に限られており、旧姓のみの登記ではなくあくまで新姓と旧姓との併記になることには注意が必要です。
 旧姓でお仕事をしていらっしゃる役員の皆様は、次の役員変更登記を行う際に、一度検討されてみてはいかがでしょうか。

H28.1.25

中期経営計画が陥る誤り

 中期経営計画は、3~5年を期間として策定される経営計画で、成長性・効率性・健全性などを指標とし、企業体質の改善を主眼として策定されます。短期経営計画(1年)が事業目標の達成、長期経営計画(10年)が経営ビジョンの実現に置かれるのに対して、中計(中期経営計画)は業績への影響度が最も大きいとされています。

中期経営計画で生じやすい誤り
 中計でよく起こる誤りは「過去の成功要因に対するこだわり過ぎ」にあります。
例えば、強力なブランド力を持つ商品の独占販売契約が過去の成功要因で、利益の主要な源泉となっていた場合、その要因が不変であると考え、中計で販売拠点の増加など体制強化に務めたが、当てが外れて、中計期間内に生じた市場・顧客の変化によるブランド力の低下で、市場の偏在在庫の膨張、倒産につながった、などのケースが過去に起きており、一般的にこのような外部環境変化に対する適応力の弱さが中計挫折の原因となっております。

中期経営計画で的確な環境適応を
 このような誤りを防ぎ、時代の様々な変化を把握して、企業の環境適応を的確に行なうことで、成長性・効率性・健全性が確保され、体質を強化することができます。
 そのため、中計の基本的フレームワークとして、外部環境・内部環境の変化を的確に評価するSWOT分析・クロスSWOT分析等の手法を活用し、「強みを機会に活かすこと」が重要ですが、中計の場合、最も注意を要するのは、過去の強みや機会(成功要因)にこだわり過ぎ、それを制約条件としてしまう誤りで、その結果変化に対する対応力を弱めてしまうことです。

経営者の留意点
 トップは外部環境・内部環境を直視し、特に過去の成功要因については、変化が起こり得ることを前提とした代替施策を準備することも必要です。成功要因が存在し続ける筈だと見る“希望的観測”を避け、過去の成功要因が実際に事業発展の制約条件となり始めたときには、代替施策を始動させる周到、かつ柔軟な変化への対応に注力しましょう。
 中期経営計画の真の目的は、経営環境に適応することにあり“過去の成功要因が持続する希望的観測”はその有効性を阻害することもある点に注意が必要です。

H28.1.22

留学生新卒者 研修・配属の注意点

新卒者の入社時研修
 新卒者が本社勤務になる前に、まずは自社の業務を知るため、現場での研修を積むのは決して珍しいことではありません。その研修結果を基に適性を見て、具体的な配属先を決めることもあるでしょう。しかし、留学生の新卒者をこうしたステップで受け入れる場合には、少し注意しなければならない点があります。

就業内容が限られている「ビザ」
 外国人の方は、30種類ある在留資格(いわゆる「ビザ」)のうち、日本での滞在目的に合わせたどれか一つを持って在留しています。現在、留学生の方の約8割が「留学」ビザから就職と同時に「技術・人文知識・国際業務」というビザに切り替えており、留学生を採用した企業のほとんどが、このビザを持った新卒社員を雇用することになります。このビザで許可されている就業内容は「理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」と規定されており、職種としてはエンジニアや通訳、翻訳、貿易関連業務などが当てはまります。あくまで高度な知識・技術が必要とされる業務であり、いわゆる単純労働には従事できません。

「ビザ」と研修時の注意点
 たとえば食品の輸入を行い、その販売小売店を経営する企業が、本社の貿易業務を担当する要員として留学生を採用したものの、社内の業務を把握させるため、店舗で販売員として研修するよう命じることは自然なことでしょう。しかし、販売員として接客に当たることは「技術・人文知識・国際業務」ビザで許容される内容ではないため、いくら研修とは言ってもこの期間があまりにも長いと不法就労とみなされかねません。では、どれくらいの期間であれば研修として単純労働への従事が認められるのでしょうか。これについて具体的な規定はありませんが、法律上、「当該在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合」は「在留資格を取り消すことができる」とされていますので、この3か月というのがひとつの目安にはなります。また先述の通り、就業内容はビザで許容される範囲にとどめる必要がありますので、当初配属予定であった職種から変更する場合は慎重に検討しましょう。

H28.1.21

日本における難民認定申請の現状

各国での難民受け入れと課題
内戦が続くシリアからの難民受け入れが課題になり、世界では積極的な受け入れを求める声が高まっていましたが、フランス・パリでのテロ等を受け、各国で難民申請に関し慎重な対応を取らざるを得なくなってきました。しかし、テロ以前は日本でも難民の受け入れに協力的であったかというと、決してそうとは言えません。そもそも日本の難民認定制度は、他国と比較して圧倒的にハードルが高いのが実情なのです。

日本で「難民認定」は難しい?
 「難民」とは、「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者」とされています。難民として認定されるためには、この定義に当たることを申請者自らが書面等の証拠や証言により立証することを求められます。
 しかし、実際のところ、「迫害を受けるおそれがある」ことを、書面で立証することが極めて重要な日本の運用では、この認定に足る十分な証拠資料を集められるケースはごく稀です。平成26年度は申請が5,000件、処理数は3,169件に上りましたが、このうち難民と認定されたのはたった11件と、1%にもなりませんでした。
 それでも申請件数は右肩上がり
 ほとんどが認定されていないにもかかわらず、実は5年前の平成22年から申請件数自体は5倍近くにも跳ね上がっています。その要因の一つとされているのが、就労を目的とした偽装申請の存在です。平成22年3月の運用改正後、正規在留中の者が難民認定申請を行った場合については、一定期間経過後一律に就労を許可するようになったことで、就労を目的とした申請が増えたと指摘されています。しかしこれでは認定審査が長期化し、本来救済されるべき案件に支障をきたしてしまいます。こうした事態を受け、法務省では平成27年9月、就労しなくても生計維持が可能と判断される者や、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返す再申請者については、申請に対する判断がされるまでの間、在留は許可するが就労は許可しない方向に運用を見直すこととしました。難民については非常にデリケートな課題ですが、こうした現状があることは知っておく必要があるかもしれません。

H28.1.20

定型職社員の給与制度

 定型職社員の給与制度を設計する望ましい考え方と代表的な給与体系について紹介致します。

社員の業務と給与体系
 定型職とは、生産技能職・パソコン操作等の事務職・保安警備職・狭い範囲の販売職など、基本的に定められた手順と判断によって製品やサービスをアウトプットする業務であり、その成果は「製造・販売・事務処理などの正確性・効率性(スピード)」であり、一般的には習熟を必要とします。
 したがって望ましい給与体系は、習熟努力のインセンティブを重視して次の二つの体系が用いられます。
①職務等級別職務給(単一型)+習熟給(積上型または習熟レベル別定額)
②職務等級別職務給(等級内習熟で位置付ける範囲型)
 ①の例(習熟レベル別定額)を右の表に例示します。
 また、定型職を目標管理制度の対象とする場合は、工程ごとのチーム共同目標を設定し、チームの成果(効率・生産性)と担当者個々の習熟度向上による貢献を評価することで、給与制度と連動できます。

【定型職の給与制度(例)】
 職務等級別・習熟レベル別給与額
等級 習熟度レベル別給与額(単位:千円)
基準 D C B A
3 170 172 174 176 178
2 160 162 164 166 168
1 150 152 154 156 158

【職務等級別・習熟度レベル基準(例)】
等級 担当職務 習熟レベル
3 ○○工程 A 工程全般の指導可
B 指導補佐が出来る
C △△の遂行可能
D □□の遂行可能
基準 ××の遂行可能
2 ▽▽工程 A 工程全般の指導可

経営者・管理者の留意点
 中途採用者は申告された経験や技能レベルから、見定め・評価期間をおいて、実力に見合った給与体系上の位置付けを決定すると良いでしょう。

H28.1.19

平成28年度税制改正
納税環境整備編

納税環境では、注目すべき改正項目は、何と言っても加算税制度の見直しかと思います。以下、主な項目を概観していきます。

●加算税制度の見直し
(1)事前通知後に修正申告を行う場合
 当初申告のコンプライアンスを高めるため、「事前通知」から「更正予知」までの期間について、新たな加算税(「更正予知」後の加算税よりも一段低い加算税)の対象とする改正です。税率は、過少申告加算税:5(10)%、無申告加算税:10(15)%です。
※上記( )書は、当初申告との増差額が50万円又は無申告による本税が50万円超える部分が( )書の加重される加算税の対象となる。
(2)短期間に繰り返して無申告又は仮装・隠ぺいが行われた場合
 無申告又は仮装・隠ぺいを意図的に繰り返す者に対する加算税ついては、過去5年以内に無申告加算税又は重加算税を賦課された者が、再び「無申告又は仮装・隠ぺい」に基づく修正申告書の提出等を行った場合について、加算税を10%加重する改正です。
 適用は、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税からです。

●最高裁敗訴判決を踏まえた延滞税の計算期間の見直し
 具体的には、①納税者が申告及び納付(例:100)、②その後、申告税額が過大であるとして税務署長が減額更正(例:100⇒50)、③さらにその後、税務署長が増額更正等(例:50⇒80)をするケースについて、現行では、除算期間を除き、一律(当初の法定申告期限から)延滞税が発生しますが、最高裁敗訴の判決を受けて改正をしました。
 その内容は、①増額更正までの期間については延滞税を課さない。②更正の請求の場合に限り、減額更正時から最大1年間の延滞税を課す。③未納期間については、延滞税の対象とする。④現行の通達を法定化する、です。
 適用は、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税からです。

●その他の改正
 ①会社分割等の無効判決が確定した場合、租税債権は分割法人等も連帯納付義務を負う改正、②事業を譲り受けた者の第二次納税義務に関して、その対象者の範囲を特定支配関係同族会社又は生計を一にする親族に限定する等の改正もあります。
 適用は、平成29年1月1日以後に行われる分割等、滞納となった国税からです。

H28.1.18

平成28年度税制改正
国際課税編

国際課税の改正の中心は、「BEPSプロジェクト」の勧告を踏まえた移転価格税制に係る文書化の拡充・整備かと思います。以下、主な項目を概観していきます。

●移転価格税制の文書化の整備等
 多国籍企業の税源浸食と利益移転を防止する観点から、多国籍企業グループに対して、①国別報告事項(グループの国別での財務情報等)、②事業概況報告事項(グループ全体の事業概況等)、③独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(個別企業が算定した価格の資料等)の3種類の文書を共通様式に従って税務当局に提出(又は作成・保存)することを義務付ける改正です。
 適用は、上記①、②は平成28年4月1日以後に開始する親会社事業体の会計年度から、上記③は平成29年4月1日以後に開始する事業年度の法人税からです。
 なお、連結総収入金額1,000億円未満の多国籍企業グループについては、上記①、②の報告事項の提出義務は免除です。また、上記③の文書化の義務についても、一の国外関連者との取引金額が50億円未満であり、かつ、無形資産取引金額が3億円未満である場合、同時文書化義務(申告書の提出期限まで作成・保存義務)は免除です。

●国際課税原則の帰属主義への変更円滑化
 この改正は、帰属主義への変更を円滑に実施するためのもので、①外国税額控除の控除限度額に係る国外源泉所得について、国外事業所等帰属所得がマイナスとなる場合には、そのマイナスの金額である旨及び国外所得金がマイナスである場合はゼロである旨を明確化し、②適格合併等により外国法人がPE形態で再進出する場合の繰越欠損金の取扱いに関して、当該適格合併等により引き継いだ金額に限られることを明確にしました。

●外国子会社合算税制の見直し
 日本企業の海外展開をより一層円滑化していくため、幾つかの見直しをしました。
 その中の1つは、外国税額控除に関するもので、特定外国子会社が子会社(持株割合25%以上の要件を満たす法人)から受ける配当等のうち外国法人税の課税標準に含まれないものは、所定の合算割合の計算に係る特定外国子会社の所得から除外する、とするものです。
 適用は、特定外国子会社等の平成28年4月1日以後に開始する事業年度からです。

H28.1.15

平成28年度税制改正大綱
個人課税編

 個人課税については、配偶者控除等各種控除の抜本的な改正は見送られました。以下、主な改正項目を概観していきます。

●空き家に係る譲渡所得の特例
 昨今、不動産は、負の遺産となることもあり、空き家が社会問題化してきました。その解消策がこの特例の創設です。特例の内容は、次のとおりです。
 相続時から3年を経過する日に属する年の12月31日までに、被相続人が住んでいた家屋を相続した相続人が、当該家屋(耐震性を具備したものに限り、その敷地を含む)又は除去後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は除去後の土地の譲渡益から3,000万円を控除することができる、というものです。
 但し、幾つかの要件をクリアーしなければなりません。例えば、①家屋は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンションを除く)であって、相続発生時に、被相続人以外の居住者がいないこと。②相続時から譲渡時点まで、居住、貸付け、事業の用に供されていないこと。③譲渡価額が1億円を超えないこと、などです。
 適用期間は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡です。

●三世代同居改修工事の特例
 三世代同居のために改修工事を行った場合、次の①又は②の特例が適用できる規定で、新たに創設されたものです。
 ①改修工事の住宅借入金等(償還期間5年以上)の年末残高1,000万円以下の部分について、一定割合を乗じた金額を5年間の各年において所得税額から控除する。
 ②改修工事の標準的な費用の額の10%相当額をその年分の所得税額から控除する。  
 適用対象期間は、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住に供したときです。
 改修工事には要件があり、その対象工事は、①キッチン、②浴室、③トイレ、④玄関で、加えて、①~④のいずれかを増設すること、改修後、①~④のうち、いずれか2つ以上が複数になること、工事費が50万円超であることなどです。

●その他の改正
 ①非居住者への相続に係る「国外転出(相続)時課税」に関し遺産分割協議確定による修正申告や更正の請求を認めるもの、②市販薬の一定額購入による所得控除の創設(医療費控除との重複適用不可)、③通勤手当の非課税枠15万円までの引上げ等です。

H28.1.14

平成28年度税制改正大綱
資産課税編

 資産課税に関しては、主に手続き等についての見直しで、大きな改正はありません。以下、主な項目を概観していきます。

●農地等に係る納税猶予の見直し
 農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予の確定事由に関して、次の見直しが行われています。
①贈与税の納税猶予を適用している場合の特定貸付けの特例について、農地中間管理事業のために貸し付けている場合にあっては、受贈者の納税猶予の適用期間要件(現行:10年以上〈貸付け時において65歳未満の場合には、20年以上〉)は適用しない。
②贈与税の納税猶予の適用を受けることができる者を認定農業者等に限るとする。
③特例適用農地等に区分地上権が設定されている場合においても、農業相続人等が当該農地の耕作を継続しているときは、納税猶予の期限は確定しないこととする。
④農地法の改正に伴い、農業生産法人制度の見直しに伴う所要の措置を講ずる。
 上記①の改正は平成28年4月1日以後の貸付けについて、上記②の改正は同日以後の贈与について、上記③の改正は同日以後の区分地上権の設定について、それぞれ適用する、となっています。 

●結婚・子育て資金の一括贈与の範囲
 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、その対象となる不妊治療に要する費用には薬局に支払われるものが含まれること等が明確にされました。

●贈与税の配偶者控除の適用手続き
 結婚期間が20年以上の配偶者から、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与を受けた場合には、その年分の贈与税の課税価格から2,000万円までの金額を控除することができます。
 この制度の適用を受けるためには、申告書に、居住用不動産を取得したことを証する「登記事項証明書」の添付が必要です。
 しかし、現実には、それぞれ夫婦間の財産移転であり、必ずしも名義変更がなされているとは限りません。そこで、申告書の添付書類として、登記事項証明書に限ることなく、居住用不動産を取得したことを証する書類(贈与契約書等)に要件を変更しました。
 適用は、平成28年1月1日以後の贈与からです。

H28.1.13

平成28年度税制改正大綱
消費課税編

 消費税については、平成29年4月1日から軽減税率制度を導入、そして、対象品目及び課税方式についての骨格も決まりました。以下、その内容を概観していきます。

●軽減税率対象品目及び税率
(1)対象品目は、①飲食料品の譲渡(飲食店営業等を営む事業者が、一定の飲食設備のある場所等において行う食事の提供を除く)、②定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡、とされています。なお、飲食料品からは、酒類を除くとしています。
(2)税率は、8%(国分:6.24%、地方分:1.76%)です。

●適格請求書等保存方式
(1)課税方式は、適格請求書等保存方式、いわゆる「インボイス制度」を導入することに決定しました。この方式は、登録を受けた課税事業者が交付する適格請求書及び帳簿の保存を仕入税額控除の要件とするもので、具体的には次のようなものです。
 適格請求書には、①発行者の氏名又は名称及び登録番号、②取引年月日、③取引内容(軽減税率対象である旨の記載を含む)、④税率ごとに合計した対価の額及び適用税率、⑤消費税額等、⑥交付を受ける事業者の氏名及び名称が記載されます。
(2)税額計算の方法は、適格請求書の税額の積上げ計算と、取引総額からの割戻し計算の選択となっています。
 なお、この適格請求書等保存方式の正式導入は、平成33年4月からとなっています。

●正式導入までの経過措置
 平成33年3月までの経過措置の内容は、次のとおりです
(1)現行の請求書等保存方式を維持しつつ、区分経理に対応する措置を講じています。具体的には、請求書に①軽減税率の対象品目である旨と、②税率ごとに合計した対価の額を記載する(区分記載請求書等保存方式)。そして、上記、①・②については、区分記載請求書の交付を受けた事業者が、事実に基づき追記することを認める、とするものです。
(2)税額計算の方法は、売上げ又は仕入れを税率ごとに区分することが困難な事業者に対し、売上税額又は仕入税額の計算の特例を設ける、とするものです。

●正式導入後の経過措置
 適格請求書等保存方式の導入後6年間、免税事業者からの仕入れについて、一定割合の仕入税額控除を認めています。

H28.1.12

平成28年度税制改正大綱
法人課税編(No.2-2)

 前回に続いて法人課税に関する改正項目です。地方税を中心に主な項目を概観していきます。

●法人事業税の税率改正
 資本金の額(出資金の額を含む)1億円超の普通法人については、法人事業税における外形標準課税(付加価値割と資本割の合計)の割合を5/8(現行:3/8)に拡大、これにより、所得を課税標準とする所得割の税率を3.6%(現行:6.0%)に引下げ、一方、付加価値割の税率1.2%(現行:0.72%)及び資本割の税率を0.5%(現行:0.3%)に引上げる、とするものです
 なお、一定の要件を前提に、付加価値額30億円以下の法人、付加価値額30億円超40億円未満の法人については、負担軽減措置が設けられています。
 この改正は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となっています。

●地方法人特別税の税率改正
 資本金1億円超の普通法人の税率は、414.2%(現行:93.5%)とするもので、この改正は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となっています。 
 なお、この地方法人特別税は、平成29年4月1日以後に開始する事業年から廃止し、法人事業税に復元するとなっています。

●法人住民税法人割の税率改正
 道府県民税の法人税割は標準税率1.0%(現行:3.2%)、制限税率2.0%(現行:4.2%)に引下げ、また、市町村民税の法人税割も標準税率6.0%(現行:9.7%)、制限税率8.4%(現行:12.1%)に引下げる、とするものです。
 この改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度から適用となっています。

●地方法人税の税率改正
 地方法人税の税率は10.3%(現行:4.4%)に引上げるとするもので、この改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となっています。

●地方創生応援税制の創設
 企業版ふるさと納税とも呼ばれ、地域再生法の改正を前提に、地方公共団体(三大都市圏等は対象外)が行う、地方創生効果の高い一定の事業(国が認定)に対して法人が行った寄附について、現行の寄附金の損金算入措置に加えて、寄附金の一定額を①法人事業税及び②法人住民税並びに③法人税(②で控除できなかった額)から税額控除できる、とするものです。

H28.1.8

平成27年度税制改正大綱
法人課税編(No.2-1)

 平成28年度税制改正における、法人税改革の基本理念は、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」であり、デフレ脱却、経済再生を最重要課題としています。
 以下、国税を中心に主な改正項目を概観していきます。

●法人税の税率引下げ
 法人税の税率は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度については、23.4%(標準税率ベースでの実効税率29.97%)、平成30年4月1日以後に開始する事業年度については、23.2%(標準税率ベースでの実効税率29.74%)とするものです。
 なお、中小法人等の軽減税率15%(所得800万円以下)は、存置されています。

●減価償却制度の見直し
 平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物の償却方法について、定率法を廃止し、定額法(鉱業用は生産高比例法との選択)に一本化するものです。

●欠損金繰越控除の平準化による見直し
(1)欠損金の控除限度額は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度から所得の60%(現行:65%)、平成29年度開始55%(現行:50%)、平成30年度以後開始50%(現行:50%)と一部見直されています。
 なお、中小法人等については、従来どおり、控除限度額は所得の100%、そして、欠損金の繰戻還付は存置されています。
(2)平成30年4月1日以後に開始する事業年度から、①青色欠損金の繰越期間、②青色欠損金の控除制度に係る帳簿保存期間、③欠損金に係る更正の期間制限、④欠損金に係る更正の請求期間を10年(現行9年)に延長する、としています。

●少額減価償却資産の特例について
 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象となる法人から常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人を除外した上、その適用期限を2年延長しています。

●生産性向上設備投資促進税制の見直し
 生産性向上設備投資促進税制(特別償却又は税額控除)については、適用期限をもって廃止する。また、上乗せ措置についても、平成28年3月31日とされている適用期限を延長しない、としています。

●その他の改正
 企業の「稼ぐ力」、「攻めの経営」を後押しするため、役員給与における多様な株式報酬等の導入及び組織再編に係る税制の整備といった改正もなされています。

H28.1.7

扶養控除等申告書に
個人番号を記載しない場合

まずは供託の典型から
 供託で、まず思い浮かぶのは、不動産賃貸借で、契約期間満了や賃料改定が争いとなったときに、賃借人が、法務局で賃料相当額を供託する事例ではないでしょうか。
 これは、弁済供託という類型で、相手方が支払受領を拒否し、あるいは、行方不明になった場合に、供託によって支払義務から解放させることを目的とします。 

供託は弁済供託だけではない
 しかし、供託の種類はこれだけではなく、他にはこういう場面があります。
1 法律上、何らかの担保提供として供託が求められる場合(担保保証供託)
 これは、①営業者(宅地建物取引業が典型)がその営業活動で生ずる債務や損害を担保するために供託を求められる場合(営業保証供託)、②裁判所から訴訟費用や訴訟行為による相手方の損害を担保するために、供託を命じられる場合(裁判上の担保供託)、③相続税、贈与税等の延納許可、又は納税猶予に関し、納付又は徴収を確保すべく、税務署長等から納税者に担保提供を求められる場合(税法上の担保供託)があります。
2 支払債務が第三者の差押えの対象になったために供託する場合(執行供託)
 従業員への給与が差し押さえられた場合のように、金銭債権について裁判所から差押命令の送達を受けた場合に、当該金銭債権の債務者(第三債務者)が、その金銭債権の全額に相当する金銭を供託することができます。また、同一の金銭債権(例えば買掛金債務)について複数の債権者から差し押さえられた場合、第三債務者は、金銭債権の全額に相当する額の金銭を供託しなければなりません。
3 公職選挙のように、ある目的から、一定の額の金銭等を供託させ、一定の事由が生じたときは、国又は地方公共団体がこれを没収する供託(没取供託)
4 目的物の散逸を防止するために、供託物そのものの保管・保全を目的としてされる供託(保管供託)
 例えば、銀行、保険会社等の業績が悪化して、資産状態が不良となった場合に、財産散逸を防ぐべく、監督官庁が財産の供託を命ずる場合です。

H28.1.6

マイナンバー記載の事務始まる

 目標達成度評価の不整合とは、例えば「営業部門の営業利益目標達成度が60%であるのに対して、営業担当者個々の目標達成度評価の平均が75%と高く評価され、矛盾している場合」を指します。

平成28年1月からの雇用保険の手続
 従業員の方たちから会社に提出された個人番号(マイナンバー)は1月以降、雇用保険や労災、源泉徴収票等の手続で使用します。雇用保険は従業員の入社や、退職した場合の手続に使用します。
 雇用保険手続で個人番号の届出をするのは次の5種類です。
①雇用保険被保険者資格取得届
②雇用保険被保険者資格喪失届・氏名変更届
③高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付申請書
④育児休業受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
⑤介護休業給付金支給申請書
③と④の書類は2回目以降の申請には個人番号は記載しません。

個人番号の使用は雇用保険手続から
 個人番号の使用は従業員に関わる手続で最初に会社が行うのは雇用保険でしょう。新たに資格取得する方や在職者の資格喪失手続に必要になります。入退者の多い会社では個人番号を早めに収集しておかないと手続が発生するたびに本人に聞かなくてはならず、煩雑になるでしょう。
 本人が番号提出を拒否した時は、会社では個人番号記載が法令で決まっている事を本人に理解してもらうように努めたとして個人番号欄を空欄で提出しても、ハローワークが受理しない事はありません。また、記載しない理由書の添付も必要ありません。

提出後の返戻書類の取り扱い
 平成28年1月以降前述の手続では用紙に個人番号記載欄が設けられますので記載して提出します。しかし戻された事業主控えや本人控えには番号が記載される事はありません。提出前に番号を記載した書類をコピーしておく場合は、番号法の規定に沿った安全管理措置をとっておいてください。返戻された離職票にも番号は記載されていませんので会社は離職票には番号は記載せず本人に渡しましょう。
 旧様式を使用する事はできますが、他に「個人番号登録・変更届出書」(新様式) を提出するようになりました。今までの資格喪失届には番号を記載する欄が無いのでこの様式を一緒に提出します。

H28.1.5

非定型職社員の給与制度

 役職者[マネジメント職群・上級専門(技能)職群]の給与制度を役割・成果責任に基づいて設計した企業では、一般社員層の給与制度も役職者の制度に連結するよう設計するべきです。

非定型職社員の給与制度設計
 一般社員の職務は、定型職と非定型職に区分されますが、ここでは、日本企業において、広がりを示している非定型職の給与制度についてのべます。
 非定型職には一般に企画職・総合職・研究開発職が挙げられますが、役職者が役割・成果責任に応じた業績を求められるのに対して、社員は育成過程にある点が異なります。しかし、実際には能力の伸長に応じて、より重要な目標の達成に参加、貢献することが求められます。
 このような点を考慮して図示したような給与制度が活用されます。
①職務遂行能力の発揮度に応じて賃金が伸長する「等級別範囲職能給」を適用し、昇級インセンティブ・昇号インセンティブを利かせる。
②目標達成への貢献等を評価して昇号させ、上位等級ほど評価反映度が厳しい昇降号数を適用する。

【非定型職社員の給与制度(例)】
 等級   等級別範囲給・重複型(単位:千円)
 3        180~220
 2        165~195
 1        150~170

【評価別昇号基準(例)】
        業績評価
 等級     A   B   C   D   E
 3       3   2   1   0   -2
 2       4   3   2   0   -1
 1       5   4   3   」    0

経営者・管理者の留意点
 日本の企業では、若いうちに幅広い経験をさせることが多いので、異動後一定期間は異動前給与を保証する等、モラールダウンにつながらぬよう配慮しましょう。

H28.1.4

役員報酬を複数の会社から受けている時

社会保険の取り扱いはどうするのか
 2か所以上の会社に勤務している役員は各々の会社から報酬を受けている事があります。それぞれ社会保険適用事業所である場合は所得を合算して届出し、社会保険料も合算額の標準報酬月額となります。
 原則として各々の勤め先で被保険者資格を取得しますが、家族を形式的に取締役にしたり、代表権や、業務執行権を持たない場合や、役員会への出席の有無、役員報酬が無い等、その就労形態によっては被保険者に該当しないとされることがあります。

日本年金機構の被保険者該当、不該当判断 
 法人の役員については次の6つのポイントから被保険者となるかどうかを検討する事で判断するとしています。
①当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか
②当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか
③当該法人の役員会などに出席しているかどうか
④当該法人の役員への連絡調整又は職員に対する指導監督に従事しているかどうか
⑤当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか
⑥当該法人等より支払いを受ける報酬が社会通念上労務の内容にふさわしいものであって実費弁済程度にとどまっていないか
 以上の様な観点で判断をしますが、不明な時は年金事務所で確認しましょう。

二以上事業所勤務の届出について
 複数の事業所に勤務している事を届け出る時は「被保険者資格取得届」を各々の管轄する年金事務所や健保組合に提出します。
 複数に届出をした場合はどの年金事務所又は健保組合を主とするか決める必要があります。「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、選択した事業所を管轄する年金事務所又は健保組合に提出します。

社会保険料の計算はどうなる?
 保険料は各々の事業所から受ける報酬を合算して標準報酬月額を決め、各々の報酬月額の比率で按分して算出します。年金事務所又は健保組合より按分した保険料額が通知されますので、本人負担分も各々に応じた保険料を徴収します。