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2017年1月

2017/01/31

H29.1.31

明日からでもできる健康経営の取り組み

健康経営とは
 最近「健康経営」と言う言葉を聞く機会が増えてきました。一昔前の従業員の健康管理より企業の利潤追求が優先であった時代では会社は最低限の義務と各従業員の自己責任と言う考え方が普通でした。しかし今、利益追求と健康管理を両立させて行き、企業が従業員の健康に配慮する事によって経営面において大きな成果(生産性向上や企業イメージアップ)を期待できるという考え方が広がりつつあります。

健康経営が注目される背景
 健康経営は1980年代にアメリカの臨床心理学者ロバート・ローゼン博士が提唱した「ヘルシーカンパニー」が原点だと言われています。日本への導入が必要と言われる背景を考えてみます。
①労働人口の減少と人材確保・・・・中小企業では1人1人が重要な役割を担っているので健康悪化や離職が企業に重大な影響を及ぼします。
②生活習慣病の増大を抑制する・・・・医療費の増大は健康保険料の増額に繋がり企業や個人のコストの上昇にもなります。在職中から健康維持の習慣を身につける事で健康寿命を延伸します。
③メンタルヘルス不調者の増加防止・・・・コミュニケーション不足が1つの原因とも言われています。適切なコミュニケーションは職場に欠かせません。
④従業員健康管理・・・・定期健康診断の受診率を高め、要再検査等の場合には自己責任の問題とせず会社からも受診を促します。
⑤高齢者層の労働力維持確保・・・・労働力の確保の面からも中高齢者を引き続き戦力とするには早い段階から取り組みをする事が
大事です。

中小企業でも取り組めること
 中小企業では労働安全衛生法の必要最小限だけの実施が多いでしょう。また従業員50人未満の事業所では産業医や衛生管理者の選任、衛生委員会の設置やストレスチェックも義務とはなっていません。しかし次の様なスモールチェンジの取り組みならすぐにでもできるのではないでしょうか。
 ラジオ体操、禁煙運動、健康診断100%受診、食習慣の指導、自販機の内容を検討、社食のカロリー表示、空気清浄機の設置、ノー残業デー、休憩時間の昼寝推奨、健康セミナー実施、インフルワクチン補助、等

H29.1.30

育児・介護休業法の改正

平成29年1月より改正 介護休業法
 育児・介護休業法の改正のうち、ここでは介護休業法の改正について説明します。
介護休業法とは対象労働者の要介護状態(負傷、疾病等で2週間以上の期間、常時介護を必要とする状態)の家族の世話をする為の休業です。対象範囲は配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。祖父母、兄弟姉妹、孫については今回の改正で同居・扶養要件が外されました。

改正のポイント
①介護休業は対象家族1人につき通算93日までを原則1回に限り取得⇒改正では、対象家族1人につき通算93日までを3回を上限として分割取得する事ができるようになりました。
②介護休暇は1日単位での取得⇒改正では半日単位(所定労働時間の2分の1)での取得が可能になりました。
(介護休暇とは、対象家族の介護を行う労働者は1年に5日、対象家族が複数いる場合は10日まで休暇を取得できる)
③介護の為の所定労働時間の短縮措置(選択的措置)は介護休業と通算して93日の範囲内で取得⇒改定では介護休業とは別に利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能になりました。
④介護の為の所定労働時間の制限(残業の免除)は対象家族1人につき介護終了までの期間について利用出来る事となりました。
⑤介護休業取得者への不利益取り扱い禁止に加えて嫌がらせ防止義務ができました。

仕事と介護の両立には その対策
 今回の介護休業法の改正は育児・介護休業法ができてから20年余りたち、ほとんど改正をしていなかった介護休業法の内容を大幅に見直し現状に即した内容に改定し、年間10万人と言われる介護離職者を防止するための措置を考えています。仕事と介護の両立は個人的な問題でもありますが日本全体の課題と言えます。今後介護に直面した従業員が出てきても仕事と両立しながら社内の仕事が回るよう考えて行く必要があるでしょう。現状を把握した上で相談できる態勢を敷き、介護休業制度や自治体のサービス等周知に努める事が必要でしょう。柔軟な働き方が可能となる社内制度は、社員研修等で従業員皆で話し合って討議を進めるのが良いでしょう。

H29.1.27

意味構造の使い方

「意味構造」とは、文章表現では説明が難しい複雑な問題・課題・提案について、意味する構造(因果関係)を分かり易く可視化する図解表示のことを言います。
 例えば、図示したように、ある複雑な問題の因果関係について、最終結果と根本原因、その間に存在する中間的結果(中間的原因ともなっている)で図解表示することができます。

意味構造図解の活用法
 このような図解は次のような場合に活用します。
① 複雑な内容を持った問題を解決するため、原因と結果の因果関係を鮮明にとらえたい。また、上司や関係者に分かりやすく説明、報告し、理解を求め、対策を的確に進めたい。
② 新製品開発など、新しい提案を行う際、市場・顧客のニーズ変化・自社の製品・技術の現状と開発課題、開発方法・技術開発の必要性、予算などを分かりやすく説明、提案し、承認を得たい。

意味構造図解の利点
意味構造図解には次のような利点があり、担当社員を助けてくれます。
 意味構造の図解表示例(問題発生原因)

         最終結果       
      ↑         ↑
 中間結果=中間原因  中間結果=中間原因
      ↑         ↑
     根本原因  →中間結果=中間原因

① 問題・課題解決の基礎となる、現状を鮮明、かつ論理的にとらえさせてくれる。
② 創造的な解決具体策の創出を助け、有効な解決の糸口を与えてくれる(特にチームワークの共創に有効)
③ 問題・課題や対策の必要性について、上司・関係者に鮮明、かつ論理的に説明できるので前述の通り、提案目的を達成する主要な道具になる。

意味構造活用の留意点
 意味構造の原点は、川喜田二郎氏が開発した「KJ法」で、現場にある“生データ”を収集し、それらを帰納法で順次一段階ずつ抽象化し、5~6つに要約して因果構造として把握する点にあります。この“生データ”の収集は“三現主義“の原理ともなっている点に留意して活用したいものです。

H29.1.26

平成28年分確定申告 株式等の譲渡所得の計算に留意

 株式等に係る譲渡所得の課税は、申告分離課税で国税15%(別途復興税有)、住民税5%です。
 しかし、28年1月1日以後の株式等に係る譲渡所得については、上場株式等に係る譲渡所得とそれ以外(一般)の株式等に係る譲渡所得とは区分され、それぞれ別のものとして税額計算がなされます。

●両者の損益通算はできない
 この区分計算の理由は、平成28年分から上場株式等に係る譲渡損失又は譲渡益と一般株式等に係る譲渡益又は譲渡損とが、それぞれ両者間で損益通算ができなくなることによるものです。
 それでは、平成27年分以前の各年分において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額で平成28年分に繰り越されたものについてはどうか、ですが、一般株式等に係る譲渡所得の金額から繰越控除することはできません。
 もちろん、平成28年分における上場株式等に係る譲渡所得の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額から繰越控除することはできます。

●特定公社債等の利子と譲渡損益
 また、特定公社債等の利子や譲渡による所得も平成28年分から申告分離課税(所得税15%、住民税5%)の対象とされました。
 そして、これらの所得間、上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択したものに限る)及び譲渡所得との損益通算並びに特定公社債等の譲渡損失の金額についても確定申告書を連続して提出することにより3年間の繰越控除ができることになりました。
 なお、特定公社債等の償還又は一部解約等により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額については、これを特定公社債等の譲渡所得の収入金額とみなす、とされました。

●特定公社債等とは
 ちなみに、特定公社債等とは、特定公社債と公募公社債投資信託からなり、特定公社債は、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債、平成27年12月31日以前に発行された公社債(同族会社が発行した社債を除く)などの一定の公社債をいいます。
 なお、損益通算及び繰越控除の対象となるものは、金融商品取引業者等を通じて売却する場合など、一定の売却になります。

H29.1.25

65歳超雇用推進助成金

平成28年10月にできた助成金
 高年齢者の雇用の確保の為に定年引き上げ等の措置を実施した事業主に対して支給されるものです。今までにも似たような助成金はありましたが、今回は65歳までの継続雇用制度を導入していてさらに継続雇用の年齢を延ばしたり、定年を延長したりした事業所が次の様な措置を導入した場合に支給されます。
①65歳以上の年齢への定年引き上げ・・・・・100万円
②66歳以上への定年の引き上げ又は定年の定めの廃止・・・・・120万円
③希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入
 ア. 66歳から69歳・・・・・ 60万円
 イ. 70歳以上 ・・・・・ 80万円

支給の対象となる事業主
①雇用保険適用事業所の事業主である
②審査に必要な書類を整備・保管している
③審査に必要な書類を提出先の機関に提出提示、実地調査に協力する
④労働協約又は就業規則による次のいずれかを平成28年10月19日以降実施した
ア. 旧定年年齢を上回る66歳以上への定年の引き上げ、イ. 定年の定めの廃止、ウ. 定年年齢及び継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入
⑤ ④に定める制度を規定した際、社外の専門家に委託して費用を要した
⑥ ④に定める制度を就業規則に整備する
⑦ ④に定める制度実施から支給申請日の前日までにおいて、当該事業主に1年以上雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いる

助成金が受給できない場合
①労働保険料を前年度まで納入していない
②支給申請日の前日から過去1年に労働関係法令違反をしている
③風俗営業、接待を伴う飲食業
④過去3年以内の不正受給
⑤過去に高年齢雇用安定助成金の定年引き上げ等の措置に関し支給を受けた
⑥その他

支給申請 
 支給申請は必要書類を揃えて、制度実施日の翌日から2ヶ月以内に各都道府県の高齢・障害・求職者雇用支援機構に提出します。

H29.1.24

共創型リーダーの技

 共創型リーダーとは、共創(“異質な知を融合して、新しい知を創出する”)を導く使命を持ったリーダーのことを指し、近年、目標管理の目標設定、達成プロセスの問題解決などにおいて、共創型リーダーが、その使命を果たす機会が増えております。

共創型リーダーの技と使い方
 共創型リーダーの技とは「社員の体験で得られた事実や、多様な知識・技術に基づく創意工夫の発表、真摯な討論を通じて、それらを融合した“共創価値”の合意形成へ誘導する技」のことを言い、経営者や管理者、プロジェクトチームリーダーがファシリテーターとなって使う機会が多いと言えます。
 その技の使い方を目標管理制度における目標設定・仮説検証型目標達成のケースを取り上げ、手順として例示させて頂きます。

[目標管理における技の活用手順例]
 目的 ファシリテーターの技の使い方
1 現状の課題・問題理解、共有 目標に関する現状の課題・問題を全員参加で出させ、疑問点について討論、発表させ、説明、理解させる。(注1)
2 目標設定
 ① 目標達成状況(問題・課題が解決された状況)討議、発表
 ② 全員討議(注1)
 ③ 合意形成(注2)
3 解決策(仮説)の創出と検証
 ① 参加者が持つ多様な知識技術で、解決策を創出(注1)発表
 ② 全員で討議
 ③ 複数案の検証(分担)
4 合意形成 複数案の検証結果を発表、全員で討議、合意形成(注1・2)
(注1)2~6名の小グループに分けて討論させ、代表者が発表
(注2)合意形成の方法は、小グループで討議の上、「衆目評価法」(個人が5点法で投票するなど)活用を推奨

[実施上の注意点]
 ① 小グループ別の発表内容は、全員が目で見えるように掲示することが大切
 ② 討論はブレーンストーミングで、お互いの批判や否定を禁じ、年齢・性別にかかわらず全員発言

H29.1.23

65歳以上も雇用保険の適用者に

雇用保険の適用拡大
 平成29年1月1日より雇用保険の「高年齢被保険者」として65歳以上の方も適用の対象となりました。今までも高年齢被保険者として65歳に達する前から雇用され、65歳に達した日以後も引き続き雇用されていた方は適用されていました。今回の改正は65歳以上で新たに雇用された場合でも被保険者となり、次の様な方が対象になります。
①平成29年1月1日以降に新たに65歳以上の労働者を雇用した場合
②平成28年12月までに65歳以上の人を雇用し平成29年1月1日以降も継続して雇用している場合。この場合は平成29年1月1日が適用日になります。
③平成28年12月末時点で高年齢被保険者である人(65歳未満で雇用され継続勤務している人)は改めて手続は必要ありません。
 ①と②の対象者は雇用保険被保険者資格取得届をハローワークへ提出します。

雇用保険の加入対象とは
①1週間の所定労働時間が20時間以上であり、雇用期間が31日以上の見込みである
②被保険者になった日の属する月の翌月10日までに資格取得届を提出しますが、平成28年12月末以前より雇用していた人が被保険者となる場合は、平成29年3月31日までに取得届を提出すればよい事となっています。事業主が労働者の希望により加入の有無を決めるものではありません。要件に該当すれば当然被保険者になりますのでご注意ください。
雇用保険料について
 65歳以上の方の保険料は徴収するのでしょうか。平成31年度分までは徴収しない事となっています。労働保険料の申告書には保険料額は記載しますが、本人からの徴収も保険料の支払いも発生しません。
 また、65歳以上の方も各給付金の対象となりますので、離職をした時は「高年齢求職者給付金」を受け取ることができます。離職後に住居を管轄するハローワークで求職の申し込みをし、受給資格決定を受ける必要があります。被保険者期間が1年以上あれば基本手当日額の50日分、1年未満の場合は30日分が一時金として受けられます。

H29.1.20

国外居住の親族扶養確認 年末調整作業を経ての実感

国外扶養家族の条件はハードルが高い
 平成 27 年度の税制改正で、平成 28年 1 月より非居住者である扶養親族(「国外居住親族」)を有する者は、給与等の源泉徴収及び年末調整において、「国外居住親族」に係る「親族関係書類」や「送金関係書類」を源泉徴収義務者に提出し、又は提示しなければならないこととされています。
 今回は、12月の年末調整業務の過程で、実際の親族関係書類や送金証明書を確認した上での感想を記します。
 一言でいうと、“国外扶養の基準を満たすのは困難”です。一番の難題は、「国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払いを必要の都度、各人に行ったことを明らかにするもの」(傍点筆者)という点です。単身赴任の場合、未成年の子供も含め、対象者全員に送金した証明書を提示しなければなりません。

規定の趣旨vs所得税法の規定
 扶養控除の趣旨から考えると、単身赴任の場合、配偶者宛に送金していればそこから当然子供たちの生活費も賄うので、“それでOKでしょ”と思いがちです。しかしながら、所得税法施行規則第47条の2第5項に「生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするもの(当該書類が外国語で作成されている場合には、その翻訳文を含む。)とする。」と明記されています。よって、趣旨がこうだからという言い訳は通用しません。

会社側が責任を負わされないために
 これらの書類の確認は、給与支払者が行わなければなりません。基準を満たさないにもかかわらず扶養控除とし、後日税務調査等で源泉税徴収漏れを指摘されれば、罰金等は会社の負担となってしまいます。
 予め会社側で下記の予防策が必要です。
①送金明細書のない子供には適用しない。
②書類の日本語訳は本人に準備させる。
③各人への送金明細と親族関係書類が必要だということを、毎年年初(入社時)に書類を渡して告知しておく。
※渡すべき書類は、国税庁作成の「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ(給与所得者用リーフレット)
(平成27年10月)」と同英語版がお薦めです。英語版は、国税庁HPトップ→パンフレット・手引き→源泉所得税関係→源泉徴収全般にあります。

H29.1.19

平成29年度税制改正 延長・存置等の項目

 今回の改正で、延長又は存置等された主な項目を確認の意味を込め概観してみます。

●法人税関係
①中小企業等の貸倒引当金の特例については、適用期限を平成30年度末まで延長。なお、事業協同組合等にあっては、割増率が10%に引き下げられた。
②中小企業がトラック(3.5トン以上)、内航貨物船、機械装置等を取得した場合の特別償却(30%)又は税額控除(7%)の適用期限は、2年延長。
③医療機器の特別償却制度について、対象機器を見直した上で、適用期限は2年延長(所得税も同じ)。
④中小企業の交際費課税(定額控除800万円の損金算入)、少額減価償却資産(合計300万円の損金算入)、欠損金の繰戻し(全額)による還付制度は、存置され平成29年度末まで適用。

●所得税関係
①エンジェル税制(一定の株式の取得による投資額の所得控除、譲渡益控除、譲渡損失の繰越控除)は、一部適用対象を拡大して2年延長。
②優良住宅地の造成等のための土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例は、適用期限を3年延長。
③短期所有土地等の譲渡益に対する追加課税制度の停止期限は、3年延長(法人重課も同じ)。

●資産税関係
①事業承継税制(非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予)については、(イ)相続時精算課税制度に係る贈与を贈与税の納税猶予制度の適用対象に追加、また、(ロ)雇用確保要件では相続開始時又は贈与時の常時使用人従業員数×80%に一人未満の端数があるときは切り捨てる。但し、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員が一人の場合は、一人とする。
 上記は、平成29年1月1日以後に相続等により取得する財産から適用。
②相続税の物納にあてる財産(物納財産)として、上場株式等(株式、社債、証券投資信託の受益証券等)が国債及び不動産と同順位(第一順位)に加えられた。
③医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期限は3年延長。
④土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限は、2年延長。

H29.1.18

平成29年度改正と消費税延期 消費課税編

 今年度の改正は、主に①酒税についての税率構造の見直し、②車体税の見直しです。  
 これらの改正は、一般の事業者にとっては直接的な影響が希薄なことから、内容の詳述は割愛させて頂きます。
 その他、仮想通貨に係る課税の見直しがなされています。現在は、この通貨の譲渡は課税ですが、今改正で、「資金決済に関する法律に規定する仮想通貨」の譲渡については非課税となります。
 この改正は、平成29年から仮想通貨法が施行されることを受けてなされたものです。一部の金融機関では、独自の仮想通貨の発行を計画している、とも報じられています。
 以上が今改正の主な内容ですが、昨年11月18日「消費税10%の課税が2年半延期(平成31年10月1日)」となりました。そこで、この延期に伴う他の制度への影響及び延期の内容について、少し復習をしたいと思います。

●住宅取得資金等の贈与税非課税
 直系尊属からの住宅取得等資金の贈与については、省エネ住宅等の最大3,000万円(それ以外2,500万円)までの贈与につき贈与税を非課税とする拡大措置の開始も、2年半延長されました。よって、最大3,000万円の非課税枠を使える契約の締結日は、平成31年4月1日から平成32年3月31日まで、となりました。
 したがって、現行の省エネ等住宅の非課税枠最大1,200万円(平成28年1月1日から平成32年3月31日)が引き続き適用されます(省エネ以外の住宅の非課税枠最大は700万円)。

●住宅ローン控除
 ローン控除も平成33年12月31日までと2年半延長されました。控除額は、一般住宅の取得や増改築の場合、10年間累計で最大400万円(認定住宅の取得500万円)の税額控除を受けることができます。

●引上げ時期の変更に伴う措置
 請負工事等に係る経過措置の指定日も2年半延期となり、平成31年4月1日に変更されました。
 また、軽減税率導入時期、区分記載請求書等保存方式、適格請求書等保存方式(インボイス方式)についても、横滑りで2年半延長になりました。
 しかし、大規模事業者の売上・仕入の税額簡便計算の特例適用(1年間限定)については、その措置は廃止されました。

H29.1.17

平成29年度税制改正 国際課税編

 国際課税の主な改正項目は、何といっても「外国子会社合算税制(CFC税制)」等の総合的見直しです。
 CFC税制とは、外国子会社を利用した租税回避を抑制するために、一定の条件に該当する外国子会社の所得を、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度です。
 以下、このCFC税制の改正内容を概観してみます。

●現行のCFC税制の問題点
 現行制度においては、外国子会社の税負担率が20%(トリガー税率)以上であれば経済実体を伴わない所得であっても合算されず、申告も求められない一方で、実体ある事業から得た所得であっても合算されてしまう場合がある、という問題がありました。そこで、今回の改正においては、租税回避をより的確に抑制するとともに、我が国企業の海外展開を阻害しないよう抜本的な見直しがなされました。

●CFC税制の改正の骨子
 租税回避リスクを外国子会社の税負担率で判定する現行のトリガー税制を廃止し、外国子会社の個々の活動内容(所得の種類等)により把握し、次のように改めました。
(1)所得が生じている場所で実際に実質的な経済活動が行われている場合、そうして得た所得、いわゆる「能動的所得」については、税負担率にかかわらず日本の親会社の所得に会社単位での合算課税を行わない。
 その場合であっても、実質的な事業活動を伴わない資本・知財等の提供から得られる所得、いわゆる「受動的所得」については、事業活動に不可欠であるなど子会社に帰属させることが合理的な場合を除き、税負担率20%未満の場合は、当該所得を日本の親会社の所得に合算する(部分合算課税)。
 なお、少額免除基準が2,000万円以下(現行:1,000万円以下)に拡充。
(2)租税回避リスクの低い外国子会社に、所得を「能動/受動」に分類する事務作業が発生しないよう、税負担率20%以上である外国子会社は、会社単位の合算課税の適用を免除。
(3)明らかに経済実体がなく受動的所得のみしか得ていない外国子会社については、税負担率が30%未満の場合は、所得の全額を日本の親会社の所得に合算する(会社単位の合算)。
 この改正の適用は、平成30年4月1日開始する事業年度からです。

H29.1.16

平成29年度税制改正 法人課税編(NO2-2)

 今回は、役員給与等の改正を中心に幾つかの改正項目を概観していきます。

●役員給与等について見直し
(1)利益連動給与について、改正案では現行の利益指標に株価等の指標(業績連動指標)を追加、また、計測期間も単年度指標から複数年度指標に拡大しています。
 これを受けて、業績連動指標に基づく一定の株式数の交付を給与に加えています。
(2)退職給与で利益等の指標を基礎として算定されるもののうち一定の要件を満たさないものは、その全額を損金不算入とし、これにあわせて、利益連動給与について、指標の対象が複数年になることを受け、業績目標の達成度合いに応じた新株予約権の一定数の交付を給与に加えています。
 なお、損金算入の手続に関しては、一定の時期に確定した金銭又は株式数を交付する給与は、事前確定の届出が必要。一方、複数年の期間に連動した金銭、株式等を交付する給与は、報酬委員会等の決定や有価証券報告書での開示等が必要です。
(3)譲渡制限付株式等について、改正案では、完全子会社以外の子会社役員も付与の対象に加えています。また、非居住者である役員についても損金算入を可としています。
(4)定期同額給与の範囲について、改正案では、税及び社会保険料の源泉徴収等の後の金額を定期同額の範囲に加え、柔軟な対応に改めています。
 上記改正の適用は、退職給与、譲渡制限付株式及び新株予約権に係る部分は平成29年10月1日以後、その他の部分は同年4月1日以後に支給又は交付の決議(その決議がない場合、その支給又は交付)をする給与からです。

●中核企業向け投資促進税制の創設
 事業主が地域中核事業計画(仮称)を策定(都道府県の認定要)し、高い先進性を有すること(国の認定要)を条件に、機械及び備品等を取得した場合、特別償却40%(税額控除4%)、建物等では20%(税額控除2%)の特例措置が新設されています。

●中小企業投資促進税制上乗せ措置
 生産性向上設備等に係る即時償却等については、中小企業経営強化税制と改組し、経営力向上計画の認定を条件に、対象設備を拡充し、一定の器具備品及び建物付属設備が追加されています。
 適用期限は、平成29年4月1日から平成31年3月31日までです。

H29.1.13

平成29年度税制改正 納税環境整備編

 円滑な申告・納税のための環境整備に関する主な改正項目は、次のとおりです。

●国税犯則調査手続等の見直し
 国税犯則調査は、通常、国税局査察部が所得税や法人税の脱税等に対して行う査察調査で、刑事責任を追及すべき事案と判断した場合には検察官に告発をも行います。
今回の改正では、(1)証拠の実効性を高めるため、電磁的記録に係る記録媒体の差押え、サーバー保管の自己作成データの差押え、プロバイダー等に通信履歴の保全の要請等、その執行方法及び法整備がなされました。
また、(2)現行法では、日没から日の出までの間の強制調査はできませんが、許可状に夜間でも執行できる記載があれば、日没後でも臨検等を開始することができるとしています。
 上記の改正は、平成30年4月1日からの施行となっています。

●士業法人の第二次納税義務
 士業法人は、「合名会社又は合資会社」に該当しないため、その無限責任社員に対して第二次納税義務を賦課することはできませんでした。
今回の改正で、税理士法人等の社員に対しても、第二次納税義務が賦課できるよう整備しました。
改正の適用は、平成30年1月1日以後に滞納となった国税・地方税です。

●各税共通関係
1.異動届出書等の提出先に関しては、納税地等の異動前の所轄税務署長に提出することで足りるとしました。
 所得税の納税地の変更、給与支払事務所等の移転、連結子法人の本店移転の異動届出書についても同様です。
2.法人の設立届書等について、登記事項証明書の添付は不要としました。
3.外国税額控除及び研究開発の税額控除について、所定の要件を充足することで、税務署長が増額更正をする場合において連動(現行:更正の請求)して税額控除額が増加できるようにしました。
4.法人税の申告期限については、会計監査人を置いている場合で、かつ、一定の要件を満たす場合には、6月を超えない範囲で申告期限の延長を認める改正がなされています。
 上記改正の適用時期は、大綱では明らかにされていません。

H29.1.12

平成29年度税制改正 資産課税編

 資産課税の主な改正は、次の通りです。
●財産評価の適正化
1.取引相場のない株式評価の見直し
 ①類似業種比準方式による株価の算出方法について、(イ)類似業種の上場会社の株価については、2年間の平均を選択可能に、(ロ)比準要素である、配当金額、利益金額及び簿価純資産価額に連結決算を反映したものとする、(ハ)比準要素のウエイトを「1:1:1」(現行1:3:1)に、(ニ)会社規模の判定基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大する。
 ②株式保有特定会社の判定基準に、新株予約権付社債を加える。

2.広大地評価の見直し
 面積に応じて比例的に減額する現行の評価方法から、各土地の個性に応じて面積・形状(奥行、不整形)等に基づき評価する方法に見直し、適用要件を明確化する。 
 この改正は、上記1の①は平成29年1月1日以後、1の②と2は、平成30年1月1日以後に相続等により取得した財産の評価からの適用です。

●相続税等(贈与)の納税義務の見直し
 相続税等の納税義務の範囲については、相続人等又は被相続人等の住所要件が10年(現行:5年)以内に改正、②住所が一時的である外国人同士の相続等については、国外財産を課税対象にしない、③日本に住所及び国籍を有しない相続人等が、過去10年以内に日本に住所を有していた被相続人等から相続等により取得した国外財産は課税対象とする(短期滞在の外国人を除く)。
 この改正は、平成29年4月1日以後の相続等からの適用です。

●医療法人の持分放棄と贈与課税
 持分あり医療法人が持分なし医療法人への移行計画の認定を受け、一定の要件を充足した場合、当該医療法人の持分放棄に伴う経済的利益には贈与税を課さない、とする改正がなされています。適用については、所要の措置を講じた後となっています。

●タワマン課税の見直し
 居住用超高層建築物(タワマン)に課す固定資産税については、階層別専有床面積補正率(1階を100として階が1つ増すごとに39分の10を加えた数値)を適用した課税に改められます。
 改正は、平成30年度(平成29年4月1日前に売買契約が締結されたものを除く)から新たに課税されるものに適用されます。

H29.1.11

平成29年度税制改正 個人所得課税編

平成28年12月8日、平成29年度税制改正大綱が発表されました。先ず、「個人所得課税」について、主な改正項目につき、内容を概観してみます。
●配偶者控除等の見直し
 配偶者控除については、合計所得金額1,000万円を超える居住者については、適用できないこととし、居住者の合計所得金額が900万円を超えると38万円(老人配偶者48万円)の控除額が徐々に縮減し、1,000万円超ではゼロになる、3段階で逓減する仕組みになっています。
 また、配偶者特別控除ですが、配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下でも9段階で逓減しながら控除が受けられますが、上記の居住者の合計所得金額に応じて控除額も変わってきます。
 例えば、居住者の合計所得金額900万円以下で配偶者の合計所得金額が95万円超100万円以下であれば26万円の控除、となっています。
 この改正は、平成30年分以後の所得税からの適用となっています。

●積立型の少額投資NISAの創設
 制度の内容は、積立投資限度額年間40万円、期間20年、その間の配当、譲渡等は非課税、但し、譲渡損はないものとする、です。現行のNISAとは選択適用となっています。
 上記改正は、平成31年分以後の所得税からの適用となっています。

●リフォーム減税の拡充
 既存住宅(特定の増改築等含む)の耐震改修・省エネ改修に加え、一定の耐久性向上改修工事を実施した場合、ローンの利用による減税額(税額控除)は最大62.5万円、自己の資金による場合は最大50万円となる措置が講じられています。
 また、固定資産税(工事翌年度)も3分の2減額になります。
 一定の耐久性向上改修工事とは、50万円を超える工事で、①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、⑥基礎若しくは⑦地盤に関する劣化対策工事又は給排水管等に関する維持管理・更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであること等、です。
 この改正は、増改築等をした居住用家屋を平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に自己の居住用に供した場合に適用となっています

H29.1.10

平成29年度税制改正 法人課税編(NO2-1)

 法人課税における主な改正項目は、次のとおりです。
●試験研究費の税額控除の拡充
 改正では、税額控除額は、前年からの試験研究費の増額が大きいほど税額控除率も大きくなっています。
 中小企業の場合は、税額控除率が費用の12%分とされていましたが、改正では12%~17%分の控除率となっています。
 一方、大企業は、8%~10%分だった税額控除率が6%~14%分に改正されています。
 また、試験研究費の範囲には、「サービスの開発」も対象になっています。
●所得拡大促進税制の拡充
 企業規模にかかわらず、給与支給総額が前年を上回るなどの所定の要件を満たすことで、賃上げ総額の10%分を減税(法人税から控除)してきましたが、より一層の賃上げを促す観点から、改正では、中小企業の場合、前年に比べて2%以上の賃上げを実施した場合には22%分の税額控除、一方、大企業でも、前年対比2%以上の賃上げを実施した場合には10%から12%分と拡充しています。ただ、賃上げが2%に満たない大企業は、現行10%分の税額控除も受けられません。
●組織再編税制の見直し
現行税制では、スピンオフ(特定の事業や子会社を企業グループから切り出して独立した会社とする)に際して、①法人サイドにおいては「譲渡損益(移転資産又は子会社株式)課税」、②個人サイドでは「配当(みなし配当含む)課税」が発生することから、新しい産業への機動的な事業再編ができませんでした。
 そこで、今回の改正では、分割、現物分配にあたって、分割法人又は現物分配法人の株主の持株数に応じて、それぞれ、分割承継法人の株式又は子会社のみが交付される場合、その他所定の要件を満たせば課税関係が生じないようにしました。
 以上の改正は、平成29年4月1日開始事業年度からの適用です。
●中小企業の軽減税率に関して
 年800万円以下の所得金額の税率(本則19%、租特15%)は2年間延長です。
 なお、中小企業であっても、平均所得金額(3年間)が年15億円を超える事業年度の適用は停止するとしています。
 この改正は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度からの適用です。

H29.1.6

10年で年金受給権ができる

新たに64万人が年金受給
 年金の受給資格を得るのに必要な保険料の納付期間を25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が成立しました。老齢基礎年金の納付期間は現在の25年から10年に短縮されました。平成29年8月から施行され10月に第1回目が支払われます。
 日本では「無年金者」(無年金見込者含む)は118万人と推計されています。65歳以上の無年金者の約6割は保険料納付期間が10年未満です。平成29年8月以降は25年の年金受給資格期間を充たさない無年金の高齢者も10年以上の加入期間(免除・猶予・カラ期間を含む)があれば保険料を納めた期間に応じた年金が支給されることになります。

外国の年金加入期間
 外国での年金受給資格期間はアメリカの約10年、イギリスでは一定以上の収入の人が加入する事となっており加入期間は特になく、ドイツの加入期間は5年、フランスやスウェーデンは加入期間の決まりはありません。今後少子高齢化の日本では労働力人口が減少し、保険料収入も縮小すると考えられます。そして他国からの外国人の受け入れ人数が増えて行くものと考えられます。他国の方が日本で働き、本国に戻って65歳から日本から年金が受けられたら魅力的でしょう。

いくら受給できるか
 新たに受給できるようになるのは保険料を払った期間が10年以上25年未満の人で、過去にさかのぼっては受給できません。
 年金額は保険料の納付期間に応じて支払われます。国民年金の場合は加入期間が10年で月約1万6千円、20年で約3万2千円、40年では満額の6万5千円となっており、10年で支給された額では生活費の補てん程度にしかなりません。また、10年で受給ができるなら満額まで納めなくともよいと考える人も出てきそうです。
 手続は加入が10年以上あった方は年金の請求書が送られてきますので、記入押印して年金事務所に提出します。しかし保険料免除やカラ期間を含めて10年以上になる方には請求書は送られてこないので自身でカラ期間の確認を行い、請求する事が必要です。

H29.1.5

V字回復のススメ ~MBA的思考の裏技~

ゴーン氏「V字回復、もちろんできる」
 燃費試験の不正問題が発覚し、壊滅的打撃を受けた三菱自動車ですが、日産自動車が三菱自動車株の34%を取得し、救済に乗り出すこととなりました。
 カルロス・ゴーン氏は、1999年フランスのルノー社副社長から日産自動車の建て直しにCOO(最高執行責任者)として着任し、「日産リバイバルプラン」でリストラや工場閉鎖、購買コストの削減などの大胆な改革を実行し、長年業績の低迷に苦しんだ日産を、強力な指導力でV字回復に導きました。そのゴーン氏が、三菱自動車を「経営体制やシナジーでV字回復させる」と宣言しています。

V字回復とは
 V字回復とは、字のごとく落ち込んだ利益が劇的に回復する様を表しています。回復する前の落ち込みが大きければ大きいほど、V字回復の成果も大きく見えます。
 MBAの会計学の教科書では初歩的な手段として、ビッグバス効果という手法を学びます。ビッグバスとはBig bath(大きな風呂)という意であり、企業に蓄積した損失を洗い流すというニュアンスがあります。米国では、経営者が交代する際に、前経営者のもとで蓄積した損失に将来のリストラ費用を上乗せして計上することで、翌期の費用を圧縮し、収益が劇的に改善したように見せるために使われることがある手法です。ゴーン氏のV字回復は、まさにビッグバス効果と言えます。

V字回復のススメ
 税務会計に縛られずに会計計上する(=見積損失を税務申告書で否認加算する)場合、使えない資産の評価損での切り下げやリストラ費用を過大計上する”taking a bath”という手法で、V字回復を演出することが可能となります。
 ただし、この演出は通常1度限りであり、いつも使えるものではありません。継続的な好業績の維持には別の経営手腕が必要です。
 とはいえ、再建屋として経営招致された場合や、急な代替わりで一気に信頼をつかまなければならないなどのひっ迫した事情がある場合には、外科的裏ワザとしておススメといえます。