港区 税理士法人 大沢会計
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2017年5月

2017/05/31

H29.5.31

権威と権力

 目標管理制度は経営戦略目標を達成する業績管理制度であり、そのために、自社の組織と社員を主体的・挑戦的に動かすマネジメントシステムともなっています。
 その推進プロセスでは、経営者・管理者の権威や権力が使われることになりますが、それらの特質を知らずに使うことは、目標達成の足を引っ張ることになりかねません。

“権威と権力の特質”
 権威と権力の違いは次の通りです。
権威 その人の過去の実績や振る舞いから、自然に身に付き、人格からにじみ出るもので、他者の信頼を得ることが出来る。全ての経営者・管理者に備わっているとは限らない。
権力 ポストに付随する外から与えられた力で、他者を従わせる強制力を持つ。経営者・管理者に必ずある。
 したがって、経営者・管理者が目標管理制度の目標設定、推進プロセスでマネジメントを行なう時、権威的であれば、所属組織の社員は、その指導・支援に積極的に従い、期待に応えて活躍してくれます。
 逆に権力を前面に出して、指導しようとすれば、反発を招きかねません。
 経営者・管理者が、自らの努力で備えた権威を持たず、ポストに与えられた権力で強制して組織・社員を支配する目標設定、目標達成を図れば、その主体性や挑戦意欲が失われてしまいます。
反対に権威が機能し、権力はその背後にある組織では、社員が納得し、進んで目標達成に挑戦する強い組織になるでしょう。

経営者・管理者の留意点
 経営者・管理者が、権威を重視し、自らを省みて権威を高めるには、次のような努力を継続することが必要です。
①自分に備わった権威とは何か、その権威は、どのような努力と実績によって備わったのか、を毎年、目標設定の前段階の一定時期に自己評価する。
②年度の目標設定や達成プロセスのマネジメントで自分が持つ権威をどのように生かすかをマネジメント目標として設定し、実行する。
③経営者は、管理者研修などで、管理者が権威の涵養や活用について、相互に話し合い、相互啓発、自己啓発を行う機会を設けるなどの支援を行う。

H29.5.30

「働き方改革実行計画」とは

 この度、政府は働き方の見直しを進める「働き方改革実行計画案」を公表しました。長時間労働を罰則付きで規制する事や同一労働同一賃金等の導入が盛り込まれています。政府は今年の国会に関連法の政府案を提出し2019年からの実現を目指しています。その概要を見てみます。

9分野で改革の方向性を明示
①非正規雇用の処遇改善……同一労働同一賃金を導入、非正規雇用労働者の正社員化等キャリアアップの推進
②賃金引き上げと労働生産性向上……最低賃金を年率3%程度引き上げ時給1000円に。賃上げしやすい生産性向上支援等
③長時間労働の是正……罰則付きの残業上限を設定、インターバル規制の導入、健康で働きやすい職場環境作り
④柔軟な働き方がしやすい環境整備、雇用型、非雇用型テレワークの拡大、兼業、副業の推進
⑤子育て、介護等と仕事の両立、障害者就業支援……病気治療、介護、子育てと仕事の両立支援
⑥外国人材の受け入れ……外国人受け入れの環境整備を政府横断で総合的に検討
⑦女性と若者の活躍……学び直しの機会拡大、パートタイマーが就業調整を意識しない環境整備、正社員女性の復職支援
⑧就職、再就職支援……転職者受け入れ企業の支援と職業能力、職場情報の見える化
⑨高齢者の就業促進……65歳以上の継続雇用や定年延長の支援と高齢者のマッチング支援

実行計画の柱
 実行計画は多岐にわたっていますが、討議で重要とされたのは非正規労働者の処遇改善や長時間労働是正の事項。長時間労働の是正では残業時間は「原則が月45時間、年間で360時間」、これは今まで通りですが労使協定でも年間720時間までとし、忙しい月は100時間未満までを容認すると言う方針を出しています。
 実際にこの計画を実行してゆくには具体的な方策が必要ですが19項目からなる対応策が示されています。
 一億総活躍の横断的課題と位置づけられ、平成29年度から平成38年度の10年間で実行するとしています。

H29.5.29

仮想通貨で月利8%

ビットコインなどの仮想通貨
 仮想通貨は世界に600種類以上あり、その中の一つであるビットコインの時価総額は2兆円を超え、仮想通貨全体の7割を占めています。
 3年前には「MtGox(マウントゴックス)」によるビットコイン横領事件があり、仮想通貨の世界は金融詐欺の世界なのではないかと疑心暗鬼になる人が多い中で、いつのまにか仮想通貨は、IT(情報技術)と金融を融合した「フィンテック」の象徴になっており、今や日本の銀行や証券会社も続々と参入し始めております。

仮想通貨はモノとの政府見解だった
 昨年の今頃までは、政府の見解は、ビットコインには強制通用力がなく、取引の相手方が受け入れる限りで対価として利用可能なものなので、当然「貨幣」には該当せず、有価証券でもなく、消費税法上特に規定がないので、モノの売買として課税対象となる、ということでしたが、昨年の通常国会の終盤で資金決済法の改正があり、『仮想通貨』の定義がなされ、他の支払手段と同様のものであることが規定されました。

税制改正で消費税非課税(実質不課税)
 これを承けて今年度の税制改正として消費税法施行令が改正され、仮想通貨を現金や小切手に類する支払手段の仲間に含めるとの規定にしました。この改正政令の施行日は、平成29年7月1日です。
 6月30日までに買った仮想通貨は、モノの購入扱いなので課税仕入です。それを6月末までに代金の決済として使用したら、代金についての代物弁済として課税売上となります。7月1日以降に代金決済に使用したら、カード決済と同じ扱いになり、実質的には消費税課税対象外取引になります。

今だけの消費税節税策プラン
 そうなると、6月30日に仮想通貨1億800万円を手に入れて、翌日7月1日にそれを使用処分してしまったら、1日で800万円の消費税節税ができることになります。
 そんなことできるわけがない、そのシナリオには絶対アナがあり、そのアナに気付いてないだけなのではないか、と勘ぐってみたくなります。
 でも、税制改正大綱や前記政令は、こういう取組みを想定していて、100万円ぐらいの取組みなら少額不追及、1ケ月以上前からの保有なら是認、と書いています。

H29.5.26

完全支配関係の成立 株式の数か議決権の数か

 平成22年度の税制改正でグループ法人税が導入され、完全支配関係の確認が不可欠となりました。
 例えば、適格現物分配、繰越欠損金の引継、受取配当金の益金不算入、受贈益・寄付金の損益金不算入、自己株式の譲渡損益の処理、譲渡損益調整資産の譲渡損益額の課税繰延べ等は、その適用にあたっては完全支配関係の成立が前提です。

完全支配関係とは
 条文は、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する一定のみなす関係(以下、当事者間の完全支配関係)又は一の者との間に当事者間の完全支配関係がある法人相互の関係をいうものと定義しています。
(1)当事者間の完全支配関係について
 ①一の者(法人A)と直接完全支配関係がある法人……法人Bと法人C
 ②一の者(法人A)と完全支配関係があるものとみなされる法人(間接保有でみなす関係)……法人Dと法人E
 よって、法人B、C、D及びEはいずれも一の者(法人A)と「当事者間の完全支配関係」が成立。
(2)法人相互間の完全支配関係について
   法人B、C、D及びEの各法人は、それぞれの間に「法人相互間の完全支配関係」が成立。

議決権株式の全部の保有
 法人の議決権の全部を保有し、経営に係る意思決定権を完全に掌握している状況にある場合、完全支配関係が成立しているのでは、と考える向きもありますが、結論は否です。
 理由は、完全支配関係に該当するか否かは、あくまで、保有する発行済株式等の数により判定することになっているからです

H29.5.25

長時間労働対策

 過労死などを引き起こす長時間労働が問題視されています。
 それは、労働問題であるばかりでなく、働きにくい企業として、人材確保の障害となり、また企業の労働生産性に起因する収益力や、我が国の国際的に見た低生産性による国際競争力の問題に及びます。ちなみに、2015年に先進国中で労働時間が長い一方、労働生産性はOECD加盟35か国中22位、米国の6割強に過ぎません。

長時間労働が起こる原因
 「長時間労働」が生じる原因は一言で言えば、企業における「働き方の効率の低さ」にあります。
 特に知識集約型企業においては、「働く時間の長さ」で報酬が決まる賃金制度の下では、「残業の増加と働き方の効率の低さ」を助長しやすいと言えましょう。
 また、労働集約型企業では、工程改善が不十分であること、サービス産業では、サービス業務の内容や手数のかけ方の見直しが不十分であることが原因と見られます。

長時間労働対策の要点
 「長時間労働」の対策には、よく“意識改革”が不可欠であると言われています。
 これは、“政労使一体の意識改革”を指していますが、“効率よく働く意識”を高め、労働生産性の向上(時間当たり付加価値)などの成果に結びつけるには、個別企業レベルでの具体的な施策が必要です。中でも、目標管理制度の活用は効果的です。

[目標管理制度の活用による働き方改革]
トップ・・・企業戦略として、全体の生産性向上
      目標設定。評価基準の設定、公表⇒生産性向上の意義(競争力向上、人材確保等)を徹底
管理者・・・所管部署の生産性向上目標設定⇒プロセス改善の重点業務を示す
担当者・・・担当業務の生産性向上目標設定⇒プロセス改善の創意工夫

経営者・管理者の留意点
 一般社員がプロセス改善の創意工夫を行うための着眼点や手法の提供、社員相互に改善を競い合う施策展開・場づくりなどのマネジメントを重視しましょう。

H29.5.24

医療費が高額になったら

高額療養費限度額適用認定申請
 入院を伴うようなけがや病気の療養や度々の通院で一定額以上の医療費の自己負担をしなければならないような時に、事前に健康保険限度額適用認定証を申請しておくと病院の窓口では限度額までの支払いで済みます。
 協会健保や健康保険組合、国保なら市区町村役場に申請しておくと保険者が所得区分を認定し「限度額適用認定証」が交付されます。その認定証と健康保険証を医療機関に提示します。これが無いと高額医療費の限度額を超えた費用も一時的に自己負担をしておかなくてはなりません。働けない時に自己負担の医療費が増えるのは大変な事もあるでしょう。そのような事態をカバーするものです。

自己負担額は限度額まで
 この認定証は入院だけでなく通院でも利用できます。一度申請しておくと申請を受け付けた日の属する月の1日から最長で1年間が有効期間となります。
 この認定証を使うと所得区分に応じて自己負担限度額が決まります。自己負担限度額は1日から月末の1ヶ月毎に判断され医療機関毎、入院、外来、保険薬局等各々毎の取り扱いとなります。

高額療養費の自己負担額
 高額療養費は1ヶ月の間の医療費の自己負担額の上限が決められています。限度額区分は下記のようになっています。

区分ア 標準報酬月額83万円以上
252,600円+(総医療費―842,000円)×1%
区分イ 標準報酬月額53万円から79万円
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
区分ウ 標準報酬月額28万円から50万円
80,100円+(総医療費―267,000円)×1%
区分エ 標準報酬月額26万円以下 
57,600円
区分オ 被保険者の市区町村民税が非課税
35,400円
 診療を受けた日の1年に3ヶ月以上の高額療養費の支給を受けていた時は4ヶ月目から「多数該当」となり、さらに支払い限度額が軽減されます。

H29.5.23

国犯法廃止、通則法に編入 扇動罪、それって何!

 平成29年度税制改正で、国税犯則取締法(以下、国犯法〈こっぱんほう〉)は廃止され、国税通則法(以下、通則法)に編入されました。
 なお、施行は、平成30年4月1日からです。
 国犯法は、明治23年に創設され、明治33年に全部改正(ほぼ現在のかたちとなる)、そして、戦後、昭和23年に改正され現在に至っています。条文は、旧仮名遣いのカタカナ表記で、まさに戦前を色濃く残しています。
 この国犯法は、いわゆるマルサの強制捜査の法的根拠となるもので、その手続き及び権限等を定めたものです。

扇動罪なるもの
 国犯法第22条1項に、「扇動罪」なる規定があります。この条文、戦前の「治安維持法」をほうふつさせますが、伝家の宝刀のようなもので、戦後、抜かれたこと(適用されたこと)がないのでは、と思いきや、何と、昭和27年にこの扇動罪が適用された事実がありました。驚きです。沼津市で起きた事件で、その概要はこうです。
 平和のために再軍備の徴税に反対しよう、というビラを新聞紙に織り込んだり、喫茶店のテーブル席に置いたりしたのが発端でした。言論の自由を保障した憲法に反するとして最高裁まで争ったのですが、以下のように判示され敗訴しました。
 国犯法第22条1項にいう扇動とは、他人に対して、その行為を実行する決意を生じせしめるような、またはその決意を助長させるような刺激を与えることをいい、この扇動罪はそのような行為があったことによってただちに成立し、必ずしも、相手方においてその結果を生じたこと等の認識又は了解することを必要としない。

通則法への編入
 通則法においては、新たに第11章「犯則事件の調査及び処分」が設けられ、ここに国犯法が編入されました。条文をめくっていっても、この第11章には「扇動罪」なる条文が見当たりませんでした。現況の納税環境下にあっては、このような「扇動罪」なる条文は不要との観点から削除したのか、と思いきや、何と、現行法第10章「罰則」第126条第1項に編入されていました。
 この扇動罪、ほとんど議論のないまま通則法に編入されたことに、何か違和感を覚えます。

H29.5.22

財団株主 安定株主か社会貢献か

 最近、上場会社で財団株主がじわり増加していると新聞・専門雑誌等が取り上げています。この財団ですが、公益財団・社団や非営利型の一般財団・社団(以下、財団等)で、多くは創業家一族が主体となって運営されています。

財団等の株主作りの手法
 報道によれば、多くの事例は、会社が保有している自社株の数パーセントを創業家が理事長を務める財団に1株1円で割当てる手法のようです。その場合、1円は有利発行になるため、株主総会での特別決議が必要となります。
 例えば、一般財団法人小林製薬青い鳥財団の設立にあたっての内容はこうです。
 市場では1株5,000円相当の株を1円で850,000株割り当てるものです。通常の価額での割当てであれば、42億5,000万円ですが、財団等は、なんと850,000円で取得できる、というものです。
 もちろん、この手法に既存株主が必ずしも賛成というわけではありません。財団による社会貢献もありますが、一方で財団は会社の大株主として存在し、経営方針の決定にも大きな影響を及ぼす存在にもなっています。機関投資家からは、これでは財団本来の役割より、創業家の支配又は会社の安定株主対策の隠れ蓑になっているのでは、との危惧の声も聞かれます。

税務上の取扱
 仮に、1株5,000円株を1円で発行会社が保有する自社株を財団等以外の法人に割当てをした場合の課税関係ですが、割当てを決議した会社にとっては、自社株の処分は資本等取引にあたりますので、たとえ、1円で割り当てても課税関係は生じません。一方、1円で割当てを受けた法人は、1円と5,000円の差額、4,999円が受贈益となり法人税が課されることになります。
 しかし、割当てを受けた法人が財団であれば、財団は収益事業(34業種)から生ずる所得のみに対して法人税が課されることから、このような株式の引受け行為は、収益事業にはあたらないので課税関係は生じないことになります。
 また、財団等の運営原資は、株式の配当によってなされますが、配当金も収益事業にあたりませんので課税は生じません。
 なお、公益以外の財団等にあっては、配当金は源泉徴収され、かつ、すべて非収益事業であれば、申告義務がありませんので、源泉税は取られたままです。

H29.5.19

前期損益修正の取扱い 会計と税務の違い

 過年度において、正常に収益として益金の額に算入された売上高や資産の譲渡等について、その後の事業年度において契約の解除や取消し、返品、値引き等といった事実が生じた場合、一般論として、過年度に遡って、計上した収益の額を修正しなければ適正な期間損益計算及び課税所得は計算できません。

会計と税務の共通
 民法上の考え方からすれば、契約の解除や取消し等があった場合には、当初に遡ってその契約の効力を失うことになります。
 しかし、会計も税務も、いわゆる「継続企業の原則」に基づき、このような後発的な事由によって生じた損失については、過去の事業年度に遡って修正することはしないで、原則、その解除や取消し等の事実が生じた事業年度に「前期損益修正損」として計上し、税務も当該修正損は損金の額に算入されます。

会計と税務の違い
 では、過年度の売上高が過大、または外注費等の計上漏れがその後の事業年度において発覚した場合、会計も税務も上記の後発的事由と同様に、その発覚した事業年度において、売上高の過大部分及び費用の過少部分を修正し、前期損益修正損として計上、税務も損金の額に算入されるか、です。
 このような場合においては、会計は前期損益修正損として、発覚したその事業年度の損失として計上しますが、税務は、あくまでも過年度に遡って、益金の額を減額、また、損金の額を増額修正し、その事実のあった事業年度の課税所得の金額を再計算します。したがって、会計の前期損益修正損は、税務上は損金の額には算入されません。原則、「更正の請求」以外に救済の余地はないことになります。

課税所得計算の原則
 法人税法は、各事業年度の課税所得を計算します。したがって、後発的事由に基づかないもの、例えば、当初申告に係る益金の額又は損金の額が事実に反している場合や事実を失念している場合、さらには、その計算が事実を誤認してなされている場合には、常に当初申告に遡って課税所得を訂正します。これが原則であり、その趣旨は恣意性の排除、公平な課税所得の計算です。
 なお、この原則は、個人の事業所得や不動産所得で継続的な事業から生ずる所得についても適用されると考えられています。

H29.5.18

女性の活躍推進

我が国の女性就業者数は、総務省の「労働力調査」によると、2015年平均で前年比25万人増加して2,754万人となり、就業率では3年連続上昇しました。これは女性の就業意欲が高まっていることや女性の就労促進を図る法整備などを背景に、15歳~64歳の就業率が過去最高を更新したことによります。

「M字カーブ」の変化
周知のように女性の年齢階級別就業率は、結婚・出産を機に一旦離職し、子育てが一段落した後に再び就業することが多いため、「M字カーブ」を描くことが知られていますが、近年ではその形状が変化を見せています。
 すなわち、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の制定・改正、育児・介護休業制度や短時間勤務制度の拡充などに加え、企業がそれらの制度を積極的に活用できる環境づくりに努力した結果、「M字カーブ」の底であった30~34歳層の就業率が上昇
し、さらに30~39歳へと底上げが広がっていることによります。

女性の管理職登用状況
 総務省「労働力調査」によると、2015年平均の管理職に占める女性の割合は12.5%と主要先進国に比較して最も低い水準にと
どまっています。
主要先進国における就業者・管理職に占める女性比率(%)
主要先進国 就業者比率 管理職比率
日本 43.3 12.5
米国 46.9 43.7
英国 46.7 35.3
ドイツ 46.6 29.0
フランス 48.2 32.7
 その原因として、日本では仕事と育児の両立は進んでいるものの、出産・育児等に伴うキャリア形成の遅れが取り戻せないこと、長時間労働を前提とした働き方が改善されないことなどが挙げられます。

経営者・人事担当者の留意点
 女性の活躍を推進するため、次の諸点に留意することをお勧めします。
① 企業内保育施設・女性のキャリア形成制度整備等、女性社員が安心して働ける環境づくり
② 意欲と能力のある女性社員がキャリア形成と就労しやすい柔軟な時間管理・役割分担制度等の整備

H29.5.17

非課税の転嫁は可能か

非課税では転嫁が前提というのが制度
 前段階税額控除型付加価値税である消費税は、仕入税額控除によって課税の累積を排除することを構造的原理としています。しかし、非課税取引については前段階税額の控除を許さず、自らの努力で価格に転嫁することによって、その負担を回避せよ、との制度となっています。
 でも、その転嫁を政府が必ずしも保証しているわけではありません。

価格に含ませる転嫁はできているか
 非課税の物やサービスの代価には前段階消費税が転嫁されて含まれているのだという解説は正しいでしょうか。
 そうであるなら、土地の譲渡価格は消費税の税率アップに連動して価格上昇するはずですが、逆に税率アップ時には下落となることを予想して政策的配慮をしています。預貯金や借入金の利子の率も、消費税の税率のアップに連動している形跡があるかと言えば、無です。
 居住用住宅提供の大家さんたちも、実際上、価格への転嫁をできていません。

転嫁が保証されているところはあるか
 文科省は、学校の教育費非課税の一方、学校が負担する仕入消費税は、仕入税額控除対象外であるので、税率アップ時には授業料等に転嫁せざるを得なくなる、と言っています。これは政府支援のケースです。
 非課税の社会保険診療報酬・介護保険適用報酬などは、消費税率のアップに連動して報酬改定され、その資金源の健康保険料・介護保険料の料率の改定もなされています。これは政府保証のケースです。

消費税で損税が発生しているか否か
 日本医師会が、非課税による損税を自覚し、薬品仕入への値引き圧力を強くしたためか、日本医薬品卸売業連合会が「医療医薬品では消費税で損税は発生していません」というパンフレットを発行しています。
 それによると、医師報酬や薬局の薬価には、薬価の算定基礎である市場実勢価格に係る消費税相当額が上乗せされているとのことです。
 非課税のはずの医薬品に、消費税相当額を丸々上乗せしては、消費税非課税の制度的意味が何なのか、改めて考えさせられてしまいます。

H29.5.16

再就職が早期に決まったら 再就職手当の受給!

失業給付の日数が残って就職した時
 再就職手当は雇用保険の受給資格者が基本手当の受給資格決定を受けた後に早期に安定した職業に就き又は事業を開始した場合に支給され、より早く再就職を推進する為の制度です。
 再就職手当の支給を受けるには次の全ての要件を満たすことが必要です。
①基本手当の受給手続き後、7日間の待機期間満了後に就職又は事業を開始した事
②離職日の前日までの失業認定を受けた上で基本手当の支給日数が所定給付日数の3分の1以上である事
③離職した事業所に再び就職したものではない事、又離職した事業所と資本・資金・人事・取引面で密接な関係が無い事業所に就職した事
④受給資格にかかる離職理由により給付制限(基本手当が支給されない期間)がある人は、求職申し込みをしてから待機期間満了後1ヶ月の期間内はハローワーク又は職業紹介事業者の紹介によって就職したものである事
⑤1年を超えて勤務する事が確実である事
⑥原則として雇用保険の被保険者になっている事
⑦過去3年以内の就職について再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けていない事
⑧受給資格決定前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでない事

再就職手当の金額
 平成29年1月以降の再就職については受給できる金額が変更され給付率が高くなっています。又支給残日数45日以上の要件も廃止されています。
 受給額は所定給付日数の3分の1以上を残して就職した場合は支給残日数の60%、所定給付日数の3分の2以上を残して就職した場合は支給残日数の70%を基本手当日額に乗じた額が支給されます。
 再就職手当の支給申請は就職した日の翌日から1ヶ月以内に行います。申請書に再就職先の署名押印をしてもらい再就職手当調査書を添えて居住地管轄のハローワークに提出します。

H29.5.15

大家さんたちは消費税敗者

非課税事業者の消費税請求
大家さんが居住アパートの家賃に8%の消費税を上乗せしてきたら、それを拒否できるものなのでしょうか。
あるいは、単純な消費税の上乗せ請求ではなく、大家さんが負担した仕入消費税額分として6%を家賃に上乗せしてきたら、その消費税分を拒否できるのでしょうか。
 社宅などとして提供している場合に、転嫁拒否されたら、中小企業庁の転嫁Gメンは動いてくれるのでしょうか。

非課税と損税
 非課税の物・サービスの提供については消費税請求ができないとすれば、預り消費税はゼロで、ゼロから支払消費税を控除して計算されるマイナス消費税は還付されるべきですが、消費税法では還付されず、非課税事業者の負担するところとされています。従って、これは損税になります。
 しかし、課税当局はそのように考えてはいません。損税と解されるようなものが発生していたら、自由に決められる収入代金の値上げとして転嫁しているはず、との前提に立っています。

家賃非課税となったときの行政指導
 平成3年9月までは、居住用家賃についても消費税課税対象取引でした。
 課税対象だったものが非課税対象になったことによる家賃の変更がスムースに行われるよう建設省住宅局長の発遣文書があります。その文書は、課税額を非課税額に変更するに際し、当時の税率3%を減額するのではなく、その3%から、賃貸住宅経営のための必要な資材の購入及び役務の提供に係るコストに含まれる消費税相当額を控除して計算した額を減額すること、としています。

非課税にこそ転嫁が必要なのに
 平成3年の建設省住宅局長発遣文書はあまり知られないまま、非課税化による損税の発生を意識しないで、全国の大家さんたちは消費税として請求していた額を全額値下げしてしまっていました。大部分の大家さんは非課税化に伴い免税事業者にもなったので、非課税化はむしろ歓迎されました。
 その後、3%が5%になり、さらに8%になったときにも、前段階仕入消費税増加分を家賃の修正とする動きはなかったように思われます。非課税でも転嫁の努力をしないと消費税敗者になってしまいます。

H29.5.12

能力開発目標の設定

 目標管理制度において、能力開発目標は特に一般職社員に対して設定を、義務付けることが多いと言えます。
 能力の向上は業務目標の達成に役立つことは自明であり、中途採用者は別として、一般社員は能力開発の過程にあるからです。

能力開発体系の整備
 能力開発を効果的に進めるには、図に例示したような能力開発体系を整備しておくことが大切です。
 その基本となる「職種別・等級別能力要件は、例えば次のように設定します。

 営業企画職の能力要件例
等級             役割・期待貢献                       能力要件
上級企画職       顧客開拓のマーケティング総合企画     ・マーケティング4Pの専門知識(注)
                                           ・上級企画技術
中級企画職       4P別マーケティング企画             ・担当分野の専門知識
                                             ・中級企画技術
(注)マーケティング4Pとは、Product(商品政策)・Price(価格政策)・Place(販路政策)・Promotion(販売施策)

 生産職の能力要件例
等級             役割期待貢献          能力要件
上級生産職        ・商品全般            ・品質管理の体系知識
               ・品質管理            ・実験計画法の理論
               ・品質改善            ・実務知識
中級生産職        担当商品の品質管理     QC7つ道具の実務知識

 能力開発体系(例)
職種別・等級別能力要件

能力開発目標設定
↓ ↑
能力開発研修→能力発揮→発揮能力評価

能力開発の留意事項
 能力開発を効果的に進めるには、能力開発目標を設定した上で、知識・技術を習得するための適切な内部研修・外部研修を受講させ、実際に業務目標達成に活用させること、さらに、その活用状況を発揮能力として評価し、役割等級の昇級条件とすることが本人の意欲的な能力開発に役立ちます。

H29.5.11

ポイント制度を運用する側の
会計・税務・マーケティング

顧客囲い込み目的のマーケティングツール
“1回食事をするごとに1個スタンプがもらえて10個たまると1回分が無料”、チェーンの飲食店や商店街の小売店などでもよくある顧客囲い込みのためのマーケティングツールがポイント制度です。古くは紙のカードにハンコを押してくれるのが主流でした。昨今の家電量販店や航空会社のマイレージは、電磁的にポイントが付与・管理され、他社のポイントにも交換でき、疑似通貨ともいえる性格になっています。

ポイントの性格の違いによる収益計上
 日本の会計基準を決める企業会計基準委員会では、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」が行われ、昨年2月と4月に公表されています。
 そこでは、①実質的に値引き販売であるケース-大型家電ショップのポイント、②ポイント残高により将来何らかの景品に交換できるケース、③航空会社のマイレージ、④コンビニやスーパー、ドラッグストアでのポイントカードなど性格の違いに応じて、売上からの控除や、原価相当の費用の引き当てなどが論じられています。
 この議論は会計監査が必要な企業向けの話題ですので、説明はここでは省略します。

非電磁ポイントカードの会計・税務
 もし貴社で紙にスタンプを押すポイント制度を運用していて、自社以外にポイントの効果が及ばないような場合には、ポイントが規定の個数になるまでは費用の発生がないので、実際に引き換えられたとき(=例えば1食無料になった時)に会計上の費用認識をすれば十分ともいえます。
※実際に運用する場合には、規定の決め方で会計・税務の扱いが変わってきますので、必ず会計事務所に相談してください。

非電磁データのマーケティングへの活用
 本コラムで言いたいことは、データのマーケティングへの活用です。
 分析も手作業となりますが、その効果を図り、次の戦略につなげることができれば、ポイント制度が活きてきます。例えば男女や外見の年代別に何種類かの色に分ければ、名前や年齢記載を求めなくともマーケティングに使えます。蓄積されたデータを基に、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)を繰り返し、利益を積み上げて行きましょう。数字の検証は会計事務所にもサポートしてもらえば安心です。

H29.5.10

最近の転職事情

転職シーズンはいつ
 例年、年度替わりの3月・4月頃は年間で最も中途採用が多い時期です。その理由は事業年度が変わる事で多くの企業で新事業の開始や組織再編等が行われ異動したり退職したりする人も増え、それに伴い新規募集も増える時期だからです。新入社員研修が行われるのも4月が最も多い時期です。他に転職者が増える時期は夏季賞与の後や秋採用(10月)の前、冬季賞与の後の年始ころです。

転職市場も売り手市場
 転職市場は年々広がり続けています。日本経済新聞の記事によればリーマンショック後に大きく落ち込んだ転職者数は順調に回復し昨年7年ぶりに300万人の大台に乗ったそうです。
「DODA転職市場予測」によれば、今年上半期の求人数の増減見込みは11業種のうち「増加」が3業種、「緩やかに増加」が5業種、「横ばい」3業種との事です。
 転職の特徴として「離職後の給与の方が転職前より上がる」傾向がある事です。厚労省の「転職入職の賃金傾向」及び「雇用動向調査結果の概況」によれば、平成27年を境に「転職で給料増」の方が「転職で給料減」より上回り続けています。もう1つの特徴としては中年層以上の転職者が増加している事です。総務省の調査によれば昨年45歳から54歳の転職者は平成14年以降で最多の50万人もいると言う事です。

企業への影響
 このような転職事情の活性化は企業にも少なからぬ影響をもたらします。
 積極的に中途採用したい企業は、採用条件を上げて人材確保を考える為人件費のコスト増加にもなってきます。又、採用の予定が無い企業にとっても自社の従業員が良い待遇を求めて他へ流出しやすい時代でもあります。今は全体的に人手不足ですが、転職市場においても売り手市場は当分続きそうです。
 従業員が必要以上に不満をため込まず、モチベーションが下がらない態勢を保つための経営努力が求められると言えるのかもしれません。

H29.5.9

免税とは非課税なのか

免税事業者の消費税請求
 免税事業者は消費税を請求してよいのでしょうか。あるいは、取引の相手先が免税事業者だとしたら、消費税を上乗せした請求を拒否できるのでしょうか。
 中小企業庁は、公正取引委員会と合同で、中小企業・小規模事業者全体に対して広く消費税の転嫁拒否等に関する書面調査を実施しています。転嫁拒否等に対しては、転嫁Gメンという専門職を用意し、対応しています。
 転嫁拒否からの救済対象には、消費税の免税事業者も含まれると、書かれています。

免税なら益税、しかし非課税
 消費税は、売上先に請求した消費税から仕入れ先に支払った消費税を差し引いて納税することになっています。免税事業者が免除されるのは、いったん成立したその差引額分の納税義務の免除のように推測されます。その免除額は収益となり、いわゆる益税になります。
 しかし、裁判所・課税当局・多くの論者はそのようには考えません。納税義務者か否かの判定をする基準期間の課税売上高とは、課税事業者なら税込売上総額の100/108となるべきところ、基準期間で免税事業者だった場合には100/100になるとしています。そして、その理屈は、そもそも売上取引の対価に消費税は含まれていないからだ、ということです。法律上、免税と表現されてはいても、それは非課税のことなのだ、と解釈されています。

非課税だったら損税ではないか
 非課税の物・サービスについては消費税が含まれていないとすれば、中小企業庁と公正取引委員会とが合同で消費税の転嫁を応援してくれたとしても、預り消費税はゼロです。ゼロから支払消費税を控除して計算するとマイナス消費税が生じます。
 課税事業者ならマイナス消費税は還付されるべき金額です。しかし、免税事業者の場合は還付請求できません。そのまま、消費者と同じく自らの負担とすることになります。
 そうすると、これは損税になります。免税事業者には益税が発生している、というプロパガンダは誤っていることになります。特に、免税を人的非課税として捉える、裁判所・課税当局・多くの論者が免税=益税を言うとしたら、明らかな論理矛盾を犯していることになります。

H29.5.8

ミニ保険と生保控除

少額短期保険(ミニ保険)会社とは
 生保会社は金融庁長官の免許業者ですが、少額短期保険会社は財務局への登録制です。財務局登録業者のリストを見ていると、損保会社のほか、多くの有名な会社の名を冠した会社名が名を連ねています。
 10年前、保険業法改正に伴い、「少額短期保険」(ミニ保険)と呼ばれる保険商品が登場しました。ミニ保険は、少額短期保険会社が扱う保険商品で、少額短期保険会社は、金融庁財務局に現在、87事業者が登録されています。

ミニ保険のミニの内容
 ミニ保険の保険期間は1年~2年以内で、保障性商品の引受けのみを行う事業とされ、死亡保険、傷害疾病医療保険、重度障害保険、傷害死亡保険、損害保険など通常想定される保険のほか、低発生率保険と分類されるアイデア保険と言えるものを取り扱うとされています。
 ミニ保険の保険金額は少額に限定されており、低発生率保険の保険金限度額は1千万円、それ以外の各保険の保険金額にはそれぞれ保険限度額があり、その各加入保険の合計額として1千万円が上限とされています。

ミニ保険の生命保険料の生保控除
 ミニ保険会社は、生命保険も取り扱えることとなっていますが、ミニ保険会社との契約による生命保険料は、所得税法の生命保険料控除の対象とはならないので注意が必要です。
 所得税法上、生命保険料控除の対象となるのは、保険業法2条3項の生命保険会社又は同条8項の外国生命保険会社等との保険契約であることとされているからです。
 少額短期保険会社は、保険業法2条17・18項で規定されており、保険業法上、生命保険会社とは別の保険業として区分されているので、たとえ死亡保障のために交わした生命保険契約であっても、少額短期保険会社との保険契約は、所得税法の生命保険料控除の対象とはならないのです。

タックスアンサーでは
 国税庁のタックスアンサーでは、ミニ保険会社には触れずに、外国で契約した保険契約、保険期間5年未満の一般・介護保険、これらは生保控除の対象にならないと案内しています。
 なお、ミニ保険の生命保険金も相続税法での扱いは同じです。

H29.5.2

管理会計のススメ
機会損失・購入単価引下げvs在庫

自分の責務に忠実なこと≠会社全体の利益
 自分の担当する業務にとってプラスとなることをしても、それが必ずしも、会社全体の利益につながるわけではありません。

(1)機会損失を恐れすぎると…
「買いたいというお客さんが現れた時にすぐに売れるような体制でいたい」という営業マンの気持ちもわかります。しかしながら、営業マンが機会損失(=売れるのに商品がなくて販売を逃すこと)を恐れる気持ちが強くなり、あれもこれもと品揃えをしたくなると、結果として会社の在庫を増やしてしまいます。

(2)大量仕入れで単価を圧縮できた結果…
 仕入れの担当者は、いかによいものを安く調達するかに心をくだきます。大量に仕入れをすれば、1個当たりの仕入れの価格は小さくなります。しかしながら、コスト削減に力を注ぐあまり、往々にして、売れ残ってしまう在庫を増やしてしまう事態を引き起こしかねません。

なぜ「在庫=罪庫」といわれるのか?
 ものを買うと代金を支払わなければなりません。お金は先払いですが、売れるまでお金は入ってきません。仕入れの代金を借入金で支払っている場合には、その借入の利息も発生します。在庫が増えれば、倉庫代や在庫の管理費もかさみます。すなわち、在庫には「仕入れ代金の先払い+借入金利息+倉庫代+在庫管理費」がかかるのです。これが“在庫は罪庫”といわれる所以です。

会社全体を見渡すのが社長の仕事です
 社員は、それぞれ自分の担当する業務で成果を上げることが会社の利益につながると思い、懸命に頑張ります。しかしながら、それぞれの担当が良かれと思って行っていることが、会社全体にとってはマイナス方向に働く場合もあります。
 会社全体を見渡し、適宜軌道修正をして、会社全体としてプラス方向に働くよう導くのが社長の仕事です。

会計数字を生かす
 過剰在庫は悪と言われても必要な在庫は持っていなければなりません。適正在庫はどのように求めればよいのでしょうか?
 たとえば、在庫には在庫回転期間というものがあります。適正水準は、業界ごとに違います。同業種・同規模の他社の数字が参考となります。また、自社の過去の数字との比較も役立ちます。会計事務所の担当者に聞いてみましょう。

H29.5.1

管理会計のススメ
仕損じや売り損ないの損失評価は事業環境により異なる

同じ仕損じ・売り損ないでも評価額が違う

売価:700円/杯、材料費:400円/杯、人件費:
5万円/日、経費:5万円/日、生産能力:500杯/日、残った材料は翌日も使える。
Aさん:毎日売り切れの繁盛ラーメン店
Bさん:平均販売数350杯の丼もの食堂
①仕損じ
 客に注文の品を出す際、主人がうっかり手を滑らせてしまい、ひっくり返してしまいました。この損失はいくらと評価されるでしょうか?
<繁盛ラーメン店>
 その日の最大販売数は499杯となります。1人の売上がパーになり700円の損失です。
<売れ残りが出る丼もの食堂>
 1人分の材料費が無駄になっただけであり、350杯の販売は可能です。材料費の400円だけが損失となります。
②売り損ない
 客が店に入ろうとした時にたまたま通りかかった散歩中の犬に吠えられ帰ってしまいました。客を逃した損失はいくらでしょうか?
<繁盛ラーメン店>
 1人の客を逃しても501人目の客で売上を確保できるので、売り損ないの損失はゼロです。
<売れ残りの出る丼もの食堂>
 350人来るはずだった客が349人に減ります。儲け損ないは、1人分の粗利益(=売価700円-材料費400年)の300円が損失と評価されます。

損失評価から考える利益増加のための対策
 AさんもBさんも同じ理由で仕損じや売り損ないが発生したにもかかわらず、それぞれの損失額は違っています。
(注)この損失の評価額は、管理会計的発想から算出される金額です。税務・会計上の損失は、①では材料費の400円、②では損失なし=ゼロと計算されます。
 では、AさんBさんそれぞれの立場で利益を増加させるにはどうすればよいでしょうか? 毎日売り切れ必至のAさんは、人手を増やす等により生産能力を上げることが考えられます。生産能力に余裕があるBさんは、経費(材料費・人件費・その他)を引き下げるか、ポイント制度などで来客頻度を上げて販売数を増やす努力が必要です。

数字を意思決定に役立てましょう
 税務・会計の評価ではわからないことも管理会計的発想から見えてくることもあります。せっかく作っている経理データはどんどん活用しなければモッタイナイ話です。