港区 税理士法人 大沢会計
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2017年6月

2017/06/30

H29.6.30

過去に在日大使館等に
勤務していた外国人の居住期間の判定

在日大使館等勤務の外国人は所得税が免除
 外国政府の外交官として来日し、大使館や領事館に勤務する者の課税関係については、所得税法と外交関係に関するウィーン条約、領事関係に関する同条約が重層的に適用され、有利な方の課税方法によることとされています。そのため、給与をはじめとして個人的所得については、わが国では課税されないこととなっています。
 この非課税は、大使や書記官など外交官のみならず、事務及び技術職員や役務職員(受付、玄関番、料理人や掃除人等)にも適用され、外国人であって大使館等から受ける報酬であれば、租税が免除されます。

来日外国人の所得税課税
 日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人は非永住者として、国内源泉所得に対して課税されます。 
 この非永住者の判定に当たって、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年を超える場合は、5年以内の日までの間は非永住者、その翌日以後は非永住者以外の居住者として取り扱われます。
 非永住者以外の居住者は、日本人と同様、全世界所得が所得税の課税対象とされます。

過去に外交官として国内に居住していた人の非永住者の判定
 過去に大使館に勤務した人が退職し、日本の民間企業に再就職した場合には、居住者として日本の所得税の下での課税が適用されます。大使館等勤務で「外交」または「公用」の対象外公用パスポート保持者は「在留管理制度」の適用外なので、住居地の登録がなされません。住居地の登録がなされない→住所なし→国内に住所又は居所を有していた期間はゼロと考えることができるのでしょうか?
 上述の外交官のいわゆる人的非課税の取扱いは、国内に居住していることを前提としており、我が国に住所又は居所を有しない者と解しているものではありません。
 したがって、非永住者の判定に当たっては、外交官として国内に居住していた期間も含めて判定することとなります。
 このことを誤解して期間算定を誤ると、確定申告はもちろん、「国外財産調査制度」の対象漏れともなりかねませんので、十分注意が必要です。

H29.6.29

残業時間上限規制と休日出勤

予定される上限時間
 先に政府から発表された働き方改革の一環として「時間外労働の上限規制」が注目を集めています。現在は時間外労働協定届の「特別条項付き三六協定」を労使間で締結する事で、繁忙期に上限の無い残業をさせる事も可能です。上限規制の改革案では「たとえ労使協定を締結していても残業時間は年間720時間を上回る事ができない」とされ、但し繁忙期には月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以下の上限時間が設けられる事となりそうです。

残業の時間規制から外れる?休日出勤
 上記の時間外労働の上限720時間には抜け道があると指摘されています。それは休日に働いた時間はこの上限時間には含まれないという事です。未定の部分もありますが休日出勤の労働時間規制は企業努力とされる事もありそうです。その場合平日の就業時間内に業務を終えなかった従業員が自主的に休日出勤をするかもしれません。

休日出勤させないような取り組み
 会社が命じていない休日に勝手に出勤した人が1週に1日又は4週に4日以上の休日を取らないと過労のリスクも高まります。トラブルが発生してから「従業員が勝手に休日出勤していた」と言ったところで会社が黙認していたとみなされる事もあります。このような事が起きないように事前申請を出させる許可制にしたり、振替え休日を決めておく等、労務管理には気をつけたいものです。上司の命令を無視して休日出勤を繰り返すならば、人事考課などでも厳しく対処する位の事が必要なのかもしれません。

長時間労働の指摘は避けたい
 労働基準監督署の労働時間調査は最近は小規模な事業所であっても入る事があります。是正が必要と指摘されれば働き方や賃金の支払い方の見直しをせざるを得ません。是正をしない場合は公共事業の入札でも不利になりますし、万一インターネット上で悪い評判がたったりしたら企業イメージが損なわれてしまう事があるかもしれません。採用活動にも影響が出てきます。
 むしろインターネットでは積極的な労働時間管理の取り組みを行っている企業であることをアピールする場として取り組む事が採用にもプラスになるでしょう。

H29.6.28

酒類販売免許の今と昔

お酒が安く売れなくなる?
 2017年6月から一部改正された酒税法等が施行され、お酒の販売価格が値上がりするのではないかというニュースが話題になりました。今回の改正では、酒類製造業者と酒類販売業者が遵守すべき必要な基準を「公正な取引の基準」として定め、量販店やスーパーなど販売業者が廉価でお酒を販売しないよう基準を設けることから、結果的にお酒の販売価格が上がるのではという認識が広がり、こうした話題に繋がったようです。
 一昔前まで、お酒は酒屋さんで購入するのが一般的でしたが、いつから量販店やスーパーなどにもお酒が陳列されるようになったのでしょうか。

今と昔でこんなに違う免許要件
 お酒の販売を行うには、販売場所を管轄する税務署で酒類販売免許を取得しなくてはなりません。以前はこの酒類販売免許を取るにあたり、直近の酒販店との間に一定の距離がなければならない距離基準や、地域の人口に応じて酒類販売免許の枠数が制限される人口基準が設けられていました。この他にも、「緊急調整地域」として酒の過剰供給がなされていると指定された地域については新規出店が規制されるなど、免許を取得するためのハードルはなかなか高いものでした。

規制緩和で新規参入が容易に
 しかし、こうした酒類販売免許の要件が段階的に緩和されはじめ、2001年には距離基準が、2003年には人口基準が廃止、さらに2006年には「緊急調整地域」の指定もなくなりました。現在の制度下では、財産等の要件はあるものの、場所については物件自体でお酒の販売が禁止されていなければ免許申請できる可能性がありますので、これまでに比べ免許取得のハードルがぐんと下がりました。今では当たり前のように街中のコンビニでお酒が販売されていますが、それもこうした規制緩和の結果によるものです。量販店やスーパーでの激安売りも当たり前になり、この流れで苦しい経営に追い込まれた個人商店が多いことも事実。今回の改正は、こうした個人商店を保護する狙いがあるようですが、果たして価格規制がこの状況を変えることができるのでしょうか。

H29.6.27

こんな助成金もあります
ボランティア休暇制度導入支援助成金

助成金とは
 一般的には厚生労働省管轄で取り扱っている支援金のことで、条件さえ満たせば、どんな会社でももらうことが出来ます。助成金ですので、返済する必要もありません。

ボランティア休暇制度の導入支援助成金
 これは東京都の助成金ですが、2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、ボランティア文化を定着させ、都民のボランティア活動への参加を促進することを目指しています。今回はオリンピック開催を目指す東京都限定ですが、今後万博開催を目指す大阪や、地方活性化の為のボランティア活動に対する様々な助成金が期待されそうです。

①助成要件
1) ボランティア休暇制度の導入
※ボランティア休暇として付与する休暇日数を従業員一人あたり年間3日以上とすること
※ボランティア休暇の対象となる活動に、スポーツ大会におけるボランティアを含めること
2) 社内周知
※就業規則等に規定したボランティア休暇制度を、従業員に対して周知すること
※ボランティア活動に関する情報を、従業員に向けて提供すること
②助成額
定額20万円/1社
③助成対象事業者
1) 都内で事業を営む企業等
2) 常時雇用する労働者(都内勤務であること)を2名以上、かつ、6ヶ月以上継続雇用していること
3) 就業規則を作成して労働基準監督署に届出を行っていること
4) 就業規則やその他規則で、ボランティア休暇について明文化されていないこと
5) 都ホームページへの企業名等の公表に同意すること
 この助成金の支給社数は500社を予定しており、平成29年6月20日に事前エントリーの受付が始まりました。

H29.6.26

高齢者ドライバーの交通安全対策強化
道路交通法の改正

高齢の運転者を雇用している場合の注意
 この3月に改正道路交通法が施行されました。高齢運転者の交通安全対策が強化され、会社の業務で車を運転する高齢従業員や通勤で車を利用する高齢従業員がいる場合は、会社として知っておきたい内容と思われます。
 高齢運転者(70歳以上)の運転免許更新期間が満了する日における年齢が75歳未満の方は高齢者講習の合理化が図られ、3時間講習は2時間となりました。
 しかし、75歳以上の方に行われる認知機能検査の結果に基づいて「認知機能が低下している恐れがある方」や「認知症の恐れがある方」は、より高度化又は合理化が図られた講習になりました。適性検査と講義、実車指導で2時間であったものは個別指導60分が加わり3時間とされました。

各種制度の新設
 75歳以上で運転免許証を持っている方が「認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為」をした場合、臨時に認知機能検査を受ける事になりました。信号無視や横断歩道等における歩行者妨害、徐行場所違反等18の違反行為が対象です。
 臨時認知機能検査は原則、配達証明による通知を受けた日の翌日から1ヶ月以内に受検します。検査の結果「認知機能が低下している恐れがある」と判断された時は臨時高齢者講習(実車指導60分、個別指導60分)を受ける事となります。臨時認知機能検査や臨時高齢者講習は認知機能が低下している場合に行われやすい一定の行為(18の違反行為)を行った時に受けないと免許が停止となります。

臨時適性検査制度の見直し
 免許証の更新時及び臨時の認知機能検査等で「認知症の恐れがある」と判断された方は臨時の適性検査を受けるか認知症に関して専門的な知識を有する医師等の診断書の提出が必要になります。認知症の判断が下された時は免許取り消し又は停止となります。高齢運転者従業員の免許更新時には確認をしてみると良いかもしれません。

H29.6.23

海外出国後の予定納税

前年帰国者に「予定納税通知書」が届いた!?
 その年の5月15日現在において確定している前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付するという制度があります。予定納税制度です。予定納税額は、所轄の税務署長からその年の6月15日までに、書面で通知されます。
 関与先の経理担当の方から、「昨年帰国した外国人出向者の予定納税通知書が届いたので、おかしいなぁと思い、税務署に電話したら、『予定納税減額申請書を出してください。それでゼロになりますので』と言われました。作成してもらえませんか?」との依頼がありました。どうすべきでしょうか?

帰国者も予定納税対象者?
 少し専門的な話となりますが、予定納税の規定は、所得税法第2編「居住者の納税義務」の中の第5章「申告、納付及び還付」で規定(所得税法第104条)されています。そもそも予定納税制度は、居住者(=日本に住んでいる人)の納税義務の話なので、帰国して非居住者(=日本に住んでいない人)となった帰国者には当てはまらない法律なのです。 
 ではなぜ、税務署から予定納税通知書が届くのでしょうか? 税務署側では出国日につき正確な事実はわかりません。予定納税通知書は、前年分の所得金額や税額などを基に機械的に発行されるため、帰国者にも予定納税通知書が届いてしまうのです。

本ケースでの対処法は?
 そもそも納税義務がないのですから、何もしなくて(=無視していただいて)構いません。税務署に問い合わせると「予定納税減額申請書を出せ」と言われるケースが多いですが、その必要もありません。
 所得税法基本通達に「居住者でなくなった場合の予定納税の義務」につき、「たとえ予定納税額等の通知がされている場合であっても、予定納税額を納付する義務はないことに留意する。」と明記してあります。通達とは、上級官庁から下級官庁への事務命令書なので、後日督促などが来た場合には、所得税法基本通達105-2「居住者でなくなった場合の予定納税の義務」により予定の税は不要です、と回答すればそれで終了です。
 税務職員といえどもすべての事務命令書を熟知しているわけではありませんので、問い合わせたら「予定納税減額申請書を出してください」という回答だったわけです。

H29.6.22

不動産の附合

不動産の附合
 民法の第242条に不動産の附合と言う規定があります。「不動産の所有者は其不動産の従として之に附合したる物の所有権を取得す。」と言うものです。
何やらわかりにくいので、事例で示すと、建物を増築した場合、だれが増築しようとその増築部分は、当初の建物の所有者のものですよ、と言うことです。

親子では良くある話
 他人名義の建物に金を払って増築する人がいるのかと思われるでしょうが、それが時々いるのです。父親所有の家屋の増改築資金を子供が負担することはよくある話です。例としては、高齢などの理由で父親が増改築資金のローンを組めない場合(子供がローンを組むのも子供が資金を出したことになります。)や、一人前になった子供が二世帯向けにするためなどに自分で資金を用意して、増改築をするような場合です。

贈与税がかかってきます
 この場合父親所有の家屋に子供が費用を負担して増築したとしても、増築部分の所有権登記を子供の名前ですることはできません。つまり増築部分も以前の所有者である父親の所有とされてしまうのです。これが「不動産の附合」です。
 よって家屋の所有者は父親で増築資金を出したのが子供であれば、父親は増築部分を子供から贈与を受けたことになります。増築家屋という利益を手にした父親から贈与税を頂きます、というのが税務の考え方です。(この場合「贈与の意思の有無」は一切関係ありません。)

対策は次のどちらかで
 贈与税がかからない為の方法は次の二つのどちらかです。(勿論ケースバイケースで、どちらの方法が良いとは言えません。)
方法①:増築前の家屋を父から子供が贈与を受けて、その後に増築する方法
方法②:増築前の家屋の評価額と増築費用の合計額に占めるそれぞれの割合に基づいて、父と子供の共有持分登記をする方法。
 贈与税を払わないと言うだけなら②ですが、この際子供の名義にした方が良いと言うような場合などは①とすることも良いと思います。

H29.6.21

非課税のイメージと実態

医師会等の損税問題
 平成28年度の税制改正大綱の検討課題の中で、医師会等の損税問題につき、「平成29年度の税制改正に際し、総合的に検討し、結論を得る」との記載があったことから、平成29年度での何らかの改正がありそうでしたが、消費税10%になるまで先送りになりました。
 医師会のほか、(社)日本損害保険協会、(社)日本自動車会議所も、消費税非課税に伴う損税問題に声を上げています。

医療費をゼロ税率とした場合の試算額
 平成26年3月に提出された「医療費にかかる消費税のあり方に関する質問主意書」に対する答弁書によると、医療費を課税の対象とし、ゼロ税率を適用した場合の消費税還付額は、1.5兆円程度と試算されています。医療機関だけでも、かなりの損税額が発生していることは確かです。

医療消費税訴訟
 数年来の要望にもかかわらず、改善が認められないので、兵庫県病院協会の4病院が平成22年、消費税非課税制度の不公平問題の是正訴訟を起こしました。判決では、消費税分は診療報酬で適切に転嫁がはかられており、それ以上の制度問題は立法府で判断すべきものとして請求棄却されました。

そもそもは医師会の見識不足の判断ミス
 消費税の損税問題を一番切実に訴え続けているのは日本医師会ですが、そもそも消費税導入時に社会保険診療を非課税にするよう強く要望したのも日本医師会です。
 導入時に税務当局は、非課税にすると設備投資をした分の前段階控除ができなくなるから困りますよ、ということを医師会にさんざん説明したのに、非課税にしてほしいとの意向が強く、非課税になってしまった、というのが経緯の様なのです。

非課税の原理とイメージと実態
 消費税法の原理としては、消費税相当額を消費者の負担する価格に当然にも転嫁されているもの、と解します。
 しかし、非課税というと、消費者側のイメージとしては、消費税と縁のない取引で、消費税分価格が低くなっているはず、と思っていて、知らず知らずのうちに消費税を負担し、他方、医療関係者を筆頭に非課税事業者はみな、転嫁できない消費税額を負担させられて困っています。

H29.6.20

経営改革の構想

 経営改革は、企業が外部環境に適応しながら生き抜き、発展し続けるための、グループ経営改革・企業経営改革・事業経営改革・機能経営改革を言いますが、ここでは、企業経営改革について述べます。

企業経営改革の絶対要件
 改革を実現するために、欠かせない要件は、「トップが経営改革を決断するとともに、改革の構想を持つこと」です。
 改革の構想とは、改革が実現されたときの “経営のあるべき姿”をありありとイメージし、現状の姿と比較したギャップを具体的にすることであり、このような構想がトップの経営改革推進におけるリーダーシップの根源となります。
 このような構想は、実現の担い手となる社員の理解と主体的・挑戦的な改革意識と行動を引き出す力を持たなければなりません。
 したがって、トップが自分だけで、机上で書いたものではなく、少なくとも中堅幹部以上の社員・役員が改革構想の策定に参画し、創意によって描かれた姿とトップの構想が限りなく一致するべきです。
 これを、経営改革の内部経営改革において、中心的な位置付けとなる目標管理制度改革を取り上げて考えてみましょう。

目標管理制度の改革構想
 目標管理制度は業績管理制度であり、社員の参加によって経営戦略目標の達成を図る企業経営改革の代表的制度です。
 その改革構想の策定は、次のステップで進めるべきです。
①現状認識
 目標管理制度の運用実態(例えば直近年度の目標設定状況・貢献度評価状況・運用上の問題点など)をトップ・管理者・一般社員が事実状況に基づいて記述、認識する。
 その結果、どこがうまくいっているか、欠けているか、等を具体的に認識する。
②改革構想を描く
 現状の姿から、問題点を改善しさらにレベルアップを図った制度の姿を描く。この時、先行例のベンチマークも役立つ。

経営者の留意点
 ①②の方法としてファシリテーションなどを用い、衆目が一致する現状認識・改革構想の発想を行うことが重要、かつ効果的であり、改革実現の強力な推進力となることは疑いありません。

H29.6.19

特別徴収徹底宣言

特別徴収徹底宣言
 インターネットで「年度から個人住民税の給与からの特別徴収を徹底します!」と入力すると、「平成27年度から」「平成28年度から」「平成29年度から」「平成30年度から」と年度を変えて、沢山の自治体がこのタイトルでネット宣言しています。
 47都道府県及び20政令指定都市を構成員とする全国地方税務協議会は平成26年8月開催の総会で「個人住民税特別徴収推進宣言」を採択しました。その後その参加自治体は、冒頭のネット宣言をして、事業主に特別徴収の徹底を呼びかけています。

法令改正ではない、解釈変更でもない
 東京都のホームページを見ると、ネット宣言の中で、法令改正があったわけではなく、制度の周知が十分でなく、徹底が図れていない状況にあり、平成26年度から平成28年度までは広報・周知活動に取り組み、平成29年度から、特別徴収を徹底することとした、と書いています。
 また、従業員が自分で納付したいと言っている、手間が増えるので特別徴収したくない、毎月納付が面倒、所得税が発生する従業員はいない、などなどの住民からの疑問の声を載せ、回答しています。

法令の徹底や目こぼしは随意なのか
 回答の多くは、法令に書いてあるので、もともと義務なのだ、という趣旨になっています。それなら何故そういう法令無視状態を今まで続けていたのか、そういう法令無視をしていたことは法令違反なのではないか、法律の規定を自治体が無視していて、今度は法律に変更がないまま法令順守を要求する、そういうことには何も問題はないのか、問われるべきです。
 租税法律主義の理念が地方税の現場では以前から希薄です。その自覚がないのなら、それは憲法感覚の欠如でもあり、地方税制度をやめて、消費税のように国税が一括徴収し地方に交付するとか、にすべきです。

例外の統一基準の法的根拠は?
 なお、普通徴収を認める下記の統一基準があります。
(1)乙欄適用者
(2)年100万円以下少額給与者
(3)支払不定期給与者
(4)個人事業主の事業専従者
(5)退職又は退職予定の者
(6)2人以下の小規模事業所

H29.6.16

請負と委任

請負契約とは
 請負は、大工が家を建てる場合や、クリーニング店が洗濯をする場合などの契約をいい、請負人が注文者の指揮・命令を受けることなく自らの判断で仕事をする契約をいいます。結果を出さなければ報酬をもらうことができず、仕事を完成させて初めて報酬を請求することができます

委任契約とは
 委任は、弁護士に依頼する場合や、医者の診療の場合などの契約をいいます。委任では、依頼された事務を処理することが目的であり、必ずしも結果を出すことは求められていません。したがって、結果を出さなくても報酬を受けることができます。

責任が違います
 請負契約の最大の特徴は、「仕事の完成」という「結果」に対する責任を負う点です。ですから、受注者は結果責任を問われます。また、完成した仕事については、当然ながらミスがあってはなりません。仕事にミスがあった場合、受注者は、そのミスを補修したり、損害の賠償をしたりしなければなりません。このような責任を、「瑕疵担保責任」といいます。
 一方、委任契約では、「法律行為」や「法律行為でない事務」のような、一定の行為について責任を負う点です。ですから、受託者側の地位、職業などに応じて、客観的に期待・要求されるレベルの責任を果たすべき義務を負うということです。
このような責任を「善良な管理者の注意義務」(一般的には「善管注意義務」)といいます。

印紙税の取り扱いも違います
 印紙税法上 請負契約は課税文書となり、印紙の貼付が必要となりますが、委任契約は非課税文書となり印紙の貼付は不要です。
 「業務委託契約書」という名称の契約書はよく見かけますが、内容が請負か委任かによって印紙の貼付の要・不要が分かれます。見極める大きなポイントは、成果物の引渡しがあるかないかです。迷った時はご相談ください。

H29.6.15

プロジェクトの目標達成力

目標管理制度では、衆知を集めて達成する必要がある重要で困難な目標について、プロジェクトチーム(以下PJ)目標を設定します。

PJの目標達成力を支える要因
 そこでPJの目標達成力を支える要因を検証して見ましょう。
①目標設定の方法
 目標設定にあたって、経営戦略目標の背景・重要性の理解を図り、その上で組織目標の設定・PJ目標・個人目標へのカスケードダウン(段階的順次細分化)による目標設定を行います。その一環として社員に「PJ目標が適切な目標はどれか」指摘する意見を求めるのです。これは、衆知によって適切なPJを編成するとともに、社員の自主的な参加意欲を引き出す機会ともなります。
②PJリーダーの選定
 PJリーダーは、目標の重要性・困難性を考えて、経営者・部長・課長が指名する場合が多く、その目標に関する専門知識・技術・経験、予算管理などのビジネススキルを持つ人材が望ましいのですが、さらにリーダーに必要なのは、マネジメント力です。    
 その要件とは、
 ・権威型人材(実績・知識・経験などからにじみでる人格で、人を動かせる人物)
 ・目標設定・達成プロセスでメンバーの主体的・創造的な問題解決能力を引き出すファシリテーション能力に優れる人材。
③メンバーの選定
 適切なメンバーとは、
 ・目標達成に関係する多様な専門能力のいずれかに優れている人材の組み合わせ。
 ・リーダーや他のメンバーとの葛藤を恐れず、自らの意見を真摯に、率直に出すことができること。(主体性がなく、リーダーに追随するタイプのメンバーを選ばないこと)。
④目標設定のあり方
 目標設定では、リーダーのファシリテーション能力で、メンバー全員が「ゴールの姿をありありと描ききること」が最重要です。その状態では、メンバーの目標達成意欲が最高に高まり、目標達成までのプロセスを決定づけるからです。

経営者・管理者の留意点
 PJリーダーの人材は、一朝一石に育てることは難しく、PJ体験を積ませる長期的育成施策を実施しましょう。

H29.6.14

老人ホームへの入居一時金も財産の贈与です。

 夫婦間での金銭のやり取りは原則贈与
 夫婦間での生活費のやり取りは、日常生活においてまったく税金など意識せずに当たり前に行っております。
 特に、専業主婦の妻が「大蔵省」として家庭の財布を握っている場合もよく見受けられます。
 税務上これらの行為は原則贈与税の対象となります。ただし、贈与税の非課税規定において、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものは非課税とする」と定められているため普段は問題になりません。

多額の資金の移動は特例で対応
 しかし、多額の金銭や資産が動くと話は別です。多額の金銭を子供名義の預金に振り込むとか、住宅の名義を妻に変えるなどの場合は当然にも贈与税の対象となります。
 とはいえ、世の中の変化に対応して税制も、「教育資金の一括贈与」や「配偶者への住宅の贈与」が可能になるような特例措置を講じてきました。

老人ホームへの入居金は今後の課題?
 老人ホームの入居一時金も多額の資金が動きますから、だれが負担するかによって贈与税の対象となります。
 国税不服審判所で争われ、非課税とされた事例と、課税とされた事例が、それぞれあります。
 判断の基準は「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるか否か」です。あとは事実関係により判断することとなっております。
非課税とされた事例
 配偶者を介護付き有料老人ホームへ入居させるに当たり入居一時金(945万円)を支払った事例

課税とされた事例
 配偶者と共に有料老人ホームに入居したが、主契約者を配偶者とし入居一時金(1億3,370万円)の9割を自分で出した事例
 詳細は紙面の都合で省略しますが、金額の多寡が影響している面は否めません。
 今後も増える事例と思われますので、安心して老後が過ごせるような特例措置や明確な基準の公開が急がれます。

H29.6.13

NPO法人と資産総額の変更登記

特定非営利活動法人(以下、NPO法人)では、法人の設立時から「資産の総額」というものが登記されています。「資産の総額」というとあまり馴染みがないかもしれませんが、資産合計から負債合計を差し引いた正味財産のことを指します。つまり正味財産は基本的に事業年度ごとに変更されるため、NPO法人では毎年この「資産の総額」の変更登記を行うことになっていました。

NPO法の改正で貸借対照表の公告が義務に
 しかし、平成28年6月7日に特定非営利活動促進法(以下、NPO法)が一部改正され、法人の事務負担軽減を目的とし、現在、この変更登記制度について削除する方向で整備が進められています。その一方で、定款で定める公告方法に基づき、貸借対照表の公告を行うことが義務付けられることになりました。
 公告の方法についてはいくつか手段がありますが、現状では多くの法人で「この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う」とする方法が採用されています。この場合、そのままにしておくと決算の都度、法人の掲示場に加え、「官報」という政府機関紙に貸借対照表を掲載しなければならず、掲載料として毎年7~8万円程コストがかかることになります。

NPO法人は定款で公告方法の確認を
 NPO法人に携わっている皆様は、一度法人の定款で公告方法を確認してみましょう。貸借対照表の公告方法は「①官報」の他、「②日刊新聞紙」、内閣府のポータルサイトや法人のホームページなどインターネットを利用した「③電子公告」、「④法人の主たる事務所の公衆の見やすい場所への掲示」から選択できます。
 尚、貸借対照表の公告に関する規定の施行日については、改正NPO法公布の日から起算して2年6月以内において、政令で定める日とし、平成30 年10 月1日が施行の目処とされています。現行の定款から公告方法を変更する場合は、管轄する都道府県への届出が必要になりますので、今のうちに法人が対応しやすい公告方法を検討することをお勧めします。

H29.6.12

消費税 住宅の家賃収入でも課税?

ウィークリーマンションは?
 住宅の家賃収入には消費税はかからないと言うことはよく知られております。
 敷金・権利金を取って住宅を貸し収入を得るのが一般的な貸家経営ですが、昨今ではマンスリーマンションや、ウィークリーマンション等敷金も権利金も取らずに、更にホテル並みの設備を揃えて住宅を貸している場合もあります。
 そうなると、不動産賃貸業とホテル旅館業の線引きを何処にするのかと言った問題が出てきます。
 現在の税法では、当初の契約貸付期間が1ヶ月以上のものをマンスリーとし、不動産貸付業に含め、1ヶ月未満のものをウィークリーとしホテル旅館業と同様の扱いと考える、期間的割り切りをしています。
 ですから住宅の家賃収入でも、マンスリィーは消費税非課税、ウィークリィーは消費税課税と言うことになります。

一括借上げのマンションは?
 住宅の貸付と言うと、個人に対してと思われますが、マンションなどの住宅を会社の寮として貸す場合や、不動産管理会社などに一括で借り上げてもらっている場合の家賃収入は、同じ住宅の家賃収入ですが注意が必要です。
 消費税法では非課税の要件として、「契約において、人の居住の用に供することが明らかにされているものに限る」とありますから、会社の寮に貸す場合などは、寮としての使用を契約時に明確に謳っておく必要があります。
 また不動産管理会社への一括貸付けの場合には、貸付け時に転貸は居住用に限るとしておかないと、借り上げた不動産管理会社が、どのような用途に貸しても良いような契約では、条文の要件を満たさないこととなり消費税が課税されてしまいます。

どちらが得か?
 消費税が課税されると損かというと、家賃に消費税を上乗せできるのであれば、消費税が課税された方が得です。なぜならば、修繕費や管理費等には消費税が課税されており、その支払った消費税は、非課税事業者では控除できないからです。

H29.6.9

“貢献”の意義

 最近の目標管理制度では“貢献度”を重視した制度設計を行うケースが増えています。そこで、“貢献度”と言う概念が、どのように役立つのか、その意義を確認しましょう。

“貢献”の多面的な意義
“貢献”には、次のように様々な意義があります。
①上位目標への貢献
 目標設定において、個々の社員の目標は、所属する組織・プロジェクトチームが設定した目標達成に貢献し、最終的には経営の最上位に置かれた経営戦略目標達成に貢献しなければならない。
 このため、目標設定では経営戦略目標からカスケードダウン(段階的順次細分化)することにより、上位目標と下位目標を整合させる。
②役割等級に応じた貢献
 与えられた職種ごとの役割等級に求められる成果責任や期待貢献・必要な職務遂行能力が定義され、それらにふさわしい貢献が必要になる。そのため、目標設定においては、所属組織・プロジェクトチーム内でメンバーがお互いに上位目標に貢献でき、役割等級にふさわしい貢献となることを確認することが必用になる。
③貢献度評価
 目標達成度の評価は、上位目標の達成に対する貢献度で評価される。
 そのため、個々の目標については達成度で評価しても、個人別の複数目標達成に対する最終的な総合評価基準は貢献度となる。
④貢献度評価の方法
 貢献度評価で、最も重要な手段は、組織やプロジェクトチームに所属するメンバーの相互フィードバックである。
 評価基準は貢献度であるが、共通の目標にチャレンジし、お互いの努力を良く知っているメンバー同士の真摯な相互フィードバックにより、その貢献を事実として認め合うところに、相互に信頼し合うチームワーク生成の価値が存在するのである。

経営者・管理者の留意点
 ①~④の“貢献”の多面的意義は、目標管理制度の年度毎の目標達成に役立つばかりでなく、その後、長期にわたって経営目標を達成し続ける組織の力となることに留意しましょう。

H29.6.8

どっちがお得?
医療費控除とOTC医療費控除

今年から適用されるOTC医薬品の控除
 今年度から適用される「スイッチOTC医薬品に関する医療費控除の特例」、いわゆるセルフメディケーション税制という言葉をもう目にした耳にした、という方が多いとは思います。市販されている中で「スイッチOTC医薬品」に該当する医薬品を年間1万2千円以上購入している場合、最大10万円までの範囲で所得控除が受けられる制度です。つまり、最大8万8千円所得控除が受けられる医療費控除のミニ版です。

医薬品は通常の医療費控除にも適用される
 今までも薬局やドラッグストアで市販されている薬の中で「治療や療養に必要なものであって、かつその病状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」であれば、医療費控除の対象にはなっていました。つまり、市販薬でも通常の医療費控除に該当するケースは多く存在します。
 医療費控除とセルフメディケーション税制は併用ができません。新設に伴って、「医療費控除で申告した場合」と、「特例を利用した場合」、どちらがお得かを判断しなければいけないパターンがあるので、注意が必要です。
①年間の医療費(医者にかかったお金)が9万円で、OTC医薬品が4万円だった場合
医療費控除:(9万+4万)-10万=3万円
医療費控除特例:4万-1.2万=2万8千円
この場合は通常の医療費控除がお得です。
②医療費が6万円で、OTC医薬品が7万円だった場合
医療費控除:(6万+7万)-10万=3万円
医療費控除特例:7万-1.2万=5万8千円
この場合は医療費控除の特例がお得です。

確定申告には添付書類が必須です
 セルフメディケーション税制は「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」が対象となっているので、確定申告時に年内に健康診断や予防接種等を受けて健康に留意している証明が必要です。会社主導の健診・個人で受診したもの、どちらでも問いませんので、今年受けた健診や予防接種の証明は取っておくように心がけておきましょう。

H29.6.7

住民税割合変更と寄附金控除
高校就学支援金への対応の違いト

指定都市の住民税の割合が変更
 今まで県費負担だった教職員の給与負担事務が、道府県から指定都市へ移譲されるため、平成30年度分以後の個人住民税所得割額の割合が、指定都市(大阪市・名古屋市・京都市・横浜市・神戸市・北九州市・札幌市・川崎市・福岡市・広島市・仙台市・千葉市・さいたま市・静岡市・堺市・新潟市・浜松市・岡山市・相模原市・熊本市)に限り、都道府県民税4%が2%に、市民税6%が8%に変更されます。
 なお、この変更は退職所得には当分の間適用されないそうです。

税額は変わらないけれど……
 この改正では、都道府県民税と市町村民税の割合が変更されるだけで、増税も減税もされません。ただ、上記文章で「これは影響があるかもしれない!」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
 結果的に「市町村民税」の金額が上がるので、市町村民税の額で支援の有無を判定している「高等学校等就学支援金」が受けられなくなる可能性があるわけです。

結論から言えば大丈夫です
 総務省発表の「平成29年地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等」という書類の中に「税源移譲の際に市区町村民税額で決定している福祉・教育制度があるので、他の市町村と適用される税率の違いで不公平な取扱いとならないようにしましょう」というような一文が附記されています。ちゃんと配慮はされているようですね。

半面、ふるさと納税した場合はどうなる?
 ふるさと納税は住民税の所得割額を下げる効果があります。控除の上限があるので所得割額を極端に下げる事はできませんが、寄附によって国が出している「高等学校等就学支援金」の所得制限を僅かに上回る世帯については、制度を利用できるようになる事例がありました。また、国の支援金以外にも、地方自治体による補助金制度も所得割額によって定められているケースが多く、最近一部メディアではこのふるさと納税の副次効果について疑問を呈しています。
 個人の寄附行為によって結果的に支援金が貰えるようになる、というのは確かに不公平感があると思います。今後は見直しがなされるかもしれませんね。

H29.6.6

改正個人情報保護法

保護する範囲の明確化とビジネス利用拡大
 2017年5月30日に改正個人情報保護法が施行されました。2003年に制定したこの法では個人情報は生存する個人に関する情報で氏名、生年月日等特定の個人を識別できるものを言い、企業等が取得するには利用目的を通知する必要があるとしています。しかしその後のインターネットの普及や技術革新で個人情報に当たるかどうか判断しにくいケースも出てきたので、改正法では個人情報の範囲が追加され、DNA、指紋データ、顔認識データ、パスポートや運転免許証の番号等が追加され、マイナンバーは法で定められた税と社会保障、防災に限定されて追加されています。

改正法の概要
 改正の概要は以下の通りです。
①個人情報保護委員会の設置
②個人情報の定義の明確化
③一定の個人情報(匿名加工情報)に関する自由な流通を促進する制度の導入
④名簿業者対策としての第三者提供をする場合の確認記録作成保存義務
⑤個人データの第三者提供に関する規律の整備(記録や届出義務)
⑥グローバル化への対応で外国にある第三者への提供に関する規定等規律の整備
⑦取り扱う個人情報の数が5千人以下である事業者を規制の対象外とする制度の撤廃。

改正法の要点施策
①前述の③にある「匿名加工情報」が規定されました。特定の個人を識別できないようにすることで、本人の同意なしにパーソナルデータをビジネスに利用、活用できるよう取り扱いルールが定められました。
②企業が保存する個人データを第三者に提供する際のルールが厳格になりました。名簿業者対策等で、本人の同意を得ていない時は政府の個人情報保護委員会への届出が義務付けられました。但し人種、病歴、犯罪歴等特に慎重に扱うべき情報は本人の同意が必要です。また第三者とやり取りした場合、記録の作成、保存が必要になります。
③これまで取り扱う個人情報の人数が5千人以下の場合は法の対象外でしたがこれは廃止されました。個人情報を扱う数が少ない事業者でも情報取り扱いに伴う記録の作成や保存、安全管理措置が課せられました。

H29.6.5

所得税と消費税
税の常識・世間の非常識

税の常識・世間の非常識
 弁護士業をしている夫が税理士の妻に支払った税理士報酬が夫の必要経費として認められないという最高裁の判決が数年前にありました。いくら夫婦間といっても、妻も独立開業しているのであれば、支払った金額は夫の必要経費になるのではないか? そう考えるのが世間の常識でしょうが、所得税法には「生計を一にする配偶者その他の親族」への事業関連対価の支払は、必要経費にならない、との規定があるため、世間の常識を超える判決になっています

一般的ケース
「妻所有の建物で夫が商売をしているような場合で、妻が家賃を受け取っても夫の経費にはならず、妻のその建物にかかる税金や償却費や借入利息や修繕費などは夫の経費となります」。これが税の常識です。
 ただし、これは対価の支払を禁ずるものではなく、必要経費として計算しないということを言っているだけなので、対価の支払いは世間常識どおりにした方がよいと思われます。どうせ無視せざるを得ないのなら、対価の支払など面倒だからやめておこうと考えるのは得策ではありません。

消費税法は違うのです
 財産の合法的移転ということだけではなく、消費税法上は、所得税法とは異なり、妻への家賃の支払等は課税仕入として税額計算上有効だということになっているからです。
 つまり事業用の家賃ですから、消費税の課税対象です。支払った家賃には当然にも消費税が含まれると解釈されます。ですから支払った家賃の消費税は、夫の事業収入で受け取った消費税から差し引いて消費税を計算することができます。
 妻が特に他に事業をしていなければ、当然にも妻に消費税の納税義務はありませんから、その効果は無視できません。

H29.6.2

総額人件費管理

 総額人件費管理は、適正な賃金管理によって、社員の生活安定、モラールの維持・向上、有能な人材確保を図るとともに、過剰な賃金の支払いによって労務倒産を引き起こすリスクを回避するために重要です。

総額人件費の現状
我が国における総額人件費(日本経団連2016年発表、1人1カ月あたり)と内訳(推計値)
総額人件費:439,083円(所定給与額比166.7)、[ ]は総額人件費を100とした割合
現金給与総額 357,949 (135.9) [81.5]
 所定内給与 263,402 [60.0]
 所定外給与 25,106 [6.7]
 賞与・一時金 69,441 [15.8]

現金給与以外の人件費 81,134 (30.8) [18.5]
 退職金等 22,051 [5.0]
 法定福利費 47,434 [10.8]
 法定外福利費 8,811 [2.0]
 現物給与 630 [0.1]
 教育訓練費 1,100 [0.3]
 その他 1,108 [0.3]
 
 現金給与総額は総額人件費の81.5%を占め、その内、所定内給与が60%、賞与・一時金が15.8%であり、言うまでもなく、企業の重点管理対象となっています。
 また、現金給与以外で注目すべきは法定福利費で、10.8%を占め、高齢化を背景に年々増加しており、賃金改定の労使交渉でも、注意を払う必要があります。

トップと人事部門の留意点
 労働分配率は、経営目標の達成で得た付加価値に占める総額人件費の割合です。
労働分配率=総額人件費÷付加価値
 総額人件費管理を適正に行うには、
①労働分配率を50%以下に安定させることを目標とする。(資本金10億円以上で55%、資本金1千万円未満で81.1%、企業間格差大)。
②総額人件費中の所定内給与(月例賃金)を同業他社比で優位な金額とし、有能な人材の確保を図ること。
③賞与は、社員の意欲を引き出す効果と併せ、業績変動に対応して人件費をコントロールする狙いをもって活用すること。
が大切であり、年功賃金を避け、役割貢献給の考え方で、賃金制度・目標管理制度を設計、運用することが重要です。

H29.6.1

医療費の立て替え払い

療養費の払い戻し請求

 健康保険ではやむを得ない事由等で保険診療の療養の給付(治療等)を受けられなかった場合、後から療養費の請求ができます。健康保険では私傷病で治療を受ける場合医療機関の窓口に健康保険の被保険者証を提示して自己負担の3割分を支払う事で医療サービス分7割を現物給付で受けるのが原則となっています。やむを得ない事由により全額自己負担で受診した場合はその保険診療費用について療養費の請求ができます。

保険診療が困難な時とは
 次の様な時には医療費の全額を支払い、後から保険者(協会けんぽや健康保険組合、国民健康保険)に請求します。
①事業主が行う社会保険の取得手続き中に医療機関にかかり被保険者証が未発効の為窓口に提示できなかった時
②療養の為医師の指示により義手、義足、義眼、コルセットの装着をした時
③生血液の輸血を受けた時
④柔道整復師等から施術を受けた時 等

国民健康保険加入者が社保加入した時の例
 例えば就職前に国民健康保険に加入していた人が企業に就職し入社した時、社会保険加入の手続きをします。しかしまだ本人の手元には健康保険被保険者証が届いていなかった場合に、医療機関にかかり前の国民健康保険の被保険者証で受診してしまった場合の取り扱いは次の様になります。
①入社して加入する協会けんぽ又は健康保険組合の被保険者証が届いたら市区町村役場で国民健康保険の資格喪失手続をします。
②資格喪失後3ヶ月くらいで国民健康保険の保険給付費の返還を求める通知が本人に届きます。国民健康保険の医療費の請求書
の額(7割負担分)が知らされます。医療費請求書の通信欄には診療報酬明細書を希望するとしておきます。送付された通知書兼領収証を持って金融機関で支払いし領収証原本は後から使用するので取っておきます。
③半月くらいで診療報酬明細書(写)が届きます。療養費支給申請書と先の領収書と明細書を新しく加入した協会けんぽ又は健康保険組合に提出します。
 通常本人に医療費が戻るのはそこから1月くらいはかかります。