港区 税理士法人 大沢会計
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2017年12月

2017/12/31

H29.12.28

年末調整における戻り税額の
期待値は低めがよろしいかと…

ちょっとしたボーナス感覚の年末還付額
 サラリーマンにとって年末調整はちょっとした楽しみでもあります。多くの場合、年末調整により源泉税額の還付があります。これは、毎月の源泉徴収税額が、扶養家族数等を勘案して12か月で1年分を天引きできるよう予定されていることに起因しています。年末調整では、生命保険料控除や地震保険料控除が加わり、年税額が見積額より小さくなるため、徴収し過ぎた分が還付されるためです。住宅ローン控除が適用される人は特に還付額が大きくなり、一種のボーナス的な感覚になっています。

期待値は低めがお勧めです
 こうした期待がある中で、「去年の年末調整還付はこれくらいだったから、今年もそれくらいはあるだろう」と心弾ませている人が、予測していた金額よりも小さい還付額だったり、ましてや逆に徴収(=不足していたという理由で12月分をいつもより多く控除)されたりすると、がっくりしてしまいます。そしてそんな人の次の行動は、「計算は信じていますけど、何か間違えていませんか? もう一度確認をお願いします!!」という問い合わせをその企業の経理担当者に入れる事でしょう。
次のような場合には去年より還付が少ないか、または納税となる場合があります。

こんな場合は去年より還付が少ない
①扶養家族の子供が扶養から外れるくらいアルバイトで稼いでいた! ②奥さんが専業主婦だったが、年末前に離婚してしまった! ③住宅ローン控除の適用が前年までで終わっていた! ④前年海外から帰国して国内でもらった給与は12か月分なかったが、今年は12か月分であった! ⑤前年失業中の期間があり、年の途中で就職した!
 まだまだ他に原因がある場合もあります。期待は往々にして裏切られることもあると認識してください。
 でも、疑問に思ったら、素直に聞いてみましょう。。

H29.12.27

来日外国人興行に際しての
報酬払は、源泉税の徴収漏れに注意!

来日外国人が行う講演に必要なビザと税務
 世界中で大人気のヨガですが、最近もホットヨガやピラティス教室などが流行っています。こうした発祥の地が外国のものは、たとえ同じ内容であっても、本場の人(ヨガの場合はインド人)が講師の講座の方が、有難みも価値も増すように感じられることとなります。それに便乗してか、本場の外国人を招いて、1~2か月の間に日本各地を回るツアーも開催されているようです。
 こうした講座の講演者が、日本で働いて報酬を得るためには、興行のビザを取得し、芸能人として税務上扱われて納税することが必要です。もし、観光ビザでやってきて、報酬の支払いに際しても何の手続きもせずに支払ってしまうと様々な問題が発生しますので、要注意です。

講演主催者が注意すべき税務問題
 来日外国人のこうした仕事は興行の労働許可証がなければ働けません(=報酬を得られません)し、対価も非居住者(=日本に住んでいない人)に対する報酬の支払いとして、20.42%の源泉所得税を天引きしなければなりません。また、その源泉税は報酬支払者が支払った日の翌月10日までに国(=税務署)に納付しなければなりません。 
 源泉所得税の徴収・納税義務は支払者側にあり、これを忘れると支払者側に源泉所得税未納とその罰金の大きな負担が科されることになります。また、本来であれば源泉漏れは受け取った人から還付してもらうのですが、帰国してしまった外国人からは、通常取戻しができず、二重負担となってしまいます。十分に注意が必要です。

“外国”への支払いは常に源泉税に留意
 外国人・外国会社・外国に居住している人にお金を支払うときには、常に、源泉所得税の問題を考えなくてはなりません。
 他に、卑近な例で言うと、賃貸住宅の家主が外国に居住している人(海外に仕事で駐在している日本人が空き家を賃貸している場合を含む)や外国の法人である場合、家賃の送金に際して源泉税が控除漏れとなっているケースが多いようです。
 なお、“外国”芸能人への報酬や家賃の支払いに際しての源泉税は20.42%が所得税法で決まっている料率です。ただし、租税条約で、「政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づき個人により行われる場合には免除」等の規定もありますので、租税条約の確認も必須の作業となります。

H29.12.26

平均原価法の期間の取り方
総平均法と移動平均法

 「総平均法」は簡便だがタイムリーでない
 取得した棚卸資産の平均原価を算出し、期末棚卸資産の価額(払出単価)を算定する方法を「平均原価法」といい、「総平均法」と「移動平均法」の2種類があります。
「総平均法」は、一定期間ごとに(期首棚卸高+期中受入高)をこれらの総数で割り単価を求める方法です。簡便なのですが、一定期間が終了し、締めてみないとその期の払出単価を把握できないのが欠点です。
〈「総平均法」の商品有高帳〉
期首・受入             払出・期末
①期首 4個/\56(@\14)
②仕入 4個/\48(@\12)
③売上              6個(@\11.5)
④仕入 8個/\80(@\10)
⑥期末              10個(@\11.5)
 上の例では総平均法による払出単価は、(①期首\56+②仕入\48+④仕入\80)/総数16個=@\11.5となります。

払出単価が随時把握できる「移動平均法」
 一方、「移動平均法」は受入の都度、平均単価を改定する方法です。この方法によれば、随時単価を把握することができますが、継続記帳が必要で、手間がかかる方法です。
 先程の例に移動平均法を用いる場合、③の払出単価は(期首①\56+仕入②\48)÷総数8個=@\13、期末の在庫の単価は、(③売上後在庫2個×@\13+④仕入\80)÷総数10個=@\10.6となります。
〈「移動平均法」の商品有高帳〉
期首・受入            払出・期末
①期首 4個/\56(@\14)
②仕入 4個/\48(@\12)
③売上              6個(@\13)
④仕入 8個/\80(@\10)
⑤期末              10個(@\10.6)

「期間の取り方」は通達を参考に!
 法人税では「総平均法」は「期別総平均法」、「移動平均法」は「その都度移動平均法」を基本として考えていますが、通達では「総平均法」は「6か月ごと」「月別」、「移動平均法」は「月別」で行うことも認めています。「月別総平均法」と「月別移動平均法」は実は全く同じになるのですが、それぞれ「総平均法」と「移動平均法」の一つとされています。過去の判例では、上半期が異常であったため採用した「期末前2か月間の総平均法」が「総平均法」に該当するものか否か争われた例があります。

H29.12.25

目標設定の合意形成手順

目標の適切さの組織としての合意形成は、目標管理制度の年度運用スタート時の重要事項ですが、ここでは、その効果的な実施手順を解説致します。
 すなわち、個人目標・プロジェクトチーム目標を設定し、目標管理シートに記載した後、次の手順で合意形成を行います。

1.合意形成ミーティングの準備
①管理者は事前に「個人目標・プロジェクトチーム目標・達成基準」を一覧で整理、記載内容、問題点、確認が必要な事項、激励したい事項等を検討しておく。
②合意形成ファシリテーションミーティングの進め方を検討する。
・全員参加・全員発言に導くため、2~4名単位の質問・討議小グループ形成
・記録担当者の指名

2.合意形成ファシリテーションの実施
①個人目標・プロジェクトチームの目標達成基準案一覧表と目標設定チェックリスト(SMARTの原則)を配布
②ファシリテーターから参加者へ次の事項を要請。
・参加者個人別に、個々の目標が、目標設定チェックリストに合致しているか、真摯にチェックし、問題点を具体的に発見する
・問題点の指摘の仕方・指摘の受け方を次のように要請する
①指摘する側の発言は「ズバリ一言、30秒」の要領で、端的に
②指摘を受けた側は、原則として反論なし(謙虚に人の話をよく聞こう、指摘された事項について、あとでよく考えて処置を判断すれば良い、との趣旨)
・参加者が自分で設定した目標と達成基準を発表する
・小グループごとに、ファシリテーターの要請に従って、指摘点を検討し(5~10分)、代表メンバーが問題点を指摘する。記録担当者は指摘の内容(目標名・内容のポイント)を板書、または模造紙に書く等出席者全員が見られるようにする。
特に必要な場合は目標設定者が説明
・管理者(ファシリテーター)が、整理、まとめを行い、修正が必要な目標設定者と修正点を指摘

3.管理者と目標設定者の合意形成ミーティング実施
目標の確認、達成プロセス・能力開発に関する支援の約束、期待表明と激励。

H29.12.22

消費税 新規設立は少し慎重に

 法人の新規設立にあたっては、特別な事情がない限り、なるべく長く期間をとる方向で事業年度、いわゆる決算期を決めます。その方が、設立から早めに決算期が到来する煩わしさから解放され、落ち着いて経営に専念できるといったメリットがあります。

●思わぬ落とし穴
 消費税では、新規設立の場合(資本金又は出資金1,000万円以上の法人は除く)には、基準期間がないので設立時の事業年度と翌事業年度は、原則、免税事業者となります。
 なお、基準期間とは、その事業年度の前々事業年度で、免税事業者とは、消費税の納税義務のない事業者を言います。
 しかしながら、消費税の課税事業者を判定するのは基準期間だけでなく、特定期間の課税売上高等で判定する場合もあります。
 特定期間とは、原則、その事業年度の前年事業年度(設立一期)で、前事業年度開始から6か月の期間を言い、そして、その期間の課税売上高が1,000万円を超え、かつ、給与等の支払いが1,000万円を超えていれば、その事業年度は課税事業者となり、消費税の納税義務を負うことになります。
 設立一期目から好業績が予想される法人の場合、この特定期間があることで、本来、翌期は免税事業者であると予期されていたにもかかわらず、課税事業者となってしまう可能性があります。

●特定期間の回避策
 そこで、それを回避するにはどうしたらよいか、ですが、特定期間の要件を外すこと、すなわち、設立一期の事業年度を「短期事業年度」になるように設定することです。
 短期事業年度とは、(1)設立一期の事業年度が7か月以下の場合、又は(2)設立一期の事業年度が7か月を超え8か月未満の場合であって、設立一期開始の日以後6か月の期間の末日の翌日からその事業年度終了の日までの期間が2か月未満の場合で、これらの期間は、特定期間から除外されています。
 なお、設立一期の後半で、特定期間の存在に気づいたときは、上記(2)の要件を満たすように決算期を変更することで翌期に課税事業者となることを回避できる場合もあります。

H29.12.21

従業員が「iDeCo」 加入時に行う事業主の手続

改正を契機に加入者増加
 今年1月から改正確定拠出年金法の施行により個人型確定拠出年金(通称iDeCo)は基本的に20歳以上60歳未満のすべての方が任意で加入できるようになりました。
 この改正により、今年に入ってから加入者が大幅に増加しており平成29年6月時点における加入者数は54万9943人と前年比203.8%となっています。

iDeCoの仕組み
 iDeCoは、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の1つであり、加入者の老後の所得確保の一助となる制度です。
 加入者が自ら定めた掛け金を拠出・運用し、原則60歳以降に掛け金とその運用益の合計額を基に給付額が決定し、受ける仕組みです。
 厚労省では、従業員がiDeCoへの加入を希望した場合に速やかに加入できるよう、事業主への協力を呼び掛けています。

事業主が行う事務手続きとは
 企業で働く従業員がiDeCoに加入する際、は事業主が行わなければならない事務手続が発生します。その手続は次の通りです。
①事業所登録
 加入者となる従業員(会社員等の2号被保険者)を雇用する事業所は国民年金基金連合会(国基連)に事業所登録を行います。
②事業主証明書の記入
 加入を希望する従業員から提出される事業主証明書に必要事項を記入します。
③事業主証明(年1回)
 年に1回、国基連加入時に得た情報を基に加入者の確認を行いますが、その際に事業主証明が必要となります。
④事業主払込の場合の掛金納付
 加入者が給与天引きで事業主払込を希望した場合は源泉徴収の際に掛け金を控除します。そして事業主から国基連に納付します。
⑤年末調整
 所得控除がある為、加入者が個人払込を選択した場合は年末調整が必要です。本人から小規模企業共済等掛金払込証明書を提出してもらいます。
 このように従業員が個人型確定拠出年金に加入した場合でも会社として行う事務が発生します。申し出があった時は協力をしてあげる事が必要でしょう。

H29.12.20

高額役員報酬残波事件 カルロス・ゴーンを何故問わぬ

 泡盛「残波」過大役員報酬事件は、退職給与については納税者勝利、月次報酬については納税者部分敗訴につき現在最高裁に上告中です。
 以下、判決文の納税者主張部分を、抜粋しました。

役員報酬は私的自治が妥当
 税には、税を課することによって企業や個人の行動が不当に制約されることがあってはならないという中立性原則があるところ、役員給与額の決定は、まさに私的自治が妥当する分野である。・・・・機械的に過大役員給与の認定を行うことは、私的自治への不当な介入すなわち税の中立性原則を破壊するものとして、法人税法も許容していないというべきである。

ゴーンさんこそ高額給与
 上場企業の役員給与について検討すると、自動車業界については、日産自動車の同業種類似法人として抽出されるトヨタ自動車及び本田技研工業の役員給与と比較して、日産自動車の代表取締役であるカルロス・ゴーンの役員給与は、過大役員給与となり、電気機器業界については、ソニーの同業種類似法人として抽出される日立製作所、パナソニック、東芝、富士通及び三菱電機の役員給与と比較して、ソニーの代表取締役である平井一夫の役員給与は、過大役員給与となり、総合商社については、伊藤忠商事の同業種類似法人として抽出される三菱商事、丸紅、三井物産及び住友商事の役員給与と比較して、伊藤忠商事の代表取締役である岡藤正広の役員給与は、過大役員給与となる。
 被告は、上記各上場企業については、過大役員給与額に係る課税処分を行わず、原告に本件各更正処分をしたところ、合理的な理由を欠いた不平等な課税処分であるから、本件各更正処分は、憲法14条に違反する。

高額役員報酬規定は事実上死文化している
 平成17年の会社法の成立に伴い、利益処分とされていた役員賞与は、費用として整理され、法人税法35条は、削除されることとなり、・・・・定期同額給与又は事前確定届出給与に限定されることとなり、・・・・隠れた賞与支給概念が消失し、高額役員報酬規定は死文化し、納税者への同項の適用は観念されないものとなった。

H29.12.19

たまたま、大売れしてしまったら… LINEスタンプの収入と変動所得

LINEスタンプ収入は「変動所得」か?
 無料通話・メールアプリの定番となったLINE。2014年からは利用者が自作した「スタンプ」(アプリのメッセージに挿入できるイラスト)を販売できるようになり、当初は数千万円も売り上げた制作者(クリエイター)もいました。現在は登録数も増え飽和状態のため、大ヒットは難しくなりましたが、一攫千金を夢見る人は多いようです。
 このLINEスタンプの収入については、「平均課税制度が使えないのか?」という質問を受けることがあります。平均課税とは、一時的に所得が増加した人の税金負担を緩和する仕組み。スタンプ収入はいかにも当てはまりそうなものです。その対象となる「変動所得」は、所得税法で限定されており、「著作権の使用料」に係る所得がその一つに挙げられています。

当事者は権利関係をどう整理しているか?
 では、スタンプ収入は「著作権の使用料」に当たるのかといえば、クリエイター側はそのような意識は低いかもしれません。ネットでは「デザイン(意匠)の報酬」の面が強いため、変動所得には当たらないという意見もあります。ただ、デジタルコンテンツの場合、どのような権利とも取れる側面もあり、当事者間で権利関係をどう整理しているかがポイントとなります。
 参考となるのが、LINEクリエイターズマーケットの利用規約とHPのQ&Aの記載です。
 利用規約では、クリエイターは、コンテンツ(LINEスタンプ)等を利用する権利(複製等または公衆送信権を含む)をLINE社に許諾し、LINE社がコンテンツ(LINEスタンプ)の配布をした場合、クリエイターに分配額を支払うという内容となっています。
 また、Q&A(源泉の取扱い)では、スタンプの販売行為は「クリエイターが保有する著作権の使用に該当する」として、源泉徴収を行っていると記載しています。これらより、LINE社ではスタンプ販売は「著作権の使用」と認識しているものと考えられます。

Tシャツの原画使用は「著作物の複製」
 源泉税の取扱いでは、アートTシャツを販売したときにイラストレーターに支払う原画の使用料は、「デザインの報酬」でなく、イラスト原画という美術品の「著作物の複製(著作権の使用)」とした例があります。
 源泉税の「著作権の使用」の考え方を、そのまま変動所得の「著作権の使用」に当てはめるのはいささか乱暴かもしれませんが、参考にはなるのではないでしょうか。

H29.12.18

決算期の変更に留意 法人税のほか消費税にも配慮

 不動産の譲渡により多額の売却益が見込まれるとき、法人税の節税策の一環として、決算期を変更し、不動産の売却から決算期末までの期間を長くすることにより時間を確保し、その期間に合理的な施策を講じることもままあります。

●決算期変更による基準期間のズレ
 決算期が変更されたことにより、消費税の納税義務の判定となる基準期間にズレが生じ、決算期変更前の基準期間であれば免税事業者(消費税の納税義務なし)であったものが、決算期変更後の基準期間では課税事業者になってしまうこともあります。
 なお、基準期間とは、その事業年度の前々事業年度をいい、当該事業年度の課税売上高が1,000万円以下であれば、その事業年度は免税事業者になります。
 例えば、12月決算法人で、平成28年12月期の課税売上高1,000万円以下、平成29年12月期の課税売上高1,000万円超であった場合で、当期が平成30年12月期であれば、当期は免税事業者となります。
 現状の12月期決算であれば、平成30年3月末引渡し予定の不動産があり、その売却価額3億円、内建物の売却価額が1億円だったとして、建物価額にある消費税については消費税を納める義務はありません。
 ところが、法人税の節税を意図して決算期を平成30年2月末に変更したとします。そして、予定通り平成30年3月末に不動産が引渡されれば、翌平成31年2月まで12か月間の時間が確保でき十分な節税策を講じることが可能となります。しかし、不動産の引渡しは、平成30年3月1日~平成31年2月末の課税期間となり、当該事業年度の基準期間は平成29年12月期となることから、課税事業者に該当し消費税を納めることになってしまいます。

●特定期間に該当する場合も
 課税事業者又は免税事業者の判定は、原則、前々事業年度の課税売上高で判定するのですが、前期の課税期間前半6か月間、いわゆる、特定期間の課税売上高が1,000万円を超え、かつ、当該期間の給与等支払額が1,000万円を超えていれば、その翌事業年度平成32年2月期も課税事業者になってしまいます。
 事業者に免税、課税となる期間がある場合には、決算期の変更により思わぬ事態を招来させることもありますので、法人税のみならず消費税にも配慮したいものです。

H29.12.15

目標設定の合意形成

 “目標設定の合意形成”とは、目標管理制度の運用上、各年度のはじめに、個人目標・プロジェクトチーム目標が適切に設定されたことを、組織として合意形成し、認め合うことを言います。
“目標設定の合意形成”の重要性は、それが、目標達成時の貢献度評価の際、公正性・納得性を確保する基礎となる点にあります。

合意形成の基準と方法
 目標設定の適切さを合意形成するには、評価基準・方法を定めておくことが必要です。目標設定の適切さをチェックする評価基準として「SMARTの原則による目標設定チェックリスト」が工夫されています。

「SMARTの原則・チェックリスト」
キーワード チェックポイント
S Specific& Stretch
具体的で、かつ努力してようやく手が届くストレッチ目標
M   Measurable 
    測定可能な達成基準は可能な限り定量化し、定量化出来ない場合でも、
    達成度評価が出来る程度まで具体的な表現であること
A Align
部組織目標達成に貢献する個人目標、プロジェクト目標であること
R Realistic
現実的なストレッチな目標であることを前提として、決して達成不可能ではないこと
T Time-bound
    期限付きであること

 評価方法としては、同じ部署に所属し、上位の組織目標を分担して個人目標を設定した仲間が、お互いの目標の適切さをチェックリストで評価し、指摘し合う「相互フィードバック」を活用するのが最適です。

経営者・管理者の留意点
 このような「相互フィードバック」を重要な参考として、管理者と個々の社員・プロジェクトチームによる「目標設定面談」を行い、目標設定の適切さ、達成プロセスのフォローアップ方法、能力開発努力を確認し合い、経営者・管理者の期待と支援・激励を伝えるのが、スタートに当たって最善のマネジメントと言えます。

H29.12.14

「外れ馬券は経費」という判決も、競馬好きの貴方に即当てはまるわけではない

「外れ馬券は経費」:自動購入ソフトを使っていないケースでも12/15最高裁確定へ
 「『自動購入ソフトを使わない外れ馬券の経費性を巡る問題、札幌国税局vs北海道在住の男性』の判決期日を最高裁裁判長が12月15日に指定したにもかかわらず、『結論を変更するのに必要な弁論が開かれていないため』、約1億9千万円の追徴課税処分を取り消した2審東京高裁判決が確定する見通しとなった」という報道がありました。
 自動購入ソフトを使ってネットで大量の馬券を購入していた大阪の男性の裁判において、馬券購入は「営利目的の継続的行為」で、払戻金は雑所得にあたるとして平成27年3月最高裁が認定し、外れ馬券分を経費と認める判断を示していた判決に続く話です。

争点は「経済的活動の実態があるか否か」
 今回のケースでは、「ソフトを使わずにレースごとに結果を予想して馬券を購入」しており、それが「経済的活動の実態があるか否か」というのが争点でした。1審(東京地裁)では納税者の負けでした。
 しかしながら、2審(東京高裁)では、「男性は多額の利益を恒常的に上げていた」と判断し、最高裁のケースと「購入方法に本質的な違いはない」とし、外れ馬券分を経費と認めて課税処分を取り消し、納税者の勝ちとなっていました。
 「外れ馬券が経費かどうか」は、「継続的・恒常的に利益を上げるために購入を行っていたかどうか=営利を目的として継続的に行われているかどうか」にあるようです。

あなたの外れ馬券は、原則、経費ではない!
 たまの息抜きや射幸心のために競馬を楽しむ人の場合は、外れ馬券は経費となりません。万馬券を当てたようなとき(=年間を通して一時所得の特別控除である50万円を超える当たりだった場合)は、そのレースの外れ券だけが経費です。すなわち、他のレースの外れ券を万馬券の当たりから差し引くことはできません。
 競馬の当たりも、儲けとして、確定申告して税金を納めなければなりませんので、忘れないようにしましょう。無申告だと罰金が科される恐れもありますから、くれぐれも忘れずに!

H29.12.13

棚卸資産の評価方法 届出の棚卸評価をしなかった場合

 棚卸資産の評価方法の選定・変更
 法人が商品・製品・原材料などの棚卸資産を有することとなる場合には、その事業の種類(又は事業所)ごと・棚卸資産の区分ごとにどのような方法で評価を行うか選択し、その「届出書」を所轄の税務署に提出しなければなりません(提出がない場合には、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」となります)。

期末評価 原価法・低価法
算定方法 個別法・先入先出法・総平均法 移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法
 
 この棚卸資産の評価方法を変更しようとする場合には、その新たな評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、「変更申請書」を所轄税務署長に提出し、承認を受けなければなりません(原則として選択した方法で3年以上継続適用後)。

届け出た評価方法で評価しなかった場合
 もし、「届出書」と異なる評価方法により評価を行った場合、どのような形になるでしょうか。この場合、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」(一定の場合、その法人が行った評価方法)により評価することとされています。
 例えば、「総平均法」の届出を行っている会社が変更手続きを経ないで「先入先出法」を行っている場合には、税務署の行う更正・決定の場面では、「最終仕入原価法」により評価する場合もあるということになります(一定の場合、届出の「総平均法」で是正も認められます。自主的な修正申告の場合には、この例が多いと思います)。
 一方、「総平均法」の届出を行っている会社が変更手続きを経ないで「最終仕入原価法」を適用して申告した場合には、適法とはいえませんが、結果的には認められることになります。ただし、青色申告の取消事由として「選定した評価方法による評価額で行われていない場合」が挙げられているため、高リスクといえます。

評価方法を設立第1期目に変更できる?
 設立当初に、ある評価方法で届け出ていたが、最初の申告時に別の評価方法を採用したいという場合では事情が異なります。
設立後最初に提出する法人税申告書の提出期限内であり、その変更後の評価方法を最初の申告で採用しているときは、当初の「届出書」からの変更が認められています。

H29.12.12

重複適用の可否 投資促進税制と圧縮記帳

 平成29年度税制改正で中小企業投資促進税制の一部が見直しされました。その概要は次のとおりです。
 対象資産から器具備品が除かれ、また、上乗せ措置としてあった特定生産性向上設備等については、新たに創設された中小企業経営強化税制に移行されました。

●中小企業投資促進税制の税額控除
 特定中小企業者等が特定の機械装置等(以下、設備)をした場合には、その資産の取得価額の7%に相当する金額について税額控除の適用があり、当該控除額が法人税額の20%を超えるときは、法人税額の20%相当を限度として、法人税額から控除することができます。
 なお、特定中小企業者等とは、中小企業者等のうち、資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人(農業協同組合等を除く)以外の法人をいいます。

●国庫補助金等に係る圧縮記帳
 事業者は、国又は地方公共団体等からの補助金等の交付を受けて固定資産を取得した場合、法人税法上、当該補助金等で取得した固定資産については圧縮記帳の特例が適用できます。この特例の概要は、次のとおりです。
 その取得した固定資産の帳簿価額を補助金相当額(圧縮限度額)の範囲内で損金経理により直接減額し、当該金額をその事業年度の損金の額に算入するものです(積立方式も可)。

●重複適用の可否
 特定中小企業者等も自治体からの補助金を受けて投資促進税制の対象となる特定の設備を取得することがあります。この場合、「税額控除」と「圧縮記帳」どちらか一方しか適用できず重複適用ができないのでは、と思ってしまいます。
 しかし、法人税上の圧縮記帳と租税特別措置法上の税額控除との重複適用については、それを禁止する規定がありませんので、重複適用は可能です(特別償却も可)。
 その適用に当たっては、損金算入された国庫補助金等の交付金額(予定額も含む)を控除した金額を取得価額として税額控除限度を計算することになります。
 なお、国庫補助金等交付予定額を控除しない金額を取得価額として税額控除限度額を計算して申告したときは、固定資産の取得の後に国庫補助金等を受けても圧縮記帳はできません。

H29.12.11

“カスケードダウン”

“カスケードダウン”とは、目標管理制度で目標を設定する際、経営戦略に基づいて設定された年度経営目標から、部・課・担当者へと目標を細分化することを指し、「cascade(カスケード:瀧のように落ちる)」の意味から、目標を上から下へ「段階的に順次細分化する」ことを意味します。
 非管理者の立場で、「目標達成度で評価されるなら、目標達成基準を低く設定すれば達成し易くなる」という「目標矮小化現象」が起きたことが、多くの企業で一時問題となり、その防止策として、目標を自己の裁量で設定するのではなく、上位目標の細分化により設定する方法がとられています。

“カスケードダウン”の課題解決策
 “カスケードダウン”を実施するに伴い、一般に次の課題が生じており、それらの解決策について述べます。
①適切な“カスケードダウン”がなされたことの確認方法。
②“カスケードダウン”を行うことが、“押しつけ目標”となりやすい問題の解決法。
③経営目標の達成基準が「業務の質の改革・改善(例えば、「企画提案レベルの向上」」であった場合、“カスケードダウン”をどのように行ったらよいか。
[課題と解決策]
課題 解決策
①上位目標から“カスケードダウン”された適正な目標であることの確認
・適切な目標設定を行うチェックリスト「SMART」を活用し、部
・課の目標設定ミーティングにおいて、仲間同士が、相互にチェック、確認し合う。
②“カスケードダウン”に伴う“押しつけ目標”の排除 ・目標設定ミーティングで、主体的・挑戦的な目標設定を誘導
・「チャレンジ度基準」の設定、適用
③「質的改善・改革目標」の“カスケードダウン”方法
所管部署(部・課)の業務に即して目標を設定
「上位の経営目標・組織目標」を受けて、「所管業務の問題点・課題を発見し、改善・改革する目標」とする(重要度点数化)
 質的向上目標の“カスケードダウン”を実施することは、質的目標の定量化・計数化を工夫することに繋がります。

H29.12.8

年金受給開始
70歳超えも選択肢に

年金受給開始を70歳超まで選択可能に? 
 内閣府の「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」は、公的年金の受給開始年齢を70歳以降まで繰り下げることを可能にする仕組みつくりを盛り込んだ案をまとめました。これをもとに年内に長期的な高齢者施策の「高齢社会対策大綱」の改正案を閣議にはかる予定です。
現在は年金の受給開始年齢は原則65歳です。現行法では60歳から70歳の間で開始年齢について「繰り上げ」もしくは「繰り下げ」ができます。開始年齢を早めれば65歳から開始するのに比べて最大30%減額、遅くすれば1年ごとに0.7%ずつ増え、最大42%増える仕組みになっています。今回の提案では希望すれば70歳を過ぎてからの受給開始が可能になり、その分年金額が増える制度を導入しようと考えています。   

年内に「高齢社会対策大綱」策定
 骨子案として「すべての高齢者の意欲・能力を活かして活躍できるエイジレス社会を目指す」とし「年齢区分で人々のライフステージを画一的にくくることを見直すことが必要」としています。「意欲ある高齢者が働き続けられ、また就業ができる仕組みを構築できることが基本」であり、併せて「高齢者の低所得を防止」する視点も望まれるとしています。60歳の定年後に再雇用される仕組みだけではなく、新たな職域としてそれまでの経験や知識を生かした仕事や社会活動、地域社会のコミュニティ作り、資産活用等も盛り込まれています。

高齢者の定義が変わる?
 日本老年学会などは今年の1月に現行法で65歳と定められている「高齢者」の定義を「75歳」以上に引き上げ65歳から74歳は、准高齢者として区分すべきと提言しました。同学会は10年前に比べると現在の65歳以上の人の知的・身体能力は5歳から10歳若返っていると判断したということです。准高齢者年齢とされた人々は近い将来働くことが通常な年齢となるかもしれません。少子高齢化で人口が減る中、政府は多くの高齢者に働き続けてもらいたいとのことでしょう。そうすれば年金の財源の安定にもつながるということかもしれません。

H29.12.7

建設工事の節目で行われる式典
起工式・落成式等の式典費用

建設工事の節目に行われる様々な式典
 新しい社屋や工場を建設すると、工事の節目節目で様々な式典が行われます。
 その地方や会社の業種、宗教等によりますが、一般的には神事として行われるものが多いようです。担当する方は慣れぬ仕事に戸惑うことでしょう。例えば、「地鎮祭」と「起工式」は、どちらも工事着工に当たり、施主・施工者・工事関係者が参加する式典。土地の守護神をまつり、工事の安全を祈願するものですが、大手ゼネコン鹿島のHPによれば、祭神が異なるようです。
地鎮祭
大地主神(大地の守護神)
産土大神(土地の氏神)
起工式
手置帆負命(工匠の守護神)
彦狭知命 (工匠の守護神)
産土大神(土地の氏神)
「上棟式」も神事です。最近は、鉄骨造の場合、鉄骨のクレーン吊り上げ、鉄筋コンクリート造の場合は、最後のコンクリートの打ち込み等のセレモニーが行われます。
 工事が完成すると、「竣工式」、「落成式」、「完工式」や「定礎式」が行われます。「竣工式」は神事色が強いですが、「定礎式」はもともと西洋の石造建築の「礎石」を据える祭式に由来するそうです。

建物新築に伴う式典費用と取得価額
 法人税では、これらの式典がいつ行われたものかにより建物の取得価額に算入するかどうかの取扱いが異なります。
起工式・上棟式など 完成までの式典は、建物の取得価額に算入
竣工式・落成式など 完成後の式典は、取得価額に算入しなくてもよい
 また、これら式典では、来客者に接待・供応するような場面も多くあることから、交際費に該当するものが出てきます。
 その判断は、概ね次のようになります。
①従業員等に概ね一律で社内で供される通常の飲食費 交際費に該当しない
②式典の祭事のために通常要する費用 交際費に該当しない
③式典における宴会費(①以外)、交通費、記念品代 交際費に該当する

取得価額に算入した交際費の取扱い
 これらの式典費用のうち交際費に該当するものを取得価額に算入すると、費用計上されていない交際費(原価算入交際費)の損金不算入となってしまうため、一定の調整(当期:取得価額の減額、翌期:決算上調整)が必要となります。

H29.12.6

役員給与は原則損金算入?損金不算入?
モノの言い方は難しい?

スタンスが「原則損金不算入」に変わった?
 税理士は、役員給与について、「規定では、原則損金不算入です」と説明します。ただ、「気持ちは原則損金算入です」と感じている方も多いのではないでしょうか。この経緯については、平成18年度の税制改正の話まで遡らなければなりません。
 平成18年前の法人税の規定は、役員給与を報酬(定期の給与)と賞与(臨時的な給与)に分けた上で、報酬を「原則損金算入」とすることを前提に、賞与・過大な報酬を「損金不算入」とするとされていました。
旧34条 過大な役員報酬の損金不算入
旧35条 役員賞与の損金不算入
 平成18年に会社法が施行され、役員給与に概念が一括りにされたため、法人税法も改正されました。旧35条は廃止し、34条の条文見出しが「役員給与の損金不算入」とされ、次のような内容となりました。
34条1項 役員給与の損金不算入
(例外:定期同額給与などは損金算入)
34条2項 (過大な役員給与の損金不算入)

財務省「原則損金不算入と考えない」?
 この条文見出しやこれまでの報酬が例外的扱いとなる書きぶりは、インパクトがありました。これについて、当時の財務省の担当者は次のようにコメントしています。
「(役員給与が原則損金不算入となったという指摘があるが)法人税法の構造として22条の別段の定めを規定しようとする場合には、このような見出しや構成内容にならざるを得ないものであって、そもそも役員給与を原則損金不算入と考えるといったことではない」
 22条(公正会計処理基準)は、一般に公正妥当と認められた会計基準に従うというもの。法人税法の「原則」です。これに当たらないものが「別段の定め」(例外)。
 このような法人税の構造上、役員給与は公正な会計基準に基づけば「原則」(損金算入)で、34条は「例外」(損金不算入)という形をとらざるを得ない―単なる立法技術上のお話ですということなのです。

モノの言い方の問題ではありますが…
 この「原則不算入」と読める条文に、現在でも「違法とは言わないが、立法作法として如何なものか?」という意見は根強くあります。日税連でも、役員給与は原則として損金に算入できるものとして、損金不算入とされるものを包括的・限定的に法令に規定すべきと要望しています。

H29.12.5

専門職の賃金制度改革

 日本の産業社会は、高度成長期を経て、知識集約型産業社会に移行しており、専門職の活躍が業績を大きく動かすようになっています。
 そこで、専門職の人事賃金制度は、グローバルに人材を獲得する上でも重要な経営課題であると言えましょう。
専門職の賃金制度改革課題
専門職を重視する企業では、専門的知識・技術・経験を持つ社員を、次のように管理職層とし、マネジメント職(部長・課長)と同等に処遇するケースが増えています。

[管理職層の役割等級体系例]
管理職          
組織のマネジメントにより、経営に貢献する役割 管理職
管理職1級
管理職2級
管理職3級

専門職
専門的知識・技術・経験により、経営に貢献する役割
専門職1級
専門職2級
専門職3級

 管理職は、組織業績に責任を持ち、マネジメント・人材育成によって、業績向上を図る役割を持ち、組織活動の上では専門職をメンバーとして、マネジメントします。
 専門職は、自らが持つ専門知識・技術・経験を活かして、業績を上げる役割を持ち、所属部署や部署間のプロジェクトチームに参加します。また、自らが、複数の専門職や一般社員からなるプロジェクトチームのリーダーとして活動することもあります。
 そこで専門職の役割にふさわしく、その意欲を高め、活躍を促進するのに効果的な賃金制度を採ることが望ましいのです。

専門職の賃金体系例
 専門職の賃金体系は、その意欲・貢献を引き出すため、管理職と比較して、貢献給のウエイトを高めます。(月例給・単位万円)
管理職          専門職
等級  役割給 貢献給 等級  役割給 貢献給
     50%  50%       30%  70%
M1    270  270    PF1  162  378
M2    310  310    PF2  186  434
M3    350  350    PF3  210  490

経営者・管理者の留意点
 自社の専門職について、賃金制度を改革することは、特にグローバルな事業展開を戦略としている企業では重要と言えます。

H29.12.4

女性の就業率過去最高

 政府は平成29年版「男女共同参画白書」を閣議決定しました。これは男女共同参画基本法に基づき作成している年次報告書で、今年は女性活躍推進法施行後の現状と課題を挙げています。
 同白書によると平成28年の15歳から64歳の女性の就業率は66.0%で過去最高となりました。これは男女雇用機会均等法が施行された昭和61年(1986年)の53.1%から13ポイント上昇したことになります。

地域別の就業率は?
 都道府県別で見ると、平成27年時点の女性の就業率は福井県74.8%が最も高く、次いで富山県72.2%、島根県71.8%となっています。北陸地方が高い理由としては     2世代、3世代が一緒に住んでいる家庭が多いため子育ての負担が軽減でき、出産後も仕事に復帰しやすい環境が整っていること等が挙げられています。
 また、就業率が低いのは奈良県58.5%、兵庫県60.6%、大阪府61.4%となっています。福井県と奈良県の差は16.3ポイントもあることから、地域によってばらつきがあることがわかります。

海外では北欧が高い
 また、海外諸国とでは日本の女性就業率はOECD(経済協力開発機構)35カ国中16番目(OECD平均58.6%)です。
 最も高い国はアイスランド81.8%。以下スイス、スェーデン、ノルウエーが続き、北欧は女性が働きやすい環境が整っている様子が伺えます。

2020年までに女性管理職を30%に
 日本の女性管理職の割合は全国平均13.4%です。高知県21.8%、青森県20.3%で20%を超えますが、滋賀県、石川県ともに8%と10%未満も6県あります。
 女性活躍推進法が施行されて1年以上たちましたが、政府は2020年までに女性管理職の割合を30%にするという目標を掲げています。数字だけ見るとなかなか難しい状況に見えますが、政府は女性活躍の目標設定や情報の見える化をさらに進めていくとしています。各企業がどう取り組むのかが問われるでしょう。

H2912.1
やむを得ない役員給与の改定・変更
臨時改定事由・業績悪化改定事由

やむを得ない役員給与の改定・変更
 法人税法上、損金算入ができる「定期同額給与」「事前確定届出給与」は、職務執行前(定時株主総会)に「あらかじめ支給時期・支給額が定められているもの」に基づき支払われることを前提としています。
 ただ、給与を「先決め」した後に経営環境が変化することは、よくあること。そこで、次の「臨時改定事由」「業績悪化改定事由」による改定・変更が認められています。

「臨時改定事由」とは
 「臨時改定事由」とは、次の①や②に類する役員給与を変更せざるを得ないやむを得ない事情をいいます。
① 役員の職制上の地位の変更
② 役員の職務の重大な変更
 ①は役員の分掌変更があったケースです(例えば、社長が任期途中で退任したことにより副社長に就任した場合)。この「役員の職制上の地位」とは定款や総会決議等により付与されたものをいい、「自称専務」などは該当しません。
 ②は組織再編成があったケースなどが該当します(例えば、合併法人の取締役で、その職務内容に大幅な変更がある場合)。
 会社の不祥事に当たり役員給与を一定期間減額するケースも、社会通念上相当であれば、定期同額給与の減額改定・増額改定とも臨時改定事由に当たるとされています。

「業績悪化改定事由」とは
 「業績悪化改定事由」とは、その事業年度において会社の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する事由をいいます(減額改定のみ)。財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことのほか、次のような場合が該当します。
(業績悪化改定事由の例)
① 株主との関係上、業績悪化等について経営上の責任を問われ減額した場合
② 取引銀行との借入金返済のリスケジュール協議で要請され減額した場合
③ 経営悪化の状況下で取引先等からの信用確保のため、経営改善計画が策定され、役員給与減額が盛り込まれた場合
 これらは、会社の経営上、役員給与を減額せざるを得ない「客観的な事情」(例 主要取引先の倒産やリコール発生により業績悪化が不可避)があるかどうかにより判定します。裁決では経常利益6%減の会社が行った減額改定が否認された例があります。