港区 税理士法人 大沢会計
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2019年1月

2019/01/31

H31.1.31

勤怠管理システムの導入と業務効率化

勤怠システムの設定
 労働時間の把握にITを使った勤怠管理システムを使用する企業は増えてきてはいますが、勤怠管理システムの利便性の面だけでなく、重要なのは各企業の就業、勤務形態に対応する設定が必要な事です。システムで自動的に勤怠が集計され会社が考えていた集計結果が出るためには、勤怠ルールを覚えさせる設定が必要になります。
 勤怠システムの設定で何が必要かを見てみると、労働時間の設定では、
・標準労働時間のパターンを定義
・固定残業時間制、変形労働時間制、シフト制、裁量労働制、フレックスタイム制等
 上記の各パターンに対して次のような項目の内容を決めていきます。
・始業終業時刻、休憩時間
・早出、残業時間、金額の算出方法
・休日出勤、代休、振替出勤、振替休日
・時刻訂正方法を申請書にして定義する
・電車遅延、直行直帰、出張、有給、特別休暇、時間有給等の取扱い
 その他には、
・有給休暇付与のルールの定義(自動付与)
・承認者、承認ルートの設定
・給与計算システムへの取り込みフォーマットの定義
などがあります。

曖昧とした部分の取り扱い
 出退勤管理でも曖昧とした部分の取り扱い、つまり人間的対応を求められるような場合はどのようにしたらよいでしょうか。
 例えば遅刻を取り上げると、単純に遅刻、電車遅延、急病、途中で困っているお年寄りを助けた等、どの場合でも単なる遅刻とするなら問題は起きないのですが、お年寄りを助けた時だけは遅刻扱いにしない等パターンを洗い出し、設定する事が必要です。それをしないと手修正の手間が残ってしまう可能性があります。
 考えられるパターンを設定する事によって効率的な勤怠管理から給与計算までのスムーズな進行、完了が可能になるでしょう。それでも例外的な事態は起こりえます。
 勤怠管理システム導入はかなり時間もかかります。人事担当者の努力だけでは難しく、上部からの押し付けではうまくいかないでしょう。現場や従業員達の協力が不可欠ですが、ハードルを乗り越えれば非効率的な人事業務が解消する事に繋るでしょう。

H31.1.30

配偶者終身居住権は評価方法のみ先行

税制改正大綱で評価方法を明示
 配偶者終身居住権に係る改正民法の施行は2020年4月なのに、2019年税制改正大綱は早々に配偶者終身居住権の評価方法を明示しました。内容は、民法部会が公表しているものと同じなので、その踏襲を確認しただけとも言えます。
 しかし、評価方法以外にも、重要な問題があるはずです。

終身居住権の消滅益への課税は?
 終身居住権は一身専属権として死亡と共に消滅するものです。その自然消滅によって、終身居住権付不動産は何の制限もない不動産に生まれ変わります。その時に、終身居住権の消滅益を認識するのか、否か、重要なテーマです。

承継取得原価はどうなる?
 例えば、収用があり、終身居住権とそれに係る土地建物の譲渡がなされるとした場合、譲渡収入は時価評価の比で按分計算されるとしても、その譲渡原価はどういう計算をすることになるのでしょうか。
 現行法では、居住権付不動産の譲渡の場合、原価の一部を居住権に按分配賦することはしません。そういう計算は借地権についてのみあるだけです。終身居住権にも譲渡原価を割り振るのだったら、税制改正が必要です。

登記前提の債権・配偶者終身居住権の性格
 終身居住権は登記されることを前提にしているので、債権でありながら、借地権のような物権的性格を強く持ちそうです。
 借地権の登記の場合は土地固定資産税評価額の1,000分の10ですが、大綱には、終身居住権登記の登録免許税を建物固定資産税評価額の1,000分の2としています。
 登記は、土地部分にもなされるはずなので、この部分についての取扱いは不明です。

第3の基礎控除が新生
 配偶者終身居住権は、非嫡出子との遺産分割を想定しての制度創設と解説されていますが、その利用は非嫡出子限定ではありません。
 ネットで、小規模宅地の特例は第2の基礎控除だ、と言っている人がいます。利用の普遍性からして、うまい表現と思いますが、そうすると、新生の配偶者終身居住権は第3の基礎控除と言えそうです。
 子が土地建物を相続しても、相続配偶者に終身居住権を設定すれば、その部分は配偶者の税額軽減で実質非課税扱いになり、かつ第二次相続では、無税となるからです。

H31.1.29

フルエンゲージメント

 “Happy”は本来の実力発揮につながり、成果が生まれ、個人も会社も成長し、いきいきと人生を楽しむことができるようになること、そのために“フルエンゲージメント”の状態を保つことが重要です。ここでは、その“フルエンゲージメント”の保ち方について少し詳しく解説させて頂きます。

“フルエンゲージメント”の保ち方
 “フルエンゲージメント”は“Happy”に直結しますが、そうなるためには、図示したように、
① エネルギーマネジメントを行う。
・自分の特徴や得意技。エネルギーの状態を知り、月・週・日の時間配分で、集中してエネルギーを使うようにする。
・エネルギーを日々しっかり充電しておく
(例えば、早朝30分間、瞑想を行い、頭を空にすることで、リフレッシュする。夕刻、2~3キロのジョギングをするなど習慣的に一定の時間をリフレッシュに当てる)。
② なにが自分をHappyにするのか気づく。
・「考える」のではなく、「感じる」習慣を持つ(うれしいことをしっかり味わう習慣を持ち、自分の感覚を研ぎ澄ます)。
・一日一つ何かをやり遂げ、達成感を感じる(小さなことでも、何かをやり遂げた達成感を持つ。)
・Everything is Possible:世の中は無限に広がっており、どんなことでもできる、と感じ、自分を枠にはめず、「ワクワク」することを考える。

H31.1.28

配偶者終身居住権創設秘話

終身居住権の創設はなぜ必要だったのか
 民法改正で、配偶者終身居住権が制度創設され、さらにこれを補完するものとして、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住資産が遺贈・贈与された場合に限り、遺産分割での持戻し免除とすることになりました。

直系相続より同世代相続へ
 団塊の世代が若い時は、親に仕送りする時代でした。団塊の世代が老人になると、子がいつまでも親の脛をかじりつづける時代に変わりました。
 それで、配偶者の相続分を3分の2に、子の相続分は3分の1に、という制度改正が検討されていました。
 しかし、その前に片付けなければならない問題が急浮上しました。

人は平等に扱われなければならないけど
 平成25年9月4日付最高裁判所の非嫡出子法定相続分差別違憲判決が新たな問題を生むことになりました。
 この判決を承け、民法900条の非嫡出子条項が削除されました。その結果、相続の場面に修羅場が生じるケースが想定されることになりました。
 非嫡出子は被相続人の子であっても、相続配偶者の子ではないので、相続配偶者が次に死亡して相続開始となっても、その時は相続人の地位になることはなく、今次の相続で貰うべきものを貰わないと、次がないということになります。

血縁での相続と無血縁との相続
 実の親子関係であれば、子供は相続財産の取得を遠慮して、取り敢えずは親だけの相続にする、と言うことでも、多くの場合、異論は出ないのではないでしょうか。
 しかし、非嫡出子という血縁のない者との関係では、そういうわけにはいかないのは当然です。
 違憲判決で、非嫡出子の相続分が増えたことにより、例外的なケースではあっても、被相続人の配偶者の相続後の生活が脅かされることになった、という現実に対処しておく必要性があると民法部会では認識されたようです。

終身居住権の創設はなぜ必要だったのか
 でも、非嫡出子にとって相続配偶者の終身まで使用処分できない不動産の所有者になることを積極的に選択することなど考えられません。従って、配偶者居住権は遺産分割で承認しあう中から生み出されることは有り得ず、遺言は欠かせなくなります。

H31.1.25

労働条件通知がメールでも可能に

労働条件通知書は書面以外でも可
 企業が労働者に向けて提示する労働条件ですが、労働基準法第15条では書面による通知をするとされていました。しかし2019年4月から、労働条件の通知を書面だけでなく電子メールやFAXで知らせても良いようになります。既に社内ITを実用化しているところも多いと思いますが、新年度からFAXや電子メール等でも通知を可能にするよう、規制を緩和する事になりました。書面として印刷できればよいと判断されたので、企業にとって印刷、郵送のコストを抑え利便性も高まるでしょう。

労働基準法の施行規則改正
 働き方改革関連法に基づく省令で労働基準法施行規則第5条第4項に下線のように追加されました。
「法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
①ファクシミリを利用してする送信の方法
②電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)」

本人の希望が前提
 今回の改正は労働者がFAXや電子メール等での通知を希望する事が条件なので本人に通知方法を確認してから行い、FAXやメールでの通知を希望しない時は今まで通り書面での通知となります。
 電子メールで送信する場合の具体的なファイル形式(メール本文か添付ファイルかどちらでもよいか等)や本人が確実に受け取ったかどうかの確認の要否等、まだ詳細は明らかになっていません。新年度に施行されるまでに何らかの基準が示されるかもしれません。

H31.1.24

留学生の日本企業への就職事情

外国人労働者の市場
 日本において外国人が働くには在留資格が必要ですが、在留資格の中の留学生について法務省の入管局より「平成29年度における留学生の日本企業への就職事情」が発表されたので見てみます。
 留学生の日本企業への就職実態としては「留学」等の在留資格から日本国内企業への就職を目的とした在留資格の変更は22,419人が許可されています(前年比15.4%増)。主な国籍、地域は約半数が中国で10,326人(46.1%)、次いでベトナム、ネパール、韓国、台湾となっています。アジアだけでも全体の95.5%を占めています。

仕事の内容や就職先
 就職先の業種は非製造業が81.0%、製造業が19%で、非製造業では商業(貿易)(9.5%)及びコンピューター関連サービス(7.7%)が上位を占めており、製造業では一般機械及び電機(ともに3.1%)が上位を占めています。
 職務内容は翻訳・通訳が最も多く23.8%、販売・営業(14.1%)、海外業務(9.5%)、技術開発(情報処理)(6.3%)となっています。
 月額給与は20万円~25万円未満が47.3%で最も多く、次が20万円未満(34.6%)、25万円~30万円未満(10.3%)の順になっています。
 就職先の企業の資本金は最も多いのが500万円超1,000万円以下の企業等で4,282人(19.1%)、また500万円以下の企業への就職が4,077人(18.2%)、過半数は資本金3,000万円以下の企業に就職しています。
 就職先の企業等の従業員数については従業員数50人未満の企業等に就職した者が8,275人(36.9%)と最も多く、これも含めて100人未満の企業への就職数が10,356人と全体の約半数を占めています。
 就職先の所在地は、東京都が9,915人(44.2%)と多く大阪府2,228人(9.9%)、神奈川県1,278人(5.7%)と続きます。

出入国管理法改正で外国人雇用は活発化
 留学生は母国では大学卒以上の方が約70%、専修学校卒も21.7%おり、日本企業に就職する人は5年前の2倍に増えています。新年度から新しい在留資格もできるので、今後ますます外国人の雇用市場は活発になる事が予想されます。

H31.1.23

プロジェクトの成功要因

経営の重要課題を解決するために、しばしばプロジェクトチームが活用されていますが、次の様なトラブルが生じて暗礁に乗り上げてしまうことがあります。
・プロジェクトに取り組むメンバー間に深刻な意見の違いが生じて、進捗できない。
・大きな失敗が生じ、そのリカバリーのため、予算が大幅に超過した。
このような障害を未然に防止し、プロジェクトを成功に導くには、どのような対処策があるでしょうか。

プロジェクト成功の鍵
 プロジェクトを成功させるには、次の様
に、人材・課題解決手段・予算に関する成功要因を確保しなければなりません。
①リーダーがプロジェクトテーマの目標達成に志と能力・経験をもち、とりわけプロジェクトとチームメンバーのマネジメントに優れていること。
②課題解決に要するキーテクノロジーが適切に選択され、プロジェクトのチームメンバーが、キーテクノロジーを駆使する能力に優れていること(通常は異分野・複数のテクノロジーが必要なことから、それぞれを駆使できるメンバー間の協力関係が確保されていること)。
③予算が確保されていること。
④上記①~③と同時に、プロジェクトのリーダー・メンバーにより「基本構想」が策定され、プロジェクトが成功した時の姿が具体的に共有されて上位組織の承認を得ていること。
⑤プロジェクト推進・管理の基本方針が定められていること。
⑥推進プロセスのマネジメントが、リーダーのファシリテーションにより適切になされていること(特にプロセスでの課題解決の成功要因獲得や障害排除へ向けたメンバー間の共創)。
 このように、プロジェクト成功の鍵は広く、人材・テクノロジー・基本構想の確立・推進マネジメントに及びます。

経営者・管理者の留意点
 プロジェクトの成功要因は、人材確保に帰結します。このような人材確保は、長期人材育成・確保の人事施策によってのみ成功させることが出来ます。トップは日頃から上級管理者の協力を得て、事業分野別の中長期人材確保計画を推進したいものです。

H31.1.22

働き方改革法と企業の意識

人材採用・入社後活躍のエン・ジャパン株式会社は、人事担当者向けの総合サイトで、経営者や人事担当者に向けて「働き方改革法案について」のアンケート調査を行いました(回答648通)。それを基に企業が「働き方改革法案」に対してどこまで認識があるか、どう感じているかの実態が見えてきました。

1、「働き方改革法案」の認知度
 「働き方改革法案を知っているか」という問いには「概要を知っている」74%、「内容を含め知っている」21%と認知度は95%に達しています。

2、経営への支障度合い
 「働き方改革法案」が施行される事で経営に支障が出るかという問いには「大きな障害が出る」9%「やや支障が出る」38%とあり、企業規模が大きくなるにつれて「支障が出る」と回答する割合が増加しています。

3、経営に支障が出そうな法案について
 「経営に支障が出る」と回答した方への「支障が出そうな法案はどれか」という問いに対しては「時間外労働(残業)の上限規制」66%がもっとも多く、次に「年次有給休暇の取得義務」54%、「同一労働同一賃金の義務化」43%と続きます。業種別にみると広告、出版、マスコミ関連の「時間外労働の上限規制」80%、「年次有給休暇取得の義務化」70%、商社の「時間外労働の上限規制」74%が目立っています。

働き方改革の時間外労働の上限規制とは
 残業時間は月45時間、年360時間を原則とするが年720時間までは延長が可能であり、繁忙期は単月で100時間未満の残業を例外的に認めるという内容です(2019年4月施行、中小企業は20年から)。年次有給休暇取得義務は年に5日は有給休暇を消化させる義務が生じます(19年4月施行)。
 働き方については、各人が家庭の事情や自身の体調、結婚、出産等を抱えて仕事をしているので国が柔軟に多様化した対応策を示す事が必要と言う意見もあれば、中小企業には厳しいかもしれないがよい制度とする肯定的な意見もある一方で、残業の上限規制や有給の義務化は生産性が下がり、人員を増やせば人件費に跳ね返りコスト削減のため無理をしかねないのではなど、否定的な意見もあります。

H31.1.21

法人が受け取る生命保険金

 契約者を法人、被保険者を経営者とする法人契約の生命保険は、退職金等の準備や経営者の万が一に備えるといった保障目的からの加入が考えられますが、支払った保険料の一部もしくは全部を経費として損金計上できることから節税目的で加入される法人も多いと思います。
 支払った保険料の分だけ利益が圧縮され法人税を抑えることができますが、一方で生命保険金を受け取った際に生じる課税関係についても把握しておく必要があります。

保険金受取の会計処理
 法人が受け取る生命保険金は、所得の計算上全額益金に計上します。このとき、当該保険に係る支払保険料のうち資産計上している金額があれば損金に振り替えます。
 法人が経営者の遺族へ退職金を支払う場合、適正額と認められる部分は損金に計上することができます。また、弔慰金についても一定の金額までは、損金に算入することができます。
 したがって、計算上では受取保険金の額から退職金及び弔慰金の額を控除した残額に対し法人税がかかると考えることができます。

遺族が死亡退職金を受け取った場合
 経営者の死亡によって遺族が死亡退職金を受け取る場合、死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。ただし、死亡退職金等については相続税法上、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)が設けられているため、実際には死亡退職金等の額から非課税限度額を控除した残額に相続税が課税されることとなります。
 また、経営者の死亡後3年を超えて支給が確定した退職金を遺族が受け取った場合には、一時所得として所得税の課税対象となります。
 
 一般には節税商品と認識されている法人契約の生命保険ですが、後々の課税関係を理解した上で、万が一の時の保障のため、確実な資産運用のためなど目的を明確にして商品選びをすることが重要であるといえます。

H31.1.18

平成31年度税制改正大綱
消費税編

与党大綱、消費増税「確実に実施」と明記
「消費税対策」が中心に据えられた平成31年度の税制改正。与党税制改正大綱では、「消費税率10%への引上げを平成31年10月に確実に実施する。」と明記され、現政権の堅い決意を表明しています。
 既に30年11月に自民党税制調査会が「消費税率引上げに伴う対策について」の中で対策の大枠を掲げていました。

駆け込み・反動減
中小・小規模対策—–耐久消費財対策(平成31年改正)
逆進性対策—–軽減税率導入
負の所得効果対策—–賃金引上げ,幼児教育無償化

「複雑となりすぎた制度」環境整備急務
これが、与党税制改正大綱の「消費税率の引上げに伴う対応」の3項目に落とし込まれました。特に軽減税率導入時の混乱が予想されるため、環境整備が急がれます。
① 需要変動の平準化に向けた取組み
(価格表示・転嫁対策、住宅・自動車の措置)
② 軽減税率制度の実施
(Q&A追加、個別相談、レジ導入支援など)
③ 医療費に係る措置
(診療報酬の補てん状況を調査・対策)
「屋台でも免税」臨時販売場の出店容易に
 東京オリンピック開催に備え、外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売所制度)が見直され、事業者が地域の祭りやイベントに免税店を出店する際の手続きが簡素化されます(「臨時販売場に係る届出制度」の創設)。現行制度では、屋台など短期間で免税店を出店する場合でも、常設店同様の提出書類(店の見取図、マニュアル、免税対象品目など)が必要で、審査に時間がかかるため、申請を見送るケースも多くありました。この制度の開始は、平成31年7月からとなります。

急増する金密輸に対策:買取側控除に制限
 ニュース等で話題の「金密輸」についても対策が講じられます。国外から日本に金を持ち込む場合には、申告を行い、消費税を納める義務がありますが、密輸業者は金を隠して持ち込み、国内買取業者に消費税を上乗せして販売。差益を得ていました。
これに対し、①密輸品と知りながら行った課税仕入れは仕入税額控除を認めない、②金・白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の保存を仕入税額控除の要件に加える措置がされました(H31.4~)。

H31.1.17

平成31年度税制改正大綱
組織再編税制編

2つの組織再編成の適格要件を見直し
 日本の組織再編税制(合併・分割・現物出資・株式交換・株式移転・現物分配)では、資産等の移転元法人と移転先法人の間で、資産等の譲渡があったものと考えます。
これらの譲渡は、法人税法上、原則として時価譲渡(非適格組織再編成)とされ、特例として一定の「適格要件」を満たす場合には簿価譲渡・引継ぎ(適格組織再編成)を行ったものとされます。
原則(非適格組織再編成) 時価譲渡
特例(適格組織再編成) 簿価譲渡(引継ぎ)
平成31年度の税制改正では、再編を円滑化するため、「適格要件」が見直され、次の2つの組織再編成についても新たに「適格組織再編成」の対象となります。
① 親会社が子会社を完全子会社化した後に行う「逆さ合併」
② 間接保有の100%親会社株式を用いた組織再編成

完全子会社化後の「逆さ合併」
 現行法では、株式会社が株式交換等により100%子会社化した後(第1段階)に、完全子法人を存続法人とし、完全親法人を被合併法人とする「逆さ合併」(第2段階)を行う場合、100%子会社化の段階(株式交換等)で「継続保有要件」等を満たさないため、「非適格」とされていました。
 今回の税制改正では、完全子会社化後に「逆さ合併」が見込まれている場合には、第1段階(株式交換等)の適格要件のうち「完全支配関係継続要件」、「支配関係継続要件」及び「継続保有要件」は、その「適格合併の直前の時まで」の関係より判定するものとすることとなりました。
第1段階(株式交換) / 第2段階(合併)
P社 : 株式交換完全親法人 / 被合併法人(消滅法人)
S社 : 株式交換完全子法人 / 合併法人(存続法人)
そのため、このようなスキームは一連の「適格組織再編成」となります。

間接保有の完全親会社株式を用いた再編成
 現行法では、合併、会社分割、株式交換等を行う場合に、親会社株式を対価とするときは、「適格要件」の「対価要件」を満たすためには、「直接完全支配関係にある親会社の株式」に限定されていました。
今回の税制改正では、「間接保有の完全親会社」も組織再編成の対価として交付する場合についても、「対価要件」を満たすものとして「適格組織再編成」となります。

H31.1.16

平成31年度税制改正大綱
国際課税編

平成31年度税制改正では、OECDのBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの最終勧告を踏まえ、①過大支払利子税制、②移転価格税制、③外国子会社合算税制の見直しが行われます。
①②の改正は、平成32年4月以後に開始する事業年度、③の改正は、一部を除き、内国法人の平成31年4月以後に終了する事業年度の合算課税より適用されます。

過大支払利子税制の見直し
 過大支払利子税制とは、所得金額に比し過大な利子を国外の関連者等に支払うことによる租税回避を防止するため、その純支払利子のうち調整所得金額の一定割合を超える金額を損金不算入とする制度です。
 OECDの勧告を受け、次の改正が入ります。

対象となる支払利子等・・・ (改正前)関連者純支払利子等のみ (改正後)純支払利子等(第三者を含む)
調整所得金額(利子・税・償却前所得)・・・(改正前)国内外の受取配当益金不算入額を加算する(改正後)国内外の受取配当益金不算入額を加算しない
一定割合・・・(改正前)50% (改正後)20%
適用除外・・・(改正前)関連者純支払利子額が1,000万円以下など (改正後)純支払利子額が2,000万円以下など

移転価格税制の改正
 移転価格税制とは、国外子会社等との取引価格の操作による国外への所得移転を防ぐ制度です。OECDの勧告を受け、次の項目(主に無形資産)の改正が入ります
1 移転価格税制上の無形資産の定義の明確化
2 独立企業間価格の算定方法の整備
(算定方法としてDCF法を追加)
3 評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置の導入
4 移転価格税制に係る更正期間等を7年(改正前6年)に延長
5 比較対象取引に係る差異調整方法として統計的手法(四分位法)を認める

外国子会社合算税制の見直し
 この外国子会社合算税制は実質的事業活動がない外国子会社等(ペーパー・カンパニー)から得られる所得を内国法人の所得に合算して課税する制度。今回の改正では、海外ビジネスにおいて一般的に用いられる実態があり、租税回避リスクが限定的であるもの(持株会社、不動産保有や資源開発等プロジェクトに係る外国関係会社)がペーパー・カンパニーの範囲から除かれます。

H31.1.15

平成31年度税制改正大綱
消費課税(車体課税)編

 車体課税減税~大幅な見直しの背景
平成31年度税制改正大綱では、10月に予定されている消費税率の引上げ後の高額耐久消費税(住宅・自動車)の需要の反動減に配慮し、これらの税負担の軽減に重点が置かれています。
ただ、車体課税については、昔から、自動車メーカーから国内市場の活性化のため軽減の要望が強くありました。一方で車体課税の多くが地方財源。道路の維持管理に安定的な財源を確保が必要で、大胆な減税にはなかなか応じられません。
この双方の要求事項を消費税増税のタイミングで解決してしまおうというのも今回の改正の背景の一つ。与党税調も「最終的な結論」と力が入ったものになりました。

購入時の課税は新税導入(環境性能割)
 自動車の購入時の課税は、新税(環境性能割)が導入されます(H31.10.1より改正)。
改正前(消費増税前)—–自動車取得税(道府県民税)・ 購入価格×3%(エコカー減税あり)
改正後(消費増税後)—– 新税(環境性能割)※自動車取得税廃止・燃費に応じ0~3%(エコカー減税なし)
今回の改正では、消費増税後の負担を解消するため、改正後1年に限り、新税(環境性能割)の税率が1%軽減されます。また、一定の燃費基準を上回る車は非課税となります。一方、自動車取得税の廃止までの31年4月~9月購入の車両については、エコカー減税(自動車税)が縮小されます。

保有による課税(自動車税)は恒久減税化
 自動車の保有者が毎年納める自動車税(道府県民税)は次のように見直されます(H31.10.1以後の新車登録より改正)。
改正前—–排気量に応じて 年29,500円~111,000円
改正度(恒久減税)—–排気量に応じて 年25,000円~110,000円
これは恒久的な減税(1,000円~4,500円)で、排気量が小さいほど減税幅が大きくなります(軽自動車税は据置きとなります)。

自動車重量税のエコカー減税は縮小へ
 一方、2年に一度の車検時に支払う自動車重量税(国税)は増税となります。重量税のエコカー減税は2年期限で延長されましたが、環境性能(燃費)の悪い車は減税幅を少なくし、2回目車検の免税措置も電気自動車等に限定する方針です。また、「自動車重量譲与税制度」を設け、自動車税の税収減を補う仕組み作りを行っています。

H31.1.11

平成31年度税制改正大綱
資産課税編

個人事業者版の事業承継税制創設
 平成30年度税制改正では、非上場会社の事業承継税制の大胆な見直しが行われましたが、これに続き31年度改正では、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
総務省の調査では、平成37年には個人事業者の73%(150万人)が70歳以上となると報告され、世代交代を後押しする施策が求められています。そのため、10年間の時限措置として、承継資産(土地・建物・機械等)に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予される制度が整備されます。
 なお、この制度は小規模宅地等(特定事業用宅地等)との選択適用になります。

個人事業者の事業用資産の納税猶予(相続税)
対象者
認定相続人(承継計画の認可)
適用期間
H31.1.1~H40.12.31
要件
①相続又は遺贈により特定事業用資産を取得し、事業を継続していくこと
②申告期限までに担保提供・申請書提出
対象資産
特定事業用資産(不動産貸付事業除く)
①土地(地積400㎡まで)、②建物(床面積800㎡まで)、③一定の償却資産
※青色申告書に添付する貸借対照表に計上されているもの
承継後
継続届出書を税務署に提出

特定事業用宅地等(小規模宅地)の見直し
 小規模宅地等の減額制度の濫用を防止する観点から、特定事業用宅地等から相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除かれることとなります。ただし、その宅地の上で事業供用される償却資産の価額が土地の価額の15%以上であれば、適用対象とされます(H31.4以後の相続より適用)。

民法の成人年齢引下げに伴う改正
 平成34年4月以後の相続・贈与より、次の年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
相続税 未成年者控除の対象者の年齢
贈与税 下記の受贈者の年齢要件
①相続時精算課税制度、②直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率、③非上場株式等に係る贈与税の納税猶予

一括贈与非課税に受贈者の所得要件が追加
 「教育資金」、「結婚・子育て資金」の一括贈与非課税については、受贈者の所得要件が設けられることとなりました。平成31年4月以後の贈与からは、受贈者の贈与前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用できません。また、23歳以上の趣味の習い事代は「教育資金」の範囲外とされました(H31.7以後の贈与より)。

H31.1.10

平成31年度税制改正大綱
法人課税編

平成31年度税制改正大綱では、少子高齢化が進む中、持続的成長を実現するための「研究開発税制の見直し」や「中小企業支援」「地方創生」の推進、「税源の偏在」の是正措置等の改正項目が挙げられています。

研究開発税制はベンチャー企業に優遇措置
 試験研究費の総額に係る税額控除制度について、税額控除率を見直し一定のベンチャー企業(設立10年以内の法人のうち、当期に繰越欠損金額を有するもの等)の控除限度を40%(原則25%)に引き上げました。

  総額型・控除率(A=増減試験研究費割合)
  A>8% 9.9%+(A-8%)×0.3
  A≦8% 9.9%-(8%-A)×0.175

 特別試験研究費の税額控除については、研究開発型ベンチャー企業(産業競争力強化法の新事業開拓事業者など)との共同研究等に係る税額控除率を引き上げました。

  オープンイノベーション型(共同研究)
  共同研究のタイプ         改正前→改正後
  (大企業の研究相手)     
   特別研究機関・大学       30%(据え置き)
   その他の民間企業        20%(据え置き)
   研究開発型ベンチャー企業   20%→25%

 また、高い水準の研究開発を行っている法人について、総額型の控除率を割増しした上で、高水準型が総額型に統合されます。

中小企業支援税制の延長・見直し
 中小企業支援のため、①中小企業者等の法人税率の特例、②中小企業投資促進税制が2年間延長されます。また、地域未来投資促進税制について、高い付加価値創出に係る要件を満たす場合の特別償却率を50%(現行40%)、税額控除率を5%(現行4%)に引き上げる等の見直しが行われました。

事業税率の改正・特別法人事業税の創設
 法人事業税の標準税率が改正され、特別法人事業税(31年10月1日以後に開始する事業年度より適用)が創設されました。
 この税の全額を都道府県に対し、特別法人事業譲与税として、人口を譲与基準として譲与することで税収再配分が行われます。

  (1億円以下の普通法人等の法人事業税)
  所得金額    事業税率(旧→新)   特別法人事業税率
  年400万以下    5%→3.5%     事業税(所得割)の37%
  年400万超     7.3%→5.3%     〃
  年800万超     9.6%→7%      〃

その他の改正項目
 その他、仮想通貨の期末評価方法・譲渡原価の算定方法などの整備が行われます。

H31.1.9

平成31年度税制改正大綱
個人所得課税(金融・証券)編

金融庁要望の「NISA恒久化」は持越し
 平成31年度の税制改正大綱では、消費増税への対応に比重がかけられたため、金融・証券税制の分野については、脇に置かれた感があります。金融庁が要望していた「NISA制度の恒久化」「金融所得課税の一体化」などは実現に至りませんでした。
それでも、①NISAの利便性向上(海外赴任時の継続利用・利用開始年齢の引下げ他)、②投資信託等の内外の二重課税の調整措置、③レポ取引に係る利子の非課税措置の延長、④マイナンバーに関する所要の措置などが改正される予定です。

NISA口座保有者が出国した場合の特例
 NISA(一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISA)は、国内居住者の少額投資を非課税とする制度としてスタートしたため、居住者が海外転勤等により一時的に出国する場合には、NISA口座で保有している金融商品は一般口座(課税口座)に払い出されていました。また、帰国後においても、一般口座に一旦払い出された金融商品をNISA口座に戻すことはできませんでした。
 そこで、次の手続きを行った出国者については、国内居住者とみなしてNISA口座を最長5年間にわたり、継続利用できることとしました。
(一時的な出国による場合の特例)
継続適用届出書の提出 出国日の前日までに取扱金融機関に転任の命令その他やむを得ない事由により出国する旨等を記載した継続届出書を提出
帰国届出書の提出 取扱金融機関に帰国した年月日、非課税口座に再び上場株式等を受け入れる旨を記載した帰国届出書を提出
 なお、出国から帰国までNISA口座の保有はできますが、この間(最大5年間)、新規買い付けはできません。また、その出国につき「所得税の国外転出時課税」を受ける場合には、適用を受けることはできません。

NISA利用開始年齢の引下げ・利便向上施策
 民法の成年年齢が引き下げられることに伴い、NISAの口座開設が可能な年齢も20歳から18歳に引き下げられることになりました。平成35年1月1日以後の口座開設より適用されます(経過措置あり)。
 大綱には、その他にもロールオーバー移管依頼書の手続きの簡素化、一般NISAとつみたてNISAの切り替え手続きの簡素化など利便向上の施策が盛り込まれています。

H31.1.8

平成31年税制改正大綱
個人所得課税(一般)編

31年税制改正「消費税対策」が重点に
 平成31年の税制改正大綱では、10月に実施予定の消費税率10%引上げに伴う、駆込み需要・反動減対策(車両・住宅)に重点が置かれ、単年度ベースで1,670憶円規模の減税措置がされると公表されました。
 個人所得課税(金融・証券税制以外のもの)については、次の項目が改正されます。

住宅ローン控除の拡充(国税・減税)
 過去の消費増税時に住宅の駆込み需要とその後の販売減を経験していることから、住宅ローン控除が拡充されました。31年10月から32年末に入居する住宅(消費税10%適用)については、控除期間が現行の10年から13年に延長されます。11年目からは計算方法が変わることに注意しましょう。
1~10年目→住宅ローン年末残高×1%(最大40万円)
11~13年目→次のいずれか少ない金額
①住宅ローン年末残高×1%
②取得価額(最大4000万円)×2%÷3

空き家の譲渡の特別控除(国税・減税)
 適用期限が4年延長され、老人ホーム等に入所したことにより空き家になって場合においても、一定の要件を満たすものについては、適用の対象となりました。また、所有者不明土地を収用した場合の5,000万円特別控除制度が創設されました。

ひとり親(未婚)の非課税(住民税・減税)
 自公で議論となっていたのが、婚姻歴のないシングルマザー等の「寡婦(夫)控除」の取扱い。結論は翌年に持ち越しとなりましたが、次の要件を満たす「ひとり親」の住民税が非課税とされました(未婚男性の「ひとり親」にも適用されます)。
・児童扶養手当の支給を受けていること
・前年の合計所得金額が135万円以下
 なお、所得税の負担が残るため、給付金17,500円(非課税)が年収365万円までの10万人弱を対象に支給される見通しです

その他の改正(ふるさと納税の適正化など)
 その他には、①ふるさと納税の高額返戻品禁止(返戻割合3割以下の地場産品に限定)、②仮装通貨の取得価額の計算方法の明確化(移動平均法又は総平均法)、③申告書の源泉徴収票、特定口座年間取引報告書等の添付不要化・記載事項の見直し、④森林環境税(仮)の創設、⑤公的年金等の源泉徴収見直し等が措置されています。

H31.1.7

健康保険被扶養者 認定事務の変更

平成30年10月1日より変更

 日本年金機構が受けつける「健康保険被扶養者異動届」の添付書類の取り扱いが変更となり、日本国内に住む扶養家族の認定の際、申立てのみによる認定は行わず証明書類に基づき身分関係と生計維持関係を確認の上認定する事になりました。
 一定の要件を満たしている場合には証明書類添付を省略できます。

届出に必要な添付書類と省略事項

 扶養認定を受ける方が被保険者と同居している時は下記の①と②、別居している時は①②③の書類が必要です。

①続柄の確認……戸籍謄本か抄本あるいは住民票(同居で被保険者世帯主である事、提出日より90日以内に発行されたもの)
省略できる時……被保険者と扶養認定を受ける方双方のマイナンバーが届出に記載されている事と、扶養認定を受ける方の続柄が届書の記載と相違ない事を事業主が確認し備考欄の「続柄確認済み」の□にレを付している、又はその旨記載している。

②収入の確認……年間収入が「130万円未満」であることを確認できる課税証明書等(60歳以上の方、障害厚生年金の受給要件に該当する程度の方は180万円未満)
障害・遺族年金、傷病手当金、失業給付等非課税対象の収入がある場合、受取金額の確認ができる通知書控え
省略できる時……扶養認定を受ける方が所得税法上の控除対象配偶者又は扶養親族である事を事業主が確認し、事業主確認欄の「確認」を○で囲む。
又は扶養認定を受ける方が16歳未満の場合は省略できます。

③別居の場合……認定には別居の確認が必要になります。仕送りの事実と仕送り額が確認できる振り込みの通帳写しや、現金書留で送金するならばその控え
省略出来る場合……扶養認定を受ける方が16歳未満又は16歳以上の学生

 今まで被扶養者の認定について健康保険組合ほど証明は求められていませんでしたが、年金機構でも添付書類を求められるようになりました。
 届出様式も協会管掌事業所用被扶養者異動届が新しくなりました。