「せめて正月の餅代を」 年末調整による不足額徴収繰延
「正月の餅代」という慣用句
日本では年末の臨時収入やボーナスを「正月の餅代」と表現することがあります。といっても「正月の餅代もない」とか「正月の餅代くらいだよ」といった「わずかな金額」というネガティブな表現が多いですね。
そもそもこの「餅代」は江戸時代、商家や職人の主人から番頭・手代への年末のボーナスとして渡されていた包み金だそうで、その頃からすでに年末のボーナスという制度があったというのはサラリーマンの歴史や文化とも言うべきもので、ちょっとロマンを感じられますね。
ちなみに夏季に支給されるボーナスのことは「氷代」と言ったりもするようです。
年末調整時の追加税額を来年に払える
年末調整の計算によっては、所得税の不足額が発生する場合があります。その際には12月分の給与から、源泉所得税を追加で徴収するのですが、その不足額を12月分の給与から徴収してしまうと12月分の税引き後の給与額がその年の1~11月の平均金額の70%未満となる場合には「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」という書類を個人が給与の支払者を経由して、支払者の所得税の納税地の所轄税務署長に提出すれば、不足額については翌年1月、2月に1/2ずつ支払ってよいという制度が存在します。
使用制限が厳しいし、額もそれほどでも?
まず、他の月との比較で税引き後の給与の額が70%未満にならないと利用できないため、通常の会社員で報酬にばらつきがなければ、年末調整でよほどのこと、例えば「扶養親族がたくさんいたのに全員働きだして控除額が大幅に減った」というようなことがない限りは、給与の額が70%になることは稀でしょう。ただ、インセンティブ等で毎月報酬が変わる方で、12月の給与が大幅に少なく、さらに生活が苦しい人にとっては利用する価値のある制度かもしれません。
とは言え、調整税額の繰延べですから、基本的には大きな金額にはならないはずですし、来年には支払わなければなりません。「せめて正月の餅代くらいは」という、お上の恩情のような制度ですね。